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episode1「幸福の終焉」

人間とアンドロイド。いつか共に助け合い、支え合

う。そんな時代もいつか来るかも知れない。だがこう

考える人もいるだろう。「アンドロイドは心も金属で

出来ているから愛し合うことは出来ない」と。確かにそう思う部分もある。だが私は人間を助けたり支えたりできるほどの知能があれば、愛も教えることができるのではないかと強く思っている。恋愛に対しての愛は難しいかもしれない。だが少なくとも私は親への愛、兄弟愛や姉妹愛、つまり家族であれば愛し合うことができるのではないだろうか、と言う考えを持っている。まあこれ以上は話が長くなると思われるし恐らく皆様も興味無いと思うのでさっさと終わりにして物語に移りましょう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「レーデ」と呼ばれる世界、というか国があった。人間と魔族とアンドロイドが共存している世界。そこにアンドロイドの研究をしている2人の博士がいた。男性の方はカスミ・ナギ。爽やか~で頼りになりそうな印象だが、結構ドジです。女性の方はナナ・スパークル。容姿だけ見たら普通に美人さんだが、とても騒がしくまあまあな天然です。そんな2人はアンドロイドの研究をしている学者だ。普段は製造・研究所で仲間たちとアンドロイドの構造や動き、思考などの研究を行っている。ちなみに婚約もしている。そんな常にアンドロイドと隣り合わせの日々を送っているうちに、2人は自分自身だけでアンドロイドを作ってみたいと思うようになった。その思いは日々強くなっていき、遂に研究所を退社し、フリーになった2人は今日、製造を実行する。

「長年のアンドロイドを自作する夢…遂に今日叶うんだ…!」

「ああ…長かった。本当に長かった…!」

夢のような出来事を目の前に、目を輝かせる2人。

「いやーそれにしてもアンドロイドの部品集めってこんなに大変なんだね」

「俺も思った!正直舐めてたわ…まさか3ヶ月以上かかるなんて……正直辛いと思ったこともあったよ。だけどやめたいと思ったことは無かったな。何せアンドロイドの為だもんな!」

夢を追う為の部品集めの苦労さを語り合う2人。工場や油田、染料屋に教会や電気開発機構。この日の為に一体どれだけの箇所を周ったのだろう。だが2人はいずれも「労」は感じているが「苦」は感じていない。

「そうだね~。あたしも『これもアンドロイドの為』って思ったら辛さなんてどうでもよくなったし!」

2人でアンドロイドへの愛を語り合うと、早速制作に取り掛かった。アンドロイドの制作は勿論とても長い道程で、基盤の制作・組立や配線、人工知能の搭載やモデリングなどなどを全てを1人でやらなければならない。当然直ぐに慣れるはずない。だが最初こそ苦戦を強いられたが徐々に体が慣れていき制作開始から約1週間ほどが経過した頃、遂にカスミのアンドロイドが完成した。鮮やかな青色のアンドロイド。

「よし!遂に完成だ!」

空へ向かって叫び、空に向かってガッツポーズを決めるカスミ。

「え!?一発で成功したの!?すごい!!」

「ああ!ちゃんと話すこともできるぞ!」

アンドロイド制作を一発で成功させたカスミに驚きと祝福の視線を向けるナナ。実はナナは既に一度どこかでミスをし、一度ミスした所からやり直している。

「こんにちは」

「あら可愛い♡」

「ありがとう!ナナも頑張って!」

「ナナ、頑張って」

「うん!頑張る!」

カスミとカスミのアンドロイドから応援を受け、再び奮闘するナナ。カスミと比べ、少々不器用さがあるナナだが根気だけは誰にも負けない。何度も何度もやり直し、カスミの完成から遅れること2週間と半分。7回目の挑戦で、遂にアンドロイドを完成させたナナ。これまた鮮やかな赤色のアンドロイド。

「やったー!!」

両手を空へ掲げ、全身で喜びを示すナナ。

「やったじゃないかナナ!」

「うん!ありがとう!」

そう言い、カスミとグータッチを交わすナナ。

「あたしの名前のナナとこの子の成功の7回目。運命感じちゃう!折角だしNo.7って印しておこ!」

「運命感じちゃう?」

「おーい。アンドロイドなんかお前の変な口癖覚えちゃったぞー」

「はぁ~!?変とは失礼な!」

カスミがニヤニヤしながらいじり、それをジト目で返すナナ。そしてカスミに近付き、肩をポコポコ叩くナナ。

「も~カスミってば~」

「はは、悪い悪い」

とまあそんなやり取りが数分続いた。

「じゃあナナのアンドロイドは俺のアンドロイドの妹だな!」

「おお~兄妹かぁ!推せる!」

「「兄妹?」」

「そうだよ!君たちは今日から兄妹!赤ちゃん…なんか赤ん坊みたいだけど…まあいっか!赤ちゃん!君は青くんのことを『お兄ちゃん』って呼ぶんだぞ!」

「お、お兄ちゃん?」

「お前はそう呼ばれたら返事してやるんだぞ!」

「は…はい?」

そんなアンドロイドたちの可愛らしいやり取りに、思わず我が子を見るような目で微笑む2人。だがそんな家族のことを考えると、ふと思い出してしまう。

「父さんも母さん、弟も生きてたら…俺たちにこんな感情を向けててくれてたのかな…」

「そうかもね…」

先程の穏やかな雰囲気から一転、寂しく暗い雰囲気へと変わった。実は2人は両親と最愛だった兄弟姉妹を亡くしている。原因は戦争。この国は昔から人間と魔族の間の戦争が絶えず、安心できる場所が最早何処にも無い。家族全員を亡くし自らも命を絶ち、あの世へ追おうと考え始めた頃、2人は出会った。出会った初めこそ互いの印象はあまり良くなかったが徐々に心の氷を溶かしていき、2人は互いにこの世を去ることはしないと固く誓うようになった。その後、カスミの方からプロポーズをして婚約に至った。2人の趣味は機械いじりで両親がどちらもアンドロイドの研究員だったこともあり、よく2人で機械いじりなんかもしていた。だがその才能は凄まじかった。職人でも時間がかかり苦戦するような難解な構造でも職人の何倍も早く、精密にやってのけてしまう。そんな才能に目をつけた軍の頭領が、我が軍の勢力をもっと拡大しようと2人を軍事用アンドロイドの製造、研究施設へ連れ込んだ。忘れようとしていた悲しい過去が再び甦る。しかも人を殺す軍事用アンドロイドを自らが製造する。今度は自分たちが他人の命を奪う。そんな真似、断固拒否だ。だが断れば自分たちが殺されてしまうかもしれない。まだ婚約半ば同志、死ぬことはできない。その思いもあり、研究所に入社してしまった。だがやはり自分のアンドロイドが他人の命を奪うかもしれないと思う度虫酸が走る。そして2人はこんな人殺しアンドロイドよりも人を殺さない優しいアンドロイドを作りたいと強く思うようになった。その思いと同時にこの軍への反抗心も徐々に強くなっていき遂に頂点に達し、2人は研究所から抜け出した。しかし軍から逃げたこともあって、軍からの捜索が出ている可能性もある。もう2人に安全な場所など無いのだった。

「あたし、妹のこと大好きだったんだよね。ちょっとちっちゃくて明るくて優しくて、何より可愛い!学校でもクラスの人全員と友達になるなんて言って…生きてた小学3年生までは本当にクラスメート皆と仲良くて、家族の中でも学校の中でもムードメーカーだったな~。まあちょっと騒がし過ぎるところもあったけど」

「俺も弟のことが大好きだった。謙虚で優しくてちょっと天然なところもあって可愛らしかったな。まあシャイって言っても特別明るい訳でも暗い訳でもこれ無くて本当に中間の性格だったな。だけど大切な相手にはとことん愛を注いで大切な人を傷つける事は絶対に許さない熱い“漢”でもあったな」

今でもはっきり覚えているあの日の兄弟姉妹との思い出。正直思い出したくは無かった。思い出すと悲しくて寂しくて泣きそうになるから。

「…はいやめ!この話おしまい!」

「そうだな。悪かった、こんな話して」

暫くの沈黙の後、その雰囲気を打ち消すかのように口を開く2人。

「でも、これからは楽しい日々が待ってるよ!」

「ああ、そうだな!」

そう。2人にはこれから楽しい人生が待っているという事実もある。なぜなら2人には優しさに溢れアンドロイドが2体もいる。どんなに不安でも、このメンバーでいればきっと素晴らしい日々が待っているはずだ。

「じゃあまず手始めに…」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


あの日から2ヶ月程経った。本当に楽しい日々を過ごし、思い出も沢山作った。初めこそおどおどしていたアンドロイドたちも徐々に馴れていき、今やもう甘えてくる妹を甘やかす兄みたいなと~っても仲の良い兄妹みたいになっていた。ちなみになんやかんやあってアンドロイドたちはカスミのことをお父さん、ナナのことをお母さんと呼ぶようになった。そんな幸せな日々が続いて欲しい。それが彼ら彼女らのただ1つの願いだった。しかしそんな願いも虚しく、今日で終わりを迎えてしまうことになる。

「ちなみにさ、2人は今、何が一番好きなの?」

「ああ、確かに俺も気になる。お前たちが家族になってから色んなことをしたが、何が一番お気に入りだ?」

「僕は妹です」

「私もお兄ちゃんです」

「うん、そう言ってくれるのは凄く嬉しいんだけど、今はそれ以外にして欲しいな」

「「そうですか?では家族です」」

「なんて純粋な子たちなんだ…俺は嬉しいよ…だが今は違うものにしてくれ…」

アンドロイド2人の純粋な答えに涙目になるカスミ。

「それ以外の一番好きなもの…」

「では…」

「「星空ですかね」」

「「おおー!いいねー!最高に良いセンス!!」」

「「ありがとうございます」」

いつものように自分たちの家で戯れていたときだった。

バタン!!

「「「「!!??」」」」

突然ドアが破壊され、大勢の人間たちが押し寄せてきた。服装や装備からして恐らく軍隊だろう。2人は表情を強張せながらも、冷静を装う。

「…何?」

「何とは何だ?我輩は軍から逃げ出した貴様らを回収しに来ただけだか?」

2人の前に現れたのは、2人よりも2,3周りくらい大きな体の大男。この男こそ、2人を軍へ引きつれた頭領だ。

「貴様らは素晴らしい才能を持っている。あれ程質の良い軍事アンドロイドを製造できるのは貴様らだけだ。そんな逸材が逃げたとなれば引き戻すに決まっている。こんなつまらん人生を送るよりも我が軍の戦力になった方が貴様らも嬉しいだろう?」

「はぁ?何バカなことほざいてんの?お前らみたいなのに利用されるよりこんなつまらん人生送る方がよっぽど嬉しいけど?」

「わかったらさっさと帰り…」


バン!!


「「な…!?」」

「貴様らはいつから我輩に反抗できる立場になったのだ?」

頭領は、2人に向け、発砲した。いずれもその銃弾は2人の脚を撃ち抜き、その場に倒れ込んだ。その光景を目の当たりにしたアンドロイドたちは驚きを隠せない。

「っ…!何されてももう軍に戻る気はないから!」

「俺たちは人殺しアンドロイドなんて作らない!」

「愚か者め…」

バン!!

「「あ…あ…」」

頭領は再び2人へ発砲、次は肩を撃ち抜く。その光景アンドロイドたちは唖然とする。

「来ちゃだめ!!」

2人を助けようとアンドロイドたちが寄ってくるも、ナナはそれを拒否した。もしかしたら彼らも殺されてしまうかもしれないから。

「…は、はは…お前が見込んだ逸材…殺すか?」

「…ふ…ふふ…どこまでも…バカだね」

バン!!

反抗をやめない2人に頭領は徐々に怒りを覚え、そして発砲。脇腹を撃ち抜く。

「まだ遅くはない。軍に戻ると言え。そうすれば傷も治療してやる。我輩もお前たちのような逸材を殺したくはない」

「……黙れよ…戻らないって言ってんだろ…?」

「……耳…大丈夫…?」

信念を曲げない2人に、とうとう頭領も諦めたのか大きくため息を吐く。

「1分くれてやる。遺言でも残せ」

「……優しいじゃん…?」

そう言い意識が朦朧とする中2人は倒れたまま顔だけを横へ向けた。

「……ナナ」

「…何」

「来世…でさ…俺と結婚してくれって言ったら…結婚してくれるか…?」

「ふふ…勿論だよ…あたしたちは…いつでも一緒だよ」

2人は互いに愛を告げ、そしてアンドロイドたちの方に顔を向ける。

「……ねぇ2人とも…約束して…?」

「「は、はい!」」

突然の約束事に、アンドロイドたちは

「…まず1つ、友達…沢山作れよ…」

「「…はい!」」

「……2つ目…他人には…優しくね…」

「「……はい!!」」

「そして3つめ…」

そして一拍置いてから、愛情の籠った声で伝える。

「「幸せに生きて!!」」

「「っ!!!はい!!!」」

そのとてつもなく大きな愛情に、アンドロイド2人は約束を誓う。

「ふふ…お互い兄妹に一番とびっきりの愛を注いでっていうのは…言うまでもないと思って言わなかったよ…」

「はは…今言っちゃったじゃないか」

「はは…でも勿論言われなくても、僕は妹のことをこの世で一番愛していますよ。これまでもこれからもずっと変わることはないでしょう。勿論お父さんとお母さんのこともとても愛しています」

「私も同じです。お兄ちゃんは私の生涯の宝物で、この世で一番愛してます。未来永劫この想いは代わりません。私たちを出会わせてくれたお父さんとお母さんには感謝しきれません」

「ふふ、その言葉を聞けて安心した」

「これでよく眠れそうだ」

4人は向かい合い、そして笑い合う。たとえ人間と機械でも、彼ら彼女らは家族なのだ。種族なんて関係ない。

「タイムリミットだ。」

「ああ…1分も待ってくれてありがとう」

そう言い頭領は拳銃を2人の方へ向ける。

「「それじゃあ…」」

最後にアンドロイド2人の方へ顔を向け、

「「さようなら、大事な子供たち」」

バン!!

その銃弾は心臓を撃ち抜く。

「…ふん、バカな奴らめ」

頭領は2人の亡骸を見下ろし、呟く。

「では…」

「「え?」」

頭領は部下数人とアンドロイド2人に寄る。

「こいつらは持ち帰るとしよう。才能が残した唯一の遺産だからな」

そう言い頭領と部下はアンドロイド2人を持ち上げ、家を後にした。

(嫌だ…こいつらに連れてかれれば、お父さんとお母さんとの約束、全部守れない…)

(お父さんとお母さんを殺したこいつらの見方なんてしたくない)

((…抵抗してやる…!))

連れてかれて数十分ほど経った頃、視界の悪い森へ入った。

((今だ!!))

チャンスと思い、2人は今出せる力を全て出し全力で反抗する。

「な!お、お前ら!暴れるな!」

突然の出来事に、部下は驚く。

「何事だ」

「と、頭領!こいつらが突然暴れ出して…!」

頭領がこちらに顔を向け、やれやれといった表情をする。

「そのくらい耐えろ。だが腐っても他人を傷つけぬあいつらの作ったアンドロイドだ、改造の必要はありそうだ」

そう言い、アンドロイドたちに近づこうとしたとき、

バン!!

「ん?なん……」

突然横から銃弾が飛んできて、頭領の脇腹を撃ち抜いた。

「頭領!」

「な…何事だ…!」

頭領はその場に倒れ込みそうになり、空かさず部下が肩を支える。すると銃弾の飛んできた方向から、謎の集団がやってきた。

「あれ?こいつ頭領じゃね?ラッキー」

「き、貴様ら…魔族か!」

「ご名答。1億点あげる」

謎の集団の正体は魔族の軍隊だった。どうやら先程のカスミとナナの家を襲撃したとき魔族軍のスパイが紛れ込んでおり、精密なアンドロイドを入手したことが魔族軍に伝わっていたのだ。

「いやーまさかスパイに気付かないなんて…人間こ頭領というのも落ちたものだねぇ」

「き、貴様…!」

「じゃ、バイバ~イ」

バン!!

魔族軍の頭領が銃弾を放ち、人間軍の頭領の心臓を撃ち抜いた。人間軍の頭領はその場に倒れ、息絶えた。

「と、頭領!!」

「じゃ、残りの奴らもやっちゃいますか」

「く…!全員、魔族軍に攻撃だ!」

そう言い、全員が武器を持ち、魔族軍へ威嚇する。

「お、やる気だね~。面白い、受けて立つよ」

そして魔族軍も武器を出す。

「「行け!」」

人間軍頭領の部下と魔族軍頭領の部下の掛け声で、遂に戦いが始まった。銃弾があちこち飛び交わし、凄まじい勢いで銃撃音が鳴り響く。

((今のうちに…!))

2人は隙を見計らい、逃げ出そうとするが、

「おっと、逃がさないよ?」

「「!!」」

戦いつつも、アンドロイドに目を向けていた魔族軍の一員に道を塞がれてしまう。2人は踵を返し、反対へ逃げようとするも、

「逃がすか!」

「「っ!!」」

今度は人間軍の一員に道を塞がれてしまう。

((どうすれば…!))

2人は必死に考える。どうすればこの状況を打破できる?どうすれば彼らに気付かれることなく逃げ出せる?だが見張りがいる以上気付かれずに逃げ出すことはほぼ不可能だ。2人は全力で頭を回す。だが…

「クソ!こうなったらせめてこの青い方だけでも!」

「「な…!?」」

人間軍は全滅寸前。ならばせめてと1体だけでも自軍へ持ち帰りたいと考え、他の者が囮となり数人で兄を連れて行ってしまった。するとアンドロイドが1体足りないことに気が付いた魔族軍頭領が首を傾げる。

「あれ?逃がした?」

「すみません頭領。敵軍数名とアンドロイド1体を取り逃してしまいました」

「あらら。まあいいや、もう一体いるし」

そう言い残りの囮も始末し、妹を連れ帰る。

(嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!!これじゃお父さんとお母さんとの約束、何も守れないしそれに何より…)

(クソ!まさか片方だけを連れ去るなんて!これじゃ約束を守れないし、それに…)

((妹/お兄ちゃんと離れ離れに!))

そう思いながら2人は反抗しようとするも…

((もうバッテリーが切れそう…))

残りのバッテリーが僅かになってしまい、思うように体を動かすことができず、素直に連れ去られる事しかできない。2人はそんな自分自身に対し、悔しさと嫌悪感を覚える。

((決めた…!))

バッテリーが切れる直前2人の思いは以心伝心する。その思いは…

((絶対軍の思い通りにならない…!!お父さんとお母さんと…そして妹/お兄ちゃんの為に!!))


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


あの日から丁度2年程経った頃だろうか。兄は人間軍の剣士に、妹は魔王軍の魔王。いずれも最高と言っていい程重要な役割を担うことになっていた。それほどまでに2人は高性能なアンドロイドだった。

((さて、これからどうするかな…))

2人は連れ去られた後、軍によって様々な改造を施され、見た目上と性能上は殺人兵器へと変貌してしまった。だが、いずれの軍もアンドロイドに“心”があるとは思っておらず、さらに両親が残したメモリーのお陰で感情や記憶、思いは一切変わっていない。こんなこと言うのは何だが、兄のいる人間軍と妹のいる魔族軍は頭領とその配下以外はかなりのマヌケ集団なので今まで兄妹が他人を攻撃していない事に気付いていない。だがあの日、逃げ出そうとした前科があるため対策にセンサーを付けられている。なので逃げ出すことはできない。

(ここにいる奴らを全員潰せば万事解決なんだけど…流石にリスクがありすぎる。それに人を傷つけるという行為、お父さんとお母さんの意思に反する…だが早くしないと戦争が始まってしまう…!)

周りは武器や隊服を見に着けた軍隊の者ばかりで、もしこんな場所で余計なことをしようものなら、本当に何をされるかわからない。さらに戦争を2日後に控えた今日、策を練る時間も残されていない。それは時を同じくして妹も同じ思いを抱いていた。

(どうしよう…もしこの戦争が始まっちゃったら…)

そう、もし戦争なんて始まったら、

((妹/お兄ちゃんが殺されちゃうかもしれない!!))

それだけは絶対に阻止したい。亡き両親との約束を果たせないのは勿論、2人もこれ以上大切な人を失いたくない。しかも失おうとしている相手は、この世で一番愛している相手だ。だが人殺しも逃げ出すこともできない。どうしたらいいか考えて考えて考えて…

((なら…一か八かやってみるしかない!!))



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「今日はこの国の未来が懸かった大事な戦いだ!負けることは絶対に許されない!狙うは敵将の首!だが噂によれば敵将はあの時逃したアンドロイドとのこと。こちらの軍のアンドロイドがこれだけ高性能なのだからなかなか侮れないだろう。呉々も気を付けるように」

(よりにもよって敵将に抜粋されたのか…)

時を同じくして魔族軍。

「今日は絶対に負けられない戦争だから~呉々も足を引っ張らないようにね~?もし無能って判断したらその場でバンだからね?あ、あと聞いた話だと相手軍のエース、あんとき逃がしたアンドロイドらしいのよ。うちのアンドロイドも強いけどこれだけの性能だから一緒にいたあいつも絶対強いから~。舐めてかかって瞬殺されないようにね~」

(嘘…お兄ちゃんがエース…?)

ここに来て初めて互いが重要な役割を担っていたことを知る。その事実に2人は頭を悩ませる。互いが助かるには戦争を引き分けにするように動かなければならない。だが幾ら高性能アンドロイドと言えど1人で戦況を動かすのはやはり相当厳しい。それにこの策事態、軍人の心任せで成功の保証はない。だがもうやるしかない。兄妹を救うためには。


バン!!


「な…!まだ開戦時刻ではないぞ!?……いや…魔族の奴らが約束を守る訳ないか…ならばこちらも!総員!攻撃開始だ!!」

いよいよ始まった戦争。あの時とは比べ物にならない程の大きな銃撃音や軍人の声。それに加え戦車や大砲、軍事アンドロイドなどの機械も加わる大規模な戦争。そして開戦から数分経った頃、兄妹は作戦を実行しようとしていた。

(そろそろか…)

タイミングを見計らい、


ドン!!


「な、なんだ!?」

突然目の前で木が倒れ、戸惑いを見せる人間軍たち。そう、兄妹の考えた作戦は自軍の妨害。気付かれた時のリスクは尋常ではない程高い。だが兄妹を助けるためにはこれしかない。

(よし。次は…)


ドドドド!!!!


「な…!崖が崩れてきた!下がれ!」

崖の側にいた軍人は直ぐ様後ろへ下がる。

「と、頭領!戦車の大砲が撃てません!」

「なに!?整備を怠ったのか!」

「いえ!先程までは問題なかったのですがいきなり放てなく…」

「どうなっているんだ…」

一方魔族軍では妹が作戦に移っていた。

「頭領!大砲の弾が出ません!」

「え?さっきまで撃ててたじゃん」

「あ!頭領!崖崩れです!下がってください!」

魔族軍も突然のアクシデントに戸惑いを隠せない。

「な…!ば、爆薬に引火した!離れろ!」


ドカーン!!!


凄まじい爆発音に、魔族軍だけでなくかなり遠くに離れている人間軍ですら音に反応してしまう。その後もアンドロイドたちの妨害が続き、一向に戦いが進まない。

「クソ!どうなっているんだ今日は!」

((よし!この調子で…))

「ストーップ。一回バトルやめて~」

突然魔族軍頭領が戦いを止めるよう発言した。

「その手には乗らないぞ魔族軍!」

「いやいや、ホントに一回待って」

その本気で戦争を止めるよう言う魔族軍に、人間軍は困惑しながらも一度武器を下ろす。

「何の真似だ魔族軍!」

「予想外のアクシデント連発でさ~お互いの軍人と兵器、ちょっと調子悪くしちゃってない?」

「どういうことだ?」

「まぁつまり、ちょっとお互い少し立て直す時間が欲しいんじゃない?」

「む…確かに…」

「という訳で~、一旦全員解散。また1ヶ月後、ここで戦おうか」

((よし!作戦成功だ!))

びっくりするほど上手くいき、2人は内心ガッツポーズを決める。しかし、作戦成功とは言った物の、あくまでも一時的に動きを止めたに過ぎない。またすぐに戦争は始まる。だったら戦を起こす度、反抗するまで。



「おい、なんだこの大砲!全然よくならないぞ!?」

「こっちの戦車も駄目だ。なんなら配線がやられてる」

「な!?ありえない!たかが崖崩れで配線がやられるなんて…!」

「おい、道具どこ置いた?」

「そこに置いておいただろ…って…あれ?無い…?」



「おい!まだ直らないのか!」

「すみません。この部品がもう駄目なので新しい物に取り替える必要があり…」

「何?どういうことだ。その兵器は被害を受けていなかったはずだろう?」

「はい…ですがご覧の通り酷い有り様で…いつこうなったのか検討も付かず…」

「おいおいおい…何か修理道具までイカれてるんだけど。どうなってんだ…?」



そうして何も進捗の無いまま戦争再開の日へ。2人は立て直し期間中も妨害を続け、なるべく兵器の性能や軍人の勢力を下げるよう努めた。だが…

「ねぇ。そっちの兵器、直った?」

「いや、全く…クソ…どうなってんだ…?」

「そうそう。“明らかに”おかしいよね、君たち」

そう言い、意味深な表情でアンドロイド2人に視線を移す魔族軍頭領。

((まさかバレた…?))

その、まるで全て見透かしているような振る舞いを見せる魔族軍頭領に内心焦りを見せる2人。だがその嫌な予感も的中してしまう。

「ってことはさ~もしかしたら、お互いの軍に裏切り者がいるんじゃない?」

「確かに一理ある…だが一体誰が…」

「いや、そんなのお互い1人しかいないじゃん。ほら」

「1人って……な!?ま…まさか!あのアンドロイド!?」

「お、ご名答。そうとしか考えられない。このアンドロイドくんたちを作った奴が戦争反対派だったらしいし、アンドロイドくんたちにもそうプログラムしてるんでしょ。それにそいつら相当優秀だったって聞いてるから、僕たちには出来ない技術でメモリーでも入れてたかもしれない」

「確かに…奴らは千年に一度の天才だった。我々のわからないようにメモリーを仕組むことも可能だったということか…」

すべて見透かされてた。正直、以前の成功で少し余裕と感じていていたかもしれない。いや、そもそも以前の時点で気付かれていた可能性もある。その気持ちの緩みが仇となった。

「いやー今までよくもまあ邪魔してくれたね~君たち」

「貴様ら、よくも今まで…いや、そもそも奴らの作った機械を信用した私たちがバカだった」

「「…っ!」」

軍人たちの憎悪の籠った眼差し。この瞬間、とてつもない後悔が2人を襲った。なぜもっと慎重にやらなかったのか。そもそもなぜこんなリスキーな作戦に出たのか。兄妹を助けたいならば、もっと良い方法があったのではないか。軍に入ってからの全ての行動が間違っていたのではないか。だがもう考えても遅い。過ぎた時間はもう戻らない。

「人間。互いの為に、ここは一度こいつらぶっ壊しちゃおう。」

「ああ」

「「っ!捕まってたまるか!」」

「残念」

「「な!?うあああああああ!!!」」

もう逃げ出すしかない。そう思い走り出したのも束の間、なんと魔族軍と人間軍、揃いも揃ってブレーカーを仕込んでいた。その強力な電撃に、2人はその場へ倒れ込む。そして動けなくなった所を魔族軍が2人を縄で縛り、固定した。そこに人間軍が爆弾を付ける。

「ふん。愚かな物どもだ。最期まで奴らにそっくりだな」

「あの世でご両親によろしくって言っといてね~」

そう言い魔族軍頭領が爆弾に火をつけ、そのまま崖下へと落とす。

「お兄ちゃん…“あたし”会いたかったよ…ずっと…」

「ああ…“俺”もずっと会いたかった。もう一生会えないのかと思っていたよ…」

「あたし、約束何一つ守れなかった。友達も作れなかったし、妨害ばっかりして他人に優しくなんてしてないし、幸せに生きることも出来なかった…」

「お前だけじゃない…俺もだ。お父さんとお母さんとの約束、守れなかった。だけと何一つ守れなかった訳じゃない。俺、昔から変わらずずっとお前のことを一番愛してた。それだけは絶対に揺るがない事実だ」

「うん…!そうだよ!あたし、お兄ちゃんのことずっと愛してた!この世で一番愛してた!」

「そうか…なら、お互い何一つ守れなかったって訳じゃないな」

「うん!」

死の間際、2人は今までの反省。そして互いへの愛を告げる。今まで愛を注いであげられなかった分、心を込めて名一杯。

「…ねえお兄ちゃん。あたしと1つ約束して欲しいの」

「何だ?」

そうして、一拍置いてから心の籠った暖かい声で告げる。

「来世でも、あたしと兄妹になって!」

「ああ!勿論だ!」

その妹の愛の籠った視線に、兄もまた同じ視線で返す。

「…そろそろタイムリミットかな」

「ああ…そうみたいだな」

このやり取り中にも爆弾の線は徐々に迫って来て、もう爆発寸前のところまで来ていた。

「「それじゃ…」」

そうして2人は大きく息を吸い、一言。

「「さようなら!最愛の兄妹!」」


ドカーーーーン!!!!


最期は互いに愛を告げ、儚く散っていった。

どうも、私です。大将という者です。間違えた、大賞…違う、対象…対照…対症(cut。タイショーさんです。さて、今回初めて作品を書かせてもらいましたがまず1つ、私は理系の人間なので難しい言葉は何も分かりませんし文章を書くのもあまり得意ではないので所々言葉遣いや句読点の使い方がヘンテコな場合があると思います。ご了承していただけると幸いです。え、じゃあ何で物語書こうと思ったかって?それは書きたかったからです。というか書いて見たかったからです。それだけでございます。納得いただけたでしょうか?何?納得出来ない?仕方ない、軽く経緯についてお話するとしますか。興味無い人は読まなくても結構です。というかあとがきに興味がある人あまりいないと思いますが。すみません、話を戻します。事の発端は非常にシンプル。現代から異世界に転生はあるけど異世界にから現代に転生ってあんまり聞いたこと無いと思ったからです。文を書くことはあまり得意ではないと言いましたが文を読むことは割と好きな方です。そして私の書いた物語を皆様に評価してもらいたい、と言うのが理由です。是非是非私のような日本語が下手な人の物語を評価していただけると嬉しい限りです。ではお早めではありますが、これであとがきは終了したいと思います。この物語を見てくださった皆様、本当にありがとうございます!嬉し過ぎて一生床に頭を打ち続ける人生を私は送ることでしょう。2話でお会いしましょう。では

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