初召喚
主人公の名前を
『鬼頭義孝』から『鬼道義孝』に変更しました。
俺は、スマホに表示されたCard・Storyにアイコンをタッチし、起動させる。
すると、見慣れたホーム画面が表示された。
「……か、カードは?」
はやる気持ちを押さえながら、自分の今まで集め続けてきたカードを確認する。
俺はR未満のカードは一枚も持っていない。それは、普段から使う必要性がないため、売り払ったり、合成に使ったりしてしまうからだ。
Rのカードでさえ、俺の気に入った絵柄のカードくらいしか持っていないしな。
そして、スマホを確認すると、ちゃんとそこには今まで集めたカードはあった。
そう、あるにはあったのだ。
「……何だ? この【使用制限中】って表示……」
何故か、今まではなかったはずの表示が出現し、俺の集めたカードの全てが灰色になっていた。
その状態に首を捻っていると、スマホに説明文のようなものが現れる。
「え? 何々……『灰色で表示されているカードは、魔物を倒した際に手に入る召喚ポイントを使用することで、利用可能となります』?」
ちょっと待て。いきなりワケが分からん。
まず、魔物って何? もしかして、この世界では、アニメや小説みたいに、魔物って存在がいるのか?
それに、この文面から考えるに、もしかしてだが……CSの中で手に入れたカードを、現実世界に召喚できるのか?
そう思った瞬間、スマホにこう表示された。
【YES】
「便利だな!? お前!」
内心で自問自答してたのに、まさか返答してくるとは……。
それはともかく、CSのカードが現実世界で使えるということが分かった。
つまり、これが意味することは――――。
「CSの中でしか見ることのできなかった、可愛いキャラクターと触れ合えるのか……!?」
一気にテンションが上がった。
勝手に殺された挙句、よく分からない世界で生き返らされてメチャクチャへこんでたけど、こんな素晴らしい機能を俺に授けてくれるだなんて……神様、ありがとう!
それはいいとして、もともとはガチャを引くための召喚ポイントなのだが、なぜか有り余っていたはずの召喚ポイントがないので、俺の手持ちのカードをどうすることもできないんだけどな。しかも、俺のメインデッキに入っているカードに至っては、召喚ポイントが普通に100万を超えているんだが……。これ、絶対にとんでもないポイント数だよな? 俺の記憶が正しければ、ノーマルガチャをほとんど引いていなかった俺の召喚ポイントは、10万程度しかなかったはずだぞ。
上げて落とされたような気分だが、それでも頑張れば、一人くらい召喚できるだろう。
何とか前向きに考え、他の機能について確認する。すると、CS内で当たり前のように使っていた機能が、この世界でも使えることに気付いた。
「……ガチャとオークション、そしてトレード機能は生きてるのかよ……」
流石にこの二つの機能が生きていることには驚いた。
まず、オークション機能が生きているってことは、俺の他にもこのCSのキャラクターを召喚できるヤツがいるかもしれないわけで、地球でのCSと同じオークション機能ならば、恐らく持ち主が要らないと思ったカードを、必要に感じる人間がお金で買えるはずなのだ。
トレード機能は、お金でのやり取りじゃなく、お互いに欲しいカード同士を交換する機能で、これもオークション機能と似たようなもの。
最後に他のソーシャルゲームでも一般的なガチャは、なんと一日一回無料ガチャまで再現されており、どうやって手に入れるのかは分からないが、チケットで引くことのできるレアガチャまで存在していた。
「……取りあえず、この無料ガチャを回してみるか?」
そう思い、無料ガチャをタッチすると――――。
「うおっ!?」
突然、何もない空間から、安っぽいガチャポンが出現した。
「…………まさか、スマホ内で引くんじゃなくて、実際にガチャを回して引くとは思わなかったぞ……」
そう言葉をこぼしつつ、ガチャを回す。
すると、青色のカプセルが出てきた。これは、一番レア度の低い、Nが出る時のカプセルだな……。
少し期待していた部分もあるので、気落ちしながらガチャを開ければ、中から一枚のカードが出てきた。
他のソーシャルゲームとは違い、可愛らしくデフォルメされたイラスト。
緑色の皮膚に、くりっとした黒い瞳。
そう、コイツは――――。
「……ゴブリンかよ」
異世界に来て、初めて引いたカードは、CS内でも使い道の少ない、ゴブリンだった。
「うわあ……コイツって、一枚だけじゃザコ同然なんだよな……」
正直に言えば、捨ててしまいたい。だが、この世界で、初めて手に入れたカードだ。捨てるのはさすがに躊躇われる。
しかも、気付けばいつの間にかガチャは消えていた。……どういう原理だよ。
手元にあるゴブリンのカードを見ながら、これをどうしようかと悩んでいると、スマホに新たな説明文が表示された。
「ええっと? ……『手に入れたカードは、持ち主の意思に応じて召喚することができます。召喚の際に、必要となる代償の類は一切ありません。ただし、召喚したカードの魔物や、キャラクターが戦闘不能になった際は、再びカードに戻り、一定時間を置くまで再召喚することができません。また、カードの強化や進化につきましては、このスマートフォンにてすることが可能です。最後に、持ち主がカードに戻したいと思えば、カードに戻り、このスマートフォンに取り込んだり、取り出したいと思えば、その操作も可能です』、か」
ナニコレ。これってすごいチートってヤツじゃね?
ガチャを引いて、カードを手に入れるには召喚ポイントが必要になるけど、手に入れた後は、何の代償も必要ないわけで、召喚し放題ってことだろ?
しかも、持ち運ぶためにスマホに取り込んだり取り出したり出来るって……便利すぎるぞ、スマホよ。
とても便利なスマホに感謝しつつ、早速ゴブリンを召喚してみることにした。
「えっと……召喚したいって思えばいいのか?」
召喚方法に首を捻り、カードを眺めていると、突然カードが光り出した。
「おっ、成功か?」
そして、光が収まると、そこには可愛らしいゴブリンが立っていた。
「ゴブっ!」
ゴブリンは、俺の姿を見つけると、嬉しそうに棍棒を振り上げ、抱き付いてきた。
ゴブリンの大きさ自体は、小さい子供程度なので、何の苦も無く受け止められる。
受け止めると、ゴブリンは俺の胸に顔を摺り寄せてきた。
「ゴブゴブ~!」
……可愛いな、コイツ。ザコとか思ってゴメン。
ゴブリンに対して罪悪感を感じつつ、俺はCS以外のスマホの機能を確認することにした。
「えっと? 他は……『マップ』、『ステータス』、『アイテム』、『ヘルプ』……って、マップは分かるけど、残りの機能がよく分からんな」
取りあえず、ステータスと書かれたアイコンをタッチしてみると、そこには俺のステータス的なモノが表示された。
【鬼道義孝】
職業:カードマスター
年齢:17
スキル:≪鬼道流戦闘術:10≫≪身体強化:10≫≪自動翻訳:10≫≪鑑定:10≫≪カード化:10≫
メチャクチャ簡素なステータス表示だな。
しかも、このステータスを見るに、レベルという概念がないのだろうか?
あと、このスキルってのは何なんだろうか?
そう思うと、説明文がスマホに表示される。……本当に便利だな。
「えっと……スキルはその人の身に着けている技術をあらわしたもので、その横の数字は、熟練度をあらわしている、と」
そういうことなら、納得できる。まあ、身体強化以降のスキルは、おそらくこの世界で生き返らせてくれた神様がくれたスキルなんだろう。
スキルの熟練度だが、1が素人、2がちょっと心得てきたレベル、3が初心者、4が一人前、5が熟練者、6は一流、7は努力で到達できる最高点、8は天才の域、9は英雄や超人クラス、そして10はその道の頂点クラスらしい。……まあ、鬼道流戦闘術師範である、親父を倒したわけだし、最強ってのもあながち間違いではないと思うけど……。
それにしても、自動翻訳や鑑定が10ってのはいろいろと嬉しいな。これから先活用する機会が一番多いはずだし。
カード化のスキルは、魔物を倒したときにカードに変化するスキルらしいが、どうやらカード化するかどうかはランダムらしく、俺のカード化スキルは、最高レベルの熟練度……つまり、10なので、絶対にカード化するらしい。これも素直にうれしいな。
ちなみに、ゴブリンのステータスを確認してみると……。
【ゴブリン:N】
Lv:1
魔力:1
攻撃力:5
防御力:3
俊敏力:3
魔攻撃:1
魔防御:1
覚醒回数:0
と表示された。うん、言っちゃ悪いけど、ザコだね。
ゴブリンのレベルだが、CSのメインデッキに使っていたような強力なカードは一枚も使えないのに、強化合成用のカードは普通に使えそうなので、それと合成させればレベルは上がるだろう。
それと、最後の覚醒回数というのは、同じ名前のカードや特殊なカードを合成させることでステータスをアップさせることで、何より最終段階まで覚醒させると、カードが進化するのだ。
残念ながら、ゴブリンはコイツ一体しかいないので、覚醒させることができない。いや、覚醒カードを持ってないわけじゃないんだが、ゴブリンに使うのもなぁ……。
取りあえず、戦力としてはこのゴブリンしかいないので、レベルだけは最大にしておこうと思う。強化合成用カードなら、それこそ腐るほどある。
早速CSを起動させ、ゴブリンをメインで最大レベルまで合成させた。
その結果が、これだ。
【ゴブリン:N】
Lv:10(MAX)
魔力:1
攻撃力:23
防御力:21
俊敏力:21
魔攻撃:1
魔防御:1
覚醒回数:0
もう一度言おう。ザコすぎるだろ。
さすがレア度がNなだけあるな。まさか最高レベルがたったの10だとは思わなかったぞ……。
おまけに、ステータスの上りが全体的にショボ過ぎるだろ。Rのカードなら、同じだけ上がっても100くらいはステータスがアップするはずなのだが……。
そう思いつつ、ゴブリンを見下ろすと……。
「ゴブ?」
可愛らしく首を傾げてきた。……もう可愛いからザコでもいっか。
なんだかんだで、可愛いものが大好きな俺だった。
9月8日スキルの熟練度、新スキル追加の修正。