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古代文字(ルーン)を詠う者  作者: 綾瀬蒼


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21.自然の複合ルーンとエルフの盟約

1. エルフ族との共同戦線


ライエルが幻惑ルーンを一瞬解除し、聖刻会幹部アトラスの「自然変異ルーン」の核を示したことで、エルフ族の戦士たちはライエルたちが聖刻会と敵対していることを確信した。

エルフ族の戦士長フィリアは、即座に矢を構え、アトラスに向けた。「人間よ、貴様がこの森の自然を汚したな!許さん!」

アトラスは、エルフ族の出現に舌打ちした。「厄介な。だが、お前たちもまとめて葬ってくれる!」

アトラスは、木々を変形させた構造物全体にルーンの力を集中させ、通路の崩壊速度を早めた。ゼノンを乗せた担架の真下の地面が、大きく亀裂を入れ始める。

「ライエル、ゼノンがもう限界だ!」セレフィアが叫ぶ。

フィリアはライエルに鋭い視線を向けた。「人間よ。貴様は古代文字の力を持つようだが、自然のルーンには敵うまい。私の指示に従え!『生命の奔流のルーン』を私と共に詠唱しろ!森の魔力を引き出すのだ!」

ライエルは、フィリアの指示に従い、エルフ族独自の詠唱法と、自身の古代文字を重ね合わせた。それは、ライエルが知る複合ルーンとは異なり、周囲の環境そのものを術者の魔力源とする、壮大なルーンの原理だった。

「Silvas e'l Vitas. Nar e'l Fides!」

(森よ、生命となれ。信頼よ、誓いとなれ!)


2. 自然の複合ルーンの誕生


ライエルとフィリアの詠唱が重なり合うと、森全体が青白い光を放ち、周囲の魔力がライエルとエルフ族に流れ込んだ。これが、エルフ族に伝わる「自然の複合ルーン」だった。

この複合ルーンの力は、アトラスの「自然変異ルーン」と同質の法則を持つため、互いに打ち消し合い、アトラスのルーンの効果を劇的に減衰させた。

「馬鹿な!森が私に反抗しているだと!?」アトラスは驚愕する。

通路の崩壊速度が緩むと同時に、フィリアはエルフ族の戦士たちに指示を出した。彼らは、即座にアトラスの周囲に矢の雨を降らせる。矢には、エルフ族独自の「封鎖の治癒ルーン」が刻まれており、アトラスの魔力経路を一時的に阻害した。

その隙に、ゼノンを抱えたゼノンとノアは、崩壊から免れたわずかな足場を通り、通路を脱出する。

ライエルは、フィリアに感謝の意を伝える間もなく、アトラスとの対決に集中した。

「アトラス!あなたのルーンの知識は、自然の力の前では無力だ!」

「小賢しい!だが、この程度では私の魔力を全ては抑えられない!」アトラスは、自分の肉体に『強化と加速の複合ルーン』を刻み、高速でライエルに肉迫する。彼は魔導師であると同時に、近接戦闘も得意とする戦士だった。


3. アトラスの敗北とエルフの里へ


アトラスの驚異的な突進に対し、ライエルは間一髪で『鏡の複合ルーン』を起動させた。アトラスの拳が鏡のルーンに接触すると、その衝撃は彼の身体へ跳ね返り、呻き声を上げて後退した。

ライエルは、自然の複合ルーンで得た膨大な魔力を、一気に一点に集中させた。

「これが、僕とエルフ族の力だ!『森の永続封印ルーン』!」

ライエルが詠唱したのは、アトラスのルーン知識の源流を封鎖し、彼の魔力経路を永久的に自然の力で固着させる複合ルーンだった。青い光の奔流がアトラスを包み込み、彼は森の木の根に絡め取られるように、動けなくなった。

「まさか…私のルーンが、こんな原始的な力に…!」アトラスは、自身の敗北を認めず、怒りの言葉を吐きながら、意識を失った。

戦闘後、フィリアはアトラスを捕縛し、ライエルたちに向き合った。

「人間よ。貴様たちの勇気と、ゼノンという仲間を救おうとする純粋な意志、そして、古代文字の知識をもって森の脅威を退けたことを評価する」フィリアはライエルたちを信じることを決めた。「約束通り、貴様たちを隠れ里へ案内しよう。急げ、友人の命は風前の灯だ」

フィリアの指示で、エルフ族の戦士たちがゼノンを担架ごと運び始めた。ノア、グラント、そしてセレフィアは安堵の表情を見せる。彼らは、エルフ族の里「シルヴァニア」へと導かれていった。


4. シルヴァニアの秘密と新たな脅威


エルフの隠れ里シルヴァニアは、森の奥深く、結界に守られた美しい場所だった。ゼノンはすぐに、エルフ族の治癒師たちによる古代の治癒ルーンを使った治療を受けた。ライエルは、その治癒ルーンの原理が、彼の一族の禁書に記されていた『生命の再構築のルーン』と類似していることを確認した。

ライエルとセレフィアは、里の長老と面会した。長老は、ライエルたちが聖刻会を追っていることに感謝したが、厳しい表情を崩さなかった。

「ライエル・アークレイ。聖刻会がこの里を狙っていたのは、ゼノンの治療のためだけではない」長老は重い口を開いた。「聖刻会は、我々エルフ族が守り続けてきた『世界の境界ルーン』の知識を狙っている。彼らはその知識を使って、人間界と異界の境界を曖昧にし、世界を混沌に陥れようとしている」

エルフ族は、聖刻会の真の目的が、もはや王国の支配に留まらず、世界の法則そのものを書き換えることにあることを知っていた。

さらに長老は、ライエルに衝撃の事実を告げた。

「そして、その『世界の境界ルーン』を解析し、聖刻会に協力しているルーンの権威は、一人ではない。幹部アトラスの他に、もう一人、君のルーンの師にあたる人物が、その解析に深く関わっているのだ」

ライエルは、自身の師が聖刻会に関わっているという事実に、激しく動揺した。エルフの里で、ゼノンの治療と同時に、ライエルは自身が信じてきたルーンの歴史と、裏切りの連鎖という、さらなる深い闇に直面することとなった。

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