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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ&U-20代表編

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いつも通りのサッカー

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「2戦目、コートジボワールはアフリカの高い身体能力に加え、組織力を兼ね備えた強敵です」



 合宿所のミーティングルームにて、選手達が集う中でマッテオが次の試合について伝える。



「前のベルギー戦に出ていませんでしたが、エースのマキシム・ドランは強靭なフィジカルによるパワーが厄介です。彼が出て来た時は当たり負けしないよう、気を付けましょう」



 部屋にある大型スクリーンの方へ表示されるのは、所属するクラブで相手のDFを跳ね飛ばし、強烈な右足によるシュートを決めるドランの姿。



「うわぁ、こいつエッグいわぁ〜」



「俺ら正面から行ったら跳ね飛ばされそうだな……」



 ドランの力強いプレーを見て、光輝はこいつとまともに競り合えないと感じる。


 それは隣の冬夜も同じ意見だった。



「けどこいつを止めないと完封出来ないからねー、僕達DFでどうにか止めなきゃ」



「そうだよな。ドランが多分攻撃の要になってくるだろうし、いざって時は俺が体を張って止めるさ」



「おー、頼れる事言うじゃん!頼むよバンちゃーん♪」



 エースは俺が止めると意気込む番に、弥一は彼の肩へ手を置いて明るく笑う。


 いつの間にかそう呼べるぐらい仲良くなったらしい。



「……」



 その様子を龍尾は腕を組んだまま、主に弥一の方を見ていた。



「(てめぇがエースを止めると言わず、躊躇いなく仲間の方を頼ってやがる。まるで仲間に俺がやるんだって自信を持たせようとする為に)」



 番がこの試合の鍵だと言って、弥一は番に自信をつけさせようとしている。


 少なくとも龍尾からは、そういう風に見えた。




 翌日、神奈川のサッカー場を舞台に、ジャパンユースチャレンジカップの2回戦が行われる。



 アップの為に両者がフィールドに出ていると、弥一は勝也とパス連してる時に彼の心を読む。



「(まだ直ってないかぁ)」



 このまま挑めばコスタリカ戦の時みたいに、また繰り返すかもしれない。


 そう思って弥一は兄貴分へ声を掛けた。



「緊張まだしてるー?」



「してねぇよ、2戦目でもう慣れてきたし」



 パスをトラップして、そのまま蹴りながら声を掛ける弥一に勝也も同じようにトラップすれば、パスを返して答える。



 緊張はしてない、ただ彼は代表のキャプテンとして恥じないようにと、強く考えているのが心に出ていた。



「ねぇ勝兄貴」



「ん?」



「普段のサッカーを代表でやっちゃ駄目なの?」



 弥一がそう言いながらパスを出すと、勝也は右足で受け損ねてトラップミス。



「な、なんだよ急に?」



 パスで流れたボールを取りに行って、再び弥一の前に現れた勝也。


 急に思っていた事を聞かれ、戸惑いが見える。



「えー、何かこの前は全然らしくない綺麗で気取ったサッカーしてるなぁって思ってさ。勝兄貴の中で背番号10のキャプテンって、そんなイメージ?」



「気取ってるつもりは別にねぇよ……」



 国を背負うキャプテンで背番号10。勝也にはそれが特別だと思えて、彼は思い浮かべていた。


 世界で活躍する海外の名選手達を。



 いずれも想像を超える華麗なテクニックで、見てる者達を魅了しながらチームを勝利へ導くファンタジスタ。


 これが勝也のイメージにある物で、自分もそうであるべきと考える。




「代表チームじゃそういうプレーしなぎゃ駄目って決まり、あったっけ?何でいつもの方をやんないの?」



「いつものって……」



「普段のサッカー禁止とか誰も言ってないじゃん」



 それに囚われ過ぎて、勝也は本来のサッカーを見失ってしまう。


 彼の心を読んだ弥一は普段のサッカーすれば良いと、彷徨い歩く兄貴分に手を差し伸べた。



「普段の俺っつったら……そっか」



「そっちの方が相手は絶対嫌がるから♪」



 もう彼の中で答えを見つけたようで、弥一はそれだけ言って陽気な笑顔を見せる。





「(日本の10番はたいした事ない、こいつは難なく潰せる)」



「(全然活躍してなかったし、形だけのキャプテンだろこいつは)」



 相手のコートジボワールは、日本とコスタリカの試合を動画でチェック済み。


 その中で勝也は自分達にとって、危険な存在じゃないと認識していた。



 こんな奴が司令塔をやるなら日本の中盤は脆い、と。



「(……まぁ、甘く見てくれた方が都合良いか。ちょっとムカつくけど)」



 弥一としては勝也が馬鹿にされ、あまり気分は良くないが油断してくれるなら好都合。



 何も言わず甘く見させておこうと、何も言わず円陣に向かう。




「今日は……ガンガン行くぜ!日本GOイェー!!」



「「日本GOイェー!!」」



 初戦よりも大きな声で勝也が掛け声を行えば、日本メンバーもそれに続いて声を揃える。




 ダークネイビーのユニフォームの日本、GKは黄緑。



 オレンジのユニフォームのコートジボワール、GKは赤。




 U-20日本代表 フォーメーション 3ー5ー2



      酒井   室


     18    9  



 広西    神山    辰羅川


  13     10      16



    影山    天宮


    15     17



    青山 神明寺 仙道(佐)


     3   6   4


       工藤


        1




 U-20コートジボワール代表 フォーメーション 4ー5ー1


         


        ドラン


         9



 タップ  クレイ  ヒューイ  オーバ


  7     10     8     11



        ダン


         6



 シュラ  ガンツ  ガーラン  マード


  4     5     3     2    


        バート


         1



 初戦のスタメンからメンバーを入れ替えて来た日本に対し、コートジボワールの方はドランを中心とした主力が出場。


 大きな舞台ではないとはいえ、初戦を落としたので今回はしっかり勝ちに行く。



 コイントスの結果、コートジボワールからのキックオフで始まる。



 ピィーーー




 ドランが軽くボールを蹴り出して、クレイが後ろへ戻す。


 そこへ勝也がいきなりダッシュ。



「(フンッ)」



 ボールを持ったダンは突っ込んで来た勝也を、キープしたまま右にスッと躱す。


 だが勝也はそこから切り返し、躱したダンへ再び迫る。



「(キックオフからなんだこいつは!?)」



 ボールキープするダンに体をぶつけて来る。開始から背番号10を背負う、若き日本代表のキャプテンはしつこく食らいつく。




「(弥一に言われて気づかされるなんて、ホント情けねぇな俺は!)」



 華麗なプレーをするタイプじゃない。自分は諦めず何度でも相手に食らいつき、泥臭く行く。


 日本代表のキャプテンとしてのプレーを意識するあまり、忘れていた普段のサッカー。



 それを再び取り戻した勝也に迷いはもう無い、目の前の相手に全力でぶつかるだけだ。



「くっ……この……!」



 たいした事無いと思っていた10番に食らいつかれ、ダンは近くのオーバにパスを送る。



 狙っていたのか、このパスを素早くコースに飛び込んでいた狼騎がカット。


 右の辰羅川へ預け、自身は相手ゴール前に走った。



「9フリーにするな!」



 GKバートから、長身FWの室を警戒する声が飛び出す。


 この声を聞いたガンツが室をマーク。



 だが右サイドでボールを持つ辰羅川は、ゴール前へのクロスを蹴らずに中央へ折り返す。


 そこに走り込んでいたのは勝也だ。



「(俺のサッカーをすりゃ良い、てめぇで難しくしてんじゃねぇよ!!)」



 日本のキャプテンとして迷っていた自分と決別するように、勝也は辰羅川からのボールを左足でワントラップすると、浮き上がって落ちた所へ右足で捉える。



 ボールが勢い良くゴール左隅を捉え、矢のようなシュートが飛ぶ。



「うおっ!」



 これにGKバートが高い身体能力を活かし、勢い良くダイブ。


 伸ばした右掌がボールを叩き落としていた。



 バートのスーパーセーブだが、弾いて転がる球に誰よりも早く狼騎が反応して迫る。



 他のDFも寄せていくが、それよりも早く狼騎の右足がボールを飛ばす。


 コートジボワールのゴールネットは大きく揺れ動き、その中にボールが突き刺さってるのが見えた。



「よぉし!取ったー!」



 開始早々の先制点、その切っ掛けとなった勝也はゴールを決めた狼騎へ走って向かう。




「(油断って駄目だねー)」



 コートジボワールは勝也を甘く見ていた、この失点はその代償だと、弥一は開始から点を取られた彼らを見て、ニヤリと笑みを浮かべる。

弥一「何かと手のかかる兄貴分で苦労してますー」


勝也「反論出来ねぇ……」


弥一「まー、こっから迷いなくガンガン働いて取り返そうよ♪」


勝也「当たり前だろ、そのつもりだ」

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