表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/71

返事がないのだけど、寝てるのかしらね

 ボーっとしていると、いつの間にか三〇分ほどが経っていた。ドアが誰かにノックされた。


「溝野ちゃん、いる? 昼ごはんにしようと思うんだけど」


 恵子の声だ。


「今出ます」


 服が乱れていないかざっと確認してから出た。廊下にいるのは恵子だけだった。


「溝野ちゃんは先に食堂に行ってて。私は他の人を呼んでくるから」


 言われた通りに向かうと、途中、ロビーのソファに黒栖が座っていた。テーブルをじっと見つめている。


「遠藤さんが食堂に集合って言ってました。昼ごはんですって」


「ああ。さっき聞いた。俺も行こう」


 黒栖と食堂に入ると、そこには誰もいなかった。その後、恵子が呼び集め、続々と人が現れた。その結果、六人が揃った。


「井口くんは返事がないのだけど、寝てるのかしらね」


「こんな時間から寝てるとか、ちょっと変な気がするけどな」


 美里が首を傾げた。


「みんなで起こしに行かん?」


「あん? んなめんどくさいことできるか。てめぇらで勝手に行けよ」


 真渕がふんぞり返って足を組んだ。真渕以外は美里に同意したので、五人で二一〇号室へと足を運んだ。


「おーい、井口くん、昼ご飯食べないのー?」


 恵子が声を張り上げるが、相変わらず返事はない。私たちは互いに顔を見合わせた。町谷が決心したように言った。


「フロントにマスターキーがありましたよね。開けちゃいましょうよ」


 驚いた。みんなも同じようなリアクションだった。周囲の反応を見て、不思議そうな顔で町谷が続けた。


「別にいいでしょう。だんまりを決め込んでいるか、惰眠をむさぼっているかです。こじ開けるくらい許されますよ。取ってきますね」


 勝手に決めて、行ってしまった。


「いいんでしょうか」


 私が誰にともなく言うと、恵子が少し考えてから言った。


「まあいいんじゃない? まさか着替え中とは思えないし。かなりの回数呼んだんだけど、うんともすんとも言わないもの。やっぱり何かおかしいわ」


 まもなく、町谷が帰ってきた。カードキーを押しあてると、ピッと機械音がして解錠された。


「開けますよ」


 返事も待たずに町谷が扉を開け放った。


 そこには、井口が床に仰向けに倒れていた。その顔は鬱血し、生気がなかった。


「キャーーー」


 ()()()()()()()()が……。


 薄らぐ意識の中、叫んでいるのは自分らしいとおぼろげながら認識した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ