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病弱なふりをする妹と姉の「まぁ、いいか!!!」

作者: 田舎娘
掲載日:2026/05/11

病弱な妹を書いてみたくなりました。

 私には、妹がいます。父も母も同じ正真正銘、本当の妹です。ですが、いつの頃からでしょうか。妹がマウントをとってくるようになりました。


 最初は両親です。父や母にべったり甘えて、私との接触を邪魔するようになりました。あげく、私が父や母を嫌っていて、避けているとか、デマを吹き込んでいました。幸い、両親は信じることはありませんが、少しぎこちなくなりました。


 それでも、年上の私は、お茶会にご招待されることも多くなり、母と出席する機会が多くなったのです。もちろん、年齢的にお呼ばれされない妹はお留守番です。初めのうちは「私も連れてって」と訴えていましたが、さすがの母も、マナー違反になることはできません。


 妹は、無い頭を絞って考えたのでしょう。私が、父や母と出かける時に、具合が悪くなることにしたようです。

「お父様もお母様も社交は大事よね。私は、大丈夫。おとなしく帰りを待ってます。」

 どこで覚えてきたのか、しおらしく、うつむき加減で涙をポロリ。

「よっ、大女優。」

 思わず、心の内で叫んでしまいました。


 両親はポロリに騙されたようで、それ以来、私も両親もお茶会やパーティーにでることが少なくなっていき、年に数回になってしまいました。それでは、社交に響きます。ご招待いただいたのに欠席ばかりではいけません。私は、一人で出席することになったのです。その頃には、私にもご友人ができ、次の当主として大人たちへの顔つなぎもできておりました。なので、

「妹がまた具合が悪くなりまして、せっかくのご招待ですが、母は欠席させていただきます。母も、楽しみにしておりましたので、残念がっております。大変申し訳ございません。」


 妹が本当に具合が悪いかどうかではなく、『妹は病弱だ』と噂されるようになりました。さらに、『両親が、社交出来ないくらい病弱だ』となりました。噂はどんどん加速していき、終いには『瀕死の妹』とか。『結婚しても子供は望めない』とか。噂ってすごい。

 私は、妹の具合を聞かれたら、ただ微笑みを浮かべ、

「ご心配ありがとうございます。」

と、皆さんにお返事するだけです。


 妹も成長して、お茶会やパーティーに出席できる年になりました。ところが、どこからもご招待がありません。自宅でのお茶会も、妹の名で招待状をしたためると、皆様欠席のお返事です。

 その頃、私は、学院の学生寮の居りました。

「すぐに帰ってこい」

 との命を受けて家に帰れば

「どうして誰も私をお茶会に誘ってくれないの。どうして私のお茶会に来てくれないの。」

 妹が大泣きして、大変な様子です。両親と妹は、どうしてそうなっているかわからず、

「お前の友達にお願いして、妹さんをご紹介してもらえ。」


「お父様。問題は、妹が大層病弱だという噂です。病弱の妹をお誘いして、そのお宅で倒れたら大変だからです。こんなに大泣きしてもケロッとしているのですから、今度の夜会に連れて行って、噂を払拭したらどうですか。」

 私の提案に三人とも飛びつきました。妹と母は。ドレスを新調すると張り切っています。お情けで、私にもドレスをつくってくれるそうです。妹より質が劣るようですが。


 ところが、この夜会で、妹がやらかしました。

 妹は、友人もいない、知り合いや顔見知りも居ない、全てが初めてで舞い上がってしまったようです。

 ご挨拶の度、

「お体は、大丈夫ですか。」と声を掛けられ、誰もが自分に注目していると勘違いをしてしまいました。ダンスも、男性の方に誘われたように誘導して踊りっぱなしでした。こんな技術、私は使えません。本当にどこで覚えたんでしょう。

 自分が、いかに病弱かと語りながら男の方と嬉しそうに踊る妹は、好ましい姿ではありませんでした。両親は、嬉しそうにしてましたけど。親の欲目以上の欲目です。

 さらに、あまりに高揚した妹は、ダンスの途中で倒れてしまったのです。足がもつれたようです。体力も知力もない妹は、とっさに

「私は、病弱なので…。」

 両親は、

「初めての夜会で無理をしたようです。」

 と、妹を連れて退場してしまいました。残された私は後始末です。

「皆様、申し訳ございません。妹は、病弱を克服したはずですが、お騒がせ致しました。」


 このことで、妹は、社交もまともにできない程の病弱で、自分の体調管理もできない女性だと印象付けてしまいました。夜会でダンスをした方や、ちょっとお話しした方からの気遣いのお手紙はいただきました。けど、それだけです。お茶会やその他のお誘いはありません。


 反面、私の釣書は多くなりました。私が後継者だと印象付けた夜会でもあったようです。次男、三男からの婿入り希望です。

 ですが、両親は違いました。妹を後継にして婿様に期待するようです。

 私はしっかりしているから嫁に行ってもうまくやるだろうと変な信頼をされてしまいました。

 なら、私の縁談が先でしょう。言っても詮無いので言いませんけど。


 しかし、妹の婚約者選びはうまくいっていないようです。私にしてみれば当然です。だから、私は、まだ家を継ぐのは自分だと思っていたのです。


 ある日、学院内で、ある同学年の方から声を掛けられました。

「君の妹の婚約者にと言う話が来た。どういうことなのか聞かせてくれ。」

 私が驚いていると

「君は知らないのか。」

 彼は侯爵家の三男です。我が家は子爵家です。彼は激怒していました。

「いくら三男とは言え侯爵家に家を継げないような、ましてや、出産も耐えられない女性をめとれと言うのか。だから、君となら考えやると返事をした。」

 頭は真っ白です。彼に謝り、慌てて家に帰ります。


 家で待っていた話に、私の頭は、またまた真っ白になりました。

「お前はしっかり者だ。だが、妹は違う。だから、妹に家を継がせることにした。婿がしっかりしていれば大丈夫だと思ったのだ。」

 母まで、

「あなたは、学院で何をしたの。妹の釣書を送った方は、ほとんどが長女の婿なら、ってお返事が来たのよ。」


 いつから聞いていたのか、妹がドアをバーン。

「ひどいわ。お姉様、私がそんなに嫌いなのですか。お母様、私フラフラします。」

 こんな時でも病弱スタイルを貫く妹に脱帽です。

 父は頭を抱え、母は妹をヨシヨシして、妹は顔色良くフラフラしています。


 全くあきれてしまい、とうとう爆発しました。私が。

「あたりまえです。」

「「「エッ。」」」

 三人とも同じ顔です。

 とりあえず、お茶を入れてもらい一息ついてからです。


「お父様、お母様。妹が世間からなんと呼ばれているかご存じですか。」

「体が弱く守ってあげたくなる。」

「病弱なのに社交を頑張っている、けなげな女の子よ。」

「違います。この子は、病弱なのに人の迷惑も考えず、あちこちに顔をだして、病弱を自慢する子です。病弱なら、外出せず健康になることに努力しろです。」

 またもや、同じ顔の三人です。あきれてしまいます。


「お父様。妹を後継者になさるようですが、申請は通ったのですか。」

「それが、再考しろと返された。」

「どうして私じゃダメなの。同じ血を受け継いでいるんだから妹の私だっていいでしょ。」

 私はため息を一つ。お茶をゴクリ。心を落ち着かせます。


「お父様、お母様。この国の貴族家の継承の手続きはご存じですよね。」

 うんうんとうなずきます。一応、ご存じのようです。

 我が国の貴族、特に爵位持ちは直系の者に限ります。結婚して家を出た男性も外されます。女性でも継承権はありますが、嫁に行けば男性同様外されます。ただ申請しておけば跡継ぎに跡継ぎができるまでは継承権が認められます。次期当主の婚姻の際に国に許可されて初めて正式に後継者が決まります。

 それまでは、仮ですが届出をします。これは、当代が不慮の事故等で突然亡くなってしまった時の為です。届出は厳しくないのですが、国から拒否されることがあります。直系の後継者がいなくなったら爵位は返上になります。爵位の売買や乗っ取りの防止の為と、返上が行われないようにです。


「お父様、お母様。妹は子供が望めないと、噂では決定されています。」

「「「そんな…。うそだ(です)。」」」

「嘘か誠かは問題ではありません。本人も病弱だと言い広めています。妹の申請が通らないのは当然です。後継者を産めない後継者はうけいられません。お父様、お母様は、この子爵家を潰すおつもりですか。」

「イヤ、そんなつもりはない。」

「どうして、そんなうわさが・・・。」

「私は元気よ。病弱じゃないわ。」

「「エッ。」」

 どうやら、両親は本当に妹が病弱だと思っていたようです。

 呆れて、呆れて、天ではなく天井を仰ぎます。


 再度のため息と、お茶をゴクリ。

「自分で病弱だと広めたのは、あなた自身だわ。縁談だって次代では、国に返上するような家には誰も来てくれないわ。」

「じゃ、学院から入学を断られたのって…。」

 学院は貴族の為の学校です。その学院から入学拒否なんて、私の予想以上に妹の病弱化は進んでいたようです。

「じゃ、私は、どうすればいいのよー。何とかしてよ~。お姉様。」

 また、また、またもや同じ顔で私を見つめています。


 いい加減、またプチっときました。お茶を飲んでも収まりません。

「自業自得です。ここまで噂が進んでは、もう覆せないでしょう。私も、決めました。私は、嫁に行きます。この家と領地は、国へお返ししましょう。よろしいですね。」

 私は、惚けている三人に宣言して寮に戻りました。


 私は、最上級生です。これから何とか嫁ぎ先を見つけたいと思います。お相手が見つからなくても、一人で生きて行けるよう将来を考えます。自慢ではありませんが、学院の成績は優秀なんです。

 家からは、何の音沙汰もありません。まだ、三人で惚けているのでしょうか。我が家族ながら……。


 ある日、侯爵家三男の彼から声がかかります。

「よう、婚約が成立したぞ。よろしくな。」

「あの~。誰と誰のですか。」

「俺と君。アハハハ。知らなかったのか。ハハハ。でも、申請も通ってる。末永くよろしく~。」

 軽い。かるい。カルイですが……。家に一直線に帰ります。

 家に帰って啞然です。引っ越し準備中でした。


「おかえり~。私とお父様とお母様は、領地に引っ込むの~。」

「お帰りなさい。あとは、婚約者の彼とよろしく頼むわね。」

「お帰り。お前の卒業と同時に爵位はお前に渡す。よろしくな。」

 何を言っているのか理解に苦しんでいると、肩をたたかれました。婚約者の彼です。その彼に促されて応接間へ。お茶も用意されていて、執事がニタリと笑っています。


 彼が言うことには。

 私の嫁入り宣言で、やっと現状が把握できたようです。お父様は、代々続いてきた家を潰すことはできないと、妹の継承の申請を取り下げました。そして、私へと変更、イエ、元に戻したようです。

 ですが、嫁入り先を見つけられては大変と、慌てて、彼の侯爵家に相談に。長女なら婿入りOKの手紙を携え、『長女の婿ゲットだぜ』だそうです。


 その時、妹のことも告白。妹も非を認め、

「浅はかで愚かでした。」

 反省している様子だったようです。でも、ただでは起きない妹は、

「私の嫁ぎ先はこの国には無いと思います。ですので、留学したいと思っています。そこで、勉強と婚活に頑張ります。もう、子爵家には迷惑はかけません。」

 決意表明と共に『だから、費用を出して。』とのたまったとか。

 彼もその場にいたらしく、

「面白い妹だね。あれなら他国でも大丈夫だろう。」


 その後、私たちは卒業と同時に結婚。私は、子爵家の当主となりました。両親は領地で管理をしながらスローライフを楽しんでいます。

「こんなに心穏やかに余生を送れるのは長女夫婦のおかげだ。」


 妹は、隣国の隣国へ留学しました。隣国の隣国だったら、噂も届かないだろうと隣国の隣国に決めたそうです。

 手紙には、友人もでき、勉強も楽しいと書いてありました。


 私は、妹の病弱を利用してちょっと仕返しをしたかったのです。途中まで上手くいっていて、ニンマリしていました。それなのに、あれよあれよと流されて、今、我が子を抱いています。思うことはありますが、みんな幸せのようで、

『まあ、いいか!!!』

 と、思っております。

 隣で、夫が大笑いをしています。

 両親も妹も、笑っているんでしょうね。





読んで頂いてありがとうございます。

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