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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
始まりの彼が存在する物語 五輪 始動編

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2人のサイキッカー

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「ヤイチはどうした?」



 宿泊するドイツのホテルへ戻るミラン専用のバス内で、彼の姿だけ無い事に気づいたアドルフは車内を見て探す。



「スタジアムでゆっくりしてから自分で帰る、だそうだ」



 弥一本人から先に帰っててほしいとディーンは聞いており、皆へ彼からの伝言を伝えた。



「良いのかな。そんな単独で勝手な行動するってー」



「あいつ美味しいグルメ好きだから、ドイツの美味しい食べ物を堪能したくなったんじゃないー?」



 良くないだろうとサルクが問題視してる横で、トルクは弥一がグルメ目当てで単独行動に出たんだと思っている。



 以前も彼はアウェーの国に着いて、美味いグルメ目当てで1人勝手に行った事があるので、今回もそうなのだろうと。



「そういえば弥一によく似た奴が最近サッカーじゃない所で活躍してるよな」



「おお、知ってる知ってる。確かアメリカの資産家の息子だよな?サッカークラブに所属してるけど、全然試合出なくてビジネスの方で大成功してるとか」



 彼らは知らない、弥一がその人物と共に居る事を。




 ドルドムットのスタンドで対峙する2人の人物。



 コメットが柔らかな笑みを浮かべているのに対して弥一に笑みは無く、同じ目線の彼を見ていた。



「よく笑う君も、そんな顔をする時があるんだね。それは流石にデータ不足だったよ」



 弥一がよく笑っている事は、これまでのデータを収集して分かっている。


 その彼は今、滅多に見せない顔を浮かべたままだ。



「……君が僕と同じ?」



「今の君は信じられない気持ちでいっぱいだ。自分や自分の血を受け継ぎ、生まれた双子の子供達を除けば誰もいない……かな?」



「!」



 自分の今思っている事、それをコメットに言い当てられて弥一は再び驚く。



 生まれてきた子供達にも超能力が備わってる事なんか誰にも言っていない。


 調べても出てくるはずのない事実だが、コメットは何故か知っている。



「この力を持ってから僕は自分と同じ能力を持つ者がいないか、探し続けた。常人じゃ考えられないような事をする、あらゆるジャンルの者達に会ってきた」



 目を伏せたまま、コメットは今までの事を振り返るように話す。



「でも、結局は全員が僕のような超能力なんか持たない、ただの人間だ。この力を持つのは自分だけなのかと、常に考えてたものだよ」



 そう語りながらコメットは目をゆっくり開ければ、弥一の顔を見て再び笑みを浮かべる。



「現時点で僕と同じ立場なのは、世界で君だけだったよ神明寺弥一」



 つまり心を読める力を持ったのは、今この場に立っている2人のみ。


 言われる前から弥一は理解が出来ていた。



『(理解出来たかな?)』



「!?」



 頭の中でコメットの声が聞こえると、またしても弥一に衝撃が襲う。



『(どうやら能力を持つ者同士なら、こうしてテレパシーで会話をする事が出来るみたいだね。君も試してみるといい)』



『(……本当にこれ、聞こえてる?)』



『(流石、飲み込みが速いな)』



 コメットがやっていたのを弥一も言いたい事を念じて試すと、心の中で話す事に成功する。



 外から見れば黙って互いに見つめ合っているようにしか見えず、彼らが心で会話をしている事など誰も思わないだろう。



「まぁ、この力に気付いた時には戸惑ったりしていたけどね──他の人には決して聞こえない声が聞こえてしまう」



 テレパシーでの会話ではなく直接、声での会話をコメットから再開させていた。



 彼の言葉、一つ一つに弥一は身に覚えがある。



「君もそうだったんだろう?この力に気付いた最初の頃を今一度、振り返ってみたまえ」



「……」



 この力に目覚めた最初の頃、それは弥一が小学校時代に勝也と出会う以前まで遡っていく──。





「(おそとはいろいろきこえちゃう……)」



 幼稚園に母の涼香に付き添われて通っていた頃、弥一には様々な声が聞こえ始めていた。



「ママ、なんかすごくこえがきこえるよ」



「え、そう?ママ別にそんな聞こえてないんだけどなぁ……」



 涼香にとっては時折、人々が話すような声は聞こえていたが凄くと言う程ではない。


 だが、弥一からすれば煩いぐらいに聞こえてしまう。




「(あの女マジ良い!口説こっかなぁ〜)」



「(はぁ?こっからこんな展開に持ってくってありぃ?)」



「(バイトめんどくさ!もうかったるいし、やってらんないわぁ〜)」




「あぅぁぁ……!」



 人々の心に隠された声が一気に聞こえ、幼い弥一は両耳を塞いでしゃがみこんでしまう。



「(また面接落ちたし……何時受かんのよ!)」「(あの上司マジうぜぇ、早く消えてくれりゃいいのによ!)」「(金欲しい、金欲しい、金欲しい……!)」「(毎日もうしんどい……)」「(ざけんなよクソが!)」




「うわぁぁぁん!!」



 聞きたくないのに次々と聞こえてしまう人々の心の声、幼い彼には耐えきれなくて、どうすればいいのか分からず泣き出す。



「弥一!?どうしたの弥一!?」



 息子が急に様子がおかしくなって、涼香は心配そうに弥一を抱き締めた。


 彼にとって唯一の救いは、母の心の声が本当に心配する暖かい声だった事だ。




 それからの弥一は人の輪に入れず、1人でいる事が多くなる。


 親しい友人が出来て一緒に遊んだりするのも出来ないまま、彼は自ら孤立していった。



 知らない者と関われば、多くの声をまた聞いてしまうから。



 家で1人遊ぶ事が多くなり、その中で彼はテレビを見る。



「(凄い……)」



 華麗にボールを選手達が蹴り合い、そこでゴールを決めたり守ったりと、弥一はサッカーへ夢中になっていく。


 この時は心の不安も忘れられた。



「あぅっ……!」



 両親から買ってもらったサッカーボールを見様見真似で蹴るも、最初は上手くいくはずもない。


 見当違いな所へ蹴ってしまうのが日常茶飯事だった。



 サッカーに関わり、ボールを蹴り続けていれば自分の抱える不安が薄れるのに気づけば、いつしか1人でリフティングをするのが日課となる。



 その孤独が皮肉な事に彼の技術を磨かせ、運命の出会いへと繋がっていった──。




「神山勝也との出会い、それが君を安定させた訳だ」



 弥一の精神は現実へ戻ると、もう1人のサイキッカーと改めて向き合う。



「(ああ、そうだった……心を読むコントロールを出来てなかった時は頻繁に声が聞こえてたっけか)」



 己の中で無意識に封印していた記憶。



 弥一が超能力に目覚めた最初の頃は今のような社交的ではなく、人を避けていて幼稚園や小学校では孤立する。


 力を扱えず当時はデメリットでしかなかった。



 勝也との出会い、それは弥一のサッカーだけに留まらず、人生においても大きな転機となっている。



 彼と過ごすようになって以降、弥一の持つ力は安定して自然とコントロールが可能となったのだ。



「どうやら物心ついて間もない頃は、力が上手く扱えなくて苦労していたようだね。その点で言えば僕達は一致している」



 思っていた事を心で読んだらしく、コメットの目は弥一を捉えて離さない。



「それはつまり──君も苦労したんだ?」



「まぁね、幼い子供が心を読む力を有効活用なんか出来る訳がない。……それまでは生き地獄だったさ」



「……」



 互いに幼少期は超能力のコントロールが出来なくて、頻繁に耳鳴りぐらい人の声が聞こえてしまう。


 当時の弥一、そしてコメットには辛い環境だ。



 その時の事を思い出したのか、初めてコメットは笑みを消して目を伏せる。



 だが、それも僅かな間で再び顔を上げた。



「今の僕達は互いに地獄を潜り抜け、力を我が物とした事で強いアドバンテージを持った。この世の誰よりもね」



 コメットはスタンドからドイツの空を見上げ、両手を広げる。



「君はユースで世界一を勝ち取り、プロとしてもビッグクラブに移籍で成功者だ。しかし──それで満足かい?」



「どういう意味?」



 再び弥一に視線が向くと、コメットは先程と違う笑みを見せていた。


 その目は何かの野望に満ちているかのように。



「この力に目覚め、使い続けて分かったんだよ。人の心を掌握し、どんなに偽ろうが真実の心を見つけ出せる。これは……活用法によっては国1つをも動かしかねない強大な力だ」



 するとコメットは弥一を真っ直ぐ見ながら右手を差し出す。



「単刀直入に言おう、神明寺弥一……僕と手を組まないか?」

弥一「本当、勝兄貴に会っていなかったらどうなってたのか……それを思うとゾッとするかもね」


勝也「会っていなかったらか……お互いどうなってたんだろうなそれ?」


弥一「まぁ、くら〜いルートになりそうだから多分書かないと思うけど〜」


勝也「確かに楽しい道じゃなさそうか……弥一いなかったら色々と出来ていなかった事あるしよ」


弥一「歩くなら明るい道が良いからねー♪」

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