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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編

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どっちの戦いも負けない

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 リーグ戦とは別で行われているJリーグカップ戦。



 J1、J2、J3それぞれが参戦してJリーグのクラブの頂点を争う大会で、勿論J1に所属する東京アウラも参戦して戦いの真っ最中だ。



 現在は予選のグループリーグを戦い、そこで勝ち抜き次のステージへの進出を狙う。



「ハッハー!!」



 今日の試合で東京アウラはJ1のアニモ札幌と対戦。リーグ戦では痛恨の逆転負けをしてしまった、因縁の相手との再戦。



 そこで怪我の癒えたマグネスがリーグ戦を戦うメンバーを纏め、久々の試合でもブランクを感じさせないプレーを見せつける。




「マグネス張り切ってるねぇ〜」



「うーん、やっぱ安定感凄ぇな」



 この日ベンチに弥一と勝也が入っており、今日は観覧席ではなく此処で先輩達の試合を見守っていた。



 彼らはリーグ戦で毎試合出ているので今回のカップ戦ではスタメンに選ばれず、太一に風岡やGKのロッドといった面々も控えとして座る。



 監督の音崎は先発のメンバーを大きく入れ替えるターンオーバーを使い、リーグ戦で戦う選手達を温存させて代わりに出ていない選手達を積極的に起用し、2つの戦いを上手く戦い勝ち抜く事を狙う。



 いくら優れた選手を抱えても、リーグ戦とカップ戦を含めた全試合フル出場は不可能に近く、大きくコンディションを崩す恐れがあるので無理はさせられない。




「(呼ぶ気配無さそうだなぁ……)」



 弥一はベンチから音崎の横顔をちらっと見て、彼の心を読むが弥一や勝也を呼ぶ感じは無かった。



 それもそのはず、点差は2点ついて東京が2ー0でリードしている。これが1点取られて札幌に追い上げられたら分からないが、マグネスを中心としたDF陣は後半の終盤に入っても得点を許さず。



 このタイミングで弥一が呼ばれる事は無いだろう。




『東京2ー0リードのまま変わらず!札幌が懸命な攻撃を見せるも、マグネスがことごとく防ぐ!』



『開幕戦の時よりも調子を上げてきてますね、これはカテナチオの番人復活と言って良いんじゃないでしょうか?』



 札幌がクロスボールを放り込んでくるも、長身に加えて高いジャンプ力を持つマグネスが誰よりも高く飛んで、ヘディングでボールをクリアしていく。




「ナイスクリア!マグネス何時もより張り切ってないか!?」



 マグネスと共にゴールを守るGKの本道が、前にも増してプレーに力を入れているように見えて声を掛ける。



「ははっ、刺激されたかもしれないな。我がチームの誇る小さな超ルーキーの活躍に、うかうかしてたら俺の出番そのものが無くなるかもしれんだろ?」



「まさか、お前が?そりゃ考え過ぎだ」



 セリエAを戦った経験を持つ現役のイタリア代表が何言ってんだと、本道はマグネスとの会話を終えて試合に集中していく。




「考え過ぎ……じゃないと思うけどな」



 一瞬マグネスの目がベンチに座り、試合を見ている弥一に向けられる。



 リーグ戦7試合連続無失点の実績に加え、スレイダーを筆頭とした海外選手達を封じ込める程の実力。最早彼のレベルはJ1をも超越しているのでは、と思わされてしまう。



 怪我でうかうかしていたら自分のポジションが完全に無くなると、気づけばマグネスは弥一を同じDFのレギュラーを争うライバルと見ていた。



『此処もマグネスが強引にカットー!』



『凄まじいですね!何か去年よりも凄みが増してるように見えますよ!』



 札幌の前線に向かう球を素早くコースを読み、思い切った飛び込みで反撃を阻止。まだまだ16の小僧に負けられないと、マグネスは最後までこの試合でゴールを守り切る。




 東京アウラ2ー0アニモ札幌



 堀田1


 源田1



 マン・オブ・ザ・マッチ


 フランチェスコ・マグネス




 カップ戦から僅か数日後、東京アウラはリーグ戦の第13節となる試合で横浜アーザをホームに迎えて行う。



 横浜グランツと同じ横浜を本拠地としたチームで、グランツとアーザはライバル関係だ。




「ターンオーバーが大事なのは分かってるけどなぁ」



 数日前にカップ戦へ出場したマグネス。続けてスタメンとして試合には出ず、彼はベンチからのスタート。



 しかしホームゲームに出たかったのか、マグネスは残念そうな顔を浮かべながら目の前の試合を見る。




「8番囲め!」



 太一の指示と共に、勝也と風岡が2人で挟み撃ち。風岡がプレッシャーを与えてる間、勝也がアーザの選手からボール奪取に成功。良い連係の守備を見せて反撃を許さない。



『東京アウラ、5人の厚い中盤で止めていく!』



『プレスがよく効いてますね。動きの速い風岡やよく走る神山兄弟がいますから、これは相手にとって嫌でしょう』




「最初の頃はカツヤが上手く動けていなかったけど、こいつは……三日会わなきゃ変わる、だったか?」



「それは男子、三日会わざれば刮目して見よ、ですね」



 側に座る賢人とマグネスが言葉を交わし、2人揃ってフィールドで懸命に走る勝也へ注目。最近の彼はゴールやアシストを決めて、人気も上がってきている。



 もう東京アウラを支える1人と言っていいだろう。



「あの初めての練習参加の時とは大違いだ。あれからもうすぐ1年……やっぱ若手って伸びるもんだな」



「正直僕としては少々嫉妬してしまいますが」



「ハッハァ!ケントもまだまだこれからだろう?伸びる伸びる、むしろ伸びてくれなきゃ困るし!」



「……精進します」



 マグネスも賢人も勝也が初めて、プロの練習に参加した時の事を思い出す。あの頃と今の彼を比べればまるで別人だ。



 ルーキーの成長や活躍に若干嫉妬する賢人に、マグネスはその肩へ手を置く。




「もうちょい前行ってイワさんー!」



 弥一は同じ中央を守る岩本へ、前に行くよう指示を送る。そして弥一自身は気づかれぬようにスルスルと上がった。



 それに気づかずアーザの選手が東京ゴール前にスルーパスを出すと、直後に線審の旗が上がって主審の笛も鳴り、オフサイドの判定。



『あーっと惜しいオフサイド!横浜アーザ抜け出していればビッグチャンスでしたが、此処は止まってしまう!』



『パスを出してくるタイミングやFWの飛び出しが読めてる感じがしますね』




「弥一って元々このチームにいたんじゃないかってぐらい馴染んでないか?」



「うん、すっごい周囲の守備陣と良い連係を見せてるし、何か見てて安心するよね」



 弥一がDFとして東京アウラに最初の試合から既に馴染み、そこから連続完封勝利に貢献し続けている。その快進撃をマグネスは間近で見てきて、今も岩本や佐々木に橋田、GKのロッドと共に相手を封じ込めていく。



 サポーターも彼の守備を信頼し、弥一の出場する試合全て完封という期待も膨らんでいた。



 彼はその上、守備だけではない。




『飛び出した神明寺のレーザービーム!左の風岡へ一気に通った!』



 弥一から見れば中盤の混戦の中、1本の光る道筋が見えて迷わず右足を振り抜く。精密機械のような正確性を兼ね備えた弾丸パスが、選手達の間を通過して前を走る風岡へ向かう。



「(相変わらず無茶だっての!)」



 敵にも味方にも厳しいパスはこれまで何度も出され、風岡はその度に愚痴をこぼしてきた。それでも彼がしっかりパスを受け取るのは日本代表としての意地か、このボールもラインギリギリで左足のトラップで止めてみせる。



 そこからゴール前のジャレスに送る、と見せかけてノールックで中央から上がって来た太一へ左足でパス。これを太一は思い切って右足を振り抜きシュート。



 勝也に負けない矢のようなスピードで勢いよくゴールに向かい、相手GKのダイブも及ばずゴール左上隅に決まった。



『東京アウラ、反撃に出た横浜アーザを突き離す追加点!神山太一が風岡からのパスを豪快なミドルで決めました!』



『アシストは付きませんでしたが、これは神明寺のパスが良かったですよ。相手の空いたスペースを見つけて素早く急所を突くパスを送る。難しい事を彼はまるで簡単なようにやってきますね』




 試合を決めるダメ押しのゴールに、ホームの東京サポーターによる大歓声が止まらない。サポーターが一丸となっての勝利に向けて応援歌の合唱が始まり、完全に東京アウラがこの試合を支配する。



「さぁさぁ完封行くよー!皆最後締めてー!」



 後は最後まで相手のスコアが0のまま試合を終わらせるだけ。横浜アーザとしては得失点差も関係してくるので、意地の1点を決めたい所。



 しかし相手の意地など容赦無く踏み潰すかの如く、弥一は相手FWの持つボールを瞬く間に奪い取り、それを東京の空へと向かって高く蹴り上げた。



 ボールが宙を舞った瞬間、主審が長い笛を吹き鳴らして試合終了を迎える。



 東京アウラが8連勝でまた一つ順位を上げ、確実に日々登っていく。チーム戦にカップ戦と連戦が続くも、彼らの連勝は止まらない……。



 東京アウラ3ー0横浜アーザ



 ジャレス


 風岡


 太一



 マン・オブ・ザ・マッチ


 神山太一

弥一「実際に全部の試合出続けるの大変だから、皆大体ターンオーバーのシステム使うよねー」


勝也「高校サッカーでも使うぐらいだしな。特に総体じゃそれやんねぇと絶対持たないだろうから」


弥一「プロだと90分の試合がもう山のようにあるし、カップ戦も含めての全試合はもう鉄人だよー」


勝也「そりゃスタミナお化け過ぎんだろ」


弥一「まぁ僕とか常に走り回る事はせず、サボれる所はサボるけど……そこは狡賢くね?」


勝也「何か言ったか?」


弥一「ううん、連勝突き進もうって言っただけだからー♪」

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