表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古代文字(ルーン)を詠う者  作者: 綾瀬蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/30

14.王都の門とヴァルハイト公爵家の影

1. 王都への潜入

ライエル、セレフィア、ゼノンの三人は、王都アルドニアを目指し、荒野を駆け抜けていた。王都に潜入し、貧民街の廃教会で裏切り者グラントと聖刻会の取引を阻止しなければならない。

王都は、巨大な城壁に守られ、王国の中枢として栄えていた。しかし、その厳重な警備は、ライエルたちを簡単には受け入れなかった。

「王都の城門には、通常の騎士団の警備に加えて、魔力探知のルーンが施されている。僕らの微細な魔力反応も見逃さないだろう」ライエルが警戒する。

「私たちが賞金首になっていることは間違いないわ。王国の騎士団も、聖刻会も、私たちを追っている」セレフィアは、不安を隠せない様子だった。彼女の貴族としての身分は、この状況で最も大きな障壁となり得た。

ライエルは、サガとの修行で得た知識と、リディから得た裏社会の情報を組み合わせた複合ルーンを考案した。

「ゼノン、セレフィア。僕が『複合隠蔽ルーン』を詠唱する。このルーンは、僕らの魔力を、城壁に施された探知ルーンの『盲点』と同一の周波数に変換する。これで警備を突破できる」

ライエルの渾身の詠唱により、三人は城壁のルーンを欺き、見事、王都の裏門から潜入に成功した。


2. 貴族街の瘴気

王都の内部は、辺境都市ヴァルナとは比べ物にならないほど、華やかで秩序立っていた。だが、その華やかさの裏には、ライエルが最も警戒する権力と陰謀の影が潜んでいた。

「貧民街は、ここから王都を横断した反対側だ。目立たないように進むぞ」ライエルが指示する。

しかし、彼らが貴族街を通り抜けようとした時、セレフィアの顔色が急に変わった。

「待って…あれは…」

貴族街の交差点に、厳重な警備を敷いた一団がいた。彼らは王国の正規騎士団ではない。セレフィアの生家、ヴァルハイト公爵家の紋章を掲げた私設騎士団だった。

私設騎士団を率いるのは、セレフィアの父、ヴァルハイト公爵に仕える近衛隊長だった。

「セレフィア様!お戻りください!公爵様は、あなたが学院から行方をくらましたことに、大変心を痛めておられます!」近衛隊長が恭しく、しかし有無を言わせない口調で言った。

「私はあなたたちに戻るつもりはないわ!父には関係ない!」セレフィアは毅然と拒否した。


3. セレフィアの父との対立

セレフィアの反抗は、公爵家の威信をかけた追跡を意味した。近衛隊長は表情を硬くする。

「公爵様は、あなたが『聖刻会に利用されている』と懸念しておられます。特に、その身元不明の二人のライエルとゼノンは、王国の秩序を乱す者として、公爵家から捕縛命令が出ている!」

ライエルたちは、聖刻会だけでなく、王国の中枢を担うヴァルハイト公爵家からも追われる、二重の危機に陥った。

「セレフィア、君の家族が僕らを敵と見なしているようだ」ゼノンが剣の柄を握りしめる。

ライエルは、セレフィアの父が聖刻会に加担している可能性を疑っていた。そうでなければ、なぜ彼らの逃走ルートを予測し、王都の門で待ち構えることができたのか。

「公爵家は、私たちを聖刻会から守ろうとしているのか、それとも…」ライエルはルーンで周囲の騎士たちの動きを解析するが、明確な敵意しか読み取れない。

近衛隊長が剣を抜き放った。「これは公爵家の命令です!抵抗すれば、容赦はしない!」


4. 複合ルーンと政略の影

ライエルは、貴族街での戦闘を避ける必要があった。ここで騒ぎを起こせば、王都全域に警報が鳴り響き、聖刻会に彼らの居場所を教えてしまう。

「ゼノン、セレフィア!僕が『誘導の複合ルーン』で、彼らの注意を逸らす!その隙に、貴族街を抜け、貧民街へ向かうぞ!」

ライエルは、周囲の街路樹や噴水に、微細なルーンを瞬時に刻み込んだ。詠唱と共に、街路樹が不自然に枝を揺らし、噴水が普段とは違う勢いで水を吹き上げ、近衛騎士たちの視線と集中力を分散させた。

「何だ!?魔力干渉か!?」近衛隊長は混乱する。

その一瞬の隙を突き、三人は貴族街の裏路地へと駆け込んだ。

逃走しながら、セレフィアはライエルに告白した。

「ライエル君。父は、私を有力な貴族との政略結婚によって、王国の重要な地位に就けようとしていたわ。私が学院を逃げ出したことで、その計画は全て崩壊した。父が私たちを追うのは、公爵家とその政略を守るためだわ…」

ライエルの表情は険しくなった。聖刻会が狙う「王国の要人」とは、この政略結婚に関わる人物である可能性が高い。そして、セレフィアの父は、知らず知らずのうちに、聖刻会の陰謀に加担させられているのかもしれない。

彼らが王都の貧民街へ近づくほど、聖刻会の陰謀と、王国の権力者たちが抱える闇が、深く絡み合っていることが明らかになっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ