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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ&U-20代表編

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最もアウェーな環境で

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「国際大会優勝して帰ってきました〜♪」



「うん、4チームだけの地元開催だけど良くやった!」



「風岡さん途中いらねぇ部分あったっす」



 東京アウラの練習場にて、弥一と勝也は少し久しぶりとなる、クラブのチームメイト達と再会。


 軽口の叩き合いになれば、帰って来た事を改めて実感出来た。



「いやいや、ベルギーにはよく勝ったなと思ってるぞ。若手有望株と評判高いアドルフも出てたのに、封じ込めてしまったんだからな」



「そこは味方キーパーに天才がいましたから、完封行けましたね〜」



 マグネスは日本が、ベルギーに勝てた事を高く評価。


 それに対して弥一は龍尾が有能と、一緒に守っていた天才GKを笑顔で称える。



「あ、賢人さん従弟君めっちゃ活躍してくれました♪もう観察とか凄かったですよー」



「光明は観察が趣味のような、変わり者な所ありましたから。彼が役立ってるなら良かったです」




「俺達がいない間、皆すげぇ頑張ってましたね」



「まぁ連戦でしたから、総力戦でキツい戦いは続きましたが……なんとか潜り抜けましたよ」



 代表合宿や大会で抜けている間、賢人達がいかに頑張っていたのかを、勝也は試合を見て知っている。




 横浜グランツ 0ー0 △



 ストレングス大阪 1ー0 ◯



 アニモ札幌 3ー0 ◯



 名古屋エポラール 1ー0 ◯



 後半戦の1試合目こそ横浜の守護神、河岸に阻まれて勝ちきれなかったものの、そこからは3連勝。


 前半戦で勝てなかったチームへ、借りを返していた。



「しっかり無失点守ってるし、やるねー♪」



「ハッハー!俺もやるもんだろヤイチ!」



 天才とはいえ、プロの新人がJ1のNo.1DFに対して、かなり失礼だがマグネスは気にしてない様子。


 後半戦にカテナチオの番人が本領発揮、といった所か。



「しかし結構働いたのはあっちだけどな」



 そう言うとマグネスはチームの中で、黙って話を聞いている若手GKに目を向ける。


 マグネスと共にこの4戦で大活躍を見せたロッドだ。



「河岸さんの神セーブに刺激されたとかー?」



「お前がいなくなったから、完封出来なくて弱くなったと言われたくないだけだ」



 からかうような弥一の言葉に、ロッドは即答に近い反応で返していく。



「まぁ横浜は逃しちまったが、後は借りを返してっから!大阪に関してはデイブが欠場してたしな」



「そりゃ文字通りでけぇよ」



 2戦目のストレングス大阪、前回はデイブの高さにやられたが、今回その彼がカードの累積で出場停止。


 東京アウラにとっては大助かりで、向こうにとっては痛すぎる欠場。


 それが影響してジャレスのゴールで勝利を手にする。




「とにかく5戦目に戻って来てくれて良かったよ、本当──最大の壁と言っても良い1戦だからさ」



 太一の言葉に皆が、次に試合する対戦チームを思い浮かべていた。


 前回はホームだったにも関わらず、5ー0の大敗となってサポーターとの衝突まで生まれる。



 現在首位を走る今季無敗の埼玉フォルテ。


 東京アウラを完膚なきまでに叩きのめし、地獄に突き落とした因縁の相手だ。



 皆がその事を考えていた時。



「集合ー」



 チーム集合の声がして、選手達は音崎の元へ集まる。




「と、次の埼玉フォルテ戦はこれで行く」



「ほぅ〜、こいつはまた」



 音崎の話を聞いてマグネスの顔は面白そうだと、笑っていた。


 スタメンのメンバーには、戻ったばかりの弥一と勝也の名前があって、確定で首位のチームとルーキー達が戦う事になる。



 だが、マグネスが面白いと思ったのはそれではない。



「此処で3バックって、埼玉相手に大丈夫か?」



 風岡が呟いた次のフォーメーションについて、東京アウラは4バックが主だったが、今回は3バックのシステムに変更を決める。



「だからその試合までは主に、新システムの確認だろ」



 太一は風岡の左肩を軽く叩き、やろうと皆へ伝えた。




「アウェー戦は何回もやってるけど、今度は腹を括った方が良いな。向こうのホームってマジで凄ぇから」



「見た見た、赤い軍団サポーターの大声援凄かったし海外でも評判になってるぐらいだからねー」



 今年から初めて、埼玉フォルテのホームで試合をする弥一と勝也。


 スタジアムを埋め尽くす、赤いサポーター達による大声援はJリーグの中でも圧倒的で、海外のメディアも注目する程。



「おい2人とも、実際行かずにテレビや動画で見てきたって口なら想像超えるからな?ブーイングとか相当凄いぞ」



 そこへ岩本がルーキー達に、外から見てる時とは別次元だと、実際試合をして体感した空気を伝える。




「大丈夫か?代表から戻ったばかりで、いきなりあのアウェー戦に出場とか……」



 チームが新システムの練習を重ねる中、コーチの1人が音崎へルーキー達が超アウェー戦を務められるのかと、心配の声を告げていた。



「行けるだろ。2人も様々なアウェー戦を経験してきたし、いずれは通らなきゃいけない道なら早い方が良い」



 音崎も本来の監督、康友と共に現役時代も含め、埼玉のアウェー戦は経験している。



「(それに彼なら、そんな事関係なく覆すかもしれないしな)」



 見つめる先にはマグネスと共に、3バックのシステムを確認する弥一の姿。


 彼なら赤い軍団のプレッシャーすらも、跳ね返すのではないかと、音崎の中で弥一への期待が大きくなっていた。





 試合当日、今季2度目となる東京アウラと埼玉フォルテの試合会場には、既に多くの赤いユニフォームを纏うサポーター軍団が埋め尽くす。


 東京の青いユニフォームも見られるが、数では圧倒的にホームの埼玉が上だ。



「ホームで返り討ち!埼玉最強!」



「俺達日本一!」



「埼玉フォルテがNo.1!!」



 試合開始前から早くもサポーター達の熱は高まっており、世界からも認められた熱狂ぶりに、偽りは無し。




「赤い軍団と連戦になっちゃうね僕達の場合はー」



「こっちの方がもう迫力凄ぇけどな……!」



 アップの為にフィールドへ足を踏み入れた弥一と勝也。


 その彼らを四方八方から、赤いサポーター達が彼らに注目する。


 ベルギー戦の時と違い、相手だけでなくスタンドも真っ赤に染まり、この場に足を踏み入れた瞬間、体に伝わるアウェーのプレッシャー。



「前回と全然違ぇよ」



 途中出場だったが、埼玉戦に出ていた勝也から見て、ホームの時とは別次元だった。




「感じてくれたかな?我がチームが誇るサポーター達の熱を」



 スタンドの方を見回していると、2人に声を掛ける男の声に気づいて弥一と勝也は振り返る。



「小熊さんだー」



「あ……!」



 埼玉フォルテのエースで現在得点ランキング首位、小熊の姿を見て弥一が右手を上げて挨拶するのに対し、勝也は頭を下げていた。



「やっと実現したな、与一君」



「え?いや、小熊さん。こいつは与一って名前じゃなくて──」



 小熊の言ってる名前は違うと、勝也が訂正しようとするが、弥一はそれを片手で制する。



「いいよ勝兄貴、この人にとって今の僕はそうだからさ♪」



 名前を間違われた本人は気にする事なく、笑顔で兄貴分の顔を見上げて言う。



「試合の時はこの熱がもっと凄い事になる。覚悟しといた方が良いよ」



 それだけ言うと、小熊は自分のアップへ向かって行った。



「前回はアドルフ、今日は小熊さん。連戦で赤い軍団のエースを止めなきゃならねぇな」



 ベルギー戦の時と同じく、埼玉のエースである小熊を封じられるかが、今日の鍵になってくると勝也は考える。



「勝兄貴の相手はあっちでしょ?」



 弥一の視線が埼玉の選手達のアップする姿へ向く。



「──ああ、そうだな」



 同じように勝也も目を向ければ、そこに映るのは埼玉のキャプテンにして、日本の闘将と言われる王牙の姿。


 埼玉の守備を支える柱で、勝也が憧れて目標とする男だ。



 多くの相手サポーター達による大声援の中、埼玉フォルテの攻めと守りを攻略しなければ勝てない。



 今シーズンで最も過酷であろう試合へ、弥一と勝也は臨む事となる。

勝也「正直、王牙さんにめっちゃ挨拶したいしサイン貰いたい、けど試合だから今は我慢する!」


弥一「憧れ全開だね勝兄貴ー、でも今日は越えなきゃねー。ほら、滅茶苦茶凄い人も言ってたからさ?憧れるのを……」


勝也「待て、言うな。物凄く色々怒られるかもしれないから、言わんとしてる事は充分伝わったし」


弥一「そういう訳で憧れは飛び越えてかないとねー、僕も勝兄貴を軽く飛び越えたし♪」


勝也「軽くってなんだ弥一!お前今に見とけよ!?」

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