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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編
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チームを蘇らせる

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「この試合で流れを変えないと、まぁヤバいよなぁ東京アウラは」



「って言いながらマグネス何か楽しそうにしてねぇか?」



 選手専用の観覧席には出場停止中のジャレス、そして負傷して欠場の続くマグネスが座っている。



 現在5連敗と、クラブのワースト記録に近づく最悪な流れ。にも関わらず、マグネスの顔は何処か楽しげに試合を眺めていた。



「いやー、ほら。やっぱ若い連中がどんどん試合に出て来るのは嬉しいもんだろ?」



「一緒にすんなっての、まだそこまで老け込んでねぇよ」



 自分は若い方だと怒ったようにジャレスが主張。試合の方は0ー0と膠着しており、時間は流れるばかりだ。



「(さぁて、遅れて出て来たバンビーノは何を見せてくれるんだ?)」



 マグネスの視線の先には指示を飛ばしまくる、弥一の姿があった。




「(おかしい……こんな攻め難いなんて)」



 清水FWスタータは今日の試合、攻撃がしづらいと思っている。



 今日の相手は2戦で8失点と守備が崩壊した東京で、短期間による立て直しは追いつかないと思っていた。



 そこへスタータにパスが向かい、ボールを取ろうとするが。



「うおっ!」



 東京DF岩本が積極的に前へ出てスタータと競り合い、打ち勝つとボールを右足で蹴り出してクリア。その表情には覇気があって、自信を兼ね備えている。



「行ける行けるー!強気に前出ていいぞー!」



 自分から積極的に声を出して、岩本はチームの士気を上げていく。




「後ろもう一枚来てるよー!」



 清水が中央突破を狙おうと、その人数を多くしている事を弥一が見抜き、すかさず声を掛けていた。そのおかげで相手の突破は止まり、またしても清水の攻撃を防ぐ。



「良いコーチングだ弥一君!よく気づいた!」



 弥一の後ろからの声掛けに、太一は褒めていた。チームの守備が機能して、此処までスコアレスが続いている。



『今日の東京は良いですね。今シーズンの中で一番はつらつしてると言いますか、声が全体的によく出ている気がします』



『そうですね。確かにこの放送席からも東京アウラの選手の声が結構多く聞こえてますね』




「(互いの声掛けに素早いフォロー……プロとしては初歩も初歩だが、いつの間にかうちに欠けていた物だな……)」



 ベンチで戦況を見守る音崎。これまで東京が出来ていなかった当たり前が、今日は出来ていると見ていて手応えがあった。



 連敗を重ねて大事な基礎的な物を見失い、それが今になって気づき実行している。



「(しかしその基本をしっかりしただけで、あの清水の攻めを未だシュート0本に抑えてるとは……)」



 0点に抑えられれば理想的と考えてはいた。だが音崎の前ではその理想以上の事が起こり、正直驚かされてしまう。




「強引にでも撃て!流れを変えるんだ!」



 良くない流れだと感じた清水の監督。前に出てくると、シュート0本の流れが良くないから、遠めでもなんでもいいから1本撃とうと指示を出す。




「(楽には絶対やらせるかよ!)」



「っ!」



 絶対楽な体勢でシュートさせるかと、勝也が前から詰めて来てガンガン体をぶつけていた。この積極的な守備に、相手は嫌そうな表情を見せるとたまらずヒールでバックパス。



「勝兄貴その調子ー!どんどんやっちゃってー♪」



 勝也を後押しするように弥一も声を出す。



 今日の東京アウラは全体的に活気に溢れて、エネルギッシュなサッカーを展開している。その姿は5連敗で最下位をひた走るチームとは思えなかった。




「(何か、楽しいな今日!)」



 クラブだけでなく代表と、日々勝たなければいけないプレッシャーと戦い続けてきた風岡。



 だが今日に関してはプレッシャーなど無く、体が軽く感じている。



『風岡素早いチェック!清水のサイド攻撃を許さない!』



『良いですね、何かのびのびとやってて大事な試合でリラックス出来てますよ』



「(不思議なもんだな。今日はプロの前の、怖い物知らずで無鉄砲な事やってた事を思い出しちまう)」



 元々松川は中盤でガンガン中央突破を仕掛け、怖い物知らずのサッカーをしていたがプロのサッカーに慣れて影を潜めていた。



 しかし今日は久々に過去の自分へと戻る。



『おっと松川!?中央で積極的にドリブルを仕掛ける!』



『パスじゃなくドリブルで勝負ですか!いつもの松川ではありませんが、これは面白いですね!』




「……(何か楽しそうですね)」



 ベンチスタートの賢人は外から皆のプレーを見て、楽しくサッカーをしているなと思えた。



 絶対勝たなければならない、負けが許されないというプレッシャーなど無いかのように。



 それがリーグの上位を相手に互角に渡り合っているのかと、賢人は得意のデータで頭の中にて分析してみる。



「(直接僕も出てみなければ詳細は分からない……)」



 いつの間にか賢人自身、早く自分が呼ばれないかとそわそわし始めていた。




 清水はなんとしてもスタータ、バスティオに繋げようと中盤でショートパスを活用して、厚い中盤を敷いて来る東京の包囲網を掻い潜る。



『スタータにパス……おっとスルー!?』



「っ!?」



 スタータにボールが行って、岩本が止めに行くとスタータは受けずに軽くジャンプで飛び越える。パスを受けると思っていた岩本だが、裏をかかれてしまう。



 その先にはバスティオが向かっており、ベテランコンビが熟練の技と連係を見せてきた。



 バスティオは東京ゴールへ振り向くと同時に左足を一閃。これが清水のファーストシュートで、勢いよく球が飛び立つ。



「いだぁっ!!」



「!?」



 球が飛んだ先には弥一の小さな背中。強烈なバスティオのシュートが背番号33部分に当たり、ボールは空高く東京ゴール前を舞っていた。



『バスティオのダイレクトを神明寺ブロックー!高く上がったボールをロッドがキャッチ!清水のエースのシュートを止めてみせた!』



『これは度胸あってガッツあるブロックを見せてくれましたね』




「う〜、痛い〜。やっぱ元オランダ代表のシュートって強烈だねー」



 背中をさすりながら、弥一はロッドに右手親指を立ててナイスと伝える。



「(見抜いていたのか、スタータのスルーから俺のシュートが来るって……)」



 弥一の読みが異常に鋭い事はバスティオも聞いていた。だが実際は噂以上で、まさか今のプレーが読まれるとは想定外だと、またも驚かされてしまう。




「(此処は上がる時!)」



 東京の攻撃時、此処は更に一枚増やして深く行こうと、勝也は中央から駆け上がっていった。



「勝也!無茶するな!」



 弟とダブルボランチを組む太一。勝也の上がる姿を見て、前に出過ぎだと声を掛けるが、勝也の足は止まらない。



「こっち!」



 上がって来た勝也は風岡へ右手を上げてパスを要求。それに応えたのか、左サイドの風岡から地を這うボールが送られる。



「うわっ!?」



 そこへ勝也は清水の包囲網に捕まり、囲まれるとボールをキープするも倒され、奪い取られてしまう。



『清水スピリッツ中盤で奪い返す!神山勝也ファールをアピールするがノーファールだ!』



『これチャンスですよ!中央空いてますからね!』



 素早くカウンターを仕掛け、東京の意識が守備へ切り替わる前に、清水はすぐにスタータへパスを送る。



「カウンター阻止っとー!」



 そこには大胆にもバスティオのマークから離れ、前に出ていた弥一がスタータへのパスコースに飛び込み、インターセプトに成功。



 それと同時に彼には見えていた。前方に光の道が続き、繋がっていく先にターゲットがいる。



 蹴る事に迷いなど一切ない。



『清水チャンス!っと神明寺カット、すぐ送った……!?』



 弥一が右足を振り上げてボールを蹴ると、中央にいた味方や敵選手の僅かな隙間をヒュンッと通過。レーザービームと化した球が中央を抜けて、それに反応出来た選手はただ1人だった。



『通った!残っていた神山勝也!オフサイド無しだ!』



 清水のDFライン裏に飛び出してきた勝也。止められてカウンターで戻る暇は無かったが、前に残ってたおかげで弥一のロングスルーパスに反応する。



「(決めさせるか!18歳のガキ如きに!!)」



 相手DFもプロの意地があり、左から強く勝也に体をぶつけてくる。



「うおお!?」



 だが勝也はそれを受け流し、DFを振り切る、此処で合気道の経験が活きていた。




「(勝也……!)」



「パーパー!」



 神山家では京子がスマホで勝也を見守り、息子の勝気が画面の父親に向かって叫ぶ。



 家族の力が伝わり、宿ったのか右足を振り抜き勢いよくシュート。GKが懸命にダイブするも右手を掠め、ゴール左のネットに突き刺さって大きく揺らしてみせた。




「やった……?ゴール……?」



 一瞬どうなったか、ゴールを決めた本人は頭の理解が追いつかない。だが場内を包む割れんばかりの声。味方達の喜ぶ声が聞こえ、ようやく実感する。



「っしゃぁぁーーー!!!!」



 18歳でプロ初先発の初ゴール。己の中の昂りが抑えきれず、勝也は天に向かって猛々しく吠えた。



「やってくれたね勝兄貴ー!」



 それをアシストしたのは天才の弟分。弥一が沈んだチームを蘇らせ、活性化させていく。

間宮「決めたー!勝也先輩ー!すげぇよー!」


春樹「流石勝也先輩だ!あのゴールは何回振り返っても足りない……何度も見たくなってしまう魅力が感じられる……これぞエクセレントにしてファンタスティック!」


間宮「あの人のグッズ化まだか!?ぜってぇ買うぞ俺!」


春樹「残念ながら今日からデビューなので、それはまだみたいだ……あったら全種類制覇していたのに!」


詩音「凄く盛り上がってるなぁ先輩達」


玲音「天宮先輩が石立中で散々勝也先輩について、語り倒してたのは知ってるけど同じ熱量の人いたんだぁ〜」


摩央「他人事みたいに言ってるけど、お前らも弥一に対する熱はあれぐらい……またはそれ以上だぞ?」

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