Inportant,special day
子供の頃から憧れだった
真っ白いウェディング・ドレスを身に纏い
私はバージン・ロードを歩み出す
愛するあの人の元へ行く為に………
厳かに式は進み、誓いの言葉を交わす時がやってきた。
「汝、久米真実は、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、加賀美俊一の妻として、これを愛し、慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓いま………」
「ちょっと待てよ、真実!!」
悲痛の叫び声が列席から上がった。声の主は、俊一の親友、久史だった。
「久史………。」
「おまえ、本当にこれでイイのかよ!!」
「いいの、言ったでしょう?私は彼と結婚するの。」
「だって、おまえ、俊一は三年前に………!!」
「死んだね。」
そう、新郎のいる場所には誰もいない。
三年前、俊一は事故により天に召された。
………私との結婚指輪を買いに行った帰りに………。
「私も、もう一度聞くわね?………本当に………俊一と《事実婚》するの?………世間にも、誰にも認めて貰えない………“不毛な結婚”よ?」
牧師役をしていた親友の聖羅が心苦しそうに問い掛ける。
こんな無茶苦茶な《事実婚》に真っ先に反対し、久史と共に必死に私を説得していた。
こんな無茶苦茶な式の為に式場を借りれたのは、私の熱意に負けた聖羅が、自分の父親が経営する式場を私の為にリザーブしてくれたから。
「私はもう、意思を変えるつもりはない。私は俊一と婚約していたの。今日、彼の“命日”を“結婚記念日”に変える。ただそれだけが………私の願い。」
久史と聖羅は……………もう説得は無駄だと悟ったのか、揃って溜め息を吐き………久史は椅子に座り直し、聖羅は涙ながらに再度誓いの言葉を問う。
「汝、久米真実は……………生涯、加賀美俊一を愛し、慈しむ事を………誓いますか?」
「はい、誓います。」
「では………指輪交換と、誓いの口付けを。」
私は持っていた小さなバッグから、俊一の遺品となった結婚指輪を取り出し、この三年間、ずっと付けていた婚約指輪を自ら外し、《結婚指輪》を………左手薬指に嵌めた。
そして、ヴェールをあげ、生きていたら俊一の唇があるであろう場所に背伸びして………温もりのない口付けを交わした。
式場の教会を出る為、門を潜ったのち、二人は『もうどうして泣いているのか分からない』と言いつつ、惜しみない拍手とライスシャワーを私と………隣にいる筈の俊一にかけてくれた。
ねぇ、俊一。
貴方は喜んでいるかな、それとも怒っているかな?
でも、私は貴方以外は愛せない。
だから………私の我儘、許して?
お願いです、私を貴方の花嫁にして下さい。
あの世で再会したら………きっと本当の
「結婚式」
をしようね?
〜了〜
私のHPで評判の良かった作品です。こちらでは処女作なので宜しければ感想など頂ければ幸いです。