舞踏会は武闘会
なかなか結婚しようとしない、夢見がちな王子様をその気にさせるため舞踏会が開かれた。
シンデレラとなる女性は決まっている。隣国の王女が素性を隠し、出席したこの舞踏会で運命的に出会うといった筋書きだ。
――だが、そのシナリオを良しとしない者が存在している。
そんな不届き者を排除するため、アサシンである私はドレスを身に纏い参加者に紛って王子を見守っていた。
舞踏会で踊るのは王子と王女だけではない。怪しまれないため、歳の近い貴族の令嬢・令息も大勢参加している。その中で煙管を咥えている男がいたので、私は素早く彼に近づいた。
「もし、私と踊ってくださらない……」
口ぶりは淑やかに、しかし強引に煙管を奪えば男は目に見えて取り乱す。
じっくり見直す必要もない、煙管は吹き矢を偽装したものだった。音も出さずにそれをへし折ると、私は男の手を取る。
「死にたくなけりゃ、私に合わせな」
そっと耳打ちすれば男は震えながら、それでも私の手を取りエスコートする素振りを見せる。これで、ダンスパートナーは調達できた。
引き続き、王子を見守っていればちょうど王女と顔を合わせたところだった。ひとまず王女の美しさがお気に召したらしい彼は、そのままダンスを申し込む。音楽が始まり王子は王女と、私は吹き矢男と共に踊り始めた。
早速、王女の背後に近づくヘアスティック――女性の細腕でも首元を狙えば、一撃で命を奪えるだろうそれを持った女の足を踏みつけた。咄嗟に反撃しようとした彼女に、携帯用の香水を吹きかける。混ぜた薬のせいで一気にふらついた彼女を、「この方、酔ってしまわれてみたいですわ」と待機していたアサシン仲間に押し付ける。
だが、その様子を見ていたらしい他の侵入者は私に狙いを定めたようだ。舞踏会の華やかな空気にそぐわない、殺気を感じて私はすかさず鉄扇を取り出す。
袖に暗器を仕込んでくるものが近づけば、親骨で思い切りその手を叩きつける。毒針を突き刺そうとする者がいたならば、共に踊る男を盾にして針を奪い取った。
そうして、ひとしきり踊りを終えた頃になると王子と王女はうっとりお互いを見つめ合っていた。……どうやら王家の目論見通りに事は進んだようだ、私の任務も無事終了となる。
こうして舞踏会の裏で行われた、我々アサシンの武闘会は終わり――何も知らない王子は王女と結ばれ、幸せに暮らしたのだった。
12/21 [日間]アクション〔文芸〕 - すべて / [日間]アクション〔文芸〕 - 短編 / [週間]アクション〔文芸〕 - 短編 1位ありがとうございます。
1/7 [月間]アクション〔文芸〕 - 短編 1位ありがとうございます。




