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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編

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ついてきた地力

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 8連勝と波に乗る東京アウラはアウェーの地へ乗り込み、そこで第14節の試合を迎える。



 相手は3連勝で3試合連続無失点と、こちらも波に乗るサジタリウス広島。堅い守りを持ち味として、着実に順位を上げてきていた。



 そんな彼らとの試合となり、東京アウラは広島自慢の守備に苦戦。



『風岡からアーリークロス!ジャレス、いや!キーパー富田パンチング!坂口が取ってキープし、広島守った!』



『粘りますね広島の守備。良い連係も出来てますよ』



 風岡の左からのクロスをジャレスが頭で合わせる前に、広島のGKがパンチングで弾き飛ばし、DMFの坂口がボールをキープ。



 広島の要である坂口敬四郎(さかぐち けいしろう)は風岡と同じ現役の日本A代表で、小柄ながら力強くデュエルが滅法強くボールキープも得意。非常に粘りある選手と高い評価を受けている。



「くっそ、また止められたか……!」



「セカンドを坂口に拾われてるから、連続攻撃がしづらいな」



 再三の攻撃を仕掛け、また止められた事に勝也が悔しさを見せれば太一の方は坂口の動きを見て、彼が厄介だと冷静に理解。



 粘り強い守備だけでなく、前線に強力なワントップの大型ストライカーを置いており、彼の決めた得点を守り切るのが広島のサッカーだ。



 しかし今回そのストライカーを機能させない。




「オウ!?」



 オーストラリアA代表で195cmの大型FWポポラッド。


 3m近い高さから叩きつけるヘディングが持ち味で、この試合でもそれを狙っていくが、ジャンプしようとした直後に下から衝撃が伝わる。



 クロスに合わせられず、何事かと周囲を見回せば近くにいるのは小さなDF以外にいなかった。



「(まさか、そんな訳ないだろ……この体格差だぞ?あんなチビのチャージなんか俺に効くか!)」



 ありえないと首を横に振れば、ポポラッドはもっと上げて来いと味方にリアクションで伝え、味方選手も頷いて返す。



「(残念ながら、ありえるんだよね!)」



 相手の狙いを心で読んだ弥一は小さくニヤッと笑い、再び動く。




『広島、サイドから積極的に仕掛ける!おっともう上げた!?っと、しかしポポラッド飛べない。タイミングが合わなかったか?』



『前節では頭で2点を決めていたんですけどね、あの調子さえ戻れば東京からゴールもありそうですが』



 広島の選手が左サイドからクロスを送り、ポポラッドに合わせようとするが肝心の本人が飛べずに、ボールが流れてしまう。




「(ポポラッドのジャンプするタイミング。最も隙のある所だけを正確に狙って下から突き上げるように、効果的なアタック。それが重なって体格差のある相手も怯ませられる……か)」



 東京ゴールマウスの前に立つロッドから見れば、弥一が何をしたのか見えていた。今のはポポラッドのミスではなく、弥一がそのミスを誘発させたのだと。



「(俺より小さな体で本当によくやるもんだ)」



 自身もアメリカ人としては、GKとしては恵まれた体格ではない。だがそれ以上に小さな弥一が大男を前にしても、ハンデをものともせずに封じ込め続ける。



 ならば自分も負けられないと、ロッドは集中力を高めて守護神としての仕事に専念。弥一と同じく彼も完封勝利を静かに、貪欲に狙っていた。




「(得点は無理か)」



 広島スタジアムの電光掲示板に表示される試合時間を、坂口が確認すると後半戦も終盤。



 無理に勝ち点3を狙うより、此処は確実に積み重ねようと守備に専念していく。坂口だけでなく、広島のチーム全体も意思疎通が出来ている。



 気づけば広島の選手達、ポポラッドも含めて全員が広島陣内まで戻り、全員守備で勝ち点1を取りに行くつもりだ。




「相手攻める気無いよー!どんどん前行ってー!」



 広島の意思が読めた弥一は遠慮無しで、攻撃に出ろと大声でコーチング。勝ち点1の方には行かず、東京はあくまで勝ち点3を狙う。



 5連敗の遅れを取り戻す為には、ドローで止まっている暇などない。



『東京が攻めまくるが広島も必死の守り!此処も零れ球を坂口が拾ってクリア!』



『坂口の積極的にセカンドを拾うプレーが効いてますね』




「(やば、スペース無いや……!)」



 ボールを拾った弥一だが、人数を集めてガチガチに守られてる広島選手達が大勢いて、得意のパスを出しづらい状況となってしまう。



 だからと言ってこのまま待てば、タイムアップで引き分けとなり首位の埼玉の背中を捉えられない。



 何処かに出す場所はないかと探してる時、勝也がダッシュでゴール前へ向かう姿を弥一の目が捉える。



 そこへ弥一は迷わず正確な左足のパスを兄貴分に送った。




『神明寺からのパスを取った神山勝也!だがその前には広島の要、坂口がいる!』



「だっ!?くっ!」



 坂口に背を向けた状態でボールを受け取った勝也。その坂口は勝也に前を向かせないよう、厳しい当たりで追い詰めていく。



「(そんな都合良く何度もルーキーに活躍させるかよ!)」



 今年プロになったばかりの新人に負ける訳にはいかない。プロの先輩としての意地が、彼を突き動かしていた。



 一方の勝也は日本の現役A代表ボランチに寄せられ、前を向く事が叶わず。



「勝兄貴ー!」



 そこへ弥一の声がして勝也がプレスを受ける中で見ると、パスを出した直後に走って来たのか、弥一が上がってくる姿を確認。



 混戦の中で彼は今フリーの状態、そこに勝也は迷う事なく右足で弥一にパスを送る。坂口は弥一に注意が向いて、彼のシュートがあるのかと警戒した。



「うおっ!?」



 意識が向いた事でほんの僅かな隙が生まれ、勝也はクルッと左回りのターンで坂口を躱して前を向く。



 直後にボールは勝也の足元に来ている。兄貴分がそのプレーをするのが分かっていたかのように、弥一は左足で勝也からのパスをダイレクトで返す。



 それも勝也が左足でシュートしやすい所を狙って。



「(不味い!)」



 他の広島DFの寄せが間に合わず、勝也がゴール前でフリーとなっている。このままでは取られると直感が伝われば、後ろから勝也のユニフォームを掴みにいく。カードを貰う覚悟で止めるつもりだ。



 それよりも勝也が弟分からのパスに対して、左足を振り抜く方が速い。



 ミドルレンジから弾丸と化したシュートが広島ゴール左に飛び、GKがダイブで指先を掠めるも弾き切れず、広島のゴールネットが大きく揺れ動いた。



『決めた神山勝也ー!日本代表の坂口を躱しての左足一閃!ルーキーの勢いが止まらないー!!』



『神明寺の上がりからのワンツーが凄かったですよ!それに坂口を鮮やかにターンで躱したり、最後の最後に良いゴールが見れましたね!』



 歓声で大きく揺れ動く広島スタジアム。そのスタンドへ勝也は駆け寄り、喜びの雄叫びを上げる。



「勝兄貴上手くなってんじゃーん!あんなターン何時覚えたのさー!?」



「お前が知らねぇ間俺もレベルアップしてるって事だよ!」



 後ろから弥一が勝也の腰に抱きついてくれば、勝也はその弟分の頭をくしゃくしゃと撫でて、喜びを分かち合う。





「(神明寺が勝也を上手く活かしている、というのもあるが……まるでそれに応えようとするかのように勝也が力を発揮しているな)」



 東京ベンチが終了間際のゴールを決めて皆が喜び合う中、音崎は弥一と勝也の2人を見ている。



「(結果としてそれがチーム全体に良い影響を与えてる、全く不思議な2人だ)」



 音崎がそう思う中で試合終了の笛が鳴り響き、アウェーの地で東京アウラがまた1つ連勝記録を伸ばす。



 これで9連勝の9試合連続無失点。次で勝利して更に完封勝利となれば、どちらも記録が2桁に到達だ。



 それが達成出来るかどうかは、勝利を喜び合う東京アウラのルーキー2人にかかっているかもしれない。




 東京アウラ1ー0サジタリウス広島



 勝也




 マン・オブ・ザ・マッチ


 神山勝也

弥一「ホント勝兄貴があんなクルッとターン出来るようになって、上手くなったねー♪」


勝也「ちょっと待て、ターン出来ねぇみたいに言ってるけどあれは元々出来てんだからな?俺だってちゃんとそういうテクニック持ってるし」


弥一「じゃあ次は試合でマルセイユルーレットからのゴール!」


勝也「プロ相手に難いなそれ!」

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