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古代文字(ルーン)を詠う者  作者: 綾瀬蒼


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18/30

18.魂の回廊の攻防と公爵家の闇

1. 魂の回廊への突入

魔導水道と守護者たちの協力により、セレフィア、ゼノン、ノア、そしてグラントは、ついに王城地下深くに存在する聖刻会の秘密拠点、「魂の回廊」の入口に辿り着いた。そこは、ヴァルハイト公爵家の私室の地下室と繋がっていた。

グラントが恐る恐る、変性ルーンの力を発動させる。彼のルーンは、地下室に設置された魔力監視装置の情報を改竄し、一瞬の侵入経路を作り出した。

「セレフィア様、急いで。この偽装は長くは持ちません!」グラントが焦った声を出す。

ゼノンが先陣を切り、地下室の隠し扉を騎士剣でこじ開けた。中には、聖刻騎士団の警備兵が待ち構えていたが、ゼノンの剛剣とセレフィアの光魔法の連携により、瞬時に制圧された。

彼らが「魂の回廊」と呼ばれる通路へ踏み入ると、途端に空気が重くなった。通路の壁には、ライエルの一族とは異なる系統の、強力な「記憶」に関する古代文字がびっしりと刻まれていた。

「これが…魂の回廊。王族の記憶と、ルーンの歴史が刻まれた場所だわ」セレフィアは、その膨大な知識の奔流に、頭痛を覚える。

その回廊の最深部で、彼らはライエルを発見した。彼は天穹の瞳の前に、特殊な枷に繋がれ、苦悶の表情を浮かべていた。そして、ライエルを監視するヴィオラの横には、予想通り、セレフィアの父であるヴァルハイト公爵が立っていた。


2. 父娘の対峙と聖刻会の誘惑

「セレフィア!なぜお前がここにいる!」ヴァルハイト公爵は、娘の出現に動揺を隠せない。

「父上!なぜ聖刻会と手を組んでいらっしゃるのですか!彼らは王国を裏切ろうとしているのですよ!」セレフィアは悲痛な声を上げた。

公爵は、王国の政略の権化のような冷たい目つきで娘を見た。「愚か者め。私が組んでいるのは、王国の未来のためだ!聖刻会は、腐敗した現王室を浄化し、王国の真の安定をもたらす!彼らが持つ古代の力こそが、王国の覇権を盤石にするのだ!」

公爵は、天穹の瞳を指差した。「この遺物があれば、王族の記憶、騎士団の動き、そしてすべての国民の思考を監視できる。これこそが、完璧な秩序だ。お前を政略結婚から逃がしたあの若造ライエルは、この秩序の障害にしかならん!」

ヴィオラが、公爵の横で口を開いた。「公爵、時間を無駄にしないで。最終起動を始めます。古代文字の詠唱者の知識を強制的に引き出します」

ヴィオラがルーンを詠唱すると、ライエルの枷が光を放ち、彼の脳裏から、ルーンの知識が強制的に引き出され始めた。ライエルは激しい痛みに耐えながら、うめき声を上げる。


3. 複合ルーンと家族の絆

「ライエルを苦しめるな!」ゼノンが公爵とヴィオラに向けて突進した。

「無礼者め!」公爵は、貴族の魔導師として、ゼノンに強力な風属性の魔導を放つ。公爵の魔力は、学院の教官とは比べ物にならないほど強力だった。

セレフィアは、ゼノンを守るために父の前に立ちはだかった。「やめてください、父上!私は、あなたの理想のためではなく、ライエルとゼノン、そして私自身が信じる正義のために戦う!」

セレフィアは、自身の光魔法を最大限に集中させ、父の魔導を打ち消した。父娘の魔導が激しく衝突し、回廊全体が震動した。

その隙に、ライエルは最後の力を振り絞り、複合ルーンを詠唱した。彼は、枷に刻まれたルーンの法則を逆手に取り、『枷の反転ルーン』を起動させた。

ライエルの詠唱と共に、枷が発する魔力が一瞬で反転し、ヴィオラへと跳ね返る。

「くっ!この複合ルーン、どこで覚えた!」ヴィオラは体勢を崩し、最終詠唱が一時的に中断された。

ライエルは解放され、ゼノンが彼を支えた。

「ゼノン!セレフィア!早く天穹の瞳を封印する!複合ルーンで、『多重封印』を詠唱するぞ!」


4. 遺物の奪還と公爵の終焉

ライエルは、ヴィオラと公爵の攻撃を受けながら、複合ルーンの詠唱を開始した。その時、公爵は狂ったようにセレフィアに最後の魔導を放った。

「私が築き上げてきた全てを壊すなら、お前も道連れだ!」

セレフィアは防御に徹したが、公爵の渾身の一撃を完全に防ぎきることはできない。

その瞬間、ゼノンがセレフィアの前に立ち、公爵の魔導の大部分を受け止めた。「セレフィアは俺が守る!ライエル、詠唱を続けろ!」

ゼノンの身体が血を流し、倒れ込む。しかし、その自己犠牲の盾により、ライエルの詠唱は完成した。

「Sigil e'l Vita. Mundi e'l Arcana!」

(生命の封印よ。世界の秘密よ!)

ライエルの複合ルーンが天穹の瞳を包み込み、遺物は光を失い、完全に機能停止した。同時に、王都全体を覆っていた魔力監視のルーンも消滅した。

ヴィオラは遺物の停止に激しく動揺し、ライエルたちへの報復を誓いながら、緊急転移ルーンでその場から撤退した。

ヴァルハイト公爵は、遺物の封印と娘の裏切りに絶望し、激しい魔力の反動で倒れ伏した。セレフィアは涙ながらに父を抱きしめるが、公爵は、王国の秩序への執着と後悔の言葉を残し、息を引き取った。

ライエルたちは、仲間を助け、古代遺物を守ったが、その代償は大きかった。

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