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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編

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熾烈な順位争い

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『左からクロス!っとデイブ弾いた!2m超えの巨神が今日も大阪ゴール前で山のように聳え立つ!』



 相手が左からサイド攻撃を仕掛ける。高く速いクロスが上がるも、落下地点にデイブが素早く寄って来て頭で弾き飛ばす。



「(たっけぇってマジで!)」



「(こいつ本当に18か!?いくらアメリカ人デカいからってデカ過ぎだろ!)」



 両チームだけでなく今日この場にいる観客達を含めても、おそらく一番高いであろうアメリカの巨神。



 彼の功績で大阪にハイボールはほとんど効かなくなり、昨年の課題である守備の弱さを克服した。



 この試合も得点を許さず、デイブを中心とした守備陣が相手の反撃を凌ぐ。



 大阪はこの後ゴール前30mのFKを直接決めて、1ー0で逃げ切り勝ち点3を重ねる。





『DF弾いた!ボールはコーナー、いや川岸抑える!セットプレーのチャンスを与えない!』



 相手の攻撃陣を横浜の守備が通さず、川岸がコーナーになりそうなボールを取った。



『横浜カウンター!2点目を狙う!』



 そこから横浜が反撃で動き、左サイドにボールを預けてから右に大きく蹴り出して、サイドチェンジで相手を揺さぶっていく。



 右に待っていたのは期待のルーキーの1人、右サイドプレーヤーの辰羅川。これを右足でトラップして、コントロールに成功すれば彼の目が向くのは相手ゴール前。



 得意の右足でクロスを上げると、低く速いボールがゴール前のユンジェイに迫った。



「(これは決まる!)」



 辰羅川のクロスに合わせて右足をボールに当てた瞬間、ユンジェイの中でこれは決まるという手応えが伝わる。



 それを物語るようにユンジェイの右足はボールの芯を撃ち抜き、高速で球がゴール右に飛ぶ。GKは反応する事が出来なくて、彼の後ろでは大きくゴールネットを揺らすボールの姿があった。



『決まったぁぁー!ユンジェイ今日2点目!止まらない韓国の若き虎!!』



 横浜に貴重な追加点をもたらし、勝ち点3を大きくたぐり寄せるゴールを決めたユンジェイ。



 俺こそがNo.1だとばかりに、右手の人差し指を天に向けてサポーターの大歓声に応える。



 横浜はこのまま2ー0で試合終了を迎え、こちらも勝ち点3を積み上げていく。





「もっともっとー!赤く熱く燃えてけー!」



「ウィーアーフォルテ!ウィーアーフォルテ!ウィーアーフォルテ!!」



 埼玉サポーターを盛り上げ、試合会場に彼らの応援歌が流れて戦う選手達の力となる。



 この試合を完全に物にして王牙は今日も場を支配した。



『いやぁ……昨年以上の勢い、そして熱さがありますね埼玉。熱を持った日本の赤い悪魔は滅茶苦茶強いですよ』



『滝口王牙、日本を代表する闘将が上手く士気を上げてますよね。ホント凄い熱気がこの放送席からも感じられます』



 点差は2点。だが選手達もサポーターもこのくらいの点差では満足せず、さらなるゴールを求めて皆が動き声を張り上げる。



「今年の俺達最強だぞ最強ー!何も恐れる物なんかない!ガンガン行けー!」



 熱き応援を背に始まる埼玉の攻撃。これ以上の追加点をやれない相手チームも、意地の守備で阻みに行くが埼玉のパス回しはそれを躱していた。



「目を離すな!」



 相手ゴール前には埼玉フォルテが誇るエース、小熊が走り込む。得点ランキング首位を独走するストライカーを放置するはずもなく、DFの厳しいマークが小熊を襲う。



『渡った!ゴール前フリー!』



 その存在感がブラインドとなって他の選手を見逃す。小熊を止めようと、意識が高くなり過ぎたせいかマークは甘い。振り抜かれたシュートがゴールネットに突き刺さり、決定的な3点目が決まる。



『埼玉フォルテ止まらないー!ダメ押しの3点目!前がかりになって攻めて来た所をカウンターの一閃!!』



『本当に今シーズン凄いですね!これはJ1の記録を今年塗り替える所が見れるんじゃないですか?』



 ゴールが決まれば9連勝が確定だと、サポーター達の勝利の宴が始まった。J1首位を走る埼玉フォルテは今日もトップのまま突き進む。





「うおおっし!」



「イワさんナイスクリアー!娘さん喜んでるよー!」



 リンダマール湘南の高いクロスを岩本が気迫のクリア。これに弥一は彼の娘が見てるぞと、岩本のやる気を更に引き出していく。



『おおっ、これは岩本かなり迫力あるクリアを見せましたね?』



『埼玉フォルテ戦から吹っ切れたせいか、存分に持ち味を発揮してますよ。何か一皮むけたようにも見えます』



「失点しても何も良い事なんか無いからなー!ここ集中集中ー!」



 マグネス不在の今、俺がDFを引っ張ろうと積極的に声を出す。これによって東京ゴール前に鉄壁の要塞を築き上げていた。




「右良い走りっぷりだよー!相手もうビビってるからー!」



 右サイドで出場している賢人。そこにも弥一の声は飛んでいき、賢人の走りを褒めていく。



「(本当こき使うのが好きですね……!動きますけど!)」



 既に右を攻守で何度も行き来し、相当走っていた。しかし不思議と辛くはなくてまだ走れる。



 弥一の声に後押しされるような形で右サイドを上がり、走っていくとそこに弥一からのパスが出ていた。



「(また厳しい所に!!)」



 相変わらず優しさ0のスパルタパス。本気で走れば追いつきそうで、絶妙なパスを送られて賢人は全力で走る。



『神明寺の速いパス!ラインを、割ってない!源田取って右サイド独走!!』



 弥一のパスにかろうじて追いつき、右足でトラップした後に賢人はドリブルで独走。そのまま斜め右から湘南エリア内に侵入していく。



 自分で狙いに行くと湘南DFが賢人へ体を寄せる。



 すると賢人は突破と見せかけて、右足のヒールでバックパス。此処に彼が上がってるはずだと、確信してのパスだ。




『走り込んでいた勝也ぁー!』



 賢人は先程ドリブルに入る前、一瞬中央の方を見て走り出す姿を目撃。彼のチャンスと見れば積極的に上がる性格は、この数試合の付き合いで既にデータとして把握済み。



 ゴール前まで上がっていた勝也が賢人からのパスを、トラップせずに右足を振り抜く。



 ジャストミートの球が矢のような速さでゴール右隅に飛び、相手GKがダイブして両腕を伸ばすが触れる事は出来ない。



 大きくゴールネットが揺れた瞬間、ホームの東京サポーターから割れんばかりの歓声が起きる。



『ルーキー神山また決めたー!高校で歴史を作った男がプロの舞台で躍動している!!』



『いや凄いですね!?お兄さんに負けず劣らず攻守で走って此処まで何度かゴールを決めたり、完全に乗ってますよ!』




「このまま止まんねぇからなー!上行くぞ上ー!!」



 ゴールを決めた勝也がスタンドに走り、サポーターに向かって叫ぶ。俺達は上に行くんだと。



「そうそう連勝行っちゃうおうー♪」



 その隣に弥一も来れば一緒になって、サポーターと盛り上がる。




「他はどうなってる?」



 点差と時間帯、更に相手の様子を確認した音崎はこの試合の勝利を確信。スタッフに他会場の様子を聞いていた。



「大阪が1ー0、横浜が2ー0、埼玉が3ー0と上位陣いずれも勝ってます」



「そうか……」



 リーグの上位にいるチームは勝利しており、その差はまだ縮まっていかない。



「(上位の潰し合いで混戦となってくれれば良いが)」



 上のチームはまだ直接対決をしておらず。その時に引き分けで潰し合いが起きて、勝ち点が伸びて行かなければ希望はある。



 5連敗でかなり出遅れてしまった東京アウラとしては、勝ち続けながらも混戦が起きる事を望むしかないだろう。




「こいつはうかうかしてたら俺のポジションもう無くなりそうだなぁ」



 スタジアムにある選手用の観覧席から、マグネスは勢いある自分のチームを見て呟く。



「そう言いながら楽しそうじゃないですかマグネス」



 そこにマグネスへ声を掛けるスーツを着た人物。彼は選手ではなかった。



「いいのかいマッテオ?選手じゃないのに」



「入って良いと許可は取ってますから」



 U-19の日本代表監督を務める親日家イタリア人のマッテオ。



 かつてはマグネスもイタリア時代で世話になって、彼にとっては恩師と言える存在で今も親しい。



「日本のリーグもかなりの盛り上がりを見せてますね。特に今年は凄いですよ」



「そりゃ期待のルーキー達がリーグ戦を熱くしてるおかげだな」



 隣に座るマッテオとマグネスは今シーズンのリーグの盛り上がりが特に凄いと、互いに話し合っていた。



「やっぱ気になってたか?ヤイチ……ミランでの教え子だったのがプロの舞台に来て活躍するのが」



 弥一がミランのジョヴァニッシミで、マッテオの教え子なのはマグネスも聞いている。かつての愛弟子が気になったのかと。



「弥一に関しては特に。彼なら活躍するだろうと、何となく分かってましたからね」



 マッテオの方は弥一について特に心配などしていない。間近で天才な彼のプレーを山程見てきたので、彼ならプロでもやっていけるだろうと確信があった。



「じゃあなんだい?わざわざ俺に会いに来てくれたか?」



「そんな訳ないでしょう」



「つれないねぇ〜」



 肩を竦めるマグネスをよそに、マッテオはフィールドで躍動する1人の選手に注目する。



 敵味方のゴール前で顔を出して攻守に絡み、積極的に声を掛けたりと全力でプレーしていく。衰えないスタミナは試合終了まで続いてた。




 勝也はこの時U-19日本代表監督の目に止まった事に、全く気づかず今日の勝利を喜ぶ。



 東京アウラ4ー0リンダマール湘南



 ジャレス2


 松川1


 勝也1



 マン・オブ・ザ・マッチ


 神山勝也

賢人「本当先輩に何の遠慮も無しで厳しいパスしてきますね」


風岡「まぁ良い事だけどな、そういうパスって敵にも厳しいと思うし。というか弥一って何時もサイドにあんなきついボール蹴るのか?」


弥一「優秀なサイドプレーヤーとかスピードある人はガンガン使いたくなっちゃうんですよねー♪」


賢人「という事は、この先もガンガンスパルタパスを蹴る事確定ですね」



優也「(立見じゃ数え切れない程に使われたな……練習でも試合でも)」


トニー「(俺は弥一だけじゃなくディーンにもそういうパス出されたりした事あったし。お前の速さなら取れるだろうって)」


弥一「(聞こえてるよー、そこの日本とイタリアの俊足プレーヤー達)」

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