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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編

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憩いの場で再会

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「迷っちゃうよ〜、何選ぼっかな〜?」



 弥一の目の前には様々なパンが並び、彼から見れば宝の山で輝いているように見えた。



 今彼が来ているのは立見にあるベーカリーショップで、1年の頃から弥一は此処に買い食いでよく来ている。今日は放課後の帰りに、練習も予定も特に無いので久々に足を運ぶ。ちなみに新たにシンメイという店名が最近付いたらしい。



「弥一君ならサービスするからどんどん食べてちょうだい♪」



「わー、ありがとうございますー♪」



 シンメイの女性店長は常連の弥一と仲が良く、彼に笑顔でサービスを提供。



「むしろ弥一君のおかげでうちのお店結構人気店になっちやうし2号店や3号店も出したりと、お礼言いたいのはこっちよ〜」



 何処からか弥一が立見のパン屋にハマっている、というネットの情報が流れて口コミのようにシンメイの店の名が広まり、そこから店の売り上げがうなぎ登りとなっていったのだ。



 これには店側としては予期せぬバズりで、今では立見でNo.1のベーカリーショップとして成長を遂げる。店にとって弥一は恩人と言っても過言ではない。



「弥一君、どのパンがオススメかな?」



「ビーフシチューパンとストロベリーメロンパンだよー♪」



 1人での来店ではなく弥一は輝咲も誘って、一緒に来ていた。



「(弥一君はイケメンな彼女が好みのタイプなんだなぁ、というか左手の薬指に揃って指輪着けてるって事は……そういう事!?)」



 女性店長は遠目から弥一と輝咲の様子を見れば、2人とも仲良くパンを選ぶ姿が見えると共に、2人の左手薬指に光り輝く物が目に飛び込む。



 そこから彼女の脳内で妄想が膨らむ中、弥一と輝咲は一通りのパンを選んで購入。イートインスペースに向かい、2人揃って向かい合う形で席に着く。



「はぁ〜、ふわふわのパンとビーフシチューが天才的に合って美味しい〜♡肉がとろける〜♡」



「確かに美味い……キミが夢中になるのも分かる気がするね」



 自分の目の前で美味しいパンを堪能する弥一に、本当に幸せそうだと思いながら輝咲も弥一から勧められたパンを食す。



「誘ってくれるのは嬉しいけど弥一くん、ちゃんと休めているのかい?」



「勿論休んでるよー。そんな10時間以上きっついトレーニングしてる訳じゃないしー」



 家ですぐ休んだりとかしなくて平気なのかと、輝咲は弥一の体調を心配している。



「高校サッカーと違って毎試合90分で、負担は全然違ってくるだろ?よりぶつかり合いも激しくなったりと……」



「だからこうして癒してもらってるじゃん〜?放課後デートによるヒーリングで♪」



 弥一としては今この瞬間が癒しであり、休んでいるつもりだ。



 此処で輝咲と過ごす時間が、弥一にとって羽を休められる最高の環境。輝咲はこれが癒しになってると言われ、嬉しくなってくる。




「(うーん、弥一君ってサッカーじゃDFだけど恋愛だとガツガツと攻めまくるストライカータイプなのかな?結構ワイルドに口説いたりして……)」



 そんな2人の様子を仕事しながらも、チラチラと見続ける女性店長。デートシーン等を妄想していた時だった。



「いらっしゃいませー」



 バイトの女性店員が客を迎える声が聞こえ、ハッと気づいて来店してきた客の方を見る。



「え……!?」



 その顔を見た瞬間、女性店長は驚愕。




「此処で飲むコーヒー牛乳がまた美味しいんだよね〜♡」



「見ていて好きっていう気持ちが分かりやすく伝わるよ」



 その飲み物が好きというのは、もう弥一がコーヒー牛乳をストローで飲んで美味しく味わう顔を見れば一目瞭然だ。



 彼の顔を見ながら輝咲も同じ物を飲んで一緒の時を過ごす。




「あれ、偶然だね?」



 同じ飲み物を彼女と飲んで、幸せな時間を満喫する弥一の耳に聞き覚えのある声が入ってくる。



 声のした方へ目を向けると見覚えある長身の男が、パンを乗せたトレーを持って弥一の前に立っていた。



「……小熊さん」



 有名サッカー選手が目の前に現れ、驚く輝咲の側で弥一は彼の顔を見上げてその名を呟く。サングラスで変装してるようだが、分かる人には分かってしまう。



 J1の首位に立つ埼玉フォルテのエースにして、得点ランキング首位を独走する有名人の登場で、場の空気が変わりつつある。



「チーム、キミが出るようになってから随分と好調そうじゃないか……与一君?」



「!」



 今の東京アウラで活躍のルーキーの名を間違えようがない、ただ小熊はあえて弥一が以前偵察で来た時、小熊に対して名乗った偽名の方で呼ぶ。



「あの、彼は与一ではなく」



「おや……キミは彼の恋人かな?」



「え、それは……」



 輝咲が名前の間違いを訂正しようとする前に、小熊から恋人かと問われて輝咲は答えに迷う。友達だと誤魔化すか正直に言うべきか。



「僕の婚約者です♪」



「!?」



 何の躊躇もなく弥一は小熊に堂々と明るい笑顔で言い切り、輝咲は驚く。人に聞かれたら騒ぎになって、彼が大変になるのではないかと。



「へぇー、その歳でやるなぁ。俺がキミぐらいの時とかそういう相手全然いなかったし、時代かなこれも」



 隠さず婚約者と言う弥一に、聞いた小熊の方が大胆だなと面白そうに笑う。



「今じゃめっちゃモテてる小熊さんと此処で会うとは思わなくてビックリしてますよー、どっかにカメラ回して突撃したらどうなる!?っていうドッキリですかー?」



「シーズン中なのにテレビや動画の企画してる暇なんか無いよ。完全なプライベートで妻が此処のパンを食べてみたいって言ってたから、近くまで来たついでに寄っただけさ」



 話しながら弥一は密かに小熊の心を読むと、彼は嘘を言っていない。何もカメラを回したり企画もしておらず、妻の為に来たというのは本当のようだ。



「というか上手く逸らされたけど、キミが試合に出るようになってから8連勝の失点無しは凄いよ。5連敗からそこまでの立て直しはそうそう出来るもんじゃない」



「そういう埼玉だってすっごい好調じゃないですかー。大阪に初失点食らって引き分けたりしたけど、無敗の首位を走ってますしー」



 弥一の東京アウラが連勝を重ねているように、小熊の埼玉フォルテも勝ち続けている。引き分けはあったものの、無敗をキープしていた。他は此処に来て上位との直接対決で引分けや負けによって、勝ち点差がやや開く。



「チームの皆が調子良くてね、特に王牙さんとか凄いからあの人のおかげだよ」



 エースとして点を取っている自分のおかげとは言わず、小熊は埼玉の守備の要である王牙の活躍を称賛。



 彼の心に嘘は無い。それは心を読める弥一がよく分かっている。



「ダブルボランチの山崎さんに近藤さんの攻守も効いてますよね。王牙さんや小熊さんが目立ってますけど彼らの活躍も大きいと思いますから」



「ほぉ、ちゃんと見てるねお嬢さん」



 好調なのは要の2人による活躍だけではないと、輝咲が他の選手の活躍を言えば小熊は感心。



「僕もサッカー部を色々手伝ってましたから、オフザボールの大切さは学んだつもりです」



「良い彼女さんじゃないか。ちゃんと幸せにするんだぞ与一君?」



「分かってますってー」



 サッカーに対して理解ある恋人の存在は大きい。人生の先輩として小熊は弥一に、大切な存在は絶対幸せにしろと伝える。



 相変わらず弥一の名を呼ぼうとはしないが。



「っと、何時までもキミ達の時間を奪うのは悪いから俺はこれで失礼するよ」



 俺も妻との時間を早く過ごしたくなってきたから、と小さく笑えばトレーを持ってレジに向かいパンを購入していく。彼の場合は食べずにそのまま持ち帰るつもりだ。




「小熊さーん」



「ん、どうした?」



 店から出ようとする小熊に弥一が呼び止める。



「何時になったら僕の名前をちゃんと呼んでくれるんですかー?」



 此処まで弥一は自分の本名を一度も呼ばれず、呼んでくれる日は来るのか問う。



「キミが公式戦で俺と当たって攻撃を止められたら、改めて覚えるさ」



 小熊は弥一に対して不敵に笑う。覚えてほしいと思うなら、俺を止めてみろと。



 だが弥一はそれで納得しなかった。



「軽い条件過ぎて僕すぐクリアしちゃいますよー。止めるだけじゃなく、完封勝利で東京アウラが勝った時も上乗せで♪」



「!」



 陽気に笑う弥一だが、その目は笑っていない。条件が甘いと自らより厳しめに設定して、逆に挑戦状を叩きつける。



「……与一君、訂正するなら今だよ?」



「する気0なんで大丈夫でーす♪」



 互いに笑みを浮かべてるが、その目は獲物を狙うような狩人の目つきだ。



「俺は根っからのストライカーなんでね。流石に完封で終わらせる訳にはいかないな……リーグ後半戦を楽しみにしとくよ」



 完封なんか絶対させない。言葉は穏やかだが、弥一からの煽りに刺激されたか、小熊の心はその闘志と共に熱さを帯びていく。



 小熊は弥一へ静かに告げると店を後にした。




「キミが完封に拘るのはよく知ってるけど、良いのかい?あんな凄い人に喧嘩を売るような事を言って」



「いーのいーの、気にせずメロンパン食べよう♪」



 小熊とのやり取りを見た輝咲から大丈夫なのかと心配されるが、弥一は明るく笑って大丈夫と言えば残りのメロンパンに手を付け始める。




「(先に喧嘩売って来たの向こうだし)」



 自分を倒さない限り弥一という名を覚える気の無い小熊。だったら完全に倒してやろうと、弥一は彼や埼玉フォルテに本気で勝ちに行く。




「(ど、どうなってんの〜!?期待のルーキーが秘密のデートかと思えば日本サッカー界の若きキングと一触即発って〜!)」



 今日だけで相当色々な事が起きており、女性店長は驚きっぱなし。



 この後弥一から「今日起きた事は内緒でお願いします♪」と可愛い顔でお願いされ、今日の出来事が世間に知れ渡る事は無かったという……。

弥一「他にも美味しいパンは沢山あるからねー、僕がオススメしてるのがその2つだから♪」


輝咲「そのビーフシチューパンとストロベリーメロンパンだけど、売り切れ続出してるみたいだよ」


弥一「あ、やっぱり?そりゃ美味しいから皆食べたがるよー。僕としては後、自家製のカレーパンが少し辛めだけどまた美味しいんだよね♪前に食べたコロッケパンとかカツサンドも良くてハムと卵のパンもー……」


輝咲「オススメがどんどん増えてないかい弥一君?」



詩音「此処のパン神明寺先輩が美味しいって言ってたからねー」


玲音「シチューとメロンパンが美味しいんだってさー、あの小熊選手もイチオシって言ってたし」(後日ぞろぞろと立見サッカー部員が来店)

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