赤い悪魔達との激突
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「……おし、行くか」
日本のロッカールームでユニフォーム姿となった勝也。
他の日本選手達へ静かに告げた後で、席を立つとフィールドに向かって進む。
「大丈夫ー?ガチガチになって緊張してるなら、ドーンしてあげよっかー?」
「いらねぇし、もう初戦みたいな事はないから心配すんな」
何時も通りマイペースな弥一から声を掛けられ、勝也は弟分の頭にポンと右手を置く。
「日本代表のキャプテンとか10番とか、関係なく自分のサッカーをやる。だろ?」
そう言って勝也が軽く笑った後、再び前へ歩き出す。
兄貴分の迷いが無い所を見れば、弥一は大丈夫そうと自身も勝也に続いて向かう。
選手達が出入りする入場口には、先にベルギーの選手達が縦1列に並んで立っているのが見える。
日本も彼らの左側に並んで時を待つ。
「……」
先頭に立つベルギーのキャプテン、ルイは隣の日本キャプテンを務める勝也を見た。
「ん?」
その視線に勝也が気づき、ルイの方を見るが彼はふいっとそっぽを向く。
何なんだと思いながらも時間が来たので、勝也とルイの列はそれぞれフィールドへ歩き始める。
大会決勝の会場には多くの日本サポーターが来て、現れた選手達に声援が降り注がれた。
「コウメイって奴はスタメンじゃないな。スーパーサブで流れを変えるタイプか」
「……後半、注意しよう」
「だな」
横目で日本のスタメンをアキレスが確認していくと、今大会日本で活躍している光明の姿が無い。
彼は今回もベンチスタート、それをドンメルは静かに理解する。
両キャプテンが立ち会う中、コイントスが行われて日本の先攻がきまった。
「(えーと、英語とか無理だから……つかベルギーって何語だ?ベルギー語ってのは聞いた事がねぇし……)あー、よろしくな」
言葉を言おうとするが、勝也は此処まで相手キャプテンと深く言葉を交わしていない。
何も言わないのも失礼だと思い、2戦同様ルイと握手を交わしながら日本語で話す。
「日本を相手にドローで優勝する気は無い。ベルギーの完勝でこの大会を制覇してやる」
勝也と握手しながらも、ルイはこの試合を譲らないとベルギーの優勝を宣言した。
その目は強気で揺らがない。
「(ドロー?何かドローがどうとか言った気がするけど、まさか引き分けで逃げてやるって挑発か!?そうは行くかよ!)」
英語で言われた勝也は意味を分かってないが、なんとなく挑発されたとは感じたようで、勘違いしながらもルイと火花を散らす。
「こっちの先攻だ。まずはじっくり攻めるからな」
円陣を組む日本に勝也が声を掛け、作戦を決めれば皆が頷く。
「行くぞ!日本GOイェー!!」
「「日本GOイェー!!」」
恒例の掛け声を揃えて選手達はポジションに散り、試合の時を待つ。
ダークネイビーのユニフォームの日本、GKは黄色。
赤いユニフォームのベルギー、GKは緑。
U-20日本代表 フォーメーション 3ー5ー2
照皇 酒井
11 18
月城 神山 三津谷
2 10 8
影山 八神
15 5
青山 神明寺 仙道(佐)
3 6 4
工藤
1
U-20ベルギー代表 フォーメーション 4ー5ー1
アドルフ
11
アドン ルイ トーラス
9 10 7
ダイン メラム
8 6
トールマン アキレス セイン ケント
2 5 3 4
ドンメル
1
「ムロやコウメイがいない分、高さはこっちが有利だけどセカンドはあっち速いぞ。そこ皆で注意な」
アキレス達DF陣は狼騎を筆頭に、向こうのセカンドに対する対応が優れてる事を把握済み。
弾いたボールに今回は注意しようと、アキレスがベルギーの守備を仕切る。
「今日俺達が追いかける立場だから、何時も以上に点やれねーぞ!アドルフにゴールパフォーマンス絶対やらせるなよー!」
後ろから龍尾が守備陣へ、今日特に0で終わろうと意気込んで声を掛けていた。
ベルギーから取るゴールを1点に済ませて勝つ為に。
「(そりゃアドルフがそれをするっつー事は俺達DFがやられた時だからな)」
「(あの露出狂には今日ずっとユニフォーム着ててもらうか!)」
その前を守る佐助、番は2人とも今日はアドルフにユニフォームを脱がせないと、封じ込める気持ちを高める。
「早い時間帯での先制、狙って行こう」
「分かってるっての」
センターサークルに立つ照皇は側に立つ狼騎へ、頑張ろうと声を掛けた。
面倒そうにしながらも狼騎は返事を返す。
主審が時計で確認すると、開始のキックオフとなる時間を指して、その瞬間に笛は鳴らされた。
ピィーーー
日本ボールで始まると、ボールをまず持って進むのは勝也。
「(こいつが弥一の言う……注意しろとか言ってたけど)」
「(何か知らないけど隙だらけ!)」
「うぉわ!?」
アドルフが勝也を見て考え事をしてる間、勝也はドリブルで目の前のアドルフを突破する。
「(あのバカ!ボケッとしやがって!)」
あっさり抜かれた相方に内心毒づきながら、ルイがすぐに勝也へと向かう。
このままルイも抜き去ろうと、パスを出さずに勝也はドリブルで真っ向勝負。
上半身の動きで惑わし、その隙に左から抜きに行く勝也だが、ルイが立ち塞がって行く手を阻む。
「(そんなフェイント効くかよ!)」
「っ!」
突破出来ず逆にルイが勝也のボールを奪おうと、右足を伸ばして勝也は必死にキープして渡さない。
「!」
その時アドルフは気づく。
一瞬ルイと目が合えば、彼は左手の人差し指で「来い」と仕草を見せた。
指の動きとアイコンタクト、長年彼と共にプレーをしてきたアドルフは察して動き出す。
「がっ!?」
急に左から激しく当たられ、勝也の左半身に強い衝撃が伝わると、体が崩れ落ちて倒されてしまう。
「ファール!」
月城が声を上げてアドルフのファールを主張するが、主審は首を横に振って反則を取らない。
正当なチャージと認められ、ノーファールとなっていた。
その間にルイがボールを奪い、アドルフは反転して中央から日本ゴールに走り出す。
「佐助11ー!」
龍尾からのコーチングが飛べば、佐助がアドルフに向かう。
中盤ではルイが左のアウトサイドで、左サイドのアドンに渡す。
そこからドリブル、と見せかけて光輝を引きつけてから、アドンは中央のルイへ返す。
「左動き出してるぞ亨!」
龍尾の目が左から上がって来る選手を捉える。
トーラスを追い越し、ベルギーの右SDFケントが積極的に攻めて来た。
ボールを持つルイも視線が向く。
「!」
だがそれはデコイ。
ルイはケントを見たまま、ノールックで左から上がって来たアドンにパスを出していた。
地を這う速いグラウンダーのボールが向かい、アドンは左足でトラップ。
その間に想真が寄せて行くも、既にアドンの右足は振り抜かれる。
左からの鋭いシュートが日本ゴールを襲う。
ボールは低い弾道でゴール左下を捉えるが、龍尾は腰を落とした低い姿勢で、シュートを正面から受け止めた。
「ナイスセーブー!」
グラウンダーの球をキャッチした龍尾に、弥一はすかさず称賛の声を送る。
「(ってて、アドルフの奴すっげぇ強い当たりして来やがる。海外の鍛え上げたフィジカルは伊達じゃねぇな……!)」
体にズシンと伝わる重いショルダーチャージを受け、若干左肩に残る痺れを右手で擦りながら、勝也はアドルフのパワーを脅威と感じた。
「勝也平気かー!?」
ベンチから富山の声が飛ぶと、勝也は右手の親指を立てて大丈夫と伝える。
流石に開始早々、キャプテンの負傷交代は洒落にならない。
「何やってんだアドルフ、あんな10番に踊らされんな!」
ルイはアドルフに先程、勝也にあっさり抜かれた事を注意。
「悪い!ヤイチから10番に気をつけた方が良いって言われたもんだからつい」
開始前に弥一からアドルフに伝えられた、勝也にやられるという言葉。それが立ち上がりのプレーで、アドルフに迷いが生じてしまう。
「確かあいつは小賢しい小細工が得意なんだろ?だったらそれはハッタリに決まってる」
「ハッタリ……そうなのか?」
「あの10番にそんな力は無い、恐れる必要なんか少しもあるか。そっちよりヤイチの上がりやロングパスを警戒した方が良い」
ルイから見た勝也の印象、それをはっきり言い切る。
弥一と比べたら特別警戒する必要はないと。
「じゃあ俺はヤイチをずっと見とけば良いんだな」
「そうそう、10番は俺が潰しといてやるから何も気にせず行け」
ベルギーの要2人が作戦を立てている時、それを見ている者がいた。
「(ま、とりあえず勘違いさせた方が都合良いか)」
勝也がバカにされたり見下されるのは、正直気に入らないが弥一は勝利に徹する為、そのままにしておく。
あの時かけた言葉が本当の警告だと、わざわざ知らせる必要など無いのだから。
勝也「やっぱ腹筋がバキバキに割れてるぐらい鍛えてるから、当たりが強ぇわ」
弥一「フィジカル強いとそうなるよねー」
勝也「男としてはあの筋肉に憧れるけどなぁ、腹筋とかやってるけど中々あそこまでは……」
弥一「作者も腹筋40回以上とか毎日やってても、全然割れないからねー」
勝也「あいつは無理だろ」
弥一「うん、無理そう♪」
食事制限とか特にせず食べてます……(食べたい欲に勝てず)




