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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編

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東京ダービーマッチ

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 次の試合を勝てば10連勝、勝ち点がまた1つ増えて順位を伸ばすチャンス。



 だがそれを誰よりも良しとしない者達が存在する。



 アウラと同じ東京を本拠地としているチーム、シエル東京。この2チームがぶつかる時は毎回バチバチにやり合い、真剣勝負が毎年繰り広げられていた。



「絶対シエルに負けんなアウラー!」



「アウラなんか一捻りだシエルー!」



 東京同士の戦いとなれば両チームのサポーターは何時もより熱く、自分達のチームの勝利を強く願って応援。



 試合前から両チームのボルテージは高まるばかり。




「シエルってどんなチームだっけ?」



「だからお前な……分かんねぇなら調べとけよ」



 東京アウラの移動するバス内で、弥一は隣の席に座る勝也へ今日の対戦チームの事を聞く。相変わらずライバルチームについて、若干疎い弟分に小さく溜息をつきながらも話し始めた。



「シエル東京はうちと同じく9勝5敗、序盤こそ調子が悪かったりしたけど立て直して上位に食い込みつつある。右サイドのテクニシャンで元ブラジル代表のカルニャ、ウルグアイ代表で重量級ストライカーのアルーベと、攻撃の中心はこの辺りだな」



 勝也からシエルの攻撃陣について教えてもらい、チームは南米スタイルの攻撃っぽいなと弥一は考える。



「守備はシーズン途中で合流してきたオーストラリア代表の2mGKグリードが曲者でよ、手足が長く大きいからビッグスパイダーって呼ばれてるらしい」



「大きなクモかぁ〜、それゴール入り難くて大変そうだねー」



「グリードに関しては日本のA代表も国際試合で結構やられてるからな。ホントあいつのセーブに何回日本がゴールを逃した事か……!」



 代表でもやられている事を語れば、勝也は当時の事を思い出したのか段々悔しさが蘇っていく。



「じゃあ今日はその悔しかった時の気持ちを存分に勝って晴らそうよ♪」



「たりめーだろ、負けてられるかよ」



 今日の試合で日本の前に立ち塞がってきた巨大な壁を越える。勝也が意気込んでいる間、バスは東京スタジアムに到着して選手達は会場へ向かう。




「アウラ!アウラ!アウラ!」



「シエル!シエル!シエル!」



 東京スタジアムで2つのクラブを応援する大勢の声が会場を包み込む。試合前から高まる熱気の中、東京の2チームがフィールドに現れれば、両チームのサポーターの声量が更に増す。



『この大歓声に熱気、まさにダービー独特と言えるのではないでしょうか?J1第15節の東京アウラ対シエル東京!今日の試合は東京ダービーマッチとなります!!』



『いやもう開始前から真夏かってぐらいに熱気が凄いですよ。お互いに9勝5敗と此処まで全く同じですから、これは例年より負けられないでしょう』




「お前が監督とは出世したもんだよなぁ啓太よ?」



「それは嫌味か英二」



 監督として音崎の前に立つのは、長い黒髪で黒い帽子をかぶるジャージの男。音崎と同期でプロのFWとして活躍した波坂英二(なみさか えいじ)



 互いにプロのDF、FWとしてぶつかり合い、此処もバチバチのライバル関係だ。



「ま、今日はうちが先に10勝到達するからな。得失点差でアウラが上行ってるけど、それも今日で終わる」



「譲る気はない、今日10勝するのはこっちだ」



 火花を散らしながらも、音崎と波坂は監督同士で握手を交わす。




「(やっぱGKでっかいなぁ〜、流石ビッグスパイダー)」



 試合前、選手同士がすれ違いながら挨拶していくと弥一の前にシエルの守護神グリードが来る。弥一とは50cm以上の身長差があって、周囲からすればまさに巨人と小人だ。



 グローブの方を見れば、サッカーボールを片手で鷲掴み出来そうなぐらいに大きい。まさか片手でキャッチするのかなぁ、と思いながら弥一は彼との挨拶を済ませる。




 青と赤のユニフォームが東京アウラ、GKはピンク。



 緑のユニフォームがシエル東京、GKは黄色。



 東京アウラ フォーメーション 4ー5ー1



       ジャレス


         9


 風岡     松川     宮崎


  7       10      8


     神山(勝)  神山(太)


      24     6


 佐々木 神明寺  岩本  橋田


   4   33    3    2


        ロッド


         22



 シエル東京 フォーメーション 3ー4ー3



  山野   アルーベ   鈴木


   11     10      9


 安川     泉口    カルニャ


  14      8       7


        谷沢


         6


   森野   高崎   青田


    3      5     4


       グリード


         1



「アウラの連勝を今日、絶対終わらせっぞ!!」



「「ファイ・オー!シエル!!」」



 シエル東京イレブンが円陣を組み、キャプテンの高崎の声掛けから皆が揃えて、この試合への意気込みを見せる。




「シエルには負けられないからな、絶対勝つ!!」



「アウラGOイェー!!」



「「GOイェー!!」」



 東京アウラの方も太一の掛け声から、円陣で皆が声を揃えた。今日のダービーだけは何時もの東京からアウラに変更。




 コイントスの結果、シエルからのキックオフとなって試合が開始。



 ピィーーー



『東京ダービーマッチ今始まりました!リーグの10勝目を取るのはアウラか、シエルか!?』



 中盤をショートパスでゆっくり繋ぎ、まずは落ち着いた立ち上がりを見せるシエル東京。



「てぇっ!」



 そこへ勝也が早くもボールを奪いに突っ込み、プレスを躱した泉口がカルニャにパス。これを読んでいたのか、太一がインターセプトに成功。



『おっとパスを取った太一!』



『弟がプレスをかけて兄がパスを取る、早くも神山兄弟が魅せてくれましたね』




「よーし、そのままカ……」



 弥一が速攻を伝えようとした時、すぐに彼へアルーベと鈴木の前線2人が弥一に張り付く。



「(出せないな)」



 取ったボールを弥一に預けようと考える太一だが、直後に2人がかりのマークが来たのを見て、彼へのパスを諦める。




「(アウラは今まであの小さいのが良いパスを送っていたおかげで、得点して勝ち続けてるんだ。放置する訳ないだろ)」



 シエルのベンチに座る波坂は腕を組み、よしよしと頷く。ライバルチームの戦いは当然チェック済みで、弥一のパスが最も要注意だと警戒。



 それは選手達へ伝えており、FWには自由にさせるなと指示。この試合は攻撃で弥一を徹底して封じるのが、今日の勝利への近道と波坂は考えていた。




「(分かってたけど、こんな警戒してマーク向かわせるんだなぁ)」



 弥一は動き回るもプロ2人のマークはしつこく、簡単にはフリーにさせてもらえない。2人揃ってレーザービームは蹴らせないと、そういった心が強く現れる。



「(でもこっちに張り付くって事は、それだけ他がフリーになっていく可能性高くなるからね?)」



 1人にマークが集中すれば他を放置するリスクが出てしまう。とりあえず今は攻撃にあまり行かず、弥一は守備に専念。




「(亘にも付いてるし、預けるしかないか)」



 左サイドの風岡にはカルニャが付いており、パスを出せない。素早い状況判断から太一はアウラの司令塔、松川へボールを預ける。



「うおっ!」



「ぐっ!?」



 そこへ同じ司令塔の泉口と肩同士による激しい接触となり、松川が倒れるも主審はノーファールの判定を下す。



 東京アウラのサポーターからブーイングが起こる中、速攻で左サイドに展開するも、岩本がヘディングでボールをタッチラインの外へ出した。



『シエルの速攻となる所でしたが岩本のクリアで一旦プレーが途切れ、おっと松川右肩を抑えたまま起き上がれませんね?』



『さっきのは結構激しく泉口行きましたから、泉口の方は大事そうですが松川は平気でしょうか……?』



 前半の序盤で早くも怪我人が出たのか、東京スタジアムがざわつく。



「ってて……!」



 相当強くぶつかられたのか、松川は立ち上がるも右肩を抑えたまま顔を歪めていた。



 そして自ら首を横に振り、プレーの続行は無理だと伝える。



「去年も右肩を痛めてたから、それが今出たのかもな……」



「悪いタイミングで再発か……」



 去年も松川と共に戦ってきた太一と風岡。彼が肩を痛めて古傷となった事は知っているが、此処でそれが出てしまった事に2人とも深刻な顔だ。




「……源田、急遽だが」



「はい……分かりました」



 予期せぬ松川の序盤での負傷に、アウラのベンチが慌ただしくなる中で、音崎は賢人を呼んで指示を伝える。



『松川どうやら続行は無理のようです。東京アウラ、急なアクシデントで序盤から司令塔を失ってしまいました』



『アウラの方は代わりに源田が入るみたいですね』




「監督からの指示です。勝也君が松川さんの位置に入って、宮崎さんがその空いたボランチに入るようにと」



「!?」



 賢人から音崎の伝言を伝えられた勝也は驚く。



「勝兄貴、花形のポジション行けるじゃんー。立見でもやってたし、プロで今やっとこうよ♪」



「やった事はあるけどよ、まさか此処でやるとは思ってなかったな……」



 弥一からの明るい前向きな言葉を受けて、勝也の足はそのポジションへ向かう。



 プロの舞台で初となる司令塔のポジション。やってやる!という勝也の強い心が見えれば、弥一もDFの位置へ戻っていった。

弥一「ダービーはやっぱあっついね〜」


勝也「そりゃ同じ本拠地のライバル同士だからな。先輩達も絶対勝つって昂ってるしよ」


弥一「監督同士までバチバチなぐらいだから、この空気がそうさせるのかなー?スペインの伝統の一戦みたいな」


勝也「あっちはもっと色々凄ぇから、警備員が何千人も出動してるって聞いた事あるし」


弥一「世界は規模が凄いよー」

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