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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ&U-20代表編

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驚愕する悪魔達

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 ベルギー ロッカールーム



「ルイ、カッカし過ぎだって。まだ0ー0で負けてないから落ち着けよ」



「日本相手にこんなスコアは想定外だ……!」



 椅子に座って水分補給を行う、小柄なキャプテンにアドルフは汗を拭きながら声を掛けていた。


 それに対して、ルイの方は怒りの含まれた声を発する。



 勝也に予想よりもずっと食らいつかれ、止められた事。


 そこに弥一からの挑発があって、頭に血が上ってしまう。



「あの銀髪野郎……あのクソチビ……!2人揃って忌々しい奴らが……!!」



 2人の顔を思い浮かべると怒りが収まらず、ルイの右手が持っているペットボトルを握り潰しそうなぐらい、力が込められていた。



「絶対守りに入るな、日本には攻め倒して勝つ!引き分けで優勝してベルギーに胸張って帰れるか!」



 ルイは後半日本を叩き潰そうと、攻撃重視のサッカーで行く事をチームメンバー達に伝える。



「おいおい、大丈夫かよ?別にこのまま0ー0で逃げ切ったって──」



「いや、攻撃重視で行こう」



 わざわざ攻撃重視にしなくて良くないかと、アキレスが意見を言おうとする前、アドルフがルイの案に乗っかった。



「そうだよなルイ?日本相手に圧倒的な差を付けなきゃだろ!」



「当たり前だ!1点程度で済ますなよ!?2点でも3点でも、何点でも取って日本を叩き潰すんだ!」



 攻撃に行くルイを止めようとせず、アドルフはむしろその背中を押す。


 大丈夫なのかという目で、ドンメルが2人を無言で見る。


 その視線に気づくとアドルフはルイに声を掛けた後、守護神へ近づく。



「……攻撃は最大の防御って言うし、怒りでプレーが狂って駄目にはならないって信じてるからさ。この場は付き合ってくれよ。フリッツ奢るから」



 アドルフの頼みや戦術的にも悪くないと判断し、ベルギーの面々は攻撃的に行こうとなった。


 引き分けに逃げず、完全勝利でこの大会を制する為に。





 後半が始まると、ベルギーは全体的に前へ押し上げて来る。


 前半よりパス回しのスピードを上げたり、個人技での仕掛けも増やし、一歩も引く事なく赤い軍団が日本ゴールに押し寄せていく。



「佐助!アドルフ!」



 龍尾からの指示で佐助がアドルフに付き、直後にアドンの左からのアーリークロスが来ると、空中戦で競り合う。



「っ!?」



 フィジカルの強さでアドルフが競り勝ち、佐助はバランスを崩して着地出来ず左肩からフィールドに激突。


 この時、彼は左肩に激痛が走っていた。



 だがプレーは止まる事なく、アドルフは頭で右に送ると、そこにトーラスが勢いよく飛び込む。



「つぁっ!」



 勢いを付けてヘディングに行くも、その前に番の頭がボールを飛ばし、タッチラインに逃れていく。



「う……」



「おい大丈夫か佐助!?」



 佐助が立ち上がるも痛そうに左肩を抑え、顔を歪めているのを見て、勝也はすぐに彼の元へ駆けつけた。


「大丈夫です」と言うが試合の続行は厳しい様子。



「光明、佐助と交代です」



「はいよっと」



 マッテオは佐助にこれ以上のプレーはさせず、DFを下げて光明交代のカードを躊躇なく切る。


 負傷した佐助はフィールドを出て、それに代わり光明が投入。




「佐助が抜けた所に想真が入って、空いた所に俺が入る、との事だよ」



「任しとき、そこは俺の本職やからな」



 光明がマッテオからの伝令を伝えると、想真は自信ある笑みを見せた後にポジションへ向かう。


 貴重なCBが負傷交代と、日本にかなり痛いアクシデントが襲うも、今いるメンバーで佐助の抜けた穴を埋めていった。




「攻めろ攻めろ!どんどん攻めろ!相手はDF1人欠けてんだ!」



 荒ぶるままに声を上げ、もっと攻めろと攻撃するチームの背中をルイは押す。



 中央からメラムのドリブルで日本の中央を崩しにかかるが、来ると読んでいた光明がメラムへ寄せていく。



 すかさず右のトーラスにパスを出すが、そこには音も無く忍び寄る影山の姿があって、インターセプト──というよりメラムが彼にボールを渡す形となってしまう。



「(何か知らないけどラッキー!)」



 自分が思ってるよりも無い天性な影の薄さのおかげで、影山はあっさりボールを奪い、日本の反撃へと移る。




「ぐっ!?」



 月城から照皇へ低いクロスが飛ぶも、アキレスが体格差で照皇を跳ね飛ばしながら、頭で弾き返していた。



 だがクリアボールは勝也の元に来て、日本にとってはラッキーな形。



「(お前に決めさせるか!!)」



「!?」



 クリアボールをとったら位置から、勝也は右足のミドルシュートを狙う。


 そこにルイが飛び込んで来て、背中でシュートブロック。


 勝也には意地でもゴールはさせないと、プライドによる守備だった。



「上等じゃねぇの……!」



 自分を潰そうと鬼のような形相で睨み、懸命のプレーでゴールを阻んで来る。


 ベルギーのキャプテン、ルイに対して勝也の顔に笑みが浮かぶ。



 2人の勝負は更に激しさを増していた。




「ショートな!ロングは駄目だぞ!」



 弥一のインターセプトを警戒するアドルフから、短く繋げと前線からのコーチング。


 それを受けてベルギーは一気に行こうとせず短く、確実にショートパスで繋ぎ攻める。



「(メラムはさっきからトーラスの方ばっか使ってる……だとしたら)」



 此処で光明の読みが働き、トーラスの方へと走った。


 するとメラムはダイレクトでトーラスにパスして、それを光明がインターセプト成功。



「カウンター!!」



 そこへ勝也の大声がフィールドに響き渡り、光明からのパスを受けて一気に速攻を仕掛けに行く。



「させるかぁぁ!!」



「うぉわぁ!?」



 絶対やらせるかと、ルイが勝也へ向かって猛ダッシュ。


 スライディングで滑り込み、ルイの右足がボールを弾き飛ばす。


 勝也の方は転倒してしまうが、主審はボールに行ってると、ノーホイッスルの判定。



 これがベルギーのカウンター返しとなって、ボールを取った左のアドンが速いドリブルでサイドを駆け上がれば、アドルフを中心とした攻撃陣が日本ゴールへ雪崩込む。



「(中央のドリブル侵入は絶対防ぐ!)」



 このアドンに追走するのは、後半から光輝に代わって右サイドでプレーをする優也。


 前半から出続けているアドンに、スタミナ充分の優也が相手のドリブル突破を許さない。



「アドン!コーナー!」



「!」



 アドルフからの声を察すると、アドンは日本ゴール前の左ライン際まで優也を誘い込み、そこで彼の足にボールを当ててゴールラインを割って転がっていく。



 流れで行かず、ベルギーは左からのCK。


 セットプレーのチャンスを取りに行ったようだ。




「不味いですよ、そろそろ時間ありません……!」



「……」



 腕時計でマッテオが時間を確認すると、後半の40分が迫って来ている。


 富山の声を聞きながらも、マッテオは黙って腕を組み、CKを行う選手達を見守っていた。




「はぁっ……はぁっ……」



 終盤に来てスタミナの切れてきたルイ、肩で息をしながらもキッカーの位置へ向かう。



「ルイ、思いっきり動いて頭が少しは冷えたか?」



「はぁっ……うるさいな」



 アドルフが相方へ駆け寄って声を掛けると、息が乱れながらルイも応える。


 ロッカールームで煽られた時より疲れもあってか、少し落ち着いてきた。



「日本は強い、だから此処でもう仕留める。その為にな……」



「……外すなよお前」



「そうなったらゴメンって謝るしかねぇよ」



 アドルフとルイの打ち合わせ、互いにやる事を決めた後にそれぞれ位置へ向かう。




「(此処取られたら不味いな、戻って守るか)」



 ゴールを決めないと負ける、だがこの局面での失点は致命的。


 守備を固める為に戻るかと勝也が日本ゴールへ戻ろうとする。



「勝兄貴、戻らず残っててー!」



「!?」



 勝也の足が弥一の声を聞いて立ち止まった。


 この時、彼の目と弟分の目が合う。



 絶対守って繋げるから、なんとなく弥一がそう言ってるように勝也は感じ取る。



「集中して守れよー!」



「分かってるってー!」



 守備は弥一に任せ、攻撃は自分がやろうと、勝也はベルギーゴールを見据えた。




 日本ゴール前には最長身のアキレスが上がり、日本は彼の高さに警戒を強める。


 そしてセットプレーが始まると、アドルフが日本エリア内から抜け出して中央の外へダッシュ。



「(決めてしまえアドルフ!)」



 左コーナーからルイは左のインフロントで蹴り、アキレスにボールが行くかと思えば球が右に曲がる。



 密集地帯のエリア内から外に逃げていくと、アドルフは下がりながら飛び上がり、左足のジャンピングボレーで合わせようとしていた。



「(よし!)」



 ストライカーとしての感覚が伝わる、これは最高のシュートだと。


 日本選手は皆このプレーを読めず、誰もマークに行ってない。



 ただ1人を除いて──。




「!?」



 アドルフの顔が驚愕へと変わる。


 自分のシュートの前に飛び込み、左足でボールを蹴り出す弥一の姿。


 彼だけは全てを読んでいた。



「な!?」



 ベルギーの全員が驚く。


 弥一の蹴ったボールがシュートのような勢いで、後ろに残っていたトールマン、セインのDFの間を抜ける。



 そこに来ると思っていたのか、勝也はそのボールを追いかけてダッシュを既に開始。


 ベルギーDFの裏へ抜け出して、オフサイドの旗は上がらない。



「止めろー!10番来るぞー!!」



 ルイが日本ゴール前から叫ぶのに対して、ベルギーDFは勝也へのマークが遅れている。


 スピードのある狼騎に意識が向いていたせいか、勝也の侵入を許してしまっていた。



「ぐおおっ!!」



 最後の砦となるドンメルが飛び出すと、ボールとの距離を詰めれば一気にボールへ飛びつく。


 勝也は懸命に右足を伸ばし、なんとか届かせようとする。



 ドンメルが届く前に勝也のスパイクの爪先が届き、ボールはゴールへと転がって進む。


 大きくネットを揺らす事なく、ボールはゴールマウスへ吸い込まれていった。



「っしゃあぁーー!!」



 赤い悪魔からゴールを奪った瞬間、勝也は空に向かって猛々しく吠える。



 日本のキャプテンが今大会初ゴールを決めれば会場内から歓声が次々と沸き起こっていた。

アドルフ「しかしまぁ、どうせならもっと大きな会場でやりたかったよ。ほら、東京や埼玉とか横浜にあるんだろ?」


弥一「そんな気軽に大きな場所は借りれないでしょー、今回は国際大会でも規模の小さいやつだしさー」


アドルフ「はぁ〜、やっぱ五輪とかワールドカップとかそういう大舞台で熱い戦いがしたかったなぁ」


弥一「まぁまぁ、とりあえずフリッツ食べるなら僕も行きたいよー」


勝也「待て待て待て、お前ベルギー行く気か!?アウラの試合あるからな!?」


光明「ちなみにフリッツっていうのはベルギーのフライドポテトだな。マヨネーズと一緒に食べるのがベルギー式らしい」

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