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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

"明星"

───相棒は、幾つか誤解をして居る



頭から血を流して朦朧として居る少年を組み敷いて、肩の肉を噛み千切りながら、僕はそれについて考えて居た


裏路地の暗がりは有用だ

特に、誰も来ない事が一番の理由だ



僕の躰の下で、少年が弱々しく抵抗して居る


泣きながら、彼は僕を叩く

実際には、失血によって殆ど打撃には力が入って居ない

僕の悦びに満ちた興奮を引き立たせるだけだ


三十回ほど肉を噛み裂いた時だろうか

少年は全身の筋と脂肪の半数近くを喪失しており、それに伴ってか完全に抵抗を止めた


いつしか、躰温も氷のようだった



片手で少年の頭を掴み、持ち上げる


「こいつ、もう骨ばっかで気持ち悪いな」


事実として、ほとんど骨しか無くなった躰が僅かに残った筋で繋がっている様は気持ちが悪い

マンホールの蓋を踏み壊すと、僕はそこに少年の残骸を捨てた


下水の中は、暗くてなんだかよく解らなかった



─────



モーテルの一室に戻ると、相棒は自分の二の腕に不衛生な刃物でタトゥーを彫っていた


殺した人間の数を刻んで居るのだという

『それこそが凡庸だ』とも思ったが、伝えては居ない


前述した通り、彼は幾つも錯誤をして居る

まず大前提として、実際に彼が殺害に成功した人間は現段階ではゼロだ

他には………



「人質のお戻りか」


相棒は僕がベッドに腰掛けるや否や、音を立てて僕の頬に口付けた


臭い

きっと酒でも飲んでいるのだろう

頬に口付けるのは、彼が本質的には奥手だからだ


彼は、僕が非力な人質だと思い続けて居る

こうした自由行動のあとにも必ず僕が彼の元に戻るのは恐怖か、さもなくば恋慕が原因だとでも思って居るらしかった


それでも良い

僕は、他人の責任の元で行う殺人が好きだった


仮にいま僕達が逮捕されたとして、僕の何処に加害性がある様に視えるだろう


僕達は気ままな犯罪旅行の旅を無軌道に続けて居たが、相棒が「こんな日々がいつまでも続けば良いのに」と口にする時、僕は内心では心からそれに同意して居た

彼はたまにそれに気付く事も有ったが、自分が僕から好かれて居るという哀れな妄想を補強するばかりで、真実に辿り着く気配は一向に無かった



「なあ……」


相棒が、僕をベッドに突き飛ばす


何処までも凡庸な男だ

僕の肩に爪を食い込ませて、乱暴に握り締めながら相棒が湿った息を吐く顔を僕に近付けた



「俺さあッ……」


彼は自分の気持ちを、『語らないと解らない』とでも思って居るのだろうか

実際には凡人の言動など、行動さえ伴わなくても誰もが事前に解るというのに


もう少し『こんな日々が続けば良かった』が、潮時かも知れない


我慢の限界だった




頭突きを一撃、二撃───何回か鼻に叩き付ける


他人の鼻の軟骨を壊した事は何度か有ったが、その音が聞こえたのは今日が初めてだった


気が付けば、相棒は僕に馬乗りになろうとする事は諦め、ばかりか戸惑いながら鼻を抑え、怯えた様にベッドからよろよろと離れた


考えてみれば簡単な事だった

彼は『獲物』から抵抗された事が無い


本格的な恐慌に陥っている様だった




その後、彼の眼に突き刺した木片を何度も殴って居る最中、部屋の扉を叩く者が在った

宿の店主の様だった



窓を蹴破ると外に飛び出す


久しぶりに翼を広げると、これだけの殺人を行ったにも関わらず、僕の六枚の翼は穢れを知らぬ白さで夜空に羽ばたいた



「人間を試す仕事は楽しいな」


「絶対に最後は、堕落と死で終わるから」


明日は何を食べよう

なんだか、もうお腹がすき始めて居た

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