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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ&U-20代表編

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満足はさせない

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 2ー0、まさか初戦で調子の悪かった日本相手に、此処まで押し込まれるとは思わなかった。



 そんな考えを持つ者が多数出て来た、コートジボワール。


 ドランを中心に再び日本ゴールへと迫る。



「冬夜!」



「!」



 影山が叫ぶと共に、ボールを持つクレイへ向かえば続けて冬夜も行く。


 身体能力で勝るアフリカ選手相手に、日本は2人がかりの守備で挑む。



「くぅ……!」



 影山と冬夜のプレスを前に、クレイのドリブルは前へ運べない。



「その調子!出来る限り2人がかりで行けー!」



 良い守備だとキャプテンマークを巻く勝也は、声を上げて皆を鼓舞していた。




「!」



 突然ドランが番から離れ、中盤に下がっていく。



「ヘイ!」



 そのドランがボールをよこせと要求し、ダンからパスを受け取る。


 反転すると共に右足を振り上げた。



「(ロング!)」



「キーパーロング!!」



 龍尾が読むと同時に弥一が叫ぶ。


 直後にドランの破壊力ある長距離砲が、日本ゴールを強襲する。



 力あるシュートだが正面から両手で受け止め、龍尾はそのボールを離さない。



「(またあいつ……俺の方が間違いなく全体が見えるはずなのに)」



 シュートを止めた事よりも、察知したタイミングが自分と弥一、ほぼ同時だった事の方が龍尾は気になった。


 しかしそれも一瞬、ボールをすぐ出さなければならないので、龍尾は室をターゲットに右足のパントキックを蹴る。




「今日は日本良い調子ですね」



 初戦に続き2戦目も、輝咲と京子は代表のユニフォームを着て応援に駆けつける。


 京子の膝には今日も勝気が座って、きゃっきゃと笑う。



「ええ、けど相手はアフリカのチーム。彼らの並外れた身体能力をもってすれば、あっという間に2点を取ってきてもおかしくない」



 2点のリードがあっても京子は楽観視せず、冷静な目で見ていた。


 アフリカ勢を相手に日本が過去に何度も苦しめられたという、過去のデータを知っているので、気が抜けない。



「それでも……彼は1点も許す気なんか絶対無いと思いますよ」



 彼が誰よりも失点を拒み、完封に執着している事を輝咲は知っている。


 彼女の目はフィールドで声を出す、背番号6の小さなDFを見つめていた。




「光明、そろそろ出番です」



「あいよっと」



 ベンチではアップを終えた光明が、交代準備に入りながらマッテオと話す。


 初戦に続いて再び背番号21の、日本選手が姿を見せれば一部のサポーターからは、光明に対する声援が飛ぶ。



「良い仕事したな、お疲れ」



「おう、あいつら凄ぇ当たり強いから気をつけろよ」



「そんなのブラジルで嫌って程味わったから」



 交代で下がる室と言葉を躱してから、光明はフィールドに入って行く。



「勝也、10番より6番注意。そいつをしつこく狙った方が良い」



「おう、分かった」



 交代してすぐ勝也の方へ向かうと、10番のクレイを勝也は警戒して狙っていたが、光明はそれより6番のダンを狙った方が良いと教える。


 外から見て彼の方がこのチームの心臓になっている、光明から見てダンを潰した方が良いと。




 そこから勝也はダンに執拗なマークで、彼を自由にさせない。



「(こいつ急に何で俺へ!?)」



 さっきまでクレイに向かっていたはずの勝也が、自分を付け狙うようになって、何故だと思いながら動き回って振り切ろうとする。



 だが勝也は意地でも離れないと、ダンの追走を続けた。



「(後は3点目を取って、相手の息の根を止める)」



 勝也がダンを追いかけ回すのを見た後、光明は次の仕事に向かって動き出す。




「時間近づいて来たよー!此処まで来たら完封行けるよー♪」



 スコアは2ー0のまま。


 弥一が守備陣へ声を掛ければ、このまま完封勝利してしまおうと、皆の完封への意欲を高めていく。



 相手の低いクロスを佐助が弾き返し、セカンドとなった球を春樹が拾った瞬間。



「カウンター!」



 3点目を貪欲に狙う勝也。


 終盤に入っても彼の声量は衰えず、フィールドの選手達に届く。



 春樹から右の辰羅川、右サイドの突破かとタップは読んできたが、辰羅川はパスを受けて中央へ返す。


 それを春樹が受け取り、2人によるワンツーで中央から攻めていた。



「(くっそ!勝也さんは駄目かよ!)」



 一瞬勝也の方へチラッと目を向けたが、彼の前にはダンがマークしている。


 これではパスを出しても取られると、春樹は渡せない事を悔しく思う。



「こっち!高く!」



「!」



 そこにゴール前の光明が右手を上げながら、高いボールを要求。


 彼の前にはガンツが張り付き、低い球では跳ね返される。


 春樹は要求通りに右足で、ゴール前へ高く出した。



 光明とガンツ、共にジャンプすれば飛び出して来たGK、バートも跳躍して両手を伸ばす。



「うお!?」



 この時、光明は競り合いの中でガンツの肩に乗り、推進力を利用していた。


 バートの両手が届く前に、3m以上の高さから頭で合わせる。


 GKが飛び出して無人となったゴールへ、球は吸い込まれていく。



「良いぞ3点目ー!」



 勝利を決めるダメ押しの得点を決めた光明に、勝也が真っ先に近づいて彼を称賛。



「おい!反則だ!あいつ今俺の肩に無理やり乗った!」



 そこへ光明と競り合ったガンツが、今のは反則でノーゴールだと主審に詰め寄る。


 しかし主審の方は首を横に振り、ゴールだと認めていた。



「(別に掌で肩を直接抑えつけた訳じゃないし、死角突くのは当たり前だろ)」



 元々の空手で鍛えた身体能力に加え、狡さも兼ね備えた光明の得点。


 この辺りはブラジルで磨かれた、マリーシアのおかげだ。



「(いいねいいねー、良い子が多い日本選手の中でズルが出来る悪い子は居てくれた方が良いし♪)」



 彼が狡賢い事はプレーと心を見て、弥一には分かっていた事。


 今の日本はどちらかと言えば、正々堂々の真っ向勝負タイプが多い。


 それが日本の長所で短所でもある。



 このチームでそういう悪い事が出来るのは弥一、月城、狼騎ぐらいだったので、光明は狡い事が出来る貴重なタイプだ。




 コートジボワールは1点を取り返そうと攻めるが、終盤で守備を固めてきた日本の前に、崩す事が出来ないまま試合終了の笛が鳴り響く。


 初戦の苦戦から2戦目は完勝と、調子を上げる結果となった。



「今日は良かった方ですが、まだまだ押し込めるチャンスはあったと思います」



 戻って来た選手達にマッテオは初戦より良いサッカーと、褒めたりしたが満足行く勝利ではない。


 穏やかな口調の中、「これぐらいで浮かれるな」というのが感じられる。



 絶対に負けられない重要な大会なら、彼らはもっと必死に来ていたはず。


 そうなれば違った結果になっていたかもしれない。


 監督からの穏やかだが、甘くない評価を受け止めて、選手達は3戦目の戦いへと進む。




「初戦よりは良いサッカー出来たけど、監督からすればまだまだ駄目だったかぁ」



 日本チームを乗せたバスが、合宿所に向かって走行中。


 その車内で勝也はマッテオからの評価を振り返っていた。



「マッテオは満点の評価なんか出さないよ。褒めると同時にここが駄目、あそこはもっとやれたはずだとか、ミラン時代から言われ続けてたからねー」



 彼が試合で完璧、100点という評価を下した所を、弥一は留学時代から見た事が無い。


 満足したらそこで終わり、そこからの進化が無いから、と考えて常に課題を見つけては伝える。


 それが彼の指導スタイルだ。



「多分彼が満点を下すとしたら大きなタイトルの獲得。優勝しかないだろうね、多分」



「優勝か……」



 満点は頂点に立った時、そう言われるかもしれない。


 弥一からの言葉を受けると、勝也の中で優勝への意欲が増していき、弥一もそれを感じ取る。



「とりあえず今回の大会で優勝するなら、絶対勝たなきゃいけないチームいるからー」



「分かってる、あそこが今回一番の強豪だしな」



 2人揃って頭に浮かぶのは、赤い悪魔の軍団。




 同時刻、ベルギーはコスタリカとの試合を終えていた。


 結果は5ー0と、エースのアドルフ・ネスツがハットトリックの活躍で完勝。


 この結果、得失点差でベルギーが首位に立ち、次の日本戦は引き分けでもベルギーの優勝が決まる。



 日本が優勝するには、調子を上げて来た赤い悪魔達を倒さなければならない……。



 日本3ー0コートジボワール



 酒井


 室


 源田



 マン・オブ・ザ・マッチ


 酒井狼騎




 ベルギー5ー0コスタリカ



 アドルフ3


 ルイ


 アドン



 マン・オブ・ザ・マッチ


 アドルフ・ネスツ

弥一「何気に結構DFへ詰めて前からプレッシャーかけてたのが評価されたね狼さん♪」


狼騎「るせぇな、んなもん現代サッカーじゃ基本中の基本だろうが」


春樹「立見ばっかりMOM選ばれても面白くないから、僕達牙裏も頑張らないとね。あ、勝也さんはバシバシ毎試合取って良いですから!」


勝也「いや、毎試合は取れねぇって……」

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