サイキッカーDF、母校へサプライズ訪問
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「勝気おにいちゃんだぞ〜」
「「きゃっ♪きゃっ♪」」
幼稚園児となった勝気は赤子の与一、輝羅を前に自己紹介する。
血筋なのか初対面にも関わらず、彼を見た時に双子は揃って笑っていた。
此処は神山家のリビングで、弥一は輝咲や息子達を連れて仕事の為に一時帰国。
そこで久々となる神山家で兄貴分の家族と再会する。
「お前、本当に父親になったんだなぁ」
「生まれたって写真送ったじゃーん。信じてなかったー?」
勝也と向かい合う形で椅子に座る弥一。
兄貴分からすれば高校時代から彼の容姿に変化は全く無くて、今もランドセルを背負えば似合いそうな少年の姿だ。
そんな彼が二児の父親とは信じられないが、我が子と遊ぶ姿を見れば本当なんだと実感する。
「輝咲さん、弥一君美味しい物好きだから大変じゃない?外食行ったりとか……」
弥一の隣には輝咲、勝也の隣には京子と、夫婦が向かい合って座っていた。
京子だけでなく勝也も立見時代、弥一が美味しいグルメ目当てで買い食いしたり、外食に多く行っていた姿を見てきている。
それに輝咲は首をゆっくり横に振った。
「弥一君はイタリア渡ってから外食を全然しなくなりましたよ。誘いがあっても行かずに真っ直ぐ家へ帰って、子育てを手伝ったりしてますから」
「マジか。あの弥一が……!?」
弥一は自らが築き上げた城で、愛する妻や子供達と過ごす事を最優先としていて誘いは受けない。
東京アウラに所属していた時、日本各地のグルメをアウェー戦の度に楽しみだと聞いている勝也からすれば、驚愕の変化だ。
「だって家に最高の家族と食事が待ってるのに、寄り道なんかしないでしょー♪」
「胸一杯過ぎてご馳走様って感じだわ」
何も恥ずかしがらずに弥一は輝咲のご飯が最高と言い切り、夫にそう言われた妻の方は頬をほんのりと赤らめて微笑む。
勝也から見れば日本で結婚式を行った時と変わらず熱いなと感じる。
「その食事も弥一君が結構作るようになってきてるけどね」
「料理……それもやるようになったのか」
「安藤先輩の後を追って料理男子目指してみました☆」
輝咲が子供を見ていて忙しく、手が離せない時は弥一が作る時が多い神明寺家。
軽く舌を出してのギャルピースを決める弥一に、勝也は段々父親としても自分を超えてきてないかと思ってしまう。
あの双子が生まれた事で父親としての自覚を強く持ち、自身も選手だけでなく様々な活動で忙しいはずなのに、それでも輝咲のサポートに全力を尽くす。
そんな弥一に輝咲も強く惹かれているのだろう。
「何かもう色々と変な気持ちだわ」
「どしたの勝兄貴ー、車酔いでもしたー?」
勝也は今、車の助手席に乗っていて運転は弥一がしている。
妻2人は神山家に残って子供を見ながら、ガールズトークで花を咲かせていた。
「いや、なんつーか……色々お前大人になったなぁ。相変わらずチビだけど」
「最後だけ余計だし〜」
そう言われても弥一は陽気な笑顔を見せて、久々となる兄貴分と2人の会話を楽しむ。
「そこはもう20なんだから、ちゃんと大人にならなきゃねー」
「ま、そりゃそうか。もう10代のガキじゃねぇからな俺達」
弥一と勝也は共に20代となって、世間的に大人の仲間入りを果たしている。
「10年前とか想像出来たか?こうなってるっていう未来を」
「その頃ならイタリア行く事も全く考えてなかった頃だねー。多分僕達が柳FCで優勝した時ぐらいだろうし」
「あれからもう10年ぐらい──速ぇな」
2人にとって思い出深い、柳FCでのサッカー。
そこで弥一と勝也はサッカーを学んで成長し、その後の道へと繋いで進む。
「(あそこで勝兄貴と会っていなかったら、間違いなく今の僕はいなくて──下手したら生きてるのかも怪しかったかもね……)」
この前のコメットと会話をした事を切っ掛けに、自分の中で封印されていた記憶は蘇る。
昔の弥一は自らの超能力に苦しみ、人と接する事が出来ていなかった。
それがサッカーを通じて勝也と出会い、彼と過ごしてる内に自分の力をコントロールする事に成功。
今となってはあれが弥一の人生で最大のターニングポイントだ。
そして車の行き先は弥一もだが、勝也にとって特に欠かせない場所。
自らが作り上げたサッカー部のある立見高校。
車は今、そこに向かって走らせている。
「──此処も久々だな」
勝也は隣の弥一と共に懐かしの母校を正門越しで眺めていた。
共に帽子やサングラスを身に着け、周囲からは分からないように変装している状態。
弥一も勝也もサッカー選手として有名人で、町中に彼らを見かければパニックとなるかもしれないからだ。
「あの、すみません!もしかして……神山選手と神明寺選手ですか!?」
すると彼ら2人の背後から声がして振り返り、そこには立見の制服を着た男子生徒達が立っている。
「僕達、立見サッカー部です! まさか伝説の2人に会えるなんて!」
いずれも目を輝かせたまま2人を見て、弥一は彼らの心を覗けば嘘を言っていないと、すぐに分かった。
「お、大げさだな何か……」
「とりあえず君達し〜、此処で大騒ぎはダメよ〜」
勝也がビックリする隣で弥一は自分の口に人差し指を当てて、静かにするように要求。
それで後輩を大人しくする辺り、相変わらず年下を手懐け慣れている。
「──まさか、急に2人が揃って此処に来るなんて流石に驚きましたよ」
あれから立見の校内へ入り、懐かしのサッカー部に顔を出した弥一と勝也の前へ京谷は現れた。
京子の従弟として、2人とは前から顔を合わせていたので流石に騒ぐ事は無い。
「いや、俺も来る予定とか無かったんだけどよ……」
「折角2人揃ったからビックリさせようと思ってねー♪」
「相変わらず姿も性格も子供みたいですね貴方は」
「ひっど!?年上に言う事じゃないよ〜」
困ったように右手で軽く頭を掻く勝也は弥一に行こうと誘われ、付き合っただけ。
大半の後輩が弥一を慕う中、京谷だけは遠慮が無くズバズバと言う。
それで当時、弥一を崇拝する氷神兄弟とは相当仲が悪かったらしい。
「じゃ、俺は練習あるんで。好きに見て懐かしく思ってて良いですよ」
京谷はそれだけ言うと練習へ向かって行った。
「今時の高校生ってあんな感じかねぇ?」
遠慮の無い京谷に対して勝也は昔からもっと可愛かったのに、と呟く。
「確か立見、牙裏に優勝を持ってかれてるから今度こそってリベンジに燃えてるんだろうな〜」
海外に身を置いているが、弥一は立見の現状は摩央を通じて知っている。
立見は優勝を今の高校No.1キーパーと言われる、三好五郎の牙裏学園に防がれて連覇の道は途絶えていた。
それでも後を継いだ京谷達が奪われた王者の座を取り戻そうと、皆が練習に励んでいる。
今では2軍だけでなく3軍もあり、近々4軍も作ってサッカーグラウンドを更に増やすつもりらしい。
「始まりから、こんな大きくなっちまうとは……凄ぇ事したんだなぁ俺」
今更ながら勝也は自分がどれだけ大きな事をしたのか実感。
彼が始めていなければ今のような立見サッカー部は出来ず、誰も集わなかった事だろう。
「勝兄貴、本当に凄い事をするのは今からじゃない?」
「──ああ、そうだな」
弥一は立見の偉業を越える大きな事は、これからだと兄貴分へ明るい笑顔で見上げた。
その顔を見て勝也も笑みを見せる。
2人は後輩達が練習に励む姿を見ながら考えていた。
次に凱旋する時は五輪の金メダルを持ってきたら、最高だろうなと──。
弥一「2人が大きくなった時に備えて、炒飯やカレーにパスタとか作れるようになったんだよね〜♪」
勝也「炒飯なら俺だって作れるからな」
弥一「お、じゃあどっちの炒飯が美味しいか対決やっちゃうー?」
勝也「良いぜ、そこも俺は負けねぇし!」
弥一「あ、ちゃんと忖度無いようにどっちが作った炒飯か分からないようにねー」
勝也「って企画レベルでガチだなそれ!?」
弥一「そこは動画出たりした経験のおかげで♪」




