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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編

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勝ち越しの前に難敵来る

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「本日もやって来ました!東京アウラチャンネルの時間です!」



 お馴染みの明るいBGMと共に女性MCエリーと弥一、お笑いコンビのシュートスナイパーの2人が揃って画面に姿を現す。



「まずはなんと言っても神明寺君、5連勝5戦連続無失点おめでとうございます♪」



「ありがとうございますー♪」



 エリーから祝福の言葉が出ると共に、クラッカーのエフェクトが発生してチームの連勝を祝う。



「いや〜、まさか5連敗からの5連勝ってこんなん滅多にお目にかかれませんわ!」



「ホンマに、相方が大ウケする所も全然見かけませんわぁ〜」



「嫌な事言うなや!そこそこはウケとるからな!?」



「長岡さんお笑いの打率良くないんですかー?」



「神明寺君そこ広げんでええから!」



 弥一とシュートスナイパーの掛け合いが始まり、場の笑いを誘っていた。テロップにはお笑いもっと頑張ろうと貼られる。



「それより5連勝の快進撃、これですよ!」



「せやせや、神明寺君おるから本人にたっぷり聞きましょ!」



「では神明寺君。ズバリ好調の要因は何だと思いますか?」



 エリーやシュートスナイパーから、弥一に今のチームが5連勝で銚子が良いのはどうしてなのか問われた。



「僕が全部出て失点0に抑えてるからです♪」



「全部俺のおかげや言うてるー!」



 ハッキリ笑顔で言い切る弥一に、今宵もビッグマウス炸裂とテロップが表示される。



「という冗談はさておきー、試合を重ねるごとにチームが纏って意思疎通が高まってるんだと思いますよー。攻める時は攻める、守る時は守るって意識がよりハッキリしてるおかげかなってー」



「なるほどー、ようは頭の中で皆今はこう行こうやって頭の中で念じて電波送っとる訳やね!テレパシーみたいに!」



「超能力者やないか!そんな奴おらんやろ!」



「(いるんだけどね〜)」



 シュートスナイパーの2人は笑いのつもりで言ってるが、弥一が超能力者である事は本当。そこに動画出演者や視聴者、世間が気づく事は無い。



「後は前にも言いましたけど、基本的な声掛けをしっかりやるとかですねー。個人的にコーチングって本当疎かにするの良くないと思ってますから」



「ああ〜、試合を外から見る皆さんにはフィールド全体がよう見えてますけど戦う選手達からすれば、そこまで見えんし状況を伝えて把握するってのは大事ですね」



「確かに学生時代によう声出せって監督やコーチに言われとりましたわ。僕は目の前の事に必死んなってついつい忘れてまうけど」



「シュートスナイパーのお二人もガンガン今よりガヤ入れてけば、もっとドカンと行けるかもしれませんねー♪」



「……神明寺君、それもう少し詳しく話し合わん?」



「トーンがマジ過ぎるやろ!終わってから楽屋でやれや!」



 コーチングが大事。そこを弥一はブレずに再び推しながらも、芸人2人に絡んでトークを繰り広げていく。



「えー、次はいよいよ勝ち越しの6勝目を懸けてホームでビクトリー神戸との試合となりますが6連勝、行けますか神明寺君?」



「勿論行きますよー、6連勝と6試合連続無失点行きたいですから♪」



「神明寺君そんな連勝重ねてCMも好調やから、ボーナス込みで結構行ってるんちゃう〜?」



「東京買えるシュートスナイパーさん程は稼いでませんよー」



「到底買えへんわ!買うと思った事もあらへんし!」



「そんな稼いどったら芸人辞めて毎日遊び呆けて暮らしとるわー!」



 テロップにシュータ漢の叫び、と流れて今回も笑いが巻き起こっていた。



 東京アウラの5連勝の影響分かりやすく出て、グッズの売り上げと共にチャンネル登録数も日に日に伸びている。



 リーグも上位陣が引き分けで東京アウラに吹かれる追い風。しかし次のホームゲームでは、難敵が来てしまう。




「弥一……お前結構日本の情報に関して疎い所あるけど、流石に知ってるよな?次に戦うビクトリー神戸については」



「分かってるってー、高校サッカーの時とは違うからさぁ」



 東京アウラの練習グラウンドでパス交換を行う弥一と勝也。そこで勝也から次の相手について知ってるか問われ、弥一の頭の中に情報はしっかり入ってる。



「序盤1敗1分けからの8連勝中でしょー?最初調子悪くてそこから上げて来るとか、うちと似てるよねー」



「すっげぇ金かけて大型補強したのが此処で効いたみたいだからな。入団するって記事が出た時は腰抜かしそうになったし」



「攻撃でナイジェリアのオルトド、守備でスペインのシグ、他にも代表を経験した日本選手が揃ってオールスターって感じだよー」



 代表や世界のトップリーグで活躍した経験を持つ、海外のベテラン選手を獲得したり優秀な日本人選手を獲得して、ビクトリー神戸は全チームの中で最も補強をしているチームだ。



 ナイジェリア代表として現役で活躍する若手で、フィジカルモンスターとして知られるFWオルトド。



 元スペイン代表でビッグクラブにも在籍していたベテラン、神戸の守備を支える195cmの長身DFシグ。



 そして今の神戸の連勝に大きく貢献する選手がもう一人。



「凄ぇのが揃ってるけど、その中で特に凄ぇのが……」



「ドイツの英雄スレイダーだねー」



 その男の存在なくして今の神戸は語れない。34歳と全盛期は過ぎたが、今も輝きを放ち続ける。



 母国で英雄と称えられ、数々の栄光を手にしてきた。サッカー界でその名を知らぬ者はいない。



 元ドイツ代表の司令塔、グレイス・スレイダー。彼こそが神戸に君臨するキングなのは、誰もが認める事実。



 何しろ彼は一度ワールドカップを制してドイツを優勝に導き、世界一となっているのだから。





 東京アウラとビクトリー神戸の試合当日、この日は東京スタジアムに今シーズン最も多くの観客達が訪れていた。



 6連勝を達成する東京が見たいと思う者がいれば、神戸の豪華メンバーによるサッカーを直に見たいと思う者も少なくない。



「スレイダーだ!」



「今日も格好良いよー!」



「9連勝行って埼玉超えてくれー!」



 神戸の移動バスがスタジアムに到着し、バスから降りてくる選手の中に短めの金髪で20代でも充分通じるであろう、若々しいベテランの選手が姿を見せればサポーターの歓声が大きくなる。



 神戸のキングことスレイダーは既に集中しているのか、一切振り向く事なく真っ直ぐスタジアム内に入って行く。




「神明寺ー!今日も無失点頼んだぞー!」



「勝也ー!」



「はいはい、任せて〜♪」



 東京アウラは先にアップの為、フィールドに現れるとホームの大声援を受けていた。



 そこに弥一は何時も通り陽気に笑って手を振り、サポーターの声援に応える。それも勝也とパス交換しながら。




「うお!?」



 すると一際歓声が大きくなり、勝也は驚いて弥一からのパスを受け損ねてしまう。



 パスが流れていってボールが転がった先にいるのは、相手の神戸選手スレイダーだった。



「あ、悪い……!?」



 勝也が相手に一言謝って球を取りに行こうとした時、スレイダーの足元まで来たボールがフッと消える。



 彼は一瞬で左足の踵に球を乗せ、蹴り上げて自分の頭上を通過していくと、落ちて来た所に右足で軽く勝也へ蹴り渡す。



 それは勝也が今まで受けて来たパスで一番優しく、受けやすい極上のパスで、スレイダーは全てノーモーションでやってみせた。



「(上手い……!!)」



 全盛期を過ぎたとはいえ、歴戦の覇者の技を直に見せつけられて、勝也はその上手さに衝撃を受ける。



「ボールありがとう〜♪」



 勝也の隣に来ていた弥一が呆然とする兄貴分に代わり、ボールを送ってくれたスレイダーに礼を言う。




「……風、少し強いな今日」



 弥一と勝也の2人を見ると、スレイダーはスタジアムに吹く風を感じて一言呟く。



「弱まってそよ風で終わるのか、それとも大きく吹き荒れる嵐となるのか……」



 それだけ言うとスレイダーは2人の前から立ち去って、アップの方を開始する。




「なんだぁ?よく分かんねぇ……掴み所無くてインタビュー泣かせってのは知ってたけど……」



 色々と独特なスレイダーに勝也は読めないと困惑。



「あの人の名言っぽいのは試合終わってからゆっくり考えとこー、ほらアップの時間なくなるよー」



「お、おお。行くか」



 今は試合の方を考えようと、弥一は勝也の背中を押してアップに戻っていく。




「(いるもんだね……似た人っていうのは)」



 弥一が密かにスレイダーの心を覗き込んだ時。彼の心はサッカーに埋め尽くされ、他を考える隙間がほとんど無い。



 それは弥一のイタリアの盟友ディーンによく似ている。



 スレイダーはそれに近いオーラを纏い、間違いなく桁外れの実力者。東京アウラは6連勝を前に正念場を迎えようとしていた。

弥一「神戸といえば神戸牛とか美味しそうだよね〜♪そばめしや豚まん〜♪」


勝也「世界一を経験してるプレーヤーが前でも食い物か!」


弥一「だって神戸牛食べたいんだもんー!」


スレイダー「神戸ビーフは美味い」


弥一「ほら、レジェンドも絶賛してくれるー」


勝也「いやまぁ美味いだろうけど、試合前は駄目だからな!?」

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