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自分らしさ

 今回真奈美がやたら乙女チックになってしまいましたがあまりお気になさらず。「アラカルト」初登場となる胡桃と鳴海にも注目ですよ!(笑)

「あ~あ、嫌になっちゃうな~……」

 自転車に飛び乗り隣町に向かってゆっくりとこぎ出す。空気は冷たく、北風が容赦なくマフラーの隙間から入ってくる。普段から自転車通学で慣れている身とはいえ、これは相当つらい。しかも隣町との境界には幅約三百メートルほどの一級河川が流れていて、この時期は体が攫われてしまうほどの強い風が橋の上を吹き抜ける。目的地である大手予備校への道中でも最大の難所であり、その区間はまっすぐ前へ進むことさえままならない(なによりせっかく時間をかけて整えた髪が乱れちゃうしね)

 そんなわけで私の気分は重い。まあ、こうなっちゃった原因は私自身にあるから文句は言えないんだけど、せめて隣町に出かけるときくらい電車を利用するのを許可してくれたっていいと思わない? 年頃の女の子は色々とデリケートなんだから。

 しかしそうした一般論が私のおじいちゃんに通用するはずもなく、

「ほっほっほ。真奈美はそんじょそこらの男どもなんかよりよほど屈強じゃよ。なんたってこのワシが鍛え上げたんじゃからのう。暴風の一つや二つ笑って受け止められるようになれ!」

 と無茶苦茶なことを言う始末だ。デリカシーのないおじいちゃんは、このセリフがいかに乙女のハートを傷つけたか知る由もないだろう(男の子より強いって言われるのがどれほど悲しいか理解できる?) 

 躊躇いもなく教卓をぶん投げたり先輩をアッパーでぶっ飛ばしておきながら何を今更って思うかもしれないけど、わ、私だって別に好きで腕力つけたかったわけじゃないんだからね! 事あるごとに私を道場に引っ張っていくおじいちゃんが悪いのよ!

 ……そんな愚痴言っても仕方がないことはわかってるけど、容姿も内面も女の子らしい穂花や希ちゃんがちょっぴり羨ましくなるときがあるのも事実だ。

 もし私がロリコンじゃなかったらどうなっていただろう。もしこんな妙な趣味を持っていなかったら、希ちゃんとはパートナーではなくただの友達という関係で留まっていたかもしれない。柴田君たちとも関わることはなかっただろうし、廣野先輩と雌雄を決することもなかっただろう。

 そしてそれは、きっとすごく穏やかな日常なんだと思う。憧れの歌手やアイドルグループの話で盛り上がったり、校内の誰かと誰かが付き合っているという噂で色めき立つクラスの女子を見ていると、自分の存在が浮いていることをはっきりと自覚させられる。もちろん、その輪の中に混ざりたいという気持ちがないわけじゃない。校内で目立つとなにかと面倒だし、時折暴走してしまう自分を抑えるという意味でもやはり一定の距離の中に入っておくべきなのだろう。

 でもそう考えるたびに、本当にそれでいいのだろうか、という相反した疑問がちらつく。

 自分らしさを大切にすることと、個性を抑えて無難に過ごすこと──きっとどちらも大事なのだろうけど……私はまだ両者を的確に使い分けられるほど器用じゃない。

「……って、なんでこんなこと考えているんだろう私。そんなキャラじゃないのに……」

 思わず漏れたため息が、目の前の空気を一瞬白く染める。

 つい口に出してしまった疑問。それはおそらく、希ちゃんと先週交わしたあのやり取りが原因なのだろう。

 ──そういえばさ。真奈美ちゃんの初恋の相手ってどんな人?

 ──あはは。真奈美ちゃん、顔真っ赤だよ~。

 ──詳しくは訊かないけど、あたしも真奈美ちゃんの恋が叶うように応援してあげるね!

 あの時は思わず必死に否定してしまったけど、その日の晩は胸がドキドキして全然寝られなかった。脳裏にはっきりと浮かんだ翼お兄ちゃんの顔。逞しい精悍な顔立ち。昔と変わらない太陽のような眩しい笑顔。けど、その優しい微笑みは以前の私にはなかったまったく新しい感情をもたらした。

 初恋。

 初めて感じた胸の高鳴り。はっきりと意識した奇妙な気持ち。戸惑いとも違う、期待とも違う──もっと甘酸っぱい感情。目の前にいるわけでもないのに、翼お兄ちゃんのことを考えただけで胸の中で膨らむ何かに押しつぶされてしまいそうになる。

 でもこれはきっと一方的な片思いだと思う。翼お兄ちゃんはたくさんの女の子から告白されているそうだし、もう誰かと付き合っていてもおかしくない。というか、そっちの可能性の方が高い。

 だけどもし……もし私にもチャンスがあるなら……

「もうちょっと女の子らしくしないと駄目だよね……」

 妙な趣味を隠して良い子ぶれるほど私は大人じゃない。だから翼お兄ちゃんと本気で、その……付き合う関係になりたかったら自分の一部分を切り捨てる勇気も必要なのかもしれない。――それは口で言うほど簡単なことじゃないのだろうけど。

 視界に一瞬入った白い雪に気づいてふと顔を上げると、目的地の予備校はもう目と鼻の先だった。


 さて、冬期講習での恥ずかしい出来事も書かなきゃいけないんだろうなぁ(あぁ、正直気が進まない……)。ということで、ここから先は乙女モードから通常運転に戻った私、佐倉真奈美がお伝えしていきます。

 ……っとその前に。この予備校の冬期講習のシステムについて話しておくわね。

 まず教科は数学・英語・物理・化学・古文&漢文・現代文に分かれていて、それぞれ科目別に基礎・標準・発展の三つのコースから好きなコースを選択できる。私の場合、理系科目は割と得意だから発展コースを、逆に文系科目は基礎コースを選んだ。

 発展コースは難関国立大学の入試問題やら有名私立の捻りのきいた問題をばんばん解かされ、午前中だけで脳が飽和状態寸前まで追い込まれた(そのあとお昼ご飯をちゃんと食べたかどうかの記憶すら怪しい)。

 問題の出来事が起きたのは午後の古文の授業中。基礎コースを選んだだけあって、周りの人たちの顔ぶれは午前とだいぶ違っていた。理系発展コースは男子が多かったけど、この文系基礎コースは圧倒的に女子の比率が高い。

 中でも私の隣に座っていた女の子は一際印象に残っている。きらきらとした天真爛漫な笑顔と頭頂部からピンと飛び跳ねたアホ毛がとっても可愛らしくて、希ちゃんとは別の路線で私のストライクゾーンだった。

 その子はペン回しが癖なのか、授業が始まってからは黒板から視線をそらさないまま凄い勢いでシャーペンをくるくるくるくる弄んでいた。

 ノーマル、ソニック、ガンマン、バックアラウンド、インフィニティ、果てはエアリアルやコブラまでいとも簡単にやってのけるほどの熟練者だ。

 ペン回しをやっている人の近くに座ったことがある方なら分かってもらえると思うけど、彼らの手先や指の動きをついじーっと観察してしまうのは仕方のないことよね(あれ、もしかして私だけだったりする?)。今回もそのせいで授業に集中していなかったのがマズかった。

 くるくる回るシャーペンを凝視していたら、

「はい。ではそこのロングヘアーのあなた。カ行変格活用を正確に言ってみてください」

 と、急に指名されたのだ。思わず「はい!」と勢いよく立ち上がったものの、頭は完全に真っ白ですぐには答えが浮かんでこなかった。

 えっと、えっと、カギョウヘンカクカツヨウってなんだったっけ!? ああ! そんなに睨まないでください、先生! すぐに思い出しますから! 

 と、とにかく落ち着いて考えるのよ。まずは冷静に漢字変換。ええと、カ行変格活用で合ってると思うから……

「く、くる、くる、くる、くれ、こよ?」

 朧気に浮かんできた活用語尾を答えた途端、教室中が爆笑の渦に包まれた。あちこちから響く笑い声に思考回路が完全にショートする。

 え? あれ? 違ったっけ?

 疑問符をたくさん浮かべてフリーズしている私を先生が憐れむような目で見る。

「ちゃんと授業を聞いていましたか? 正しくは、こ、き、く、くる、くれ、こ、ですよ」

 そ、そうだった……。ペン回しの擬態語とついごっちゃになってしまってた……。

「す、すみません! 今後は気をつけます!」

 先生に謝ってから急いで着席した。あまりの恥ずかしさに自分でもはっきりと顔が火照っているのが分かる。それからしばらくして周囲の笑い声は収まったものの、このトラウマは当分の間尾を引くことになるんだろうなぁ……。

 あ~ぁ……。


 冬期講習初日が終わり、沈んだ気持ちのまま筆記用具やノートを鞄の中に詰め込んでいると例の女の子が声をかけてきた。

「あはは。やっぱり噂通り面白い人だね、佐倉真奈美さん」

「え?」

 見ず知らずの子に突然本名で呼ばれ、私は驚きを隠せなかった。

「えっと……どこかで一度会ったかしら……?」

「ううん。これが初対面だよ。あ、まだ自己紹介してなかったね。あたしは紺青胡桃こんじょうくるみ。八王子市内の学校に通っている高校一年生だよ。真奈美さんのことはあたし専用の情報網を通じていろいろ知ってるんだ」

「情報網?」

「うん!」

 胡桃ちゃんはポケットから小さな手帳を取り出すと、パラパラとページをめくりながら書かれている内容を音読し始めた。

「佐倉真奈美さん。時修舘高校一年五組の学級委員長。成績は上の中くらい。重度のロリコンであり、十一月上旬に転校してきた朧月希さんの動向をキャンパスノートに記録している」

 なっ!?

「また希さんとはパートナー同士の関係でもあり、二週間前には希さんを巡って廣野姫幸さんと三本勝負を行い見事勝利した。校外に関して言えば、児童公園のご神木で体を休めている黒猫相手にぶつぶつ独り言を呟いているところを目撃したという証言が多数寄せられている」

 ちょっ!

「恋愛方面について甘い話は聞かないが、実は従兄の佐倉翼さんのことを密かに想っているのではないかと予想されr……」

「きゃああああああああああああ!!!!!!!」

 私は慌てて胡桃ちゃんの口を両手で塞ぎ、それ以上の情報漏洩を阻止する。突然口を塞がれて目をぱちくりさせる胡桃ちゃんを半ば拉致るようにして人目につかない場所まで移動した。そして周りに人がいないことを何度も確認してから、ようやく彼女の口を解放する。

「っぷはー! もうなんなのさ一体! 急に人の口塞いで」

「そ・ん・な・こ・と・よ・り!」

 不満そうな声を一刀両断して、私は詰問に入る。

「さっきの情報どうやって手に入れたの!?」

禁則事項トップシークレットです♪」

 有無を言わさぬ迫力でせまったつもりだったんだけど、にこやかな笑顔であっさり流された。恐ろしい……恐ろしいわ、この子……。

「だけど安心してください。これでも記者を目指すものとしてプライバシー情報を漏らすような愚行は絶対にしませんので!――まあ、どうしても困ったときだけは切り札として使わせてもらうこともありますが」

 うふふふふ、と不気味に微笑む胡桃ちゃんを見て、私はこの子だけは絶対に敵に回さないようにしようと固く心に誓った。

「でも変ですねぇ。これはあたしが噂から勝手にイメージした人物像でしかないんですが、真奈美さんはもっとはっちゃけていて面白い人だと思ってました。ですが、授業中のアクシデントを除いたとしても今日はなにやら落ち込んでいるように見えます。もしあたしで良かったら微力ながら相談に乗りますよ?」

 うっ……。自分では感情が表に出るほうではないと思っていたけど、胡桃ちゃんには全部お見通しだったらしい。あるいはそうした他人の微妙な変化を読み取れるからこそ、私に話しかけてきたのかもしれない。

「もちろん心情的なことだと思いますので無理にとは言いません。あたしも人の心に踏み込んでまであれこれ詮索するのはタブーだと理解してますから。だけど人に聞いてもらうことで気持ちの整理がつくこともままありますから、その判断は真奈美さんにお任せします」

 気持ちの整理――その一言で私は胡桃ちゃんにすべてを話そうと決めた。

 私が翼お兄ちゃんのことをどう想っているのか。逆に翼お兄ちゃんが今の私を見たらどう思うだろうか。翼お兄ちゃんに好意を持ってもらうために、今の妙な趣味を捨てるべきなのか。そして――それが本当に正しいことなのか。

「私にはどうしても分からなくて……」

 悩みを打ち明けている間ずっと俯いていた私を励ますように、胡桃ちゃんは右手の人差し指を天井に向けて力強く断言した。

「それならあたしからのアドバイスはひとつだけ。真奈美さんは真奈美さんらしくしているのが一番の近道だよ」

「それって、私がその……小さい女の子に夢中でもいいってこと?」

「うん。だって、そのときの真奈美さんが一番活き活きとしていると思うからさ」

 それは……確かにその通りだけど、でもやっぱり……。

 また戸惑いが顔に出たのか、胡桃ちゃんは語気をさらに強めて言い切った。

「人はね。自分の好きなことをしているときが最高に輝いて見えるんだよ。その翼さんって人もきっと真奈美さんの心からの笑顔が見たいんじゃないかな。だから真奈美さんは今のまま自分らしさを大切にしていればいいと思うよ」

 胡桃ちゃんの助言がじんわりと心の中に浸透していく。その温かさに、さっきまでとは違う、安堵にも似た感情が一気に込み上がってきた。ちゃんとお礼を言おうとしたんだけど、涙としゃっくりのせいで上手く言葉にならず、

「ありがと……」

 そう言うのが精一杯だった。


 気持ちが落ち着いてから胡桃ちゃんと一緒に予備校の外へ出ると、辺りはもう真っ暗になっていた。大通りの向こうにそびえる駅ビルの陰から、もうだいぶ欠けてしまった月がひょっこり顔を出している。クリスマスシーズンの影響であちこちの街路樹や噴水に装飾された淡い光が、その下で肩を寄せ合うカップルたちを神秘的に照らしていた。

 幸せそうに話し合っている彼らから視線をそらし、私は胡桃ちゃんに向き直った。

「ごめんね胡桃ちゃん。こんな時間まで付き合わせちゃって」

「いいって。あたしたちもう友達なんだからさ。困ったときはお互い様ということで。学校が違うからたまにしか会えないと思うけど、また悩み事や相談事ができたらさっき交換したメールアドレスに送ってくれればいいから」

「うん……ありがとう」

 素直にお礼を言ったとき、胡桃ちゃんのお腹からきゅるるる……という音が聞こえてきた。

「あはは。今日はいっぱい勉強したからなんだかお腹空いちゃったよ~」

「あ、じゃあ良かったら一緒に晩ご飯食べに行かない? 私とっても美味しいオムライス屋さん知ってるんだ」

「うーん、一緒に食べに行きたいのはやまやまなんだけど、今日はお兄ちゃんが迎えにきてくれることになっているからまた今度誘ってよ」

「へえ。胡桃ちゃん、お兄さんがいるんだ。てっきり一人っ子かと思ってた」

「あはは、それはよく言われる。あたしってすごく自由奔放なところがあるからねー。でも、それがあたしらしさでもあるから今更良い子ぶろうなんて思わないよ」

「そっか。――うん、それが一番なのかもしれないね!」

「そうそう! それに、こんなあたしでもお兄ちゃんはずっと昔から好きでいてくれているし。正直ちょっと行き過ぎ感は否めないけど」

「行き過ぎ……?」

「えーっとね……」

 どう説明したらいいか、胡桃ちゃんはあれこれ悩んでいる様子だったが、その疑問は案外あっさり解決できた。なぜなら――

「胡桃ぃぃぃいいいいいい!!!!!」

 ライトグレーの背広を着た背の高い男の人が、奇声を発しながら胡桃ちゃんに向かって一直線に突進してきたかと思うと、あろうことか、そのまま胡桃ちゃんをぎゅううう!と力一杯抱きしめたからだ。その異様な光景に私の思考は真っ白になり、気づけば大声で叫んでいた。

「だ、だ、誰ですかあなたは!? 胡桃ちゃんにそんな、ハ、ハレンチなことをするなんて絶対に許せません! 警察を呼びますよ!」

「ま、待って真奈美さん! この人があたしのお兄ちゃんだよ!」

「さあ、今すぐ胡桃ちゃんから離れ……っ! へ? お兄さん? 胡桃ちゃんの?」

 あまりにイメージとかけ離れていて、その事実を認識するのに大幅なタイムラグが発生していた。困惑している私にようやく気づいたのか、お兄さんは胡桃ちゃんから離れると背広の襟を正して私に向き直った。

「ええと、胡桃のお友達かい?」

「うん。今日の冬期講習で知り合った佐倉真奈美さんだよ」

「ど、どうも……佐倉真奈美です。あの、さっきは胡桃ちゃんのお兄さんとは知らず大声を出してしまってすみませんでした……」

 と一応謝るも、あんな奇行を目の当たりにしてしまってはそう簡単に表情の硬さは拭いきれなかった。しかしお兄さんのほうは特に気にした様子はなく、飄飄とした態度を崩さず弁明した。

「いや、僕の方こそ失礼したね。我が家ではもう習慣付いているからつい」

 習慣デフォだと!? あまりにさらっと言うから流してしまいそうだけど、それって犯罪じゃないかしら……。

「おっと、自己紹介がまだだったね。僕は紺青鳴海こんじょうなるみ。警視庁捜査一課の刑事だよ」

 えええぇぇえええぇえええ!? 警視庁の刑事さん!?

 いろんな意味で凄まじい衝撃が私の全身を貫いた。未解決事件や捜査方法などについての興味がむくむくと頭をもたげる反面、そんな刑事さんがなぜ妹を抱きしめるなどというアブナイ行動をするのかという疑問が脳裏をかすめる。

「そんなに意外だったかな?」

「ええ、まあ……」

 感情が顔に出やすいことは胡桃ちゃんから教わったので、私は正直に答えた。

「あたしがたくさんの情報を仕入れることができるのも鳴海お兄ちゃんのおかげなんだよ」

 胡桃ちゃんが補足してくれるけど、それってつまり警察官が内部の情報を部外者に口外しているってことよね……。この家庭、いろんな意味で大丈夫なのかな……?

 世界の広さを見せつけられ、私は内心でそっと嘆息する。でもまあ、お互いとっても仲の良い兄妹みたいだし、その点は一人っ子である私には羨ましくてしょうがなかった。私も妹欲しいなーと考えてしまういつも通りの自分が可笑しくて、ちょっとだけ肩の力が抜けたような気がした。

「さてっと、もうすぐ七時か。そろそろ帰らないといけないな。佐倉さんはどうする? もし良かったら家まで送っていくよ」

「いえ、私は自転車で来ましたから。それに帰りに寄りたいところもあるので……すみません」

「そっか。じゃあ、気をつけてね。街中はまだ明るいけど路地は暗くて危険だから」

「真奈美さん。また明日ね~!」

「うん! ばいばい、胡桃ちゃん。それから今日は本当にありがとう!」

 胡桃ちゃんは腕をぶんぶん振って応えると、お兄さんの運転する車に乗り込んだ。

 二人の乗った車が大通りの角を曲がるまで見送ってから、私も自分の自転車に飛び乗った。そのまま商店街方面に向かって力強くペダルをこぎ出す。今朝と違って、心なしかペダルをこぐ足が軽くなったように感じた。


 約一ヶ月間が開いてしまいましたがお楽しみいただけたでしょうか?

 次はなるべく間を開けないで投稿したいところ。予告としては商店街で起きたちょっとした事件を真奈美が解決するお話になる予定。

 ではでは。

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