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古代文字(ルーン)を詠う者  作者: 綾瀬蒼


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19/30

19.公爵殺しの汚名とエルフの隠れ里

1. 王都からの脱出


ライエルが複合ルーンで天穹の瞳を封印し、ヴィオラが撤退した後、魂の回廊は静寂を取り戻した。セレフィアは、変わり果てた父ヴァルハイト公爵の亡骸を抱きしめ、涙を流した。しかし、悲しみに浸る時間はない。ゼノンは、公爵の渾身の魔導を受け止めたことで、内臓に深刻な損傷を負い、意識不明の状態だった。

「急いでここを離れなければ。王城の警備隊がすぐに来る!」ノアが焦った声を出す。

ライエルは、グラントの変性ルーンの偽装が解かれる前に、脱出ルートを確保しなければならない。彼は、王城地下の「魂の回廊」の入口に、『崩壊の複合ルーン』を刻んだ。このルーンは、数分後に回廊の入口を完全に閉鎖し、追跡を不可能にする。

グラントは、聖刻会に見捨てられたことで、これ以上の反抗を諦め、彼らに従った。ノアの案内で、彼らは魔導水道を逆行し、王都の城壁の裏にある隠された水門から、なんとか脱出に成功した。

脱出から数時間後、王都全域に非常警報が鳴り響いた。ヴァルハイト公爵の死が公表され、その犯人として、元学院生のライエル・アークレイと、セレフィア・ヴァルハイトの名前が、王国中に指名手配された。彼らは、王国の秩序を乱す大罪人となった。

「くそっ、公爵を殺したのは聖刻会と彼の欲望だ!俺たちが罪を着せられるなんて!」ノアが怒りをあらわにする。

セレフィアは、公爵殺しの汚名よりも、ゼノンの容態の悪化に心を痛めていた。


2. エルフの隠れ里への決断


ゼノンの脈は弱く、ライエルの治癒ルーンやセレフィアの光魔法でも、彼の内臓の損傷は回復しなかった。複合ルーンで彼の生命力を一時的に維持するのが精一杯だった。

「このままでは、ゼノンは長く持たない…」ライエルは、極限まで消耗した状態で、重い口を開いた。

「僕が知っている、一つの場所がある。そこには、ゼノンを救える可能性がある」

ライエルが口にしたのは、王国の北東、人里離れた辺境に存在する「エルフ族の隠れ里」だった。

「エルフ族は、僕ら古代文字を詠う一族の、古くからの協力者だ。彼らは、人間社会の魔導とは異なる、『自然の治癒ルーン』の知識を持っている。その治癒ルーンなら、ゼノンを救えるかもしれない」

セレフィアは驚きながらも、その危険性を理解していた。「エルフ族は人間を信用していないわ。特に、王国の追跡から逃げてきた私たちを、受け入れてくれるかしら?」

「行くしかない。彼らの知識は、聖刻会が狙う古代文字の源流の一つでもある。この旅は、ゼノンの命を救うだけでなく、聖刻会が次に狙う新たな古代文字の知識を得るための、新たな修行にもなる」

ライエルは、彼の一族に代々伝わる古い地図を広げた。エルフの隠れ里「シルヴァニア」へ至る道は、魔物の跋扈する危険な「嘆きの森」を抜けなければならない、険しい道のりだった。


3. グラントとノアの決断


エルフの里への旅は、困難を極めることが予想された。ライエルは、捕らえているグラントに最終的な決断を迫った。

「グラント。お前を解放することもできる。だが、お前は聖刻会にも裏社会にも裏切り者として追われる身だ。僕らと共に行くか、ここで自由になるか、選べ」

グラントは憔悴しきっていたが、ライエルたちの命がけの戦いを間近で見て、考えを変えていた。

「…私は、私のルーンを、情報の偽装という卑しいことにしか使ってこなかった。だが、あのヴィオラのルーンの残忍さを見て、聖刻会の支配がどれほど恐ろしいか知った」

「私は、あなたたちと共に行く。私の偽装ルーンは、王国の追手から逃れるのに役立つだろう。贖罪のため、私に居場所をください」グラントは、裏切り者としての過去を断ち切る決意をした。

そして、ノアもまた、ライエルたちと旅を続けることを選んだ。

「あんたは、俺たちに食べ物をくれた。そして、俺が知る限り、あんたは世界を良くしようとしている。俺は、貧民街のガキを救ってくれた恩義がある。行くぞ、エルフの里とやらへ!」

ノアは、グラントと手を組み、裏社会の情報網と貧民街の裏道の知識を駆使し、王都の追跡を逃れるための準備を始めた。


4. 嘆きの森へ


ライエル、セレフィア、ゼノン(担架で)、ノア、そしてグラントの五人は、王国の追跡隊の警戒網をすり抜け、エルフの里を目指し、北東へ旅立った。

彼らの旅は、すぐに最初の難関、「嘆きの森」に差し掛かった。この森は、常に濃い霧に覆われ、強力な魔物が生息することで知られていた。

森の入口に立ったライエルは、森全体を覆う巨大な「幻惑のルーン」を感知した。

「この森は、エルフ族が意図的に仕掛けた、侵入者を迷わせるための複合ルーンで守られている。闇雲に進めば、二度と出られない」

グラントが、ライエルの言葉を裏付ける。「嘆きの森は、入った瞬間に方向感覚と時間感覚が狂わされると、裏社会でも恐れられている場所です」

ノアは、恐る恐る言った。「この森を越えた先には、本当にゼノンを救える場所があるのか?」

ライエルは地図に刻まれた古代文字を読み解き、森のルーンを欺くための「対抗ルーン」の詠唱を準備した。

「ゼノンを救うため、そして聖刻会に次のルーンを奪わせないためにも、僕らはこの森を越えなければならない」

彼らは、ゼノンの命を救い、新たな古代文字の知識を得るため、濃霧が立ち込める嘆きの森へと足を踏み入れた。その向こうには、彼らが知るルーンとは異なる、自然の力を操るエルフ族との出会いが待っていた。

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