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鍵のかかってない密室

 黒猫はご神木の枝に四肢を器用に乗せ、微睡んでいた。暖かな日差しと、吹く風が心地良い。桜前線が関東にやってくるのも、そう遠くはないだろう。とは言え、夜はさすがに冷える。今まではかつて世話になったことのある恩人の家に上がらせてもらっていたが、先週から帰省していた息子が極度の猫アレルギーらしく、連日泊まらせてもらうのは難しいと言われてしまった。そこで、三年前によく利用していた集会所に戻ろうかとも考えたが、やめた。今では新しいリーダーがみんなをまとめていることだろう。一時期はやんちゃに走り回っていたものだが、もう引退した身だ。引き返した所で怪訝な目で見られるに違いない。――となると。

「あの娘に頼んでみるか」

 少し不安そうに黒猫は呟いた。あの娘、とは黒猫の弟子である。初めて出会ったのは去年の十一月だっただろうか。見た目は楚々とした感じの少女なのだが、幼女に強い興味関心があるらしく、非常に残念な頭の持ち主だ。口を開けば、“希ちゃん”という単語が数十回出てくるし、ロリの魅力についてそれこそ論文が書けるのではないかと思うくらい熱く語ってくれる。真奈美が希に惚れるのは勝手だが、だからと言って一昔前の学習ソフトのように延々と“希ちゃんの可愛さについて”繰り返すのは勘弁してほしかった。「今日のわんこ」じゃあるまいし。

 ロリコンやストーカーの気持ちなど微塵も理解できない(というか、したくない)黒猫は、日に日に残念度が加速していく弟子を生温かい目で見守るだけだったが、自分が真奈美の家に滞在するとなると話は別だ。布団の中で妄想に花咲かす弟子を想像するだけで、身の毛がよだつ。もし変な物が置いてあるようなら、きっちり注意しなければ。

 そう固く決意したとき、

「あ、師匠! おはよう」

 自転車にまたがった女子高生が手を振りながら公園に入ってきた。春風になびく長い髪。淑女然とした面持ち。アイロンのかかった真新しい制服。絶叫スペシャルランドの事件以来、入院したとかでしばらく会っていなかったが、どうやら元気そうだ。

 自転車の鍵をかけるのを待って、真奈美に声をかける。

「久しぶりだな。傷の方はもう大丈夫なのか?」

「うん、全然平気。こう見えても体鍛えているからね。むしろちょっと鈍っちゃったくらいで」

 今日も運動をかねて少し遠回りしてきたのよ、と真奈美は付け足した。

「寝坊した奴がよく言う」

「な、何で寝過ごしたこと知ってるの!?」

「寝癖が微妙に残ってる」

「え、どこ? うぅ~、急いで直さないと。今日、始業式だっていうのに……」

 あたふたと鞄から鏡を取り出す姿を見て、この娘も一応女子なんだな、とズレたことを考えていた。しかしそうか、もう学校が始まる時期か。真奈美も大きな事件を一つ解決したことだし、そろそろ本格的に“例の案”を始めてもいいかもしれない。

「ところで、お前さん。部活はやっているのか」

「へ? 部活? 一応同好会には入っているけど、別に強制参加ってわけじゃないし……。拘束されないって意味じゃフリーかな」

 虚を突かれたような表情で答えたあと、こちらの意図を探るように目を細めた。

「でも何で師匠がそんなことを?」

「いや、特に深い意味はない。放課後や春休みによくここへ来るから、構ってくれる彼氏がいないのだろうと心配になっただけだ」

「し、失礼ね。私だって気になる男子の一人や二人くらい……」

「いるのか?」

 そう問うと、真奈美は頬を染めてそっぽを向いた。

「べ、別に師匠には関係ないでしょ」

 ほう、これはまた斬新な反応だな、と黒猫は思った。以前に聞いた話では、バレンタインにチョコも作ったそうだし、杞憂するほど女子力は低くないのかもしれない。

「確かに余計な詮索だったな。素直に謝ろう。しかし放課後がフリーなら都合がいい」

「どういうこと?」

「さぁ? それを導き出すのはお前さん自身だ。俺の口からは教えられん」

「むぅ……。なんか今日の師匠、変」

「なんとでも言え。それよりそろそろ行かないと遅刻するぞ」

「え、うわ、やばっ! じゃあね、師匠。帰りにまた来るから!」

 真奈美は急いで自転車に飛び乗ると、ぐっとペダルを漕いだ。あっという間に後ろ姿が小さくなる。公園前の交差点を曲がる直前、猫型のストラップが鞄に揺れているのを見たような気がした。


 *


 真奈美が2-6の教室に滑り込んだのは、HRの開始を告げるチャイムが鳴る直前だった。去年までの癖で、つい一年棟に寄ってしまったからである。見覚えのない生徒たちに慌てて引き返したのが五分前。昇降口でクラス分けを確認し、二年六組に自分の名前を見つけるまで、さらに三分のタイムロス。予鈴が響く中、同じクラスの仲間を確認している暇はなかった。スリッパに履き替え、二年棟の階段を一段飛ばしで駆け上がった所で、去年の担任、沙尾鳥教諭とすれ違った。

「あ、沙尾鳥先生。おはようございます」

「あら、佐倉真奈美さん。おはよう。……どうしたの、そんなに息を切らして」

 ゼハゼハと荒い呼吸を繰り返す真奈美を見て、沙尾鳥は眉をひそめる。

「ええと、ちょっと寝過ごしてしまいまして。ところで先生は二年六組の担任ですか?」

「残念だけど違うわ。今年は二年四組の担任」

「そうですか……。じゃあ誰だろう」

「ふふ、HRになれば分かるわよ。私も学生の頃は、毎年どきどきしながら待ったものだわ」

 どこか懐かしさを含んだ笑みを浮かべ、沙尾鳥は悪戯っぽく言った。それからふと真顔になり、抱えていた書類の束から一枚の用紙を取り出した。

「そうそう。これ六組のみんなにも伝えておいてくれるかな」

「あ、はい。いいですけど……」

 受け取った用紙に視線を落とすと、上部に「照明器具の点検に関して」と書かれている。

「今朝早くから各校舎で行っているの。本当は昨日済ます予定だったんだけど、あいにく台風並の大雨だったじゃない?」

 真奈美は軽く頷いた。昨日は例年稀に見る異常気象とかで、関東一帯は叩き付けるような激しい雨風に見舞われた。東京湾の海水面は見る見る上昇し、アクアライン、ベイブリッジ、湾岸道路の一部が通行止めになり、都内の鉄道ダイヤも大幅に乱れ、帰宅困難者が数多く出たとニュースで報じられていた。確か、午前十時過ぎには気象庁から暴風警報が発表されていたはずだ。

「それで点検は今日に回すことにしたってわけ。校舎のあちこちで業者の人を見かけると思うけど、くれぐれも邪魔はしないようにね」

 それじゃあ、また始業式で会いましょう、と微笑んで、沙尾鳥は階段を下りていった。

「電球の点検、かぁ」

 廊下の端に目をやると、確かにつなぎを着た作業員が指示を飛ばし合っている。なんと無しに聞くと、廊下の東側、つまり二年八組の方から順に行われるらしい。生徒が利用するトイレと各教室は午後に回し、午前中は一階と二階に分かれて昇降口から渡り廊下までを複数人で担当するとのことだった。指示を受けた作業員が各々脚立を手に散らばっていく。真奈美は作業の邪魔にならないよう、そっとその場所を離れた。


「あ、おはよう、真奈美。クラス分けに名前が載ってたのに全然来ないから心配してたんだよー」

「遅いぞ、佐倉! 学級委員長のお前が来なきゃ始まらねぇだろ」

「こらこら、学級委員は新しく決めるっつーの」

「おお……。ついにロリコン女神様のご登場か。くわばら、くわばら」

「ああ、この一年、また騒々しくなりそうだぜ」

 さて、一年を過ごす教室に飛び込んだ真奈美を迎えたのは、やはり一年を共にする仲間たちだった。

「な、なに、この歓迎っぷり……」

 送られてくる熱い声援に戸惑いつつも、真奈美はクラスメイトの顔触れを確認する。小学校からの付き合いである穂花、強盗事件や諸々でお世話になった来也、ロリコン同好会会長の柴田に加え、旧一年五組のメンバーもかなりいる。そして――

「おはよう、真奈美ちゃん。今日はぎりぎりだったね」

「希ちゃん!」

 クラスメイトの輪の中にツインテールの少女を見つけた途端、真奈美は百メートル走の世界記録保持者タイトルホルダーも顔負けのスピードで走り出していた。よく訓練された無駄のない無駄なスキルである。同じく去年一年で鍛えられた元クラスメイトたちが、危険を察知してその直線上からさっと避ける。真奈美は、運悪く反応できなかった数名の男子を吹っ飛ばしながら、希に抱きつこうとした。しかし。

「あれ?」

 掴んだのは何もない空間。そして目の前に迫る机の角。それらがまるでスローモーションのように見えたあと、

「あうっ!」

 ドンガラガシャーンッ! と派手な音を立てて顔面から激突した。

「ふふん。真奈美ちゃんの行動パターンなんかお見通しよ」と上から目線で見下ろす希。

「それより、あれ大丈夫なのか……?」と心配しつつも、若干引いている同級生。

「平気、平気。いつものことだし」と華麗にスルーするロリコンメンバー。

「お前はいい加減羞恥心というものを身につけろ」と呆れている柴田。

 いずれにしても、注がれる視線が痛い。

「ち、違うの! これはお父さんからの命令で……」

 同じくロリコンである父親に責任をなすりつけようとする真奈美。もし祖父がいたら、一喝されて即道場送りになっていたことだろう。なんとも複雑な勢力図を抱えた家庭である。

 真奈美はスカートの埃を払って立ち上がると、改めてパートナーに向き直る。

 身長百四十センチ弱の華奢な体を制服に包んだ姿は、まるで小学生がコスプレしているような印象を受ける。天使のような微笑みと、高いソプラノボイス、そしてチワワを連想させる大きな瞳も相まって、一部のマニアのみならず、全校生徒から絶大な人気を集めている。大好物はお菓子とオレンジジュース。時々、何もない所でつまずいたり、手品の披露に失敗したりとドジっ娘の気質あり。上目遣いと涙目の威力は効果抜群。その瞬間の写真を撮ろうと、日夜ロリコン同好会および写真部の奮闘は続いている。バレンタインデーには血で血を洗う暴動騒ぎにまで発展しかけたことも。

 家庭面で忘れてはならないのが、希の父親の存在。世界的に有名なマジシャンであり、希の目標。いつか父親を越えることを夢見て、毎日家に帰ると練習に励んでいるらしい。ちなみに大魔術師の家系だけあって、一口に家と称しても、実際は豪邸ほどの広さがある。真奈美も一度訪れたことがあるが、接客してくれた執事といい、「お嬢様」と呼ばれていることといい、終始驚かされっぱなしだった。なお、執事は園宮、父親は聖夜という名前らしい。――これが、希に関する大まかな脳内データベースである。

 随分と項目が多いが、真奈美の中では「魔術師を目指すロリっ娘」と簡略化されているのが一般的であった。

「おはよう、希ちゃん。また同じクラスになれて良かったね」

 と言うより、もし希と違うクラスになったとしても、ストーカーの如く足を運ぶつもりだったので、あまり関係なかったのだが。むしろ二人が一緒になって被害を受けるのは、ほかのクラスメイトたちである。

「ま、佐倉が残念なのはみんな知ってるからいいとして、問題は抑止力だな。はたして誰が担任になるか」

「だよなー。数学の神道だけは勘弁してほしいぜ。時間に厳しいし、ノート写しが通用しねぇもん」

「口うるさくない先生が良いよな。文化祭とか自由にやれていいし。個人的には美術の戸川がいいと思う」

「……お前はあの一人劇場オンステージが見たいのか。物好きだな……」

「それに戸川なら、遠足の行き先美術館で確定だぜ」

「あ、そっか。なら、沙尾鳥先生は? 多少派手に騒いでも怒られないって噂だぞ」

「沙尾鳥先生なら四組の担任よ」

 真奈美は口を挟む。

「何で知ってんだよ、佐倉」

 みんなの視線が再び集中する。

「さっき、そこの廊下で会って聞いたのよ。さすがに六組の担任までは教えてくれなかったけど、みんなによろしくってさ。あ、そうそう。ついでにこれも渡すように頼まれてたんだっけ」

 真奈美は沙尾鳥から受け取った用紙を見せる。

「ん~と、ああ、廊下でやってた照明点検か。どうでもいい話だな」

 確かに自分と直接関係がなければ、気にとめる必要はないのかもしれない。だが、これが後々、ある重要な意味を伴ってくることに真奈美はまだ気付いてはいなかった。

「あたしは今年の身体測定の方が気になるなぁ~」

 と希が呟いたときである。

「やぁ、みんなお待たせ! 僕がこの二年六組の担任になったことを神に感謝するといい!」

 ドアをバーン! と派手に開け、クルリ、とその場で華麗なターンをキメながら颯爽と登場したのは――。

「戸川先生……」

 来也がややげんなりした口調で呟く。周りを見ると、無駄に凝った演出に当惑している者と、「またかよ、付き合いきれねーぜ……」といった表情を見せている者に大別できた。ちなみに後者の大部分は、元一年三組の連中である。

「うん? どうした、みんな元気ないな。今からキックオフミーティングだと言うのに」

 もし潤がいたら、「どこの大学の研究室ですか!」と即座に突っ込んでいただろう。正確にはホームルームである。

 戸川教諭。年齢:不明。実にノリが良く、HRでは生徒そっちのけで一人劇場を始めることも多々。美術教師なだけあって、風流を好み、有名な絵画や彫刻のレプリカを本物そっくりに造り上げるほどの高い技能を持つ。しかし意外に面倒臭がりであり、厄介事は学級委員長に丸投げしてしまうこともある困った人である。

「さて、みんなのことをよく知るためにも軽く自己紹介をお願いしたいが……そろそろ体育館に移動しないとマズイかな。続きは始業式が終わってからにしよう」

 戸川がまとめると、みんなはぞろぞろと教室を出て、体育館へと向かった。


 *


 真奈美が異常に気付いたのは、始業式を終えて教室に戻ったときだった。机の中に見覚えのない封筒が入っていたのである。一瞬、ラブレターかな、とも思ったがすぐに打ち消した。現在、真奈美に思いを寄せている人物と言えば、従兄にあたる翼と、同級生の柴田くらいだが、翼はもう大学生だし、柴田は正々堂々と告白するタイプだからだ。

「うーん、何かしらね……」

 封筒を裏返してみても、差出人の名前はない。と言うより、これが本当に真奈美宛なのかどうかも不明なのだ。真奈美が二年六組にいることはクラス分けの張り紙を見れば分かるが、席まではクラスメイトしか知らないはずである。しかしそのクラスメイトにしても、さっきまで始業式に参加していたのだから、こんなものを机に入れる暇はなかったはずだ。

 試しに太陽に透かしてみる。厚さからしても、中には一枚の紙しか入っていないようだった。

「ま、中身を見ちゃってもバチは当たらないわよね」

 好奇心に負け、封を破る。中に入っていた紙を広げると、そこにはたった一行。


 この謎が解けるかな?


 と書かれていた。

「え、何これ、どういう意味……?」

 文だけ見れば挑戦状のように思えるが、情報が少なすぎてさっぱり分からない。“この謎”とは一体何を示しているのだろう……。

「どうしたの、真奈美ちゃん」

 真奈美が考え込んでいると、希が近づいてきた。

「あ、希ちゃん。実はおかしな手紙が入っていて……」

「おかしな手紙? あ、ひょっとしてラブレター?」

「ち、違うわよ。仮にそうだったとしても、私は希ちゃん一筋だから安心して」

 その返答に、複雑な表情をする希。しかしいくら考えても真奈美の気持ちは理解できなかったので、聞かなかったことにする。

「じゃあ、何なの? その手紙」

「正直分からないのよ。差出人は書いてないし、内容は意味不明だし……」

 真奈美は疑問に感じた点を一通り希に話した。

「うーん、確かに変だね……。真奈美ちゃんの言う通り、封筒を入れるタイミングは生徒どころか先生にもなかったと思う。始業式には学校関係者全員が出席していたはずだから。そして式の途中、席を立った生徒や先生はいなかった。つまり、この学校で犯行が可能な人物はゼロということになる」

「いや、まだいるわよ。ほら、今日学校の照明点検に来ている作業員さん」

「真奈美ちゃん……。本当に作業員さんがそんな悪戯したと思ってるの?」

「――な訳ないよね。あはは……」

 希の呆れた視線を浴び、苦笑で誤魔化す。

「でも、外部犯の仕業だとすると、どうやってこの教室に入ったのかが問題だよね。ドアには鍵がかかってないけど、廊下には作業員さんがいたから、こっそり忍び込むのは不可能だと思う」

「そうね。でも一応確認してみましょう」

 真奈美と希はHR終了後、脚立の片付けをしている作業員に話を聞きに行った。

「始業式の最中に怪しい人を目撃しなかったか? うーん、俺はずっとこの廊下で作業してたけど、誰も通らなかったと思うよ」

「余所見していて気付かなかったとかは」

「おいおい。いくら集中していても、誰かが廊下を横切ればさすがに気付くさ。それに、ドアを開け閉めするときは多少なりとも音がするだろ? だが、そんな音も一切聞こえなかったよ」

「そうですか……。どうも、ありがとうございました」

 お礼を言ってから教室に戻る。

「あの作業員さんの話を信じるなら、ドアからの侵入は不可能ってことよね。となると――」

 真奈美は窓に目を向ける。後ろ側の窓は閉まっているが、黒板に近い側は二十センチほど開いている。しかも、窓のすぐ外には樹木の枝が伸びていた。

「あと考えられる経路はここよね。犯人はあの木を昇り、枝から教室に飛び移ったのよ。解けてみれば、案外大した謎じゃなかったわね」

 あまりの味気なさに拍子抜けしていると、

「……いや、その方法も無理だよ、真奈美ちゃん……」

 希が震える声で否定した。

「え、どういうこと?」

 真奈美が聞き返すと、希は黙って地面を指した。そこには、“足跡一つない綺麗な土が広がっている”。

「昨日の大雨で地面はぬかるんでいる。もし犯人があの木を利用したのなら、その周辺に足跡が残っていないとおかしい。けど、現実は見ての通りだよ」

 真奈美は改めて、枝や窓枠を観察する。しかし、そこには泥がまったく付着していなかった。すなわち――

「そう。この教室は完全な密室だったんだよ……」

 ポツリと呟いた希の台詞が、いつまでも頭の中で反響していた。


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