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とある記憶のアラカルト  作者: 月夜見幾望
絶叫スペシャルランド強盗事件
19/39

クイズ大会:午前の部

 クイズ大会にて、柴田君が特別チケットを手に入れるまでの戦いを描いています。潤を助っ人として迎え、万全の態勢を整えた彼らの前に様々な難問が立ちはだかる!

 皆さんも是非、挑戦してみてくださいな。

「――というわけで、頼む参道!」

 時間は少し遡り、終業式の五日前。場所は一年三組の教室。時刻はすでに五時を上回っており、ほとんどの生徒は帰宅したか各々が所属している部活動に励んでいるだろう。

 目の前には、身長差三十センチはあろうかという大男。ちなみに比較の基準は僕自身だが、一般的な日本人女性の平均にも届いていない自分と比べるのも、考えてみれば虚しいだけかもしれない。

 明らかにグラサンが似合いそうな偉丈夫の顔面には、あろうことかフレームの細いインテリ眼鏡がのっている。「目は口ほどにものを言う」という格言通り、彼の瞳はこちらを射貫くように鋭く真剣そのものの光を湛えているのだが、明らかに不釣り合いなその眼鏡のせいで、なんだか妙にシュールさが前面に押し出されている。

 そのまま直視しているといつか吹き出してしまいそうな気がしたので、僕は机の上に置かれたチラシに視線を落とす。おそらく新聞広告の中に混ざっていたものだろう。どこかの爆弾予告が書かれているわけでもなく、至って普通のチラシだ。紙の中央上部には、『絶叫スペシャルランド 日塔町に新しくオープン!』の文字が光り輝いている。

 そのまま字面を追っていくと、彼が僕を頼ってくる理由に行き着いた。

 なお、セレモニー後に開催されるクイズ大会にて見事優勝された方には、当テーマパークを春期休暇中のみ何回でも無料でご利用いただける、「無料スプリングパスポート」を一組二名様まで進呈いたします! 是非、ご参加くださいませ!

 ……この内容から導き出され得る結果を頭の中で整理し、さらにもう一回目を通した上で顔を上げる。と、彼は藁にもすがる面持ちで、重々しく頷いた。

「俺と一緒にクイズ大会に出てくれないか?」


 そんなわけで、話の舞台は国際展示場へと移る。

 ぶっちゃけて言うと、僕は僕でこの休日は成田探偵事務所で真帆さんの作る手料理に舌鼓を打ちながら、いま世間を騒がしている強盗グループの犯行手口や被害者の証言などを自分なりにまとめてみるつもりだったのだ。それが、一体何が悲しくてこんな所に引っ張り出さなければならないのか。とかく周りに流されやすい自分の性格を恨めしく思うが、あのとき断り切れなかった気持ちもあったことは確かだ。鈴笠あたりの評を借りるなら、

「潤は結局、謎が絡むと放ってはおけないんだよなー。たとえそれがどんなに些細なことでも、さ」

 らしい。そしてそれは正鵠を射ていると思う。

 探偵を目指すと決めたときから、僕の周りは変わった。いや、特別日常生活に変化が生じたわけではないのだが、モノの見方・視点を少し変えるだけでも普段は気付かなかった謎が浮上してくる。俗に「日常の謎」と呼ばれているアレだ。

 怪盗セゾンにまつわる一連の事件で、僕は自分がいかに探偵として未熟だったかということを思い知った。だから、そういう類いのちょっとした謎を見かけても、自分から進んで解決しようなんて気はなかった。……はずなのだが、ならどうして僕はここにいるのだろう。あの一件からしてみればお遊び程度のクイズ大会、断ればよかったじゃないか。貴重な休日を返上してまで、彼の個人的な依頼に付き合う義務はないのだから。

「おーい、待たせたな参道!」

 そんな矛盾した行動に明確な解答を出せないまま考えあぐねていると、国際展示場正門駅の改札口から柴田が片腕を大きく振りながら出てきた。全体的に黒を基調としたロングTシャツにジーンズ。時修舘の制服とはまた違った味が出ていて面白い。

 彼はこちらに歩み寄ると、いきなり背中をばんばんと叩いてきた。思わぬ不意打ちに、げほっとむせる。

「見たところ体調は良さそうだな。俺はこの二日間徹夜でパズル本を読みまくったせいで寝不足気味だが、一応有名どころは押さえてきたつもりだ。だが、どうにも引っかけ問題や論理に弱くてな……。俺が間違えそうになったら参道がカバーしてくれるとありがたい。なんとしてでもこの大会で優勝して真奈美に……あ、いや、今のは忘れてくれ」

 両手を大げさに振って失言を取り消そうとする仕草が、なんともミスマッチでかわいらしい。まあ、もうばっちり聞いてしまったけど、柴田が佐倉さんに想いを寄せていることは心の中にしまっておいてあげようじゃないか。

 僕は笑いながら頷く。

「こちらこそよろしく。僕もできる限りのことはやらせてもらうよ。パズルの中には推理力や発想の転換が要求されるものも少なくないからね。腕試しにはもってこいだ」

「そいつは心強い。俺は図形や数字を扱った問題にはそれなりの自信があるから、相性はばっちりだな。聞いたところによると、参道の好きそうな暗号解読の分野からも一部出題されるらしいぞ」

「暗号解読!」

 その素晴らしい響きが、僕の中の好奇心をちくちく刺激する。探偵にとって暗号とは、猫にとってのマタタビと同じなのだ。突然、瞳の輝きが増した僕に苦笑しつつ、柴田はバッグの中から一枚の用紙を取りだした。今日の日程表らしい。

「記念セレモニーは午前九時からだが、これは別に出なくてもいいだろう。十時に始まるクイズ大会までに間に合えばそれでいい。それまではまあ、東四ホールが休憩施設となっているからそこで待機だな。で、こっからが大会のルールなんだが、まず参加者は個人もしくは二人一組のチームとして出場し、それぞれに与えられた番号札と同じ解答席に座る。クイズ問題は古今東西あらゆる分野から出題される。問題数に制限はなし。不正解になった個人もしくはチームはその時点で強制退出だつらくし、最後の一人が決まるまで出題は続けられる。

 大会は十二時までの予定だが、それまでに決まらなかった場合、昼休憩を挟んで午後一時から再び開始される。――ここまでで質問はあるか?」

「一つだけ。チームで参加する場合は相談し合ってもいいんだよね?」

「ああ、構わない。ついでに付け加えると、各解答席は壁で仕切られているわけじゃないから、大声で話し合えば隣の参加者にも聞こえる。もちろん、隣の奴の解答を信用するかしないかは勝手だがな」

「へえ、なるほどね。ってことは、わざとウソの情報を流して周りの解答者を混乱させることもできるってわけか。なかなか戦略性の高い大会じゃないか」

「それはそうだが……俺にはわざわざそうする必要があるとは思えんな。結局は自分の解答を信じるのが一番だろうに」

「いいや、心理学において“人間とは社会的な動物である”と言われているように、個人はそれぞれの意志に基づいて行動しているように見えて、実は自分を取り巻く集団の影響から逃れることはできないんだ」

「……どういうことだ?」

「じゃあ、少し例を挙げてみようか。これは実際に行われたことのある集団実験なんだけどね。九人の被験者に『次の二つの線分の長さを見比べて同じか違うかを答えよ』という問題が出された。ちなみに正解は同じ長さ。で、ここが最も重要なポイントなんだけど、集まった九人の被験者のうち、ある一人を除いて残り八人はみんなサクラだったんだ」

「サクラというとあれか。露店とかで、買い物客の気を引くためにわざとらしい大声を張り上げたりしている売り仲間」

「そうそう。この場合は、予め研究者から回答する内容を指示されていたんだけどね」

「ははあ、なるほど。残りの八人にわざと間違った回答を言わせたんだな」

「うん、まあそういうこと。実際はもっとたくさんの条件で試行を繰り返して結果を出しているけどね。

 さて、気になる被験者の誤答率だけど、これがとても興味深いんだ。

 まず、八人全員が間違った回答をした場合、誤答率は36.8%。一度も同調しなかった、つまり周りに流されず自分の回答を貫いた人は25%しかいなかった。逆に一人でも自分と同じ意見の人がいると、誤答率は1/4に減少。このことから味方の支援は心理的にも有効だということが分かったんだ」

「ほーう。集団の影響もバカにはできんってことか」

「ま、ほかにアイヒマン実験とかキティ・ジェノヴィーズ事件とかも挙げていくとキリがないけど、少なくともこの大会で優勝するには心理的駆け引きも重要になるってことだけは断言できる」

「マジかよ、面倒だな……」

 げんなりした表情で、柴田はため息をつく。対照的に僕は燃えていた。

 考えによっちゃあ、この大会はあの一件以来落ち込んでいた気分を払拭するための気晴らしにならないこともない。なにより、決意したんだ。

 ――次に会ったときは敵同士。それまでに腕を磨いて今度こそ君たちを捕まえてみせる、と。

 ならば、この大会をそのための踏み台として利用すればいい。自分をもっと上へと押し上げるための第一歩。推理力と閃き、着眼点・発想の転換、脳の柔軟性――それらをさらに鍛えられると思えば悪くはない。

 そうとも。僕は僕のために優勝を目指す!

「柴田、絶対に優勝しよう! 僕は僕のために、柴田は佐倉さんをデートに誘うために」

「それは忘れてくれと言っただろ!」

 僕と柴田はお互いの拳を打ち合わせた。


 午前九時五十分。東1~3ホールを繋げて作り出した巨大な空間に、大量の人がひしめいている。もちろん全員クイズ大会の参加者だ。それぞれのホールの出入口付近には、この日のために用意された電光掲示板が設置され、大会の諸注意、避難経路、お手洗いの位置などが映し出されている。「第0問、制限時間:0分、脱落者:0名、残り人数:5,349名」という項目があるところを見ると、実況掲示板のような役目も兼ね備えているようだ。

「参加者5,000人オーバーか……。これは厳しい戦いになりそうだな」

 武者震いだろうか。柴田の声は緊張の色を帯びている。

「やれるだけやるしかないだろう。持参したパズル本で類似した問題を調べられないように持ち物は一時的に没収されたし、解答用紙もシャーペンもすべて主催者側が用意したもの。これならみんな公平だ。いや、むしろこの状態でこそ問題に集中しやすくなったと言える。この状況で頼りになるのは自分の頭と、周りの情報だけだからね」

「出題される問題の分野、というかパターンも絡んでくるな。初っ端に論理問題が出されたら俺は終わりだ。まあ、それは参道が解いてくれると信じているが、こればっかりは運だからな……」

「そんな弱気じゃ駄目だよ。優勝しようと思ったら、“全問解く!”くらいの気合いで臨まないと。普段の威風堂々と構えた柴田陽炎はどこへ行ったんだい?」

「参道、言ってくれるな。だが、お前が正しいことくらいは分かる。お互い全力を出し合っていこうぜ」

「うん。――お、そろそろ始まるかな」

 マイクを持った司会者が簡単な挨拶と確認事項を述べたあと、

「――皆様のご健闘をお祈りします。それでは早速第一問に参りましょう! こちら!」

 電光掲示板に問題が映し出され、例の実況項目が「第1問、制限時間:3分、脱落者:0名、残り人数:0名」に変わった。


 第1問:マルカスタ寺院の大時計は、時を告げる鐘の音がたいへん悠長に鳴る。十二時を知るためには、かなり長いこと鐘の数を数えていかなければならない。鐘の音の間隔を五秒として、十二数えるのに何秒かかるか。また、六時だと知るためには何秒かかるか。(制限時間:3分)






「これは普通に計算の問題でいいのか? 一つ目の鐘が鳴ってから、十二番目の鐘が鳴るまでの間隔は十一個あるから、最初の答えは5×11=55(秒)。六時を知るためには、鐘が六回鳴ればいいから5×5=25(秒)……と。どうだ、参道?」

「……まさか一問目から引っかかるとは思ってなかったよ」

「ってことは――」

「うん、残念ながら違うよ。55秒のほうは合ってる。鐘の音は十二よりも多く鳴ることはないからね。けど、六時を知るためには、“五秒後に七つ目の鐘が鳴らないことを確認してからでないと分からない”。だから正解は、25+5=30(秒)さ」

 第1問終了。脱落者:317人。残り5,032人。




 第2問:ある細菌は、一分経つと二個に分裂し、さらに一分経つと、そのそれぞれが分裂し四個になる。こうして一個の細菌が瓶にいっぱいになるのに一時間かかるとする。では、同じ細菌を、最初二個の状態から始めると、瓶にいっぱいになるまでに何分かかるか。(制限時間:1分)






「これは俺も知っているぞ。典型的な引っかけ問題だな」

「うん。2=1×2という考えに囚われていると、60/2=30(分)と間違えてしまう人が多い。この場合、二個から始めるということは最初の一分間が節約されるだけだから、正解は――」

「「59分!」」

 第2問終了。脱落者:267人。残り4,765人。


 というような感じで問題は続いていき――


 第8問:自動式エレベーター付きの十階建てマンションがある。この十階のフロアに住んでいるAさんは、一人で外出するとき、下りは必ずエレベーターを利用するが、上りはほとんど利用しない。いつも決まって一階のエレベーター付近で辺りを見回し、誰もいないことを確かめると一人で階段をのぼっていくのだ。一体、Aさんの奇行の意味は何なのであろうか。(制限時間:5分)






「……参道の得意そうな問題がきたぞ」

「なにその考えることを放棄したような顔は。もう一回問題文をよく読んでみなよ。ちゃんと手掛かりは示されているから」

「と言われてもな……。このAさんが何をしたいのか俺にはまったく見えてこない」

「うん、確かに文章を読んだだけだと奇行に映るけど、Aさんは“そうせざるを得なかった”と考えたら何か見えてこない?」

「もしかして身体障害者だったとか? 例えば足が不自由で車椅子に座っていたとしたら……ってないな。階段のぼってるんだから」

「良い線いってるよ! あともう少しだ。じゃあ、最後のヒントを出そうか。上りのエレベーターを利用しないのは、“十階のボタンを押すことができなかったから”と考えれば?」

「――そうか! Aさんは子供だったんだ!」

「ビンゴ! Aさんは子供、つまり背が低いから一階のボタンには手が届くけど、十階のボタンには届かなかった。辺りを見回すのは、ボタンを押してくれる大人がいないか捜していたのさ。QED(証明終わり)」

 第8問終了。脱落者:490人。残り2,847人。



 

 第13問:どんなときにも必ず嘘をつく「嘘つき村」の住人がいる。その人物が、ほかの二人の容疑者と共に警察に挙げられた。しかし警察は、三人の内、だれが「嘘つき村」の住人なのかを見分けることができずに困っていた。諸君には、次の証言をもとに見事目的の人物を見破ってほしい。

 A「…………」(取調官はうっかりして、供述を聞き漏らした)

 B「Aはいま『私は嘘つき村の住人です』と自白しました。私はもちろん、住人ではありません」

 C「いや、Aは『私は嘘つき村の住人ではありません』と否定しました。私ももちろん、住人ではありません」(制限時間:5分)






「ふむ。これまた典型的な『正直/嘘』の問題だね。アレンジもいくつか見かけるけど、どれも表を作ると分かりやすいよ」

「表を書くまでもない。これはAの証言から推理していけばいいタイプだな?」

「まあね。聞き漏らした証言が鍵になるというのは正解だ。そこまで分かっているんなら、この問題は柴田に譲るよ」

「任せとけ。手順としてはまず、Aが嘘つき村の住人だと仮定する。すると当然嘘をつくから、『自分は嘘つき村の住人ではない』と否定するはず。また、Aが本当に住人でないのなら、正直に『自分は嘘つき村の住人ではない』と言うはずだ。つまり、どちらにせよ、Aは否定的な証言をしたことになる。と、するとCの言っていることは正しいわけだから、残るBが嘘をついていることになる。したがって、目的の人物はBだ」

 第13問終了。脱落者:198人。残り2,088人。




 第20問:上皿天秤がある。両方の皿に同じ重さの物をのせると釣り合う天秤で、重さの目盛りはない。いま、140gの塩と、7gの重り、2gの重りが一つずつある。上皿天秤を三回使って、この塩を90gと50gに取り分けるにはどうすればいいか。(制限時間:8分)






「『上皿天秤』問題のアレンジか……。でも一般的なものとは少し違うな」

「一般的というとアレだね。『27個の重りのうち、一つだけ軽いものが混ざっています。上皿天秤を三回使って、それを見つけなさい』というやつ。でもこれは……相当難易度が高そうだ」

「直感的に、重りを使うタイミングが重要だと俺は思うが、参道はどうだ?」

「うーん、使うとしたらおそらく二回目以降だろうね。最初の一手は塩を70gずつに分ける――これが正解だと思う。この70という数字は、ちょうど50と90の中間の値だ。残り二回で、あと20g調整できればいいんだと思う」

「うむ、それが正しい道筋だろうな。あとは調整できる数字を列挙していけば組み合わせでなんとかなるだろう。

 まず、70gの塩をさらに二つに分けた35という数字。それと、70gから重り分の2gと7g、両方合わせた9gをそれぞれ引いた、68、63、61。プラスのほうは考えなくていいだろう。どうやっても釣り合わないからな」

「その数字だと、20に一番近いのは35だ。じゃあ、二手目は、70gの塩をさらに35gずつに分けるとしよう。あと15gをどうすればいいかを考えれば済むはずだから……」

「さっきと同じ考えでいくなら、今度はプラスも考慮して、まず35±7=42、28。35±2=37、33。35±9=44、26だ。なんか違うな……」

「いや、まだ可能性を見落としているよ。そしてこれが正解だ。

 一方の皿に7gの重り、もう一方に2gの重りをのせる。さらに35gの塩を両方の皿に適当に振り分けて釣り合わせる。こうして釣り合った天秤は、両方の皿に(35+7+2)/2=22gずつのっていることになり、塩は22-7=15gと22-2=20gに取り分けられている。

 あとは二手目で分けた35gの塩と、この15gを合わせれば50g。残りの塩を全部集めれば90gというわけさ」

 第20問終了。脱落者:592人。残り683人。


「――これにて前半戦を終了いたします。まだ脱落していない方々は、各自昼食をとり、午後一時までにもとの席にお戻りください。なお、この昼休憩の間はお預かりしている荷物をお返しいたしますので、各ホールの係員にまで申し出ください」

 ホール内に一時休戦を告げるアナウンスが響き渡り、ざわざわと周りが騒がしくなる。と言っても、人口密度は最初の1/8くらいだ。こうして見ると、東ホールがやけに大きく感じられる。

「ふぅ~、なんとか午前は乗り切ったな。だが、午後からは問題もより高度なものになるだろう。残っている者たちも、かなりの実力者ばかりだ。本当の戦いはこれから、だな」

「ああ。柴田が言った暗号解読もまだ出題されていないし、『上皿天秤』のように使い古されたパズルでも、かなり捻りの効いた問題にアレンジされている。こりゃ、一瞬たりとも気が抜けないな」

 だがそのぶん、自分の実力を思う存分発揮できるというものだろう。

 ――そう、午後からが本番だ。


<参考文献>

・「頭の体操 第一集」多湖輝著(光文社知恵の森文庫)

・「頭の体操 第二集」多湖輝著(光文社知恵の森文庫)

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