集う者達と強者の来日
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「このチームU-20日本代表はU-20ワールドカップ優勝を狙えるチームであり、次の五輪を戦う主力となる。私はそう信じて彼らと共に突き進むつもりです」
多くのカメラによるフラッシュが焚かれる中で、マッテオはU-20日本代表監督として、今回の大会で戦うメンバーを発表した。
GK
工藤龍尾(八重葉学園)
大門達郎(立見高校)
岡田雅治(前川高校)
DF
神明寺弥一(東京アウラ)
仙道佐助(八重葉学園)
月城亨(八重葉学園)
八神想真(最神第一高校)
青山番(東豪大学附属高校)
広瀬冬夜(桜王学園)
辰羅川弥之助(横浜グランツ)
MF
神山勝也(東京アウラ)
影山真樹(立見高校)
天宮春樹(牙裏学園)
仙道政宗(八重葉学園)
三津谷光輝(最神第一高校)
白羽守(アルザスSC)
FW
歳児優也(立見高校)
照皇誠(八重葉学園)
酒井狼騎(牙裏学園)
室正明(琴峯高校)
源田光明(モカSC)
国内の高校生を中心にJ1、海外から数名が選出されて若き強者達が集結。
「あんたサッカーだけじゃなくやる事やってんだなぁ神山さん。結婚おめでとうー」
「ご結婚おめでとうございます」
U-20日本代表は千葉にある合宿所へ来ており、勝也の姿を見れば龍尾と照皇が結婚を祝福してきた。
「サッカーだけって部分に何かトゲある気ぃするけど、ありがとな」
立見のキャプテンとして総体や選手権。激闘を繰り広げてきた八重葉の2人と、勝也は言葉を交わす。
「ネットニュースで見ましたよー。神山さんってあの立見の美人さんとお付き合いしてたんスね」
「あの時からそんな仲だったんだなぁ……」
「羨ましい〜」
八重葉からは多くの選手が選ばれ、仙道兄弟と月城も代表の一員となる。いずれもが勝也の結婚に強い関心を持つ。
「はぁ〜、勝也さん結婚しちゃったんだ……ホントこれで幸せへ突き進んでくれると……」
「ずっと何聞かせてんだ、いい加減うぜぇ」
崇拝する人が結婚して、その事をずっと呟いている春樹に狼騎はうんざりしていた。
「神明寺ー、お前ぶっちゃけアクアクーラでなんぼ儲けとんねん?」
「それノーコメント〜」
「契約金の1200万に匹敵するくらい貰ってたりしてな」
弥一がCMや動画出演で結構貰ってそうと思い、想真や番がその辺りのギャラが気になって聞いてみるも、言わずに誤魔化しておく。
「でかっ!?お前もう2m行ってるだろ?」
「そこまで行ってないって」
自分と室との身長差に驚く冬夜。このメンバーの中で高校最長身を誇る室は頭一つ高く、目立つ存在となっている。
「すっごい場違い過ぎて緊張してきた……ちゃんと僕呼ばれたよね?」
「大丈夫です影山先輩、間違いなく呼ばれてますし違ってたら此処まで入れてなかったはずですから!」
周囲が凄くて自分が場違いなんじゃないかと思えた影山に、大門は同じ事を自分で思いながらも、先輩に大丈夫と伝えていく。
「(また個性強いメンバー集まったって感じだなぁ)」
集まってきた自分以外の20人を、観察するように眺めるのは源田光明。東京アウラに所属する賢人の従弟だ。
彼の名が発表された時、誰だ?と記者達をざわつかせる程の無名で、今回集まったメンバーの中で最年少。
観察していて光明は所属するブラジルのクラブも個性が強いと思ったが、今回集まった日本のメンバーはそれ以上の個性派集団に見える。
「ようこそ若き日本代表の皆さん。監督を務めるマッテオ・ロメロです、よろしくお願いしますね」
合宿所へ集まった21人の前に、今回の代表監督を任されているマッテオが現れ、流暢な日本語で挨拶をする。
「此処に集うのは日本、海外から選ばれた精鋭達。皆さんの実力は拝見してます。その若さで此処までのプレーが出来るのかと驚かされました」
会っていきなり代表監督から高評価を貰い、自分達は凄いんだと何人かが自信になって嬉しく思う。
「その君達がこのチームでやるべき事は、今回開かれるジャパンユースチャレンジカップを全勝で優勝」
ジャパンユースチャレンジカップは、4チーム参加の総当たり戦。若手育成の為の大会で、開催国の日本と海外から招待された3チームが参戦する。
そこで日本が目指すのは3チームを相手に勝利し、3連勝で優勝だとマッテオは言い切った。
「来年開催のU-20ワールドカップ予選となるアジアカップ、これを軽く突破して本大会で優勝。君達はこの目標を達成出来る力を持ってると、私は思ってます」
この世代の世界一を目指す事がマッテオの目標だと聞かされれば、集まった選手達の表情が引き締まっていく。
「(何か始まるって感じだな……世界との戦いが)」
チームの目標を聞いていた勝也は世界と戦える、そう思うだけで胸が高鳴るばかりだ。
「マッテオー、そこに今回と予選と本大会の全試合無失点勝利とか付け加えちゃ駄目ー?」
そこに場違いな声が弥一から発せられ、選手達が彼に注目する。
「お、おい。お前いきなり監督へ馴れ馴れしく行き過ぎじゃねぇ!?」
「大丈夫だと思うよ。彼とマッテオってイタリアで一緒のチームの監督、選手だったみたいだから」
これを側で聞いていた岡田が、慌てて弥一を止めようとしていた。それを光明は弥一とマッテオを知ってるのか、その事を岡田に話して大丈夫だと言う。
「……流石にそこまでビッグマウスな事は公で言える程、私の心臓は強くありませんよ弥一。キミの個人的な目標に留めておいてください」
マッテオは苦笑しながらも弥一に、それは記者達に伝えられないと言うつもりがない事を伝える。
「なんだー、じゃあ僕はそう言ってOKって事かな♪」
多くの代表選手やコーチ、スタッフ達がいる中でも弥一のマイペースは変わらず、呑気に笑っていた。
「世界相手に全試合無失点って、会見の時といい目標が相変わらず滅茶苦茶高いなぁ……」
弥一と違ってそんなビッグマウスが言えない大門からすれば、果てしなく高い目標だと思い、自分の口からは到底言えない。
「おいおい、選手権でうちを破ったチームの守護神がヘタレてんなよ。むしろDFよりGKがそういう事ガンガン言わなきゃ駄目だろ」
その大門に声をかけたのは同じGKの龍尾。彼は強気な表情を見せている。
「そんなんじゃ俺が全試合ゴールを守って、お前の出番は1試合も無ぇぜ?」
「……!」
ニヤッと不敵に笑う龍尾に、大門の表情は厳しい物へと変わった。相手が天才GKだろうが、代表のゴールマウスを俺が守るという強い気持ちを大門は持つ。
代表の正GK争いは既に始まって、火花を散らす。
「では、このチームを率いるキャプテンですが……神山勝也君。キミにやってもらいます」
「!俺、ですか?」
マッテオからキャプテンの指名を受けると、勝也は自分が選ばれると思っていなかったのか、驚いた顔をしていた。
「見回した限りキミしかいません。立見を率いていた時のようにお願いしますね」
「……はい!」
キャプテンを引き受ける事を勝也は力強く返事をする。自分がこの日本代表を率いるとなって、それに恥じないようにしようと心に誓う。
U-20日本代表はこの日から本格始動。来年の世界一に向けて、各自が走り始める。
「おー、此処がジャパンかぁ〜!やっと来れた〜!」
日本の空港を歩く集団の中に、長いフライトからようやく解放され、うーんと羽根を伸ばす一人の男。
10代だが既にプロの舞台で活躍し、鍛え上げられたフィジカルは世界クラスと評価されている。
「遊びに来たんじゃないからな?コートジボワールにコスタリカ、そして日本を倒して……」
「分かってるって、そんで俺達ベルギーの力を世界へ見せつける。だろ?」
小柄なキャプテンにして、相方の茶髪の頭を彼はポンポンと撫でる。
U-20ベルギー代表のアドルフ・ネスツとキャプテンのルイ・デュッセル。
海外から彼らを含めた強豪が集い、日本の前に立ち塞がろうとしていた……。
岡田「よー、大門。桜見の方で妹が世話になってるそうだな」
大門「あ、いえ。やっぱり岡田さんとサッカーしてきたからなのか、彼女凄く上手いですよ」
岡田「……で、妹からお前の名前をすっげぇ聞くけど本当にそれだけの仲か?サッカー以外にも付き合いあんのかおい?」
大門「ええ!?な、何か誤解されてます!?」
弥一「あっちのGK同士の争いも熾烈だなっと〜」
龍尾「そういやハルの奴、結構妹を可愛がってたっけ」




