表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古代文字(ルーン)を詠う者  作者: 綾瀬蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/30

4.追跡者と古代都市への道

1. 騎士道と古代文字の融合

アルドニア王国の国境沿いに広がる分厚い森を、ライエル、セレフィア、ゼノンの三人はひたすらに駆けていた。学園という保護された世界から抜け出し、彼らは追われる身となった。

「くそっ、腹が減ったな!こんなに走ったのは、学院のサバイバル教練以来だ」

ゼノンは重傷を押して走り続けた疲労で、道端の岩に腰を下ろした。セレフィアが優雅な身のこなしで周囲を警戒しながら、携帯食料の干し肉をゼノンに差し出す。

「騎士科の訓練が役に立ったわね。それにしてもライエル君、あなたは本当に体力がないわね」

ライエルは肩で息をしながら、苦笑した。「僕はルーンを詠うのが専門で、肉体労働は苦手でして…。それに、昨日使った防御ルーンの魔力消費が予想以上だった」

「そのルーンについて、ちゃんと説明してもらうわよ」セレフィアが真剣な表情になる。

ライエルは頷き、地面に小枝で模様を描き始めた。

「僕の一族が詠う古代文字は、君たちが使う魔導師の魔法とは根本的に違う。君たちの魔法は、自身の魔力を媒介にして現象を模倣するものだ。でも、ルーンは違う」

ライエルは、小枝で描いた模様の先端を指でなぞった。「これは、世界の理、法則そのものを具現化したものだ。詠唱によって、その法則を一時的に書き換える。だから、一般的な魔法では破れない絶対的な防御や、現象の封印が可能になる」

ゼノンが感嘆の声を上げた。「つまり、お前は世界に直接話しかけてるってことか!すげぇな、ライエル!」

「だが、欠点もある。詠唱に時間が必要なこと、そして詠唱を誤れば、その法則が自分自身に跳ね返ってくることだ。だから僕は、ずっと力を隠していた」

ライエルは立ち上がり、森の奥を見据えた。「僕らが目指すのは、王国の南東、古代の地図に記された『静寂の都市アークス』だ。聖刻会が狙う真の遺物は、そこにある」


2. 追跡者の包囲網

三人が旅のルートを確認していると、突然、頭上から鷹の甲高い鳴き声が響いた。通常の鷹ではない。その鷹は、翼に銀色のルーン(紋様)が薄く刻まれていた。

「見つかった…!あれは『斥候のルーン』を刻まれた魔獣だ。聖刻会の追跡が始まった!」セレフィアが即座に反応した。

ライエルの表情が硬くなる。「このスピードは想定外だ。ゲイル教官は、僕の封印をすぐに解く術を持っていたに違いない」

森の木々の間から、十数名の「聖刻騎士」が現れた。彼らは学院の騎士とは比べ物にならない、訓練された無機質な眼差しをしていた。先頭には、黒いローブを纏った一人の魔導師が立っていた。

「見つけたぞ、古代文字の詠唱者。無駄な抵抗はやめ、大人しく我々に力を捧げろ。そうすれば、その哀れな友人たちを助けてやらんでもない」

ゼノンが即座に剣を構えた。「ふざけるな!俺たちの命はお前らの手にあるもんじゃねぇ!」

「セレフィア、ゼノン、一旦後退だ!彼らは学院の教官レベルではない。完全に訓練された聖刻会直属の戦闘員だ!」

ライエルは後方への逃走ルートを確保するため、地面に素早く加速のルーンを刻もうとした。しかし、黒ローブの魔導師は彼を逃がさない。

「その力をそう簡単に使わせると思うか!」

魔導師が地面に手のひらを叩きつけると、ルーンの光より速く、「拘束のルーン」がライエルの足元に展開した。ライエルの体が、目に見えない力に縛り付けられる。


3. 三人目の壁

ライエルは身動きが取れない。ゼノンは聖刻騎士たちに囲まれ、剣の猛攻に晒されている。セレフィアは光魔法で援護するが、騎士たちの連携が強く、突破口が開けない。

(くそっ、詠唱が完了できない!力が足りないわけじゃない。時間が…!)

ライエルは、拘束のルーンを解読リーディングすることで、その力を一時的に緩めようと試みた。しかし、その拘束ルーンは、ライエルの一族が使っていたものよりも遥かに古い、改竄されたものだった。

その瞬間、ゼノンの剣が弾き飛ばされ、一人の聖刻騎士がセレフィアの背後を取る。

「セレフィア!危ない!」ライエルが叫ぶ。

セレフィアは致命的な一撃を避けきれないと悟り、光の障壁を張るのが精一杯だった。

その時、大地が震えた。

ゼノンが、剣を失った両の手で、土塊を鷲掴みにする。ゼノンは、騎士としての魔力操作を、土属性の防御魔法に転用していた。

「崩せ(ブレイク)!」

ゼノンの咆哮と共に、彼が掴んだ土塊が炸裂し、爆風と共に聖刻騎士を吹き飛ばした。

「ライエル!お前のルーンが世界の理なら、俺の力は意志の力だ!縛られてるお前に、俺の意志を届かせる!」

ゼノンは騎士の魔力を極限まで高め、己の皮膚に闘気のルーン(闘気のように見える古代文字)を刻み込んだ。それは、ライエルが以前、ゼノンにこっそり教えた「自己治癒」と「強化」のルーンだった。

ゼノンの傷が瞬時に塞がり、その体が鋼鉄のように硬質化する。彼は地面に埋まっていた巨木を引き抜き、剣の代わりにして聖刻騎士の集団に突っ込んだ。


4. 詠唱の完成

ゼノンが文字通り追跡者の壁を作り出した一瞬、ライエルの拘束が緩んだ。ゼノンがルーンの力を利用してくれたのだ。

(ゼノン…ありがとう!)

ライエルは全魔力を集中させ、古代都市へ向かうための究極の移動ルーンを詠う。しかし、そのルーンはあまりにも複雑で、詠唱には時間が必要だった。

「セレフィア!ゼノンを援護しつつ、時間を稼いでくれ!」

「任せて!」

セレフィアは、その場に残った騎士たちと黒ローブの魔導師に向かい合った。彼女が詠うのは、光属性の極大魔法。

「光よ、裁け!我らが剣となれ!」

セレフィアの魔法は、黒ローブの魔導師の防御ルーンを打ち破るほどの威力を持っていた。光と闇、騎士道と古代文字、そして魔法。三人の力が一つとなり、その場は激しい戦場と化した。

セレフィアとゼノンの死闘の末、ついにライエルの詠唱が完成する。彼の足元に、巨大な転移のルーン(古代文字の環)が浮かび上がった。

「Portal Noa Vitas!」

(生命の門を開け!)

転移の光が三人を包み込む。黒ローブの魔導師が最後の抵抗を試みるが、時すでに遅し。

聖刻会の追跡を退け、三人は、古代都市アークスへと続く、新たな大地へ転移したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ