同日 PM6:35 青葉町某所 WWS本社前~
「初めまして、かな?それともまた会ったね、かな・・・どっちだろう」
「こういうときは軽く手でも上げるだけいいんだよ。あっちでは仲間だったんだし、そんなに気負いするもんじゃないさ」
「何か..俺ら三人とも殆どキャラクリで弄ってなかったんだな。はっきり言って、こっちで始めて会った気がせんなー」
話通り、入り口前で待っていた俺に二人が合流する
ゲームで着ていた戦闘服じゃないことを除けば服装がほぼ一般的な普段着と見知った顔。
今一、新鮮さに欠けるな、そう思った
「おっと、忘れる所だった、さっきシミュレーターから出るときに機材管理の人からこいつを
渡してくれって頼まれてた。」
自分に付けていた分で思い出した
俺はズボンの左ポケットから乳白色で半透明な材質がプラスチックのような光沢のある輪っかを二つ
取りだし1つずつ二人に渡す
見た目は1世代前の腕時計のようで表面に今の時刻、月、日をホログラムで表示するだけの様だが時折
ノイズ混じりの数列を吐き出している
「なんとも、あの街に入るために必要らしい。少々大きいけど手首に合わせて太さが変わるから
...どうやって変わるのか分からないけどな」
「いや、ここまで来ると何でも異世界のなまらすげー技術と流すしかないな」
「逆に言えば、あの話が本当だ、っていう証拠になるね。 まぁ、行ってみて何もないならそれで良し、ってことね」
「二人とも付けたな、じゃあ行ってみるか
そういや名前言ってなかったな。
時雨藤耶階級は大佐、よろしく
・・・こっちじゃ近所でも有名な銃のマニアで普通の高校、普通の生活を送っている
普通の人間さ」
迷彩柄のカーゴにユニク○で買った黄色の長袖一枚、(上の)下着は着けていない
持っている服では一番まともなやつだ
俺が言い出したのを皮切りに、俺の言った大佐と同じようにゲームでの半ばネタのロール
だった肩書きを紹介に付け加えた。
実際、日常的に大佐や中尉とかの階級を使う奴はいないだろうしな
「笹倉桜彩肩書きは・・・臨時独立小隊所属 中佐、ってことで
あっちではバンハン銃を撃っているイメージしかないかもしれないけど、こっちでは・・・
簡単に言うと医学科、生物工学の複合科に入ってる」
「伊坂凪彩!上等兵っ!
・・・うん、しょっぱなから色々と失敗した感があるから一旦待ってくれ!
えー、情報系の高校に行ってる機械大好き、プログラム大好きな健全な女子、大きな声で言える
もんじゃないけどこう見えてネットじゃ有名人なんだぜ。 よろっ」
...え?こいつ女だったのかてっきり男だと思ってたぞ
声も結構低いだしナイム・・・胸板が薄いし。
そいつは置いて、タンクトップにジーンズでかなりラフな格好だ
おまけにスポーツ系のサングラス(ツーリングとかのやつ)
そして身長は180cm程度、年相応って感じか
、
、
・・・男の。
とまあ、歩きながら最近発売したラノベやら今話題の映画等の他愛ない話をしつつ件の"入り口"
があるという薄暗い、普通なら誰も寄り付かないような見た目は路地、と言う趣のところまで辿り着いた。
しかもその場所の前に日本じゃなくてアメリカの方が違和感の無いスキンヘッドにグラサン、
マフィア風の外国人らしき強面のオニイサンが・・・
後ろでは何これ怖い、帰りたいわーとか怖がっているんだかふざけているんだか
良く分からない啓吾がいて、桜彩、略してサクラと呼ぶ事になった・・・は目の前の男よりも
隣のファンシーショップの方が気になっているようで
こっちの不穏な空気はファンシーショップの前には文字通り"空気"になっているらしかった
そういえばこの腕時計を渡してくれた人は
『合言葉は入り口にいる人に言って、あとそれを見せれば通してくれるはずよ』
とは言っていたものの、それがどんな人なのか聞いていなかった
これで相手を間違えて近くの川に浮かぶなり、石を抱かされて東京湾にでも沈む事にならないと良いんだが・・・
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兎にも角にもこのままじゃ"色々な意味で"話が続かない
仕方無しに見た目がヤっさんな人に話しかけることにするしかほか無さそうだな・・
「ふぅ..."リアクターの調子はどうなっている?"」
「ふん、合言葉は知っていてもアレを持ってきてないのなら通さんぞ
・・持ってきているんなら出せ、無ぇのなら・・・分かってるな?」
*おおっと ここで せんたくしを まちがえ ると たいへんなことに なるぞ !*
*コマンド?*
籐耶はITEM:ブレスレットを使った!
「こいつで、良いんだよな?」
「・・・どうやら本物のようだな、念の為後ろの二人のも確認するから見せろ」
やはりこれであっていたらしい、男はそれを俺のを含めて3つを一通り見て確認すると
道の横に避け、路地の奥を指差した。 通っても良いらしい
そういう訳で横を三人して通り過ぎようとすると何故か俺だけ、呼び止められてしまった
「お前が・・・時雨、籐耶だな?」
「あ、ああ。 そうだが・・・」
「・・・・・・そうかそうか!お前が小野田がテストで面白い奴だと言っていた奴か!
この俺を見ても殆どビビらない上に見たところ、やる気もあるみてぇだな
おおっと、こっちだけが知ってるのもフェアじゃないか、
ジェフ=ハリーだ、気軽にジェフと呼んでくれて構わないぜ」
短い沈黙の後、
さっきまでの態度とは驚くほど変わって砕けた口調になった。
・・・最初は警戒していたが別に俺が何かやったわけでもないしそう構えるものでもなかったか
「いや、実際は心折れる寸前だったよ。 確かにあんだけ威圧感がある奴がいれば
普通誰も近づかないからな、流石だ」
「そうか?・・・だがな、今の口調から分かるだろうが、本当はそういう堅っ苦しいのは苦手なんだよ
あんたらが来るまで奥で他の奴と話して待ってたぐらいだからな」
「見た目と中身が合っている様で合ってないんだな。
ついでにと言っちゃアレだが、・・街ってどういう所なんだ?
いつもの事だけど小野田も場所は言ったが肝心の中身について言ってなかったからな」
話ついでという感じに三人でこれから行く街について色々聞いておく
入り口はこんなだが、向こう側は一瞬目を疑うほど凄いものがある
危険で近づかない方が良い地域の話
通貨は日本円も使えるが代わりにお釣はこの街専用の物になる事
「・・・とまあ、こんな感じだ。
しかし驚くなよ、俺だって始めて行った時は腰抜かすほどだったからな」
「いやあんたが腰抜かすなら俺たちゃショック死するだろよ
ああ、それと行くのは俺だけじゃないし二人を先に行かせるのもな、って事で
ここらでお暇するか
また会ったらよろしくな、ジェフ」
「おうよ、いつでもあんたみたいな奴は大歓迎だぜ!」
10分は話し込んだ辺りで二人を待たせておくのは悪いと思い、適当なところで話を切り上げた
「遅い、遅すぎる。普通話が長くなるっていうのは女子でしょうが
あんたは集会に集まったおばあちゃんかっ!」
「話はいいけど待っているこっちの身にもなってくれよ
目の前に上手そうな餌があるのに待てをされるのはキツイぜ」
「10分ぐらいなら良いじゃないか、こういう時コネを作らなくてどうする
それにあの人ジェフ、って言うらしいが面白い人だったからな」
路地の最奥、壁の前には白い光が浮いている。 心なしか周りの空気が他の場所より低いようだ
行き止まりにはこれしかないし、この先が街に繋がっているのか
「なんとなく、入りにくいわね。ケイ、先にどうぞ
遠慮しなくていいからさあさあ」
「いやいや、いきなりこんな不思議な星のゲートっぽいものに飛び込めと言われても
言われても言われなくても遠慮するって。
そうだ!トーヤは|FabledFantasy《F・F》でどう見ても敵にしか見えないが
カーソルを合わせると友好的と出る上、普通に会話が出来る
【ゾンビ】に警戒しないで最初から普通に話しかける奴なんだろ...どうぞどうぞ!」
「大体何が言いたいかは分かるが長げえよ! そもそもそんなゲームはやったことは無いのですが
そういうの抜きで俺が行かないと駄目か?」
そう言うと『そんな事は言わなくても分かるでしょ、早く早く!』的な視線を俺に向けてくる
万が一ここで俺が「寧ろレディーファーストでお二人先にどうぞ」、とか言いでもしたら殺されるな
、
、
つまり、俺が先に行くしか選択肢は残っていないという事か。そうなんだな神よ。
仕方なく先陣を切って光の中へと進む
目を瞑りながら通り抜けようとすると一瞬の眩暈の後、暖かく澄んだ空気が頬に当たる
恐る恐る目を開けるとそこには中世の建物や近未来のような掲示板、飛行船?と現代らしさの無い
混沌としていながらも調和の取れた
端が見えないほど遠くまで続く摩訶不思議な光景が広がっていた
「これは・・・異世界、としか言いようが無いな」