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古代文字(ルーン)を詠う者  作者: 綾瀬蒼


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9.裏社会のSOSとヴァルナへの緊急帰還

1. 予想外の警告

ライエル、セレフィア、ゼノンの三人が山を下り始め、村まであと半日の道のりという時だった。

ライエルが以前、リディとの契約の際にこっそり刻んでおいた「連絡のルーン」が、急に激しく光り始めた。このルーンは、緊急時にのみ、特定の魔力信号を発するよう設定されている。

「これは…リディからの信号だ!」ライエルは立ち止まり、ルーンの情報を解析した。

その内容は、簡潔で切迫していた。

> 「ギルドが襲撃された。聖刻会。裏切り者あり。鍵の場所が漏洩。助けて。場所は…『沈黙の倉庫』」

ゼノンが顔色を変えた。「リディが!くそっ、裏社会の情報ギルドといえど、聖刻会には敵わなかったか」

セレフィアが冷静に状況を整理する。「待って、ライエル君。この信号は、彼女が命の危機に瀕していることを示しているわ。でも、私たちの目的は村と要人の救出よ。時間を無駄にできない」

ライエルは、二つの使命の間で葛藤した。村と要人の危機は王国全体の危機に関わる。しかし、リディは彼らに情報を与え、協力してくれた唯一の裏社会の人間だ。そして、彼女のメッセージにある「鍵の場所が漏洩」という情報が、ライエルの注意を引いた。

「王国の要人が狙われているのは事実だ。だが、リディのメッセージにある『鍵』は、聖刻会が次に狙う『天穹の瞳』の起動に必要なマスターキーのことだろう。もしその鍵が聖刻会の手に渡れば、村を救っても意味がなくなる」

ライエルは決断した。「優先順位が変わった。リディの救出と、『鍵』の情報回収が最優先だ。僕らがここでリディを見捨てれば、聖刻会は彼女から全ての情報を引き出し、僕らの次の行動まで予測するだろう。ヴァルナへ引き返すぞ!」


2. 複合ルーンによる高速帰還

三人はすぐさま引き返し、ヴァルナへ向かう。徒歩では間に合わない。ライエルは、サガとの修行で得た複合ルーンを使うことを決意した。

「ゼノン、セレフィア。僕に魔力を集中させてくれ。『加速のルーン』と『短縮のルーン』を組み合わせる。一時的に、物理法則を捻じ曲げて、距離を短縮する!」

ライエルは全身に魔力を集中させ、複雑な詠唱を始めた。ゼノンとセレフィアは、不安を抱えつつも、ライエルの複合ルーンに自身の魔力を注ぎ込む。

「Celeritas e'l Tempor. Via e'l Brevis.」

(速度よ、時間となれ。道よ、短縮せよ)

複合ルーンが起動し、三人の周囲の風景が歪む。彼らが一歩踏み出すごとに、通常の十倍以上の距離を稼ぎ、一瞬で辺境の山道からヴァルナの郊外へと到達した。

しかし、この複合ルーンはライエルの魔力と体力に大きな負担をかけ、ヴァルナの門に辿り着いた時には、ライエルは倒れ込む寸前だった。

「急げ…!『沈黙の倉庫』は、ギルドの最深部にある、最も重要な情報保管場所だ!」


3. 沈黙の倉庫の罠

三人は警戒しながら『影の舌』ギルドの地下深くへと潜入した。酒場の入り口は既に人気がなく、事態の深刻さがうかがえる。

ギルドの地下通路は血生臭く、多くのギルド構成員が倒れていた。聖刻会の追跡隊ではなく、聖刻騎士団の本隊が襲撃したことを示している。

「沈黙の倉庫」の前に辿り着くと、扉は既に強力な魔導で封鎖されていた。

「聖刻会の紋章だ!ゲイル教官とは違う、上層部の魔導師がここにいる!」セレフィアが警告する。

ライエルは、扉に刻まれた封印の魔導を解析した。単純な封印ではない。これは、「裏切り者を見つけるためのルーン」が仕込まれていた。

(やはり、ギルド内に裏切り者がいる。このルーンは、内部から鍵を開ける者に、強烈な魔力のカウンターを食らわせる仕掛けだ!)

ライエルは扉に手を当て、複合ルーンを凌駕する、始原に近い古代文字を詠唱する。

「Niar e'l Verum. Fides e'l Arcana.」

(秘密よ、真実となれ。信仰は秘密の中に)

ライエルの詠唱により、扉の封印は、その仕掛けを起動させることなく静かに解除された。


4. リディの真実

倉庫の内部は、異様な緊張感に包まれていた。部屋の中央で、リディは手足を拘束され、聖刻騎士団の数名と、黒ローブを纏った一人の女性魔導師に囲まれていた。

「おや、噂をすれば。古代文字を詠う者、わざわざ死に場所を選びに来たか」女性魔導師が冷笑する。

「リディを解放しろ!」ゼノンが剣を構える。

「馬鹿め。この女を助けに来た時点で、お前たちの敗北は確定だ」女性魔導師は、床に刻まれた複雑なルーンを見下ろした。「この倉庫全体に、『拘束と増幅の複合ルーン』が刻まれている。お前たちの魔力は、このルーンによって全て吸い尽くされる!」

ライエルは床のルーンを見て、驚愕した。それは、サガから学んだ複合ルーンよりも遥かに洗練された、聖刻会が独自に発展させたルーンだった。このルーンの力の前では、ライエルの魔力は瞬時に枯渇する。

「ライエル君…」リディが苦しげに顔を上げた。その顔には、裏切りのルーンが刻まれていた。

「ライエル。私の裏切りじゃない。私は…聖刻会に嵌められたの。私が提供した全ての情報、そしてこのギルドは、奴らが君たちを誘い出すための罠だった!」

リディは、自分が囮にされたことを悟り、そして最後に、自らの命を賭けたメッセージを送っていたのだ。

「鍵は、既に奴らの手に渡った。そして、奴らの次の目的は…『裏切りのルーン』の製造工場だ。ここに来てはいけなかった…」

彼女はそう言い残すと、女性魔導師の魔力によって、意識を失った。ライエルたちは、情報提供者を救うために駆けつけた結果、聖刻会の罠に嵌まり、さらに重要な情報を逃してしまったのだ。

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