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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ&U-20代表編

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縮まりつつある距離

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 日本ボールのキックオフで始まったが、開始からベルギーにボールを奪われると、そのままファーストシュートまで持って行かれてしまう。



 前半立ち上がりはベルギーのペースとなっていた。



「2番速いから前にスペース作るな!」



 ルイは日本の左サイド、月城のスピードを封じ込めようと右にスペースを空けないようにと伝える。



「(ちっ……!)」



 月城の長所を活かそうとしたが、先に狙いをルイに潰されてしまった勝也は、右の光輝を使う。


 今大会初めてのスタメンとなった光輝、勝也からパスをうけて得意のドリブルで、ベルギーの守備をサイドから切り崩しに行く。



「っと!?」



 1人を巧く躱す事は出来たが、すぐに次の選手が寄せて来て、光輝はボールを止めて立ち止まってしまう。


 天才的なテクニックを持つが、2段構えの守備を前に突破が出来ない。



「戻せ!」



 そこへ同じ最神で戦う想真が戻して、自分にくれと要求。


 光輝の耳に相方の声が届くと、右足の踵でバックパス。


 想真が来たボールをトラップした後、前線に向けて右足で強くボールを蹴る。



「(通すか!)」



 ロングパスに反応したアキレスの足が、ボールに向かって伸びていく。


 2m近い長身から繰り出される長い足は、想真からのパスに届いて球を弾いていた。



 ボールが転がった時、狼騎が真っ先にダッシュを開始してセカンドに向う。


 その姿はまさに野生の狼を思わせるものだ。



「もっと寄せろ!撃たせるな!」



 普段は寡黙なGKだが、ドンメルは大声で、味方へ指示を送る。



「やろっ……!」



 ボールを取るもベルギーの速い寄せに、狼騎は強引に右足でシュートを狙った。



「うぐっ!?」



 狼騎の正面に立つセインの腹部に、ボールが命中して転がる。


 それに再び詰めて狼騎は右足のシュート2連発を狙う。


 だが今度はドンメルが反応して、正面で浮き上がりホップしてくる球を両手でしっかりキャッチ。



 ボールを持ったドンメルは一度ゲームを落ち着かせる為か、時間ギリギリまでボールを持って、右足で大きく蹴り出す。




「やはり攻めも守りも簡単ではありませんね、そこは流石ベルギーと言うべきでしょう」



「こうなると攻略は難しいですよね……どうするのかこれは」



「だから良いじゃないですか」



「 え?」



 ベンチからベルギーの攻守が優れているのを見て、富山はベルギーの流れになってる現状をどうするか、頭を悩ませていた。


 それに比べてマッテオの方は、穏やかに笑ったままである。



「攻略が簡単なチームを相手にしても成長などない、強豪チームに苦戦する中に成長はありますからね」



 どう彼らは成長するか、それを密かな楽しみにしながらマッテオは腕を組み、試合を見守っていく。




 ボールを持つのはベルギー。


 流れるようにショートパスを繋いで、日本はプレスで寄せて行くが、ベルギーは巧く躱してみせた。



「(また短く来てる!)」



 影山が見る限り、相手の方は何度もショートパスを多用している。


 これはアドルフから教わったもので、長距離のパスは弥一に取られる危険が高まるから、確実に繋ごうと極力ロングパスは出さない。



「10番来るぞ!」



 日本ゴールから龍尾は相手キャプテンのルイが来ると、そこに気をつけるよう指示を出す。



 ベルギーの右サイド、トーラスから中央への折り返しが出され、そこにはルイが待っていた。



「(此処は前向かさへん!)」



 パスを受けて前を向かれまいと、想真がルイに向かってダッシュ。



 だがルイはこれを受け取らず、サッと左に躱す。



「(スルーかよ!)」



 龍尾の読みが外れ、ルイが受け取ると思っていたボールは流れていく。


 取ったのはアドルフだ。



「(ドリブル突破するには遠い、パスだ!)右寄せるな!サイドそのまま!」



 あの位置からアドルフが1人で突っ込まないだろうと思い、他の選手へパスを出すだろうと龍尾は瞬時に判断。



「!」



 だがアドルフは龍尾の予想を裏切るかのように、その場でドリブルを開始する。



「のわぁ!?」



 想真はアドルフとぶつかり、体格差で小柄な想真の方が跳ね飛ばされてしまう。


 その前に佐助が立ち塞がり、これ以上の突破を許さんとしていた。



「!?」



 だがアドルフは足元を見逃さず、佐助の股下をボールを軽く蹴って通すと、自らも蹴った直後にダッシュをかける。


 これに追いつき、技とパワーを駆使してアドルフが2人抜きに成功する姿は、日本サポーターからも歓声が上がる程だ。



「(ちぃっ!)」



 アドルフの前には龍尾だけ。エースとの一対一に備えようとした時。




「まだだよアドルフー!」



 そこに突破を狙うとただ1人、察知していた弥一はアドルフの前に立ち塞がる。



「(神明寺!?)」



 突然現れた弥一の姿に龍尾は何時の間に寄ってたんだと、GK視線から見ても小柄なDFの姿を捉えられず驚く。



「だろーな!来ると思ってたよヤイチ!」



 アドルフは彼なら来るだろうと、瞬時に弥一と正面から争う。


 パワーだけでなくテクニックも兼ね備えるベルギーのエース。


 速さと鋭さを持ったフェイントで、弥一を翻弄しにかかる。



 しかし弥一は飛びつかずに落ち着いて、アドルフの動きを見て突破させない。



「(このくらいは予想してたさ、ディーンと張り合う程だからな!)」



 昔から弥一がディーンと数え切れない程、1on1で争う所は見ている。


 此処までついて来られてるのは、アドルフにとって想定内だ。



「(此処で絶対パスは無いよね、アドルフなら!)」



 弥一もアドルフのプレーや性格は分かっている。


 彼は此処まで来たら自分で決めたいと思う、典型的なストライカー思考。


 何より心が俺が決めると叫ぶ、そう言ってるのが証拠だった。



 一対一の攻防が続く中、影山がアドルフへ忍び寄っていく。


 数的優位となる前にアドルフは、右のアウトサイドでボールを軽く右に転がす。



「(こいつでどうよ!!)」



 直後にアドルフの左足が強く地面を蹴って、サイドステップで右に転がったボールに近づく。


 そこから彼は右足を一閃、芯を撃ち抜いたシュートが飛ばされる。



「っ!」



 サイドステップからのシュートを読んでいた弥一。


 右足を出して、アドルフが蹴った球を弾く。



「(ヤバ!?)」



 だがアドルフの蹴ったシュートは弾かれながらも、日本ゴールへ向かっている。


 それもゴール左上隅と、GKにとって難しいコースへ飛んでしまう。


 振り向いてボールの行方が見えた弥一は、不味いと最悪の結末が頭を過ぎった。



 それはさせないと言わんばかりに、彼は跳ぶ。


 驚異的な反射神経を発揮して、弾かれた球に飛びつく龍尾。


 次の瞬間には難しいコースのシュートを、帽子が脱げ落ちながらも両手で完璧にキャッチする守護神の姿があった。



「あっぶねぇ……」



 龍尾としても咄嗟の反応。


 天才GKである彼でなければ、高確率でゴールは奪われていたかもしれない。



「Bravissimoー!リュウさん今のマジでミラクルセーブだよー!」



「うおっ!?な、なんだよ!」



 防いだ龍尾に対して弥一は満面の笑顔で飛びつき、イタリア語で彼を称える言葉まで飛び出す。


 急に抱きつかれた龍尾は思わずビックリしてしまう。



「あれ止めるなんてもう神セーブだから!流石天才GKー♪」



 今までの言い争いなど無かったかのように、弥一は龍尾へ深く感謝していた。



「いや、いいから早く戻れって。ボール出せねぇからよ」



「ゴメンー、ついテンション上がっちゃったー」



 グズグズしてたらボール保持の時間をオーバーしてしまう。


 龍尾が弥一を引き剥がし、ポジションに戻らせるとパントキックで前線へ蹴り出す。




「リュウさん、ベルギー完封だよー!」



 ポジションに戻った弥一はゴールへ振り返り、0点に抑えようと笑顔で言う。



「当たり前だろ、ヘマすんじゃねーぞ!」



 それに龍尾も返し、再びフィールド全体を見て指示を出す。



 予期せぬピンチはあったが、しかし結果として2人の距離は確実に縮まっていた。

勝也「お前急に龍尾への呼び方変えてきたな?」


弥一「よくよく考えたら龍尾さんよりそっちの方が言いやすいと思ってさー、照さんだってよく言ってるし♪」


勝也「確かに呼ぶ時に名前短めの方が呼びやすいしな」


弥一「そうそう、辰羅川とかいちいち呼べないからタツさんって呼んだりしてるしー、室とかは2文字だからそのままだけどねー」


勝也「じゃあ俺も試しに、おーいツッキー!」


月城「今のひょっとして俺スか!?」


弥一「あ、いいねそれ採用!彼は今日からツッキーとなりました♪」

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