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祈り、君に、届かない愛

作者: TKsunder

とある男の実話

(1部名前と年代は異なっております)

誰もいない朝の教室で、僕は1人、立ち尽くしていた。何があった訳では無い、クラスに1番先に来た時に無意識に行っていたことだった。

「何を見てるの?」

不意に、声をかけてきた少女に驚きつつ、振り返れば、同じクラスの、誰だったか。

「…いや、別に、空を見てただけ」

と窓から目を背ける。

その少女から話しかけられたのは数える程しか無かったため驚いた。

「ねぇ、君、今日誕生日だったよね、おめでとう」

「…あ、」

「ミカ、誰と話してるの?…って、あぁこんな朝早くにクラスに人がいたんだ、ほら生徒会の仕事あるから早く行くよ」

「あ、うん、ちょっと待って、すぐ行くから」

ありがとうの声は出なかった。出る前にその少女の友人が彼女を連れて行ってしまった。

「…誕生日、そっか」

自分の誕生日を忘れていた訳では無いが、祝われたのは今が初めてだった。

つまり、家族の誰も自分の生誕日を覚えてないか、もしくは興味が無いかのどちらかだったのだろうと思い至るのは至極当然であった。

「…」

声をかけた少女に僕は少し興味を抱いた。


少女はクラスの中心にいるような人だった。

誰にも優しく、男どもの悪ノリに笑いながら軽く流していたり、クラスの女子から頼まれ事をしているのをよく見ていた。

「……」

が、僕には話しかける勇気など無かった。

が運命というのはイタズラを思いつくものだ。

「よろしくね」

「あ、はい…よろしくお願いします」

1学期の席替えで隣の席になってしまった。

もし運命がこれを手引きしてるなら殺したい。

ただの陰キャがこんな明るい少女に話しかけることなど不可能に近い、もう少し前後の席や何やらで軽い気持ちが良かった。なぜ真横なのだ。

「どうしたの?」

「いえ、何があるわけでは無いです…すいません」

「なんで謝るのさー、変なの」

彼女がそう笑ってくれた事に僕は少しだけ安堵をした……。


「で?それから何も出来ずに特に会話という会話もなく?次の席替えの時までオドオドしてるヤツに俺は何をいえばいいんだ?」

「まぁ待てよ兄弟、正直わかるだろ?言ってしまえば初恋拗らせてんだよ、まぁお前と仲良くなれたのはそういう点ではあの時の俺はよくやったと言うべきだ」

「肝心のアイツには話せてないのにか?」

「おっと?心は硝子だぞ?」


と先程までのは過去の話、現在高校生にもなれば恋愛沙汰は男子の方でも話題になる。


「いやアイツのことはそれこそ昔から知ってるが…だからといって何を言えばいいんだ、俺ん所にアイツ来たら見てわかるレベルで口数減るやつに」

「いや、そりゃ恥ずかしいじゃん、変に空回らないように黙る選択肢を取ってるんだよ」

「それが空回ってんだけどな…」


とコイツとは部活が同じで帰る方向も同じ、そしてミカさんの幼なじみ(本人たちは腐れ縁と否定しているが)なので相談に乗って貰っているという訳だ。

コイツは別の彼女がいるため、そこら辺は気楽に相談出来る。


「まぁ言ってもなぁ、俺がアドバイスすることなんてあると思うか?」

「彼女はいるだろ、ミライさん」

「俺が告白してたんならアドバイス出来るけど、俺の場合はミライから告白されてるしなぁ」

「正直、俺は未だに根に持って…」

「やめろやめろその話は、少なくとも俺にはどうしようもないだろうが」

「…なぜ幼なじみが幼なじみとくっつかないのか…」


ミライさんもツバサという幼なじみ(男)がいるのにも関わらず、なぜ他の幼なじみを狙うのか。


「それで言うなら俺にこの相談をするのは確実に間違ってるんだけどな」

「そんなことは知らないよ兄貴ぃ!」

「なんだコイツ」


と雑談をしながら家に帰る。


「んじゃ俺はここで」

「おう、今日もすまんな」

「わかってるならいい加減やめろよ」

「それは無理」

「なんだコイツ」


とコイツの家が近くなったので俺らはそこで今日のくだらない雑談は終わる。

足が家の方に向き…すぐにそれは方向を変える。

アイツは…もう見えない。


僕…いや俺はそのまま近くの公園に寄った。


「…あと30分くらいなら言い訳できるな」


と俺はベンチに腰掛け、空を眺める。

家の親はとても厳しい。人と遊ぶ時間なんてものを作らせてくれない。口を開ければ勉強、勉強と学生の自分からすれば迷惑極まりない。

その上、点が低ければ、私はこんな点取らなかったの一点張り、誰がどう見ても毒親の類だった。

そのため、俺は部活が遅くなった、の言い訳がギリギリできる時間までこうやって暇を潰しているのだ。

アイツ…レイもこのことを知っているが、アイツはアイツで家で大工の手伝いをするとか何とかで家に戻ってしまえば、基本的に俺は1人だ。


「まったく…自分で言うのもアレだが、寂しいやつだな…ははは」


家には兄と妹がいるが最近は特に何か接点がある訳でもない。たまに寂しくなった時に妹にからかいに行く以外で話すことなど無かった。悲しいことに。


「家に帰ったら…とりあえず勉強…か。正直やることが思いつかないんだよな…はぁ……」


正直興味が無い。俺に取って勉強とは無駄な行為でしか無かった。もちろん赤点を取らない程度にはするが、そんなモノ、勉強しなくても取れる。

上に行く理由もない。

つまり、無駄な行為だ。

いや、こんなことを周囲が知れば確実にヘイトを買ってしまう、事実を積み重ね空気を伺うことを無駄とは言い難いか。

とはいえ、だ。この時節の学生に勉学ほどやりたくないものはない。

それに両親が狂ったように勉強勉強と言ってくるのならば尚更だ。

「…あ」

人影が見え、その人物を視認した時、変な声と共に逆方向にサッと進む。

「…そう、それでさ……」

と遠くから声が聞こえ、すぐに遠ざかる。

「…帰るか」

ミカさんが通ったということは最終下校時間だ。大抵あの人は生徒会やら何やらで最後まで残る。

そして彼女がここを通ってから帰れば大抵は言い訳できる時間の範囲となるわけだな。

隠れたのは…恥ずかしいからである。

好きな人に見つかるということが、では無い。

こんな人間であることが、だ。

自分を認知しないで欲しい気持ちと彼女と話したい気持ちの二律背反を背負っているのだ。

ただ少なくともこんな時間まで公園で暇潰ししていたような私とは出会って欲しくなかった。

「はぁ…まぁヨシ」

「なにがよしなの?」

「あぇぁ」

背後から聞こえた声に変な声が漏れる。もちろん声の主など見なくても分かる。

「いや、えっと…えーっと…ミカさん、いや、本も読み終わったんで家に帰ろうかなと」

「よくここにいるよねー」

「ッスー……まぁ、家に帰るとあんまり外に出ないんですよねー、出不精ってやつでして」

「外で本読むのもまた楽しいもんねー」

なんでこの人はなんでも肯定してくれるのだろうか好きになってしまう、いやもう元から好きなんだけど…。

「そうなんですよね、家の中で読むと意外と家の雑音とかで集中しづらいんですけど外だと風とか穏やかなんで集中しやすくて」

「何読んでたの?」

「ッスー……」

いや、この人は割とラノベに寛容な人、というかこの人の友人は結構そういうの好きな人が多いから言っても恥ずかしくはないんだが…ないんだが!好きな人に性癖知られるのはっ、違うじゃん!と脳内で発狂する。まぁ落ち着け俺。この程度のことは慣れている。

「……えっと、最近の自分の中で気に入ってるヤツですね」

とタイトルをできるだけぼかしつつスっと読んでた本を取り出す。妹ものである。

俺は区別は付くタイプだ。もちろんリアル妹がこんなことするわけないことなど千も万も承知、というかリアル妹にやられたら吐く、それはそれとして妹ものにハマっていた。

「あぁ、リアルで起きないことを小説に求めてるのか」

「え、いきなりどうしたの?」

「あ、いやなんでリアル妹がいるのにこういうの読むんだろうと自問自答しただけです、はい…」

「あぁ、佳奈ちゃんね!私の妹がいい子だって言ってたよ」

「まぁ妹は自慢なんで、俺より何倍も努力してるし、ちゃんと実力が…」

脳裏に嫌な記憶が流し込まれる。

ピアノ演奏会で仲の良い友人に毎回1番を取られている自分が情けなく感じてきた。

「すいません、時間、取っちゃいましたね、じゃ俺はこの辺で…」

心が上手く留まらない気がしてきた。今日はいつもよりグズグズになる気がする。楽しいことも嫌なことに上書きされるものなのだなと思っていれば。

「大丈夫だよ、君はすごいんだから、じゃまたね」

……俺なんて、何もすごくない。たとえ好きな人に認められていても、俺の心はそう嘲笑っている気がした。

誰かのために人を褒めることのできる人間はとても素晴らしいと思う。

誰かのために頑張れる人も素晴らしいと思う。

俺は誰かのためになにかできる人間では無かった。結局自分のためにしか何もしてなかったんだろうなと思った。俺は、何も変わらない。


「勉強?」

「そう、お兄ちゃんそういうの得意でしょ」

「お前の方が頭いいのに聞くかぁ?まぁいいけど、どこよ」

「ここなんだけどさぁ」

と珍しく妹の勉強に付き合った次の日

「……ん」

教室内で自分のノートがないことに気付く。教えた時に妹の机の上に放置したのかもしれない。

妹とは学校……というか中学と高校なのでそもそも違う。

「まぁ適当にルーズリーフ辺りにでも書いときゃ後で挟めばいいだろ」

と授業中、自分が今日問題を当てられる日で、その答えが全部ノートに書かれていることを思い出す。

「やば……ワロタ」

ということで救援…同じクラスの友人に話しかけに行く。

「ちょーっといいか?急ぎなんだが」

「お?どうしたん」

「今日の宿題やってる?」

「やってないけど」

まぁそう返ってくるとは思ってたが……

「……ぐぁあ、だよなぁ…いや知ってたけどさぁ、ノート家に忘れてきてさぁ」

「よく忘れるなお前は」

いや、今回は違う!と強調するために経緯の説明をば

「いやマイシスターが勉強教えて欲しいって言ってきたんだから兄として教えるのは当たり前だろ」

「いや、だからそんなに兄妹仲良いのやっぱ少しおかしいだろ」

いや、この頃の異性の兄妹は、羨ましいとか言われても別にあんな可愛くないやつとか何とか否定するだけのよくあるテンプレじゃないだけでなく、という意味だろう。とは言うが姉から生徒会に誘われてるコイツが言う話ではない。

「なんだてめぇ、お前の姉もお前と仲良いやろがい」

「勉強を教え合うほどじゃねーよ」

とぎゃいぎゃいしていれば隣から声。

「なに?ノート忘れたん?」

ミカさんの友人であるしぐれさんが話しかけて来た。おっと聞かれてたか。

「しぐれさん、そうなんですよ妹に勉強教えてたらそのままノートを机に置いてたっぽくてですね、宿題とかやってません?」

まぁなんだかんだ仲は悪くない人なのでダメで元々聞いてみる。

「私は合ってるかわかんないしなぁ、ミカはやってるよね。貸してあげれば?」

「んー?いいよ」

いや待て待て待て!よくない!心の準備的によくない!と叫びたかったが堪える。いやしかしだ、借りることで恥はかかない、なにより好きな人のノートが借りれる!これは嬉しい!と思う反面に、俺みたいな人間があの人のノートに触るなんて恐れ多いとかいう厄介オタクの真髄みたいなのが心で発狂してる。

えぇい!黙れぇ!俺の厄介オタク!貴様は既に殺したはずだ!

「すぐ写すんでちょっと見せて貰えません?」

「うんいいよー」

ということで借りつつルーズリーフに問題と答えをサラサラーっと書く。

「真面目だなぁ」

「黙れ、してないよりしてた方がいいだろ、何事も」

友人の軽口に対して文句を言う。ま、そんなこという癖に告白とかしないんですけどね、まるで綺麗なブーメラン。

サクッと問題を書き写し答えもサラッと書き写す。

「すいません、ありがとうございます」

「早いね、書くの」

「慣れですよこんなものは、早くても汚いんで」

当社比である。文字は綺麗な方だ。そこら辺の人よりは、親の英才教育という名のスパルタがこういうところでは役に立つ。

「俺の普通に書いた字より綺麗だけどな」

「それは練習しなよ」

と4人で話しながら、さっさと書き終わる。

「すいませんありがとうございます、マジで助かりました…」

「いいよー、別にめっちゃ謝るね」

「ま、次からは忘れないようにしないとな」

「謝るのは癖ですね……そして、お前は勉強を忘れてるがな」

「わかんないもんはわかんないからな」

「はいはい、まぁ後で教えてやるよ」

俺、地頭はかなりいい方である。なんなら答え写さなくても問題だけ見ればサーっと解けるが、さすがに量が量だったので今回は写す方法を取っただけである。

もちろん、余談ですが写したのは問題と答えだけなので黒板に書けと言われた時はしっかりと途中式まで書かさせて頂きました。ということで次の休み時間。

「いやありがとうございました本当に」

「いいよ別に、毎回忘れてるわけじゃないし、それに君がやってる事くらいは知ってるから、よく写させてもらってる人が横にいるからね」

「ははははは」

「なにわろてんねん」

とかそんなこんなで突然のイベントは過ぎ去った。


そして、レイとの帰り道。

「そういえばお前は束縛するの好きだな」

「それは、なんだ?リアルとかそういう話か?」

「いや、まぁそうだな」

と手癖で汗ふきタオルを自分で自分の手首を縛っている俺にそんなことを言うレイ。

「……まぁなんかなんも無いと落ち着かないっていうか、まぁ首輪とかチョーカーとかは欲しいよな」

「自分でつけるようなのはすぐにわかるな…まぁミカもそういうのしたいタイプだぞ」

「まじ?うわー、されてー、飼われたいな」

「うわ変態」

「黙れロリコン、貴様に言われたくないわ、とかいう話は置いといてなぜにその話を」

突然すぎるだろう。いやまぁ俺のせいではあるか。

「んー、いや嫌な記憶を思い出してな」

「何それ気になる」

ま、いいか、話すか、みたいなノリでレイはこちらを向かずに話し始めた。

「アイツ、昔付き合ってた奴がいてな、中学の頃だな」

「…えっ、聞いてないんだけど」

「言ってないからな、なんだBSSみたいな顔しやがって」

「……まぁ冗談だよ続き頼む」

「…あぁ、それでな、当時ソイツにやばいくらい束縛しててな、他の女の子と話すな連絡するなーって」

「え、好き、俺ヤンデレみたいな子好みなんだよね」

正しくはヤンデレっ子が好きなのである。その子に刺されて死ぬなら本望。でも幸せにしたいから死にたくないメンタルだ。

「まぁそれで、そいつがあまりの重さに別れようって話になったらしくて」

「お?刺された?」

「いや、それ以降別れてから3ヶ月くらい誰の話も聞かなくなって俺らに死ぬほど八つ当たりしてきた」

「うっは、グロ」

「だから、まぁ付き合いたいとか思う前に覚悟くらいはしとくんだな…まぁお前が好きってこと知ってるらしいが」

……は?

「……は?」

「ん?突然どうした?」

「え?バレてるの?俺が好きなこと?」

「ん?あぁ、言ってたぞ、わかりやすいって」

推しに認知されてたことより、好きだってバレてる事の衝撃がこんなに強いとは思わなかった。しにたい。

「……オワッタ」

「……大袈裟だなお前は、というか、ミカが来た時のキョドり具合となにより俺といた時毎回俺を壁にするようにしてんだから気付かない方が無理だろ」

「…イヤ」

「なんだ珍しく照れてんのか?お前が?」

と適当に会話してたら後ろから一番聞きたくない声がする。

「あれ?レイとコウじゃん、2人して帰ってるの?」

「ん?あぁミカ、まぁ最近はよく一緒に帰るな」

「……」

ミカサン!?終わった、アーオワリマシタ、オレ死にます。ここで。

「あれ?コウはどうしたの?」

「ん?あ、あぁいや今心の整理をしてるところだコイツは」

「……ちょっと今レイに衝撃的な言葉を言われまして…はい、大丈夫です…」

「何話してたの?」

「ん?いや束縛趣味の話だな、コウが縛られるのが好きって」

「ミ゜」

いや!黙ってくれてありがたいけどさ!こっち見てコレでいいだろ?とばかりに見やがって!それでいいです!本当にありがとうございます!!!

「あー、そういうこと?私はどっちかといえばSだから縛るほうかな」

「おー、良かったじゃないかコウ、ここに縛ってくれる人いたぞ」

…いや、待って待って待って何そのフリ、反応に困ると言うか、それ逆にOKしたらどうなるんです?って妄想は控えよう…うん。

「何言ってんだ…それは、なんか絵面がダメだ。バカ言ってんじゃないよ。いや、俺は肉体的にはMの自覚はあるが精神は割とSよりだから」

「あー、私もかも、なんかわかる」

「俺はSだけどな」

いや、うんレイはそうだろうな。

「「俺(私)もそう思う」」

「あとはアレだミカの中学のアレがめんどくさかったって話してたぞ」

「いや、あれは仕方ないじゃん?そういうモノなんだよ恋愛って」

「にしても殴ってくるのだけはやめて欲しかったけどな」

「まぁそれはごめんね」

「仲良いねぇ」

「まぁだいたい俺かシグレ、あとはダイとジュンはこいつの面倒くささを前から知ってるからな」

「昔からその5人でずっといるもんね」

「腐れ縁ってやつなのかねぇ」

とレイがいえば不思議そうな顔をするミカさん。

「でもそれなら昔からほぼコウも同じクラスだってシグレが言ってたけど」

「えっ?」

「え?」

レイも俺も固まる。

「え?そうだったん?あんまり気付かなかったんだけど」

「いや、うん俺も全然覚えてない」

が俺が驚いてるのはそこじゃない。なぜシグレさんがそれを知ってるのかが分からなすぎて驚いている。接点ないんだが…マジで強いて言うなら好きな人の友だちのポジションの認識しかしてない人がなぜ私のことを認知してるかが分からない。

「まぁ今は割と友だち作ってたけど小学校なんてほぼぼっちだったし、中学から仲良くなってるし知らんやつなんてそんなもんだろ」

「まぁそうか、それもそうだな」

そんなもんだろう、間違いない。

「とか話してたらもう俺ん家近いな、んじゃ俺はここで、じゃあなミカ、コウ」

とレイが家の方に1人で向かう。

「あ、ばいばーい」

「じゃあなー…」

じゃねぇ!?突然2人きりにするな…いやまぁ別に話すこと自体は出来るが…先程のことを知られてしまってる情報が割ときつい。

「ま、さすがに女子1人はあれだし少し送りますよ」

「そんな時間じゃないけどね」

「家に早く帰りたくないんで俺のためと思って手伝ってくれますかね」

「別にいいよ」

と一緒に帰り始めれば話題は先程の事になる。

「縛られるの好きなの?」

「そういうのは男女間でやる話題ですかね?、まぁ好きですね、やっぱり首絞めと手錠が好きですね、足拘束して逃げられなくしてくれるのも好きですね」

「結構ドMなの?」

ドMではない、いや少しだけMではあるが。

「違いますよ、ヤンデレが好きなんですよ、束縛系が好きなんです。ちゃんと愛してくれるのが見てわかるじゃないですか」

「私も束縛激しいらしいよ」

「それは…反応に困りますね」

いや、ほんとに、なんて反応すればいいんだよ、好きな人にそんなこと言われたらギリギリ勘違いするだろうが、もちろん口に出さないが。

「まぁさっきの話聞く感じはヤバそうですね、よく刺さなかった」

「さすがにそれは止められたよねぇ」

「ははははは聞き流しておきますね」

「そうしておいてー」

2人して半分ほど目が笑ってない冗談のやり取り。

多分性格は類似している。

というか多分同類の匂いがする。

()()()()()()()()()()()()()()()ぐらいの違いだろうな。

「あぁそういえば今日はありがとうございます、マジで助かりました」

「気にしないでいいのに、たまに教えてくれるし」

「まぁ、ツバサに教えるよりは楽ですよ」

きっと才能があるタイプなのだろう。ツバサには無い。がツバサはまぁ吸収は早い、忘れるのも早いが。

「教え方上手いよねー」

「まぁわかるところしか教えられませんがね」

「まぁそんなもんだよ」

…俺は上手くやれているだろうか。この気持ちがバレていようとバレないように出来ているだろうか。

「あ、そろそろ家も近いし、私はここら辺で」

「あ、はい、ありがとうございます」

「いやいや、こっちもありがとうだよそれなら、送ってくれてはいるんだから」

「……、じゃ、じゃあ俺はここで」

「うん、バイバイ」

「はい…また」

と身を翻し自分の家までの道のりを把握しつつゆっくりと進む。

「俺は、一体何をしてるんだろうか」

ふと、呟いてしまえば足は止まる。

「…まったくもって嫌になる」

なにが?そんなもの自分自身がだ。

嫌いだ、自分なんて、こんな風に人に理由を貰わなければ自分で行動できない自分が嫌いだ。

誰かのために頑張る、じゃなくて誰かがいないと頑張れないの間違いだ。

どうか俺に生きる目的をくれる人はいないのだろうか。


次の日からも、何が変わる訳でもない平穏な1日。

時折ミカさんと話す程度、友人の友人程度の関係性だった。

もし自分という物語があるのならば、間違いなくつまらない駄作になるだろう。好きな人に告白もできずにうだうだ言い続けて逃げる。

こんなものは自伝で出したとしても売れないクソみたいな物語だ。


無情にも時だけは流れる。

俺の物語は存外に早く終わるものだ。

「やぁ」

「ダイくん?どうしたの?俺になんか用事?」

「そうそう、修学旅行なんだけどさぁ」

修学旅行、今日ホームルームで先生が言っていた話だ。

「うん?」

「俺と一緒の班になろうぜ」

彼とは少し前から友人はあったが、あまり彼から話しかけてくることは無かったため、突然の提案に固まる。

「…えっと、俺?」

「そう、誰かと組む予定あった?」

「いや、特にないけど…」

「なら組もうぜ」

拒否権…とかはなさそうというより、拒否する理由が無かった。

「まぁ、俺でいいなら?よろしくお願いします?」

「よしきた、ミカ、シグレ、もう1人コイツねー」

「お、よろしくね、コウ」

「よろー」

アニメや漫画的な描写があったのならば確実に石になっているであろうほどに全てが停止する。

もちろんダイ自体は俺がミカさんのことを好きなことは知らない、レイが唆していなければ、の話だが、レイには口止めしてるし、アイツは割と口が堅い方なんだ。

「よく断られなかったね」

「まーね、俺にかかれば余裕ってもんよ」

……そこから雑談を聞いた感じだと、どうやらシグレさんの手引きらしい。俺の親友たちは別途で組作って余ってるならこっちの組に変なの紛れ込む前に取り込めとの話らしい。

妥協案でしたか、まぁしょうがない。その程度の自負はある。

…とはいえだ。

奇しくも好きな人と同じグループで修学旅行に行けるのは僥倖というものだろう。

グループ内で色々役割を作るみたいで

俺は記録を行う役割を担うことにした。こういう目立たない仕事を全うするのだ。

俺は光にある影でいいんだ。

自分のすべきことを全うする。

彼らが目立てばいい、その目立つ支えを行うことこそ、俺の使命だ。

修学旅行までは何処に行くだとか計画を立てつつ雑談しているのを横目で眺めつつ話が振られたら無難に返すことを繰り返す。3人で完結している場に無理に入る必要は無い。

時折ジョークやら何やらを言えばつまらないヤツとも思われない。

適度に光を保つだけの、そんな役割をし続けた。


そして来てしまった修学旅行当日。記録班の俺の手に先生からカメラを渡される。これで記録や思い出を撮るとのことだ。

はっきりいえば好きな人を間近で無料で写真撮れるとか神イベなのだが、依怙贔屓は宜しくない。

というかそんなことしたらバレる。

がしかし、それを完全に打開する裏技も俺は今日までに見つけて来たのだ。

そう、撮りまくる。平均数をあげればカメラ好きと思われる訳だ。我ながら天才と言えるだろう。

ということで要所要所で撮るのはもちろん、普遍的なシーンでも撮る。それはもう結構な頻度で、良さそうだなと思えば撮ることにした。

そして俺の終わりは突然来る。


3人が道を歩いている。

俺はそれを撮ろうと前に先に行く。

3人が見えたタイミングでそれを撮り…俺は言葉を失った。

そこには3人で完結された世界があった。

何の景色もない、ただ3人を映しただけのフレームはここに自分の入る余地などないと感じてしまった。

「…写真、どう?」

撮ったことに気付いたシグレさんがこちらに向かって問うてくる。

「…あ、えぇ、めちゃくちゃいいのが撮れました」

「見せてよ」

「はい、これですね」

「あ、ほんとにいいじゃん」

俺はその言葉に対し、

「はい、完成されすぎてますね」

初めて自分の心が折れた音がした。


それから4人で有名な神社に寄れば、偶然先生に会った。


「楽しんでるか?」

「えぇ」

と3人と先生が雑談してるところを撮っていれば

「…そういえばカメラ持ってたのはコウだけか?」

とマズイことを聞かれる。

「あ。確かにそうですね」

とダイくんが答えれば先生がまるでわかっているかのように

「コウ、お前…自分のこと撮ってないだろ」

とそれに追随して3人が気付く。

「そうだ、ずっと私たちばっかり撮ってるじゃん」

「なんで言わなかったんよ」

「4人で撮ろ」

…正直、とても嫌だった。いや4人で撮るのは別にいいのだが、自分が写真に映ることがとても嫌だった。

俺は、自分がいない世界が好きなのだ。写真などという、残ってしまうモノに自分を映したくなかった、が好きな人が撮ろうと言っている為にそんな細かいことは無視した。俺はそこそこチョロいのである。

先生に撮って貰った2枚だけ、俺が写ってしまったが、他百数枚は自分がいないので、まぁ適度に埋もれるだろくらいの感覚で俺は受け入れるのだった。


俺の物語はコレで終わる。

その後、何も無かったし、これ以上のイベントなど持ち合わせていない。それに大学は別々で同窓会にも彼女たちは来なかった。

俺は何も成せなかったし何にもなれなかった。

俺に残ったのはあの3人が歩いているその写真1枚だけだ。


今俺が、彼女にあったら、好きと伝えるかと自問する。

俺は間違いなく、躊躇いなくしないと言うだろう。


「俺が好きなのは、今のあの人じゃない、昔のあの時のあの人だから、好きとか、考えられないな」


ずーっと頭に残っているんだ

ここではシグレと名付けた少女が、やたら私に対して意味深なこと言ってたの

…まぁ同情とかそっちの類だろうけど…


面白ければ反応よろしくお願いします。

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