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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編

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逆襲のエース

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「……」



「あの、歳児先輩……俺のパス……駄目でしたか?」



 立見のグラウンドで優也が難しい顔を浮かべてるのが見えて、後輩の明は自分のパスに何か問題があったのかと、小声ながら聞こうとしていた。



「いや、ちゃんと俺が受けやすい良いパスで良かったが……もう少し厳しくても大丈夫だ」



「厳しく、ですか……?」



 この時優也の頭には、ある人物のパスを思い浮かべている。自分へ無茶振りなボールを寄越したりした、同級生の小さな少年の顔が。



「(全く、あいつのパスを受け過ぎたせいか無茶振り無くて物足りないとなってしまう……)」



 その彼は今頃プロの舞台で、自分がいる世界よりもっと強く厳しい世界に身を置いて戦い続けている事だろう。





『神明寺また左サイドにスルーパスだー!』



「っとぉ!?」



 再び弥一から風岡へパスが出て、容赦無しで先輩選手を走らせていた。



 敵や味方の間を射抜くようなパスが再びスペースを捉え、風岡はそこを目指して疾走。他の者なら追いつけるか、怪しい所だが彼の場合は別だ。



 弥一のスルーパスを受け取ると、そのままスピードに乗ってドリブルで突き進む。相手DFの方は早々に1点目を取ってきたジャレスを警戒するが、風岡のドリブルが斜め左から中央に切り込んで来たのを見て守備に一瞬の迷いが生じる。



 それをA代表にまで選ばれた風岡が見逃すはずもなく、彼はドリブルで切り込んで乱れたDFの1人を、素早く抜き去って間髪入れずに左足がボールを捉えて飛ばす。



 ゴール左下の際どいコースへ行った球に、GKは反応して右腕を伸ばすも届かず。ゴールネットが大きく揺れると、1点目の時のように会場を大歓声が包みこんでいく。



『決めた風岡ー!本日1ゴール1アシスト!日本を代表するサイドアタッカーが此処で本領を発揮した!!』



『これが本来の風岡ですよ、流石です!神明寺君もまた良いスルーパスを出して来ましたね!』



 追加点が決まって祝福を受ける風岡。その中には弥一と勝也も加わっており、先輩のゴールを祝っていた。




「隙あったらまたゴール狙いましょうー!勿論守備はちゃんと完封ねー!」



「そうそう!決められる時に決めておけー!」



 後ろから弥一が声を掛けた後に、勝也も負けじと声を張り上げる。16歳と18歳の新人達がプロに物怖じせず、コーチングを積極的に行うのに刺激されたか、他の選手達も声を掛けあう回数が増えていく。




「(前節の清水戦を見たが、新人達が入って此処まで変わるというのか……?)」



 新潟の監督は東京アウラの選手達がフィールドで、活き活きとプレーする姿に内心驚いていた。彼が目にしているのは、泥沼の5連敗の時とは違うチームの姿だ。



 それぞれが走って声を掛け合い、褒め合ったりする。プロによる高度なサッカーというよりも、学生のような若々しくエネルギッシュなサッカーに見えた。




「東京アウラというチームはどちらかと言うとあまり走らず、巧みで老練なサッカーというイメージが強いけど今の彼らは……全然違う」



「滅茶苦茶走ってますよね。特に左サイドが」



 勝也が東京アウラに行くと共に、京子はそのチームを調べてどういうサッカーをするのか把握済み。その老練なサッカーをやらず、彼らは全く違うスタイルで今回臨んでいる。



 輝咲の目の前には、再び走らされる風岡の姿が見えた。





「(こんな人使い荒かったのかよ!)」



 弥一のパスに反応して追いかけ続けてきた風岡。今日は何時にも増して、左サイドを走っている気がする。



 思わず弥一に対する愚痴を心の中で零すと、再び後ろから声が掛かった。



「はい走って左ー!」



「っ!」



 またパス行くよと弥一からの声が聞こえれば、風岡は左サイドを再び駆け上がる。しかし何度も風岡へパスが行ってるので、流石に新潟も警戒してマークに行ったりパスコースを塞ぎに行く。




「(って、何度も左行く訳ないじゃん!)」



 左はただの囮で走らせただけ。弥一は左足で地を這う地面スレスレのロングパスを逆サイドの右へ送る。



 そこは先輩で日本代表だろうが、関係なかった。



「(ちょ、速ぇって!)」



 フリーとなっていた右サイドの橋田が上がり、ボールを追いかけるが弥一の球が速くて追いつけない。



「(長過ぎたな、ミスキックだ)」



 新潟の方はこれを見て、追いかけるような事はなくタッチラインを割ると判断していた。



 するとボールがバウンドした時、真上に跳ね上がってラインを割っていない。



『おっと!?ライン割っていない!?橋田ボールを取って新潟ゴールに右から迫る!』



『何であんなボール蹴れるんですか神明寺は!?』



 場内からどよめきが起こる中で橋田がボールを取って、新潟は慌てながら寄って行く。



「(今の絶対切れると思った!何で!?)」



「(何であんな真上に跳ねるんだよ!?おかしいだろ!)」



 敵味方共に弥一の蹴ったボールに内心驚きながらも、デュエルでぶつかり合っていた。これを橋田が制すると、右からクロスを上げる。



 低いクロスにジャレスが右足のダイレクトボレーで合わせ、豪快にゴールネットを揺らす。今日2点目のゴールに、ジャレスはスタンドに向かって「フォォォォーー!!」と興奮して叫ぶ。



「ノッてるノッてるー!ジャレス後1点行っちゃってよー!皆ハットトリック見たいよねぇー!?」



「見たいー!!」



「このまま行け行けジャレスー!」



「なんだったらダブルでも良いぞー!」



 ジャレスを乗せるだけでなく、弥一は観客にも振ってスタジアムを盛り上げてみせた。



「はいここジャレスコール!皆頼むよー!」



「ジャレス!ジャレス!ジャレス!」



 弥一が切っ掛けとなってスタンドから発生するジャレスコール。サポーターを利用して相手を飲み込み、この試合を完全に支配しようとしている。




『これは東京サポーターから凄い声援です!場内がジャレスコール一色!ハットトリックへの期待の表れか!?』



『確かにサポーターとしては2点まで来たら見たいですよね。それだけでなく東京アウラは今得失点差で大きくマイナスの状態ですから、大量得点を取っておくのは良いと思いますよ』




「うるぁぁ!」



 自分への大声援に張り切ってか、ジャレスがプレスをかけてボールを奪いに行く。迫力に押され、ボールが零れると勝也が取ってキープ。



「カツヤー!」



 そこにジャレスのボールを要求する声。勝也がすぐ右足でパスを送ると、ジャレスは受け取って前を向いた。



 次の瞬間、彼は迷う事なく入ると思って右足を振り抜く。遠いロングレンジのはずだが、ボールはゴール左上へ弾丸のような勢いで飛ぶ。



 バーの上を超えていきそうなシュート。GKがダイブしながら両手を目一杯伸ばすも、ボールはゴールバーの内側付近にガゴォンッと当たりながら、ゴールマウスの中へと入っていった。



『ハットトリックー!!ジャレスの豪快キャノンシュート炸裂!4ー0と大きく点差をつけた!リーグ7戦目で蘇ったか昨年王者!』



『止まりませんねジャレス!出場停止を受けていたので、その鬱憤を晴らすかのような大活躍ですよ!』



 ハットトリック達成にジャレスを中心に選手もサポーターも大きく盛り上がり、その場に一体感が生まれる。





「(神明寺弥一……やはり私の考えていた通り、彼は想像以上の選手か)」



 病院のベッドから、テレビで試合を観戦している康友。



 彼から見て他の選手達が素晴らしい働きをする中、そうさせているのは弥一だと康友は見抜いていた。彼無しで相手の新潟を、こんなにも圧倒はしていないだろうと。



「(彼もいずれは……此処で留まるような選手ではなくなり、ビッグクラブへ向かう時が来るかもしれないな)」



 世界の超一流選手、皆が必ず通るであろう海外ビッグクラブへの移籍。弥一もいつかは世界に飛び出し、その道を歩き始める。彼の底知れぬ才能を思えば、あり得ない話ではないはずだ。



 日本にいる今だけ、そのプレーを目や脳に焼き付けようと康友は弥一に注目する。

詩音「神明寺先輩が言ってるからもっと声出してこー!」


玲音「声小さいと届かないよー!」


詩音&玲音「「神明寺先輩GOイェー!!」」



京子「あの子達コールリーダーに選ばれたの?」


輝咲「さあ……?」

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