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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ&U-20代表編

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勝利に貪欲な者達

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 舞台は東京のサッカー場。



 ジャパンユースチャレンジカップも最終戦、2勝している日本とベルギーの優勝争いとなる。


 ただベルギーは得失点差で日本を上回り、引き分けでも優勝という有利な条件。



 日本が今大会で優勝するには、勝利しかない。若き日本代表を乗せたバスは、決戦の会場へと運んでいた。



「お前もミランで凄いのとやってたんだなぁ、まさかアドルフとチームメイトだったなんて」



「折角だからあいつからサイン貰えねぇ?」



 バスの車内にて前の席に佐助、後ろの席にいる冬夜は弥一がベルギーのエースと、友人関係だと知って興味津々という様子。



「気軽に書いてくれそうだから頼んでおくよー」



 その中で彼のサインを頼まれた弥一。


 アドルフの性格は知ってるので、彼からサインを貰う事は容易い。



「アドルフのファンかよお前らは、そりゃあいつは海外の若手で注目されてるけどよ」



 敵チームのエースで盛り上がる自チームに、勝也は軽くため息をつく。


 そう言いながらも内心では、アドルフからサイン貰うの良いなと思っていた。



 弥一は2枚書いてもらう必要があるなと、勝也の心を読む。



「サッカーの方は見た限り、力強くテクニックもスピードも高さも兼ね備えた万能型のストライカーだ。神明寺、お前は他に何か知っているか?」



 照皇から一般的に知られた、次世代のベルギーを担うエースという情報意外に何か無いかと、弥一に質問が飛ぶ。



「すぐ脱ぎたがるねー」



「露出狂の変態かよ」



 当時のチームメイトから見た彼のイメージはそれだと、弥一から聞かされて月城からツッコミの言葉が飛び出す。



「そういやアドルフってゴール決めた後にユニフォーム脱いだりするから、結構イエロー貰ってんだよな」



「あれ見とったら天才なのか馬鹿なのか、よー分からんわ」



 ゴールを決めた後のパフォーマンスを、岡田も光輝も思い浮かべてカードを貰う姿を見てきている。



「それでも上手いのは確かだよー、当時のジョヴァニッシミでも結構活躍してたからねー。良い意味でも悪い意味でも」



「悪い意味ってやっぱり……」



「ゴール決めたらテンション上がって脱いでたなぁ〜」



 大門の推測通り、弥一からアドルフの当時を聞く。


 少しお調子者で優秀なストライカー、というイメージが強かったが、一気にお調子者な感じが強まってきた。



「今日の試合はあいつを封じられるかが大事だけど、それ以上に得点だ。取らないと今日勝てねぇし」



 ベルギーのアドルフが目立つも、今日は日本と同じく2戦無失点の強固な守備から、ゴールを奪わなければならない。


 勝也の言葉に日本選手達が、ベルギーの守備をどう攻略するか考え始める。




 一方ベルギーの選手達を乗せたバスも、東京の決戦場へ向かって既に走り出していた。



「向こうのDFはなんつってもヤイチだ。あいつはもう化け物、コスタリカやコートジボワールのDFが可愛く見えちまうぐらいにな」



 こちらも弥一を知るアドルフが、彼についての情報を仲間達に話す。



「おいアドルフ、大げさに盛ってないだろうな?この中でそいつの事よく知ってるのお前だけだから、正確な情報くれよ」



「正確だって!あいつがディーンぐらいサッカー上手くて、飯をすんげぇ美味そうに食ってこっちまで腹減って来たりとか」



「……後半、不要」



 その情報は本当なのかと疑うアキレスに、余計な情報を言うアドルフへ静かなツッコミを入れていくドンメル。



「ディーンぐらい……まぁ確かにあいつが日本の高校でとんでもないカウンターシュートをやった事は、ベルギーでも有名だ。けど注意するのはそこだけで良い」



 キャプテンのルイは腕を組んで、アドルフの情報を聞くと小さく笑った。



「ずば抜けた奴が1人居ても、総合力で勝ってれば問題ない。そのヤイチとコウメイって奴以外、日本にたいした奴はいなさそうだからな」



 怖いのはミランでアドルフ達と共に、不敗神話を築き上げた日本DFの神明寺弥一。


 それに加えて2戦で頭角を現してきた源田光明。


 他は脅威にならないと、ルイはベルギーが日本を叩き潰す未来を確信している。



 負けて母国へ帰るつもりなど全くない。


 小柄なベルギーのキャプテンが見据えるのは今大会の優勝と、その先にあるU-20ワールドカップ制覇だけだ。




 決戦となる東京のサッカー場では、既に多くの日本サポーターの姿が続々と来場。


 日本が強豪と言われるベルギーを倒す姿、そして大会の優勝を皆が見たいと願う。



「日本は初戦チグハグな感じだったけど、調子上げて来たよね?」



「と思ってたらベルギーがそれ以上なんだよなぁ。堅い守りのコスタリカ相手に5ー0だぜ?アドルフ爆発してるし」



「向こう引き分けでも良いし、結構不利だよな今日は」



 勝利を望む日本サポーターだが苦戦は免れないだろうと、シビアな予想をしている。




「どう見てますか京子さん?」



 周囲の言葉が耳に入りつつ、応援席に座る輝咲は隣の京子へ意見を求めた。



「……ベルギー相手に日本は不利だと思う。向こうは日本より早く今のチームを作って、連係力を高めてる上に個々の能力も高い。間違いなく格上の相手で強敵」



 応援するチームが勝つとは言わず、京子はベルギーが総合力において、日本を上回っていると意見を述べていく。



「エースのアドルフ、中盤のルイ、守備を支えるアキレス、ドンメル。各ポジションに要となる実力者が揃ってバランス良いから」



「ううん、今日の試合かなり苦しくなりそうですね……」



 やはりベルギーは手強い相手だと、京子の話を聞いて輝咲に充分伝わっていた。


 ちなみに勝気は京子の膝の上で、夢の世界を堪能中。




「光明ー!今日も一発決めてくれよー!」



「3戦全部ゴールやっちゃえー!」



 日本の選手達がアップの為、フィールドに登場すれば、サポーターの声援が出迎える。


 その中で2試合連続ゴール中の、光明に対する応援が多かった。



「お前すっかり期待されてんじゃねぇか」



「別に俺は3戦連続ゴールじゃなくて良いけどな、勝てれば何でも」



 光明の人気が上がってると感じて、茶化すように月城が声を掛ける。


 当の本人は3試合連続ゴールを意識してはいない。




「今日は勝たないと優勝が無いか、まさかベルギーが此処まで調子を上げて来るとは……」



「良いじゃないですか、むしろとてもありがたい」



 ベンチで今日の優勝は厳しいかと、難しい顔で考え込む富山とは対照的に、マッテオの方は笑みを浮かべていた。



「この先こういった勝つしかない、という状況があるはずですから、その中で彼らが勝ちきれるかどうか。大いに収穫ある試合になると思いますよ」



 厳しい状況へ追い込んでくれたベルギー。


 彼らに感謝しながら日本選手達が、これを乗り越えてほしい。



 勝利だけでなくチームのレベルアップ、その両方をマッテオは狙う。




「おうヤイチ!」



「アドルフ、調子良さそうじゃーん♪」



 遅れてベルギーの選手達がアップに現れると、アドルフが弥一の姿に気づいて近づく。


 弥一もそれに気づけば2人はハグを交わしていた。



「お前エグい事すんなぁ。日本のスクールであんなシュートぶちかますって、俺も出来ねぇよ!」



「まあ日本での練習の賜物かなー?」



「ホント、あれ見たら流石のディーンもひっくり返んじゃねぇ?」



「むしろ「俺も出来る」とか言って、普通にやっても驚かないねー」



 弥一とアドルフ、久しぶりの再会に会話が止まらない。



「(何話してるか分かんねぇ……!)」



 弥一の近くにいた勝也の耳に、2人の声は入って来るが共に英語で喋ってるせいか、理解が追いついていなかった。




「この日本に来て楽しみにしてたんだよ。敵としてのヤイチと戦ってみたいってな」



 ミランのジョヴァニッシミで何回か、紅白戦や1on1で競い合ってきたが、それは同じチーム内での事。


 弥一とアドルフは敵チームで今回初めて向き合う。



「怖いねー、コスタリカから3点取ったり凄い調子上げてるからさぁ〜」



 陽気に笑いながらも、アドルフを怖いストライカーだと弥一は恐れる素振りを見せる。



「そう言って抑える気満々のくせに、悪いけど俺は騙されないし油断もしないぜ?」



 弥一の見た目で油断する相手、それらを全て封じ込める姿を、アドルフは散々見てきた。


 彼は分かっている、弥一相手に隙を見せた瞬間、狩られる事を。



「僕に結構警戒してるみたいだけど、元チームメイトのよしみとして伝えとくよ」



「うん?」



 アドルフに何かを伝えようとしている弥一、その時に彼の顔は自信ある笑みを浮かべた。



「僕ばっか見てたら10番にやられるから」



 これだけ言うと弥一はアドルフから離れ、アップに戻る。




「(日本の10番?初戦で調子悪かったっていうあいつの事だよな?)」



 アドルフの視線の先には、弥一とパスを回す勝也。


 コスタリカ戦で特に活躍してなくて、コートジボワール戦でコンディションを少し上げてきた。


 勝也に対するアドルフの印象はそれぐらいで、特に厄介とは見ていない。



「(得意の心理戦か?それとも本当にただの注意か?どっちだこれ)」



 元チームメイトへの親切で言ったのか、自分から注意を逸らす為か、どちらにしても弥一の言葉に、アドルフは早くも惑わされていた。

アドルフ「俺に対して日本チーム変な印象なってんじゃねぇか!?」


弥一「間違ってないよねー?」


ディーン「脱ぐだろお前は」


ランド「なんならミランでもお前それだったからなー?」


クライス「寒い冬なのによく脱げるなと怒りを通り越して感心したぐらいだ」


リカルド「脱がなきゃ物が食えない呪いでもあるのかと思ったぞ」



ルイ「……ちなみに言うとこいつ、コスタリカ戦で1ゴール決めた時、ユニフォーム脱ぎ捨ててカード貰ってるからな……!」


弥一「それはベルギー帰ったら芽キャベツコース確定だね♪」

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