アジアを飛び越えて世界へ!
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
日本がベスト4に勝ち上がり、U-20ワールドカップ出場を決めた試合結果。
それは翌日のスポーツニュースで流れて、U-20日本代表の快挙は日本のサッカーファン全体へと知れ渡っていく。
ただ若き日本代表の活躍は此処で留まらず、彼らは更に上へ向かって昇ろうとしていた。
日本と同じくベスト4まで勝ち上がった韓国、オーストラリア、サウジアラビア。
今度はアジアの強国同士による、アジアの頂点を目指す戦いが始まる。
『日本、決勝進出を懸けてサウジアラビアとの試合は意外な展開!中東の中でも1、2を争うサウジアラビアから日本なんと怒涛の3得点!』
『照皇君が蘇ってますね、今までの鬱憤を晴らすような暴れっぷりですよ!』
アジアカップ準決勝の日本VSサウジアラビアの試合。
前半から日本は積極的に前へ出ると、相手の守備陣をパスで揺さぶってから、スタメン出場の明がゴール前へスルーパス。
そこに走り込んだ照皇が抜け出して左足で先制ゴール。
更に左サイドの月城が左足でクロスを上げて、照皇が高い打点のヘディングを決めて2点目。
負傷した室の穴を埋めるような頭での得点、スランプを脱した照皇は止まらなかった。
「やっちゃえ、やっちゃえ照さんハットトリックー♪」
後ろからの弥一による声援に近いコーチングも止まらず、照皇の背中を押すように声を出す。
「(声掛けなくても今のマコならやってくれるだろうよ)」
幼馴染として龍尾は分かっている。
今の照皇がゾーンに入っている事に。
「(出場を決めたから今のサウジは本気じゃなく、まだ集中に入ってないって神明寺先輩の言った通りだった……!)」
明は弥一から言われた通り開始から前に出て、攻撃の起点となり活躍を見せていた。
このゴールラッシュは弥一がサウジの心を覗き込み、油断している事のおかげだと後輩が気づく気配は無い。
それに加えて好調な照皇が止まらず、彼は再び明からのスルーパスに反応してゴール前で球を持つ。
だが、いくら本戦出場を決めたからといって、これ以上やられたくないサウジはDFが厳しく寄せていく。
「オォォッ!!」
「っ!?」
前回の試合で荒々しさも兼ね備えるようになった照皇。
相手DFの荒っぽい守備も強引に突破すると、先程と同じくGKとの1対1を確実に右足で決める。
『決めたぁぁ!照皇ハットトリック!勢いが止まらないぞ照皇誠!!』
準決勝で自身の3点目を決めた照皇。
アジアの強いDFでも今の彼を簡単には止められない。
このまま日本がサウジアラビア相手に完勝、決勝進出となる。
日本4ー0サウジアラビア
照皇3
酒井1
マン・オブ・ザ・マッチ
照皇誠
そしてアジアの頂点を決める決勝戦、相手はオーストラリア。
韓国のエースであるユンジェイを封じたエースキラー、レヴィンを中心とする鉄壁の守備が自慢のチームだ。
「っ!?」
ウズベキスタン、サウジアラビアとの試合で大活躍を見せた照皇だが、今日は彼の留学時代に知り合った盟友に阻まれている。
「今日は1点も決めさせないぞマコト!」
レヴィンは照皇に密着マーク。
準決勝で韓国のエースを完封したように、この決勝戦でも日本のエースである照皇へ張り付いていた。
2トップを組む狼騎にも無論、厳しいマークが付く。
『日本、大男が揃うオーストラリアの守備を前に攻めあぐねてしまう!』
『オーストラリアはレヴィンだけでなくコバルト、ディセ、ダントのマージ3兄弟がいますからね。ゴール前かなり堅いですよ』
日本がボールを持つもオーストラリアの守備を前に、チャンスは作り出せていない。
「でぇっ!?」
コバルトのショルダーチャージで光輝が跳ね飛ばされてしまうと、ボールが零れてオーストラリアがセカンドを制する。
「(やべぇな……ウズベキスタンと同じか、それ以上に守りが堅ぇ。こいつは1点取るの大変だ……!)」
この試合では想真と共にダブルボランチを組む勝也。
後ろから見ていて日本とオーストラリアの体格差があり、競り合いでは向こうに分がある事は嫌でも分かってしまう。
既に両者は本大会の出場を決めているが、この決勝に勝てば世代のアジアNo.1となれる。
その勲章は互いに欲しいと願って今日の戦いに全力を尽くす。
0ー0の均衡が続き、開始からスコアが動かないまま迎えた終盤──。
『神山ゴール前!倒されてファール、日本FKのチャンスを獲得!』
『これ良い位置ですね、決めたい所ですよ!』
勝也が攻撃に出ると敵陣深く切り込み、大男に取り囲まれると倒されてファールとなった。
ゴール正面で30mも無い所からのセットプレー、そこに弥一は上がっていけばキッカーの位置に着く。
「これ相当大事なFKだな弥一……相手の壁が何時もより高く見えやがる」
弟分の左側に並び立つ勝也が目の前の黄色い集団を見れば、山が聳え立ってるみたいで文字通り、アジアの壁を思わせる。
「勝兄貴」
その弥一は兄貴分の顔を見ないまま、ゴールの方を見据えていた。
「アジアを飛び越えて世界、一緒に行くよ」
「……!」
世界へ行く、という言葉と共に弥一が集中に入ると、人を寄せ付けないピリピリとした雰囲気を纏い始める。
勝也は目の前の特等席で弥一のキックを見守るのみ。
兄貴分が見守る前で弥一は短いステップから、左足のインステップキックで思いっきりボールを蹴り出した。
「(曲げるインフロントじゃなくインステップで!?)」
今のキックは曲げる物ではないと勝也が思った瞬間──。
「「ワァァァ────!!」」
決勝のスタジアムが大歓声に包まれる。
何が起こったのか勝也は頭の理解が一瞬追いつかず、相手ゴールを見ると球がゴールネットに突き刺さり、相手GKが呆然と立っている光景が見えた。
『決めた神明寺──!!アジアカップ決勝で魔法のFKが炸裂!鉄壁を誇るオーストラリアから貴重な先制点だ!』
「やったやったー!先制点ー♪」
ゴールを決めた弥一は真っ先にスタンドの日本サポーターへと走り、得点した事をアピールするように両手でVサインを作る。
「お前は何処まで凄けりゃ気が済むんだよー!」
終盤で蹴るプレッシャーが大きかったにも関わらず、きっちり決めてきた弥一に勝也は後ろから抱き締めた。
「あそこで無回転は反則だろ……!!」
オーストラリアの名手アルベルは信じられないといった感じで、立ち尽くしたまま言葉を口にしていた。
彼から見て弥一の蹴ったボールは一切曲がらず、無回転で不規則に揺れて来たのだ。
事前に弥一は考えられない程に鋭く曲がるカーブが得意と、情報もあったせいで完全に騙されてしまう。
時間は残り僅かとなり、オーストラリアの大男達がゴール前へ一気に雪崩込む。
決死の猛攻で日本ゴールを狙うが、此処まで無失点の弥一を中心とした守備陣、日本の天才GK工藤龍尾がゴールに頑丈な鍵をかけて通さない。
「(このまま負ける訳には!!)」
そこへ勝利の望みを捨てず、レヴィンが果敢に攻撃参加へと加わり、彼にパスが向かう。
母国で悪魔の右足と言われる驚異の長距離砲、それがレヴィンの右足からダイレクトで放たれる。
「いっだぁ!」
「!?」
悪魔の右足に迷いなく飛び込んで来た小さな影。
弥一が右足でレヴィンの豪快なキャノンシュートを当てれば、ボールは日本ゴールの上空に高く舞い上がっていく。
落ちて来た所に跳躍した龍尾が両手でキャッチしてキープ。
レヴィンのシュートを守りきった瞬間、試合終了の笛が鳴り響いた。
『試合終了ー!!日本1ー0でオーストラリアを完封!このアジアを無失点のまま制しました!!』
オーストラリアを下してアジアの頂点に輝いた日本。
それぞれが喜び合って勝利の味を存分に堪能する。
日本が驚異の成績でアジアの頂点に立った事は、瞬く間に世界へと発信されていった。
「日本の若きサムライ達がアジアで無双!」
「まさにアジアのカテナチオ!」
世界各国の地元紙がU-20日本代表に対し、強い関心と共に彼らの活躍を載せている。
「ディーン!お前の推しが勝って来たみたいだぞー!」
イタリアにあるサッカーグラウンドにて、U-20イタリア代表のムードメーカーであるランドが彼を呼ぶ。
フィールド中央にいるディーンはランドが来る前から、ずっとリフティングを続けて彼が来た後も止めない。
「──来てくれないと困る」
ランドが誰の事を言っているのかは分かっていた。
彼が勝ち上がるだろうと見る事なく己を高め続け、磨き上げているディーンは最大のライバルが来ると理解。
心が昂っていくのを抑えながら、彼は1度もボールを落とす事なくリフティングをやり遂げる。
いずれ来るであろう、決戦の時に備えて──。
日本1ー0オーストラリア
神明寺
マン・オブ・ザ・マッチ
神明寺弥一
U-20アジアカップ 優勝 U-20日本代表
VSマレーシア 12ー0
VSタイ 7ー0
VS UAE 2ー0
VSバーレーン 5ー0
VSウズベキスタン 2ー0
VSサウジアラビア 4ー0
VSオーストラリア 1ー0
得点33 失点0
大会得点王 キム・ユンジェイ
大会MVP 照皇誠
弥一「主人公なので最後は決めちゃいましたー♪」
勝也「本当に最後決めてきたなぁ、そんで主人公だからといってMVPじゃないっていう」
弥一「そこまでは無理だってー、僕そんな派手な活躍を毎試合とかしてなかったしDFのMVPとか滅多に選ばれるもんじゃないからさー。それで大活躍して日本を本大会出場に導いた照さんが選ばれるってね♪」
龍尾「本人はいいのかって難しそうな顔してたぜ。選ばれたから貰っとけとは言ってやったけどよ」
弥一「僕達にとっての勲章は無失点だからねー♪」




