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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編
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連敗チームに容赦ない試練

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「始まりました!東京アウラチャンネルの時間です。MCのエリーです!」



「神明寺弥一ですー♪」



 明るいBGMと共に動画が始まり、出演するエリーと弥一がそれぞれ挨拶をする。



「どうもー、勝手に準レギュラーやと思てるシュートスナイパーです!」



「え、レギュラーちゃうん?」



「図々し過ぎるな!」



 続いてお笑いコンビ、シュートスナイパーも登場。ボケのシュータに長岡がツッコミ、今日も解説と共に笑いも届けますとテロップが下に表示される。



「あ、じゃあ僕が試合出るようになって出演難しくなったら2人レギュラーで〜」



「何かそれリアルやな!?ホンマにありそうやし!」



 すかさず弥一までシュータに続いてボケ始め、長岡のツッコミ運動量増しまくりとテロップが出る。




「さて、我らが東京……苦しいスタートですね。まさかの公式戦3連敗で得点はたったの1点という」



「いやぁ、こればっかりは僕らもホンマ驚きですね。去年あんだけ強かった東京がこんな勝てんのか!?ってなりましたわ」



「やっぱり工藤監督おらんかったり風岡選手、マグネス選手といった主力選手の欠場が大きく響いてそうっすよね?」



 此処はボケる事もなく、エリーと共にシュートスナイパーの2人が東京アウラの連敗について語る。そこは彼らも空気を読んだらしい。



「神明寺君、東京アウラの不調はなんだと思う?」



「うーん、前回とかは見ていて後半の終盤まではやる事がハッキリしてて良かったんですけど、札幌の同点ゴールでバタバタっと一気に崩れましたからねー。雨の中での難しさもありましたし、今の所は主力の欠場がやっぱり大きいと思いますよー」



 此処まで3戦戦って何故勝てないのか、エリーに聞かれると弥一は現時点では、マグネス達の欠場が響いていると述べる。



「結構大変な時期やけど、神明寺君はまだ呼ばれへんかー」



「俺が監督やったら選んでるけどなー」



「あ、じゃあシュータさん上層部の皆さんと交渉して監督なってくださいね♪」



「よっしゃ!初の若手芸人からのプロクラブ監督の誕生やー!」



「色々無理やろ!!ほんでキミ今回もめっちゃ振ってくるな!ホンマにお笑い素人か!?」



 絶対秒で断られるというテロップと共に効果音も鳴らされ、現場の笑いの渦に巻き込む。



「えーと、では次節の名古屋エポラールとの一戦ですが次は主力のマグネス選手と風岡選手が戻って来るんですよね?」



「そうですねー、代表戦が終わってチームにまた合流するって予定でしたから」



「ただ名古屋は強いっすよー?2勝1分けでリーグ上位陣ですし、好調なチームなんで!」



「前節の試合で名古屋のエース、ドッカン君こと大里選手が右足のミドルをドカンと1発!これを沈めて決勝点決めてるんですわ」



 画面には名古屋エポラールの試合が流れ、180cmぐらいの身長で黒髪にヘアバンドを身に着ける選手が、右足をミドルレンジから振り抜いてゴールネットを豪快に揺らす。



「確か得点ランキングも現在、小熊選手に次いで2位となっているんですよね」



「ええ、間違い無く今シーズンの大里選手はノッてると断言出来ます!」



「その勢いシュートスナイパーにも分けてや〜!」



「面白いから充分勢いあるじゃないですかー♪」



「そこは大里選手に頼らず自力でやろうや!神明寺君はありがとうなぁ!なんやったらもっと言うてくれてええで!?」



「あ、それはホンマお願いします」



「自分ガチトーンで頼むなや!動画回っとるからな!?」



 売れ続けようと必死、とテロップが流れてエリーの方は苦笑するしかない。予定ではもう少し早めに終わるはずが、結構長引いている。



「という訳で今回も、どうもありがとうございました〜」



「いやそれ漫才の終わり方ちょい寄せとんな!?」



「終わりの時間迫ってるので本当に終わりですー!」



 グダグダ、というテロップが流れた後にエンディングを迎えて、この日の動画は終了となる。



 コメントの方には「もうちょっと今のアウラを何とかする打開策とか語ってほしかった」「神明寺まだ試合呼ばれんの?動画出てる場合ちゃうやろ」「流石に連敗してるチームに甘い気がする。ガツンと喝を入れたり毒舌なぐらい斬っても良かった」といった連敗の影響か、厳しめのコメントが多くなっていた。



「次には主力が戻るから、東京の猛反撃!勝ち点を重ねるのはこっから!」と期待を込めたコメントもある。



 だが現実はそう甘くない。東京アウラはこの後、災難に襲われる事となってしまう。





「……いや、嘘だよなマグネス?」



「すまん、これがジョークなら良かったけど本当だ」



 東京アウラの練習グラウンド。久々に姿を見せたマグネスはベンチに座っている。何時もの陽気な笑みを見せるが、彼は松葉杖を持っていて、サッカーが出来る状態ではなかった。



 左の中足骨疲労骨折。マグネスの左足の甲が骨折してしまい、2ヶ月ぐらいの安静が必要だと医師から告げられたのだ。



「チームがこんな状況の時に悪い!でも大丈夫だろ、俺がいなかった時も勝ったりしてたしさ!」



 辛いという顔を見せず、マグネスは暗い雰囲気のチームに明るく声を掛けて励ます。だが弥一から見ると、彼の心の中は仲間への申し訳ないという思い。チームが大変な時に試合に出られない悔しさ。それがハッキリ見えていた。



 そして選手達はマグネス無しで、またしばらく戦わなければならない現実を突きつけられ、太一や風岡といった面々がショックを受けるも、それぞれ前を向く。



「悪い、マグネスが居ればとか頼り過ぎてたな。お前に心配かけられないよう、勝つから」



「絶対無理すんなよ?そんで治療の期間が長くなるんだからな」



 太一、風岡が声を掛けた後に選手達はチームの練習に戻り、マグネスは彼らを見守る。




「あーあ、僕も試合出られたら良いけど出してくれないからなぁ〜」



 弥一は練習終わりに、マグネスの座るベンチの右隣に腰掛けてスポーツドリンクを飲む。目の前には次の試合に向けて、フィールド上で打ち合わせをするレギュラーメンバーの姿が見えた。



「ヤイチ、待ってりゃ良いってもんでもないぜ?例えば直接監督に俺を出せとか言ってアピールしたりとか、それも通る時あるからな。出られない間にも出来る事は山程あるし」



「!(あ、それがあったか。僕の視野もまだまだ狭いなぁ〜)」



 監督に直接気持ちをぶつければいい、マグネスにそう言われると弥一は迷わず行動に出ようと、ベンチから飛び出して小走りで向かう。



「(おいおい、本当に行ったのか!?少しの迷いもせず思い切ったバンビーノだなぁ)」



 思考から行動に移す弥一の決断力の速さ。迷いなく動き出す新米のプロを見て、歴戦のイタリアDFも驚く程だった。




「あ、いた!音崎さ〜ん」



 クラブハウス内を探していると、自販機前で音崎が飲み物を買おうとしてるのを発見。弥一は彼に声を掛ける。



「神明寺、何か用事か?」



 音崎はチラッと弥一を見た後、すぐに自販機の方に向いてブラックコーヒーを購入していた。



「次の試合から僕も出してくれませんかー?それかせめてベンチ!」



 今の監督を務める彼に、出場機会を求めて弥一は迷わず音崎の顔を見上げながら直談判。



「……何故出たいんだ?」



 コーヒーを取り出す前に、音崎は弥一に向くと静かに出場する理由を問う。



「何故って聞いたでしょ?マグネス出られなくてDFの要が不在。あれだと高確率で失点避けられそうにないから、僕が出て全試合無失点に抑えようってー」



「随分と甘過ぎて浅はかな考えだな」



 マグネスに代わって自分がチームの無失点に貢献する。弥一が明るく笑って伝えている時、音崎の言葉が遮った。



「小学生で全国3連覇、名門ミランのジョヴァニッシミでレギュラー、立見で選手権優勝。そんな輝かしい戦績があって、周囲から天才だとちやほやされて勘違いでもしてるのか?自分の力がマグネスの代役を務められる程だと」



 冷たく言い放つ音崎の言葉を受けて、笑っていた弥一もこれには流石に少しムッとしてくる。



「勘違いも何も事実じゃないですか。皆の練習見たり、試合見たりしましたけどー……」



 弥一はこれまでの試合を見て、敵や味方の動きを思い返す。そして彼はハッキリと言い切る。自分が思っていた事を。




「敵味方含めて僕が一番上手いって思ってますし」



 それを言った瞬間、音崎の右手が壁際の弥一を挟む形で、壁に思いっきりドンと突く。



「プロを舐めるな……体もろくに出来ていないヒヨッコ小僧が……!」



 音崎はそのまま弥一の胸ぐらを左手で掴み上げ、殺気の籠もった目を弥一に向けていた。それは現役時代、エースキラーと呼ばれた名DFの頃を彷彿とさせる目つきだ。



「マグネスの代わり?全試合無失点に抑える?自惚れるな!それが取り返しのつかない事を招きかねないんだ!」



 何もかも思い通りになると思うな、そう弥一に言い放った後で彼を解放する。



「……悪い、つい熱くなった」



 それだけ言うと、音崎はコーヒーを購入口から取り出した後、背を向けて廊下を歩いて去る。



「……」



 音崎の心の中が見えた弥一は彼を呼び止める事はせず、去っていく背中を見るだけだ。



 弥一が気に食わない、小さい奴が通じる訳ない、監督の好みで採用されないのかと考えたが、音崎はその理由ではなかった。



 確固たる信念があって、それが弥一を起用しない最大の理由。弥一と音崎の間に見えない巨大な壁が阻む。

弥一「名古屋って美味しいグルメだらけじゃん!?味噌カツ、手羽先、ひつまぶし〜!」


勝也「きしめんに味噌煮込みうどんとかな。ってご当地グルメ堪能に行くんじゃねぇから!」


弥一「ねぇ〜、その遠征僕も行きたいー!名古屋の美味しいグルメ〜!学校サボるからさー!」


勝也「それは不味いだろ……!?」


幸「神明寺く〜ん?何か先生とっても聞き捨てならない言葉が聞こえちゃったんだけど〜?」


弥一「あ、はは〜……えー、気の所為です♪」


幸「最近また成績下がってるみたいだから、学校でみっちり勉強しましょうかー」


弥一「うええ〜〜なごや〜〜(幸に首根っこ掴まれ、ズルズル引っ張られて弥一退場)」


勝也「……まぁ、色々頑張れ」

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