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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編

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勝利の女神の前で張り切る

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 前節に東京アウラが初勝利。その時に勝利の立役者となった新人達が再びスタメンで出場と聞いて、今日試合が行われる東京スタジアムでは多くの東京サポーターが、会場へ集う姿が目立っていた。



「京子さん!」



 そこへ東京アウラのユニフォームを着た、長身の女性が待ち合わせをしている女性の姿を見つけて駆け寄る。



「輝咲さん、卒業式以来ね」



 待ち合わせをしていた女性こと、京子も東京のユニフォームを着て小さい勝気を抱っこして試合会場に来ていた。勿論勝也の応援の為だ。



 それを守り、エスコートしようと輝咲は案内とボディガードを兼ねて、京子と今回の試合を一緒に観戦する約束をしていた。



「あ〜」



「はは、勝気君も元気そうだね。それじゃあ早速行きましょうか?」



「ええ」



 勝気の相手をしながらも、輝咲と京子は会場に入っていった。ちなみにユニフォームの背番号は京子が24、輝咲が33だ。




「弥一君、試合の後に動画出たり変わらず色々活動しているそうだけど、無理して疲れてない?」



「僕の見た限り無理してる感じしませんでしたよ。学校の方にも普通に通ってますし、部活の方にもちょっとだけ顔出したりしてましたよ」



 立見高校を卒業してマネージャーではなくなった京子。弥一の調子はどうなのか、彼と学校などで共に過ごしている輝咲に聞くと、何時も通りだと先導しながら答えていた。



 プロとしての活動に加えて、現役高校生としての学生生活。それらを日々こなしており、輝咲も大丈夫かと心配になる。



 しかし弥一は「輝咲ちゃんと居るだけで体力回復していくから、疲労は0だよー♪」と明るく答えて、何時も輝咲との時間を最優先。それが彼女にとって嬉しく、愛おしく思えてしまう。



「勝也先輩の方は体調どうですか?」



「彼はプロになって特に気を付けるようにしてるから、薫さんの所へ体を休める方法について教わったりもしてたみたいで大丈夫だと思う」



「ああ、そういえば弥一君も新監督からそういうの聞いたって話してましたね。あの人も元々は女性プロ選手で、コンディションの作り方について学ぶ事色々ありそうですし」



 弥一と勝也のコンディションについて、身近で見ていた者達がそれぞれ伝え合う。前節の疲れは特に無く、何事もなく試合に望めると確認した後に輝咲と京子はスタンドに着く。



 東京アウラの新人2人を支える女性達や、多くの東京サポーター達が今日の試合で連勝出来るかどうかを見守る。




「確か今日の相手もリーグ戦あんま調子良くないんだっけー?」



「つっても1勝1分と勝ち点じゃ向こうが1点上回って、順位はあっちが高いけどな」



 アップの為にフィールドへ姿を見せた弥一と勝也。ホームの大声援に出迎えられながら、2人でパス交換をする。



 ちなみに弥一はその声援に応え、よそ見しつつもパスを勝也の足元へ正確に送って、早くも高い技術を見せつけた。



「じゃあ今日は直接対決で勝てば最下位脱出出来るんだね♪」



「それもあるし、連勝に繋げる為にも勝つしかねぇよ」



 絶対に勝つという勝也の気持ちがボールに乗って、送られたパスを弥一は右足でトラップ。



 そこへ今日の対戦相手となる、フェニクスキング新潟の選手達もアップに現れ、各自が動き始めていた。




「(今日は不調の東京だから、勝てるはず)」



「(札幌に逆転負けしてるし俺達も此処で勝つチャンスは充分ある)」



 相手は今の東京アウラ相手なら、アウェーでも充分勝ち目があると見ている。最下位ではないとはいえ彼らも低迷して、もう負けられないのは事実。



 降格争いから抜け出す為にも負ける訳にはいかない。




「(はいはい、そう来るかぁ〜……)」



 それを読まれてるとは知らず、弥一は試合前に彼らの心を偵察していた。



「どうした弥一?」



「今日の試合勝ってやろうと思っただけー♪」



 偵察の事は勝也に伏せておくと弥一は陽気に笑い、兄貴分と試合に向けてのアップへ集中していく。





『前節待ちに待ったリーグ戦初勝利を手にした東京アウラ。このホームでフェニクスキング新潟を迎え、大勢のサポーターに初勝利を届けられるか!?』



『新潟の方も下位脱出の為には負けられませんからね。お互い今日の試合、勝利に向けて並々ならぬ意欲が感じられる一戦になると良いですね』



 ホームの大声援を受けながら、東京の選手達が入場してきて隣に新潟の選手達も並んで列を作り、姿を現していた。



 両チームの横断幕には下位脱出!という、今日の試合に向けたメッセージが込められる。




「あ、風さんー」



「ん?」



 試合前の集合写真を撮った後、弥一は先輩の風岡へと小走りで向かい話しかけた。



「今日は僕ガンガン左使ってくつもりなんでお願いしまーす♪」



「え?ああ、分かった」



 それを聞いた風岡は左サイドの自分へ、積極的にパスを出すつもりかと思い頷く。




「絶対連勝!東京GOイェー!!」



「「GOイェー!!」」



 太一の掛け声と共に皆も声を揃えて、恒例の儀式を済ませる。




「勝也、京子さん達が来てるからって変に力を入れたりするなよ?」



「分かってるって、張り切ると同時にちゃんと冷静にプレーするから!」



 勝也から家族が応援に来る事は太一も聞いている。愛する家族が応援に来てくれるというのは、確実に力となって自然と張り切るものだ。



 太一も愛する妻と子供が応援に来てくれているので、やってやろうと静かに闘志を燃やす。




「(輝咲ちゃん居る前で負けられないし、新潟さん……悪く思わないでね♪)」



 弥一の方も輝咲が見てる今日、普段より勝つ気持ちが増している。その為には相手を此処で容赦なく奈落へ突き落とす。



 そこに弥一は一切の躊躇など無い。




 ピィーーー




 新潟ボールからのキックオフで始まり、細かく中盤でボールを繋いで進む。下位とはいえ相手はプロの選手達、早く正確な技術で確実に東京ゴールへ迫って来た。



 すると此処で相手の司令塔がパスから一転、ドリブルで意表を突く狙いか中央突破を仕掛けてくる。



「(試合前そう行くって張り切ってたよねー!)」



「!?」



 彼を最初から狙っていたか、弥一は近距離まで忍び寄っていくと、相手がドリブルに入った所へボール奪取。



 あっという間の出来事で、相手は驚いてしまう。



『神明寺、中央突破を阻止!っとすぐパスを出したぁ!?』



 弥一は奪った直後に右足で左サイドの空いてるスペースへ、スルーパスを出していた。



「っ!?(あいつ!無茶苦茶なパス出しやがった!)」



 パスのスピードはまるでシュート並。弾丸パスに対して風岡がスタートを切る。



 本気で走ればなんとか追いつけるぐらいの、ギリギリなパスだと風岡には思えた。それと同時に彼は感じ取る。




「(日本を代表するサイドプレーヤーならこれぐらい取れるよね?)」



 自分の限界近くを遠慮無しで要求してくるスパルタなパス。かなりの無茶振りだが、これに対して燃える物が風岡にはあった。



「(やってやるよ!上等だ!)」



 出来なかったでは許されない。彼の中でプライドがあり、これを受け取れなければ弥一に負けた気がして、絶対取ってやろうと風岡は猛然と弾丸パスに走る。



『これは速すぎるパスで追いつかない、と思ったら風岡通った!流石日本を代表するサイドプレーヤー!』



 国内トップクラスのスピードを誇る、日本代表の左サイドでもある風岡。己のプライドをかけて弥一からのパスを受け取ってみせた。



 そこから左足でゴール前へ高く速いクロスを上げれば、頭で合わせるのは出場停止の解けたジャレス。GKが飛び出して来た所をふわりと頭で球を浮かせ、相手の頭上を越えていく。



 綺麗な弧を描きながら、ボールは吸い込まれるように新潟ゴールへ入っていった。



『ご、ゴォォール!!なんとまだ開始から1分経たない間に東京アウラが電光石火のカウンターでの先制ゴールだ!!』



『神明寺の奪った所から速かったですね!風岡も流石の走りを見せてくれてジャレスまで繋ぎましたからね!』



 開始早々の先制点にスタンドが揺れていく。



 出場停止が明けて、ファーストタッチでゴールを決めたジャレスはバク宙のゴールパフォーマンスを決めてみせた。



「ジャレス流石だねー!」



 続いて観客に向かい、叫ぶジャレスに弥一が後ろから抱きつく。



 すると弥一の後ろから風岡の手が弥一の頭へ伸びてくる。



「ヒヤッとしたぞ弥一!あんなパス飛んで来るのは聞いてないし!」



「えー、だって日本代表なら行けるだろうって思いましたもん!実際行けちゃいましたし!」



 弥一は風岡から頭をくしゃくしゃに撫でられていた。スパルタなパスを出された事に対する、ささやかな報復かもしれない。




 そして弥一の視線の先には、京子と共にゴールを喜ぶ輝咲の姿。愛する彼女の顔を見て、彼は力を貰うとポジションに戻る。



 最初からエンジンのかかった、サイキッカーDFは止まらない。

詩音「今のは神明寺先輩のおかげだよねー!」


玲音「そうそう、あの人の働き無しで開始早々のゴールはあり得なかったし!」


詩音「あ、勿論背番号33のユニフォームは僕達もちゃんと着てるから!」


玲音「そりゃそうだよ!これを着なくて何を着て応援すんだ!?って話だからね!?ちゃんとアクアクーラも常備してるよー!」



京子「……何か近くで聞き覚えある応援が聞こえてない?」


輝咲「もしかしなくても彼らしかいませんよね、あの熱狂的な双子の後輩しか……」

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