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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ&U-20代表編

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混戦で見える光の道

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「ぷっはぁ〜、こんな熱中しちまう紅白戦は初めてだろ!」



 前半の15分が終わり、マネージャー達に用意してもらったドリンクやタオルで、皆がしっかりと暑さ対策をして休む。


 ゴクゴクと飲み干す勢いでドリンクを飲む川田は、口を離すと前半について振り返る。



 スコアは0ー0、時間が短いとはいえ枠内に飛んだシュートは、影山のミドルのみだった。



「神明寺先輩が守ると厳しい事は分かっていたけど、想像以上ですね……」



「そりゃ神明寺先輩だから簡単じゃないでしょー!」



「難攻不落だからね!」



「お前ら……今は敵だっていうの分かってるのか?」



 想定よりも弥一を中心とした守備が堅い。


 崇拝する彼が凄いとなって、水分補給しながらも氷神兄弟は揃って称賛。


 それを聞いた半蔵の口からは呆れるようなため息が出てくる。



「弥一だけに気を取られんなよ。相手は勝也先輩に他のOBだって入ってるんだ、GKも岡田と楽な相手じゃねぇし」



 弥一だけに目が行かないようにと、間宮から他の選手達のマークを欠かさない事を改めて伝えられた。



「後半、川田をDFに下げて両サイドを上げての中盤に3バック。そんで優也、後半は田村に代わって右入れ」



「はい」



 優也はアップを済ませた状態で、間宮の交代を告げる言葉に頷く。


 後半はシステムを変えていき、中盤を厚くさせて混合チームを混乱させる作戦だ。




「初めてなのに連係良い感じだよな?」



 混合チームの方も用意してもらったドリンクやタオルで、束の間の休息をとる。


 峰山は前半を振り返り、連係は良い方と思っていた。



「守備は良いけど攻撃が今一つな、15分とはいえシュート数を重ねたかった所だ」



 スコアレスの前半、攻撃の方は噛み合っていなかったり、向こうに粘られて決定的なチャンスを作れていない。


 個々の能力は立見より間違いなく高いが、チームとしては今一つ。



 即席チームなので、その辺りは仕方ないだろう。



「複雑ですよねー。互角でスコア動かないけど、それだけ立見が強いって事ですから♪」



「ま、誇らしくはある──」



 陽気に笑って、ドリンクをゆっくり味わう弥一に、豪山は後輩達の姿を眺めていた。



「だからって0ー0のまま終わって良い訳ねぇだろ。後半取りに行って残り15分で終わらせるぞ」



「おおー、ガチだな元立見の闘将君は」



 後半に決着をつけると勝也が言い切った後、鳥羽はからかうように笑みを浮かべる。



「リーグの守備はもっと厳しいんだ。後輩の壁ぐらい破ってかねぇとな」



 真剣勝負ではない紅白戦だが、勝也としては止められたまま、リーグ戦で悪いイメージを持ち込みたくない。


 相手は全員が後輩で、このまま終わらせる気は無かった。



「(勝兄貴、火が点いちゃったみたいだ。向こうも何か固めてきたみたいだし……)」



 弥一の視線の先には、立見が作戦を決める為に話し合いをしている姿。


 それが弥一には筒抜けであり、彼らに気づかれる事なく心でその策を確認していく。




 後半、立見ボールのキックオフで始まると、立見は中盤を厚くする3ー6ー1へシステムを変えてきた。



 中盤を密集させて、数的優位をこれで作りやすくする狙い。



「(これはかくれんぼしやすいから、都合良いんだよねー!)」



 それが弥一にとって動きやすく、周囲の選手達に混じって大胆にも前へ出て来る。


 これが詩音から明、というパスコースを断ち切り、弥一がインターセプト。



 直後に弥一は中盤をすっ飛ばして、前線の豪山へ高いロングパスを出した。



「立浪ー!」



 間宮はこれに気づき自分の身長を上回る立浪へ、豪山のマークを任せる。


 豪山は落下地点に来て、タイミングに合わせて跳躍すると、立浪も続いて跳ぶ。



 これに競り勝ったのは大学に入り、フィジカルを鍛え上げる豪山。


 頭で落とすと、そこへ走って来た勝也の姿が見えた。



 勝也の右足から後半最初のシュートが生まれ、ボールは前半で影山の蹴ったシュート以上に、勢いが感じられる。



「ぐぅぉ!」



 素早い反応を見せるのは、立見の守護神としてお馴染みの大門。


 ボールはゴール右を捉えて、大門はそこに向かってダイブすると、伸ばした両手が矢のような球を叩き落とす。



 弾かれた球が転がり、そこへ鳥羽が詰め寄って来る。



「(やべっ!!)」



 鳥羽のセカンドへ素早く向かう姿に、間宮も動き出してクリアに行く。


 間宮の伸ばした右足より一瞬、鳥羽の右足が唸りを上げる方が速かった。



 しかし大門が体勢不十分ながらも反応すると、懸命に左腕を伸ばしてシュートを弾き出す。


 ゴールマウスから逸れてラインを割り、2連続シュートを阻止する事に成功。



「おいおい、今のを止めちまうのかい。まいったねぇ……!」



 今のは押し込めたと思った鳥羽だが、大門のビッグセーブに阻まれて思わず軽く笑ってしまう。



「えー、大門そんな凄くなっちゃったのー!?」



 立見で共にゴールを守ってきた弥一。


 相棒である大門が自分の知らない間、GKとしてレベルがかなり上がっている事に驚く。




 混合チームのCKチャンス、これを峰山が蹴って豪山に合わせようとするが、その前に大門がパンチングで弾き出していた。


 飛ばされて転がった球は影山が取り、右足で左サイドへ送る。


 そこには玲音が走っており、反対サイドからは詩音も上がってきた。



「反対も上がってるぞ!気をつけろ!」



 岡田は詩音の動き出しに気づき、指示を出す。



「(狙いは中央か!?)」



 ゴール前へ迫ってくる明が最も厄介と感じ、勝也が明のマークに付く。


 半蔵には榊が付いているのが見える。



 だが、いずれの読みも違う。



 ボールを持つ玲音が選択したのは、個人技での単独突破。


 左から斜めにゴールへ切り込み、走ると蛍坂が突破を読んで前に立ち塞がった。



「(なんてねー!)」



「!?」



 玲音は突破すると見せかけ、右足の踵でバックパス。


 そこに走って来たのは川田。



「キーパーロングー!」



 弥一の声と共に川田の左足による、インステップからのシュートが繰り出された。



「くぅっ!」



 正面でキャッチした岡田の体に伝わる、ズシンとした衝撃と重さ。


 川田のパワーシュートの威力、岡田はその身で知る。



「岡田さーん!」



「!」



 声がして岡田がそちらを見ると、弥一のボールを要求する姿。


 そこに岡田のスローイングで送り、弥一が左足でトラップして前を向いた。



 すると優也が誰よりも素早く、ボールを持つ相手へ自慢の快足で迫る。



「お前には出させるか……!」



「ああそう──」



 弥一はフェイントで優也を翻弄しにかかると、優也は粘って食らいつく。



「(憧れだけど容赦なく行きますー!)」



 詩音も弥一へ向かい、優也と二人がかりの挟み撃ちを狙ってきた。



 その時、弥一は優也の方を向いたまま、右足で左へパスを出す。



「はい!」



「!」



 すると弥一は優也と詩音の間を走り抜けながら、右手を上げる。


 それが見えた真田がパスを反射的に、ダイレクトで返した。



 綺麗なワンツーで優也と詩音のプレスから、弥一は脱出。


 彼の前には中盤で敵味方問わず、多くの選手が弥一の前にいる。


 システムを変えた事で、より中盤に人が多くなっている状態だ。



「(ああ、やっぱり上がってくれてる)」



 それでも弥一には見える光の一本道。


 パスコースを明るく照らし、その先にいる人物へ届くと確信を持つ。



 迷う事なく弥一は右足で、ボールを強く蹴る。



 目の前の敵や味方をすり抜けるように、僅かな隙間を通して球は光の光線のように飛ぶ。



「うぉっと!」



 弥一からレーザービームのようなロングパスを受け取ったのは、彼の兄貴分である勝也。


 明のマークから攻守が入れ替わり、すぐにゴール前へと走っていた。



「っ!?」



 急にゴール前でボールを持った勝也に驚きながらも、間宮が迫る。


 慕ってくる後輩を勝也は左右の足のインサイドを使い、ダブルタッチで翻弄し、間宮を抜く。



 そこから勝也は出て来た大門の頭上を超える、チップキックを右足で蹴ると、大門は長いリーチで頭上の球へ右腕を伸ばす。


 これに触れてボールを叩き落とし、またしても好セーブ。



 だが弾かれた球に勝也が突っ込み、間宮と影山よりも速くダイビングヘッドで飛び込む。



 勝也の頭で押し込まれたボールは、立見のゴールに入っていた。



「ゴール、混合チーム」



 そこに主審を務める薫から、ゴールを告げる声。



 弥一のロングパスによってチャンスが生まれ、それを勝也が掴み取る。


 2人の必勝パターンが炸裂して、紅白戦でようやく得点が生まれていた。

摩央「これが15分ハーフの紅白戦って忘れそうなぐらい、凄い試合になってるわ……」


彩夏「皆凄いなぁ〜」


安藤「大門とか凄いセーブ連発してたけど、弥一と勝也さんには敵わなかったか」


摩央「まさに立見の黄金コンビですよね」


彩夏「という事はいつかツインシュート〜♪」


安藤「いや、それは漫画の必殺技だから……」

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