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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ&U-20代表編

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FKの蹴り合い

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『両チーム、ゴール前にまでは行ってますが、決定的なシュートを撃てないという状況が続いています』



『互いのDFが堅いですからね。埼玉には滝口がいて、東京にはマグネスと名DFが揃っている、というのもありますので』



 ボールの支配率としては、ホームの埼玉が高い。


 その分、赤い軍団の方が攻め込む回数は多くなっている。



 ただ、ゴールを脅かされるようなシュートは、まだ1回も許していなかった。



「来てるぞ左ー!気を抜くなよー!」



 相手のゴートンに付きながらも、マグネスは周囲へ指示を出す。


 彼が中央を守る影響はかなり大きく、彼の圧を前に埼玉も容易くはシュートを狙う事が出来ない。




「(やっぱりマグネスの復帰はデカいな、周囲に良い影響を与えまくりだ)」



 後方のDFラインから、王牙は思うように攻めきれていないチームを観察。


 王牙から見える限り、マグネスが守備の要となって、こちらの守備を何度も阻んでくる。



 熱く選手達を鼓舞したり、闘志剥き出しのプレーで、チームを引っ張る姿はまさに闘将。


 だが時として彼は冷静に、外から皆の様子を見ていた。



「(けどこんな攻められないのは、流石にマグネス1人じゃないよな?)」



 今の自分の目からは捉えられていない、ただ確実に居るであろう厄介な存在。


 それがマグネス以上に危険なのだと、王牙の中に警報を鳴らしていく。



「(はっ、あまり味わう事の出来ない面白い試合になりそうじゃねぇの)」



 自分に対する警報に王牙は小さく笑い、姿の見えぬ敵を相手に楽しんでいた。




『あーっとファール!岩本、ゴートンとの競り合いで反則を取られてしまう!』



『これは、ゴール正面のやや右ですかね。良い位置からのFKですよ』



 岩本が相手のゴートンと競り合う最中、足を引っ掛けて転倒させてしまう。


 ゴールからは25mぐらいで、東京アウラにとっては危険な位置での相手FKだ。



「もっとピッタリくっつけって、隙間からやられるぞバスカーク相手だと」



 昨シーズン、バスカークには手痛い直接FKを決められている東京。


 その再現はさせまいと、太一が壁同士で隙間を作らないよう、壁の位置を何度も確認する。




 ボールの位置にはバスカーク、加えて王牙まで並んで立っていた。



『これは、滝口もいますね。バスカークではなく滝口が蹴りますか?』



『滝口も結構良いキックを実は蹴れますから、どっちが蹴って来るのか。いずれにしてもこのセットプレー大事ですよ!』




「ここは……行って、その後に……」



「……よし、それで行くか」



 キッカーの位置に立つ王牙とバスカークは、東京の壁の前でヒソヒソと作戦を立てていく。


 王牙が埼玉スタジアムの大型ビジョンの時計へ、目を向けると試合時間は前半の30分を迎えようとしている。



 このセットプレーで取れれば、かなり大きな1点だ。




「ロッド、あっち……」



「本当か……?」



「信じて、大丈夫」



 その頃、弥一もロッドと会話をヒソヒソとして、こちらも作戦を立てている。


 ロッドから見て弥一は確信するかのように、自信に満ちた笑みを浮かべていた。




 FKが始まり、王牙が助走を取って、セットされたボールへ突進。


 壁の東京選手達が身構える中、王牙は走り込んで蹴るかと思ったら、ボールをピョンっと飛び越えていく。



 直後にバスカークが、右足のインフロントで蹴る。



 ボールは右へ外れるかと思えば、左に曲がってゴール右を捉えていた。


 それも上の隅と、GKにとって防ぐのが難しいキック。



 だが、ロッドは芝生を蹴って跳躍すると、両手を伸ばしてバスカークの蹴ったボールを掴み取った。


 倒れ込みながらも、しっかりキープして離さない。



『取ったロッド!バスカークのキックを読んでいたのか、見事なキャッチングー!!』



『あれを弾くのではなく取りますか、神明寺や勝也が注目されてますがこのルーキーGKも凄まじいんですよね』




「ロッドー!ナイスセーブー!」



「(曲がりは正直、弥一の方が鋭かったな)」



 散々弥一のランダムキックを、練習で受けてきたロッド。


 そのせいか、変化するボールへの対応は磨かれ、止める事に成功する。


 何より弥一が彼らの心を読んで、バスカークのキックだと見抜いていた。



 ロッドは走り出す松川の姿を見て、そこにスローイング。



『すぐに出したロッド!松川、風岡と繋いで東京カウンターだ!』



 風岡に渡ると、彼の前には左サイドの広いスペースが空いている。


 迷わずボールを大きく蹴って、共に走り出す。



「戻れー!!」



 懸命に戻りながら、王牙が叫ぶ。



「(風岡に縦へ突破される訳には!)」



 残っていた赤坂がサイドの方へ寄って、風岡の前に立ち塞がる。


 彼に縦への突破を許してはならない、その怖さは充分に理解していた。



「風岡さんー!」



 此処は勝負に行くかと風岡が思った時、中央から勝也がダッシュで上がって来るのが見えた。



 スタミナ自慢の若手へ風岡は左足でパス。



「っし!」



 勝也の目の前には埼玉DFが2人、守備の整っていない今がチャンスと、勝也は右足でトラップ。



「させるかぁぁ!!」



 そうはさせんと、王牙が叫びながら勝也に迫り、追いつくと右肩で激しくぶつかっていく。



「かはっ……!」



 この時、勝也の左肩に凄まじい衝撃と共に激痛まで襲いかかり、意識が遠のきそうになってしまう。


 暗闇に一瞬落ちかけたせいか、立ってられずに勝也は転倒。



 ピィ────



 直後に主審の笛が鳴って、王牙のファールを取った。



『滝口、勝也を倒してファールを取られた!』



『カウンターのチャンスでしたから、反則してでも流れを止めたかったんでしょうね』



「今のは正当なチャージだって!」



 今のはファールじゃないと王牙が主張するも、主審は首を横に振って認めない。


 カードまでは出ず、注意に留まっていた。



「勝兄貴!大丈夫ー!?」



「勝也!」



 フィールドに倒れる勝也へ、弥一と太一がすぐに駆けつける。


 勝也は立ち上がると、ぶつかられた左肩を右手で触れた。



「大丈夫だって、凄ぇ衝撃に驚きはしたけどよ……」



 強靭な肉体を誇る王牙のチャージを受け、今もそのダメージは残ってるが、勝也は続けられると周囲に言う。



「──ここはもうゴールを奪って、ぶつかられたお返しをしとこうー」



 そう言うと弥一がキッカーの位置に立って、作られていく赤い壁を見据えた。




『先程とは攻守が入れ替わり、今度は東京アウラのFK!距離はほぼ同じか、東京の方が若干遠い感じですね』



『25m以上はありそうですが、狙えますね。それにキッカーが何と言っても神明寺ですから』




「神明寺はエグいカーブをかけていた。ゴールから外れてても気を抜くなよ」



「分かってる」



 王牙に声を掛けられ、195cmの大型GKが答える。



「あんな子供みたいなルーキーにやすやすと決められたら、王国の名折れだ」



 埼玉の守護神は元ブラジル代表のシルベール。


 サッカー王国としてのプライドにかけて、弥一のキックを絶対止めてやると、鬼のような形相でゴールマウスに立つ。




 その弥一にとって敵となるのは、シルベールや赤い壁だけではない。



 ボールを持つ弥一に、スタンドの赤いサポーター達の目が一斉に向けられ、キッカーへ圧が襲いかかる。



「(流石にこんな環境で蹴るのは初めまして、だなぁ〜)」



 超アウェーで巡って来たFKのチャンス、弥一としても初めての環境の中、どう蹴ろうか考えていた。




「与一君、行けるのかい?普段通りのキックをこの局面で」



「!」



 そこに前線から戻った小熊が、弥一に近づいて声を掛ける。



「スタンドは見ての通り敵だらけで、皆が君のキックミスを期待する。その中で精度の高いキックを蹴れるのかな?」



 小熊はそう言うと壁の方へ走り、加わっていた。


 キックに集中しようとしたが、小熊からの揺さぶり。


 心理戦で弥一の集中を削ろうと企む。



「(小熊さん、これくらい余裕だから心配無いんで!)」



 壁の小熊に一瞬視線を向けて、弥一はニヤッと笑う。


 あんたの壁ぐらい軽く越えてやる、そう言わんばかりに。




『キッカーは神明寺弥一!今回はどんなキックが飛び出すのか!?どんなマジックを彼は見せる!?』



 弥一は短い助走から、左足で蹴り出す。



「(高っ!?)」



 壁の左側、ジャンプする小熊の頭上を超えて、球は回転がかかりながらゴール左に向かう。


 ボールはゴールバーの上を行く高さ、このまま行くと外れる。



「!」



 そこから球が急激な変化を見せた。



 上に外れるかと思えば、右下へ落ちるように曲がっていく。


 コースはゴール右上隅と、しっかり枠内を捉えていた。



「グォォォ!!」



 シルベールが野生の獣のような雄叫びを上げ、跳躍すると共に、長い左腕を目一杯伸ばす。



 バシィッと左掌がボールを弾き出し、弥一のキックを枠内から逸らしてみせた瞬間。


 スタンドからは一層大きな歓声が沸き起こる。



『止めたシルベール!神明寺のキックを左手一本で弾くスーパーセーブ!此処は王国ブラジルのゴールを守り抜いてきたベテランに軍配だ!!』



『良いですね!素晴らしいキックに素晴らしいセーブは見応えある攻防ですよ!』



「えー!?今の行けたと思ったのにー!」



 キックの手応えはあって、行けると感じた弥一だったが、ブラジルの名手を軽視し過ぎたかもしれない。


 王牙の守備にシルベールのセーブ、これがリーグ首位を行く埼玉フォルテの守りだ。



 FKを止めたシルベールに、埼玉の選手達が集まって喜び合う。


 0ー0の均衡は崩れず、両チームのDF、GK共に譲らない。

勝也「アスリートの奥さんって、美人さん多かったりするよな」


弥一「だねー、王牙さんや小熊さんの奥さんめっちゃ綺麗だったしー」


勝也「その中で京子も負けてねぇよ、むしろ一番だと思ってるし」


弥一「負けてないねー、輝咲ちゃんはもっと負けてないとしてー♪」


勝也「は?譲らねぇよ!京子だろ!?」


弥一「輝咲ちゃんがNo.1だよー!」



京子「……恥ずかしくて見てられない」


輝咲「まぁ、想われて嬉しいですけどね……」

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