関西にやってきた超大型選手
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「本日も始まりました!東京アウラチャンネルのお時間です!」
動画が始まると、馴染みの女性MCエリーと共に今回は弥一が最初から居て、一緒に拍手する姿が見える。
「我らが東京アウラは前回ホームで惜しくも横浜に敗れてしまったんですよねぇ。悔しい!神明寺君、前回の横浜戦は何が悪かったと思う?」
可愛く悔しがった後にエリーは弥一へと視線を向けて、前回の試合について問い掛けた。
「何が悪かったというか、向こうのGK河岸さんが良すぎましたねー。一回の好セーブで一気に波に乗って手がつけられなくなっちゃいましたからー」
誰が悪いというのは言わず、弥一は河岸が凄過ぎたと語る。それは弥一だけでなく皆も分かっている事なので、一応現役プロ選手として此処で終わらず更に解説を続けた。
「あえて言うなら、後半に右から攻めた源田さんが一対一の時に躊躇してしまったのが大きなミスでしたねー。此処で時間を与えちゃったから河岸さんに準備出来る間が出来てるんですよねぇ」
ほんの一瞬の躊躇だったが、それが致命的なミスと弥一は考えていた。相手は日本を代表する守護神だ。この躊躇一つが、河岸に余裕を与えてしまったのだろう。
「まぁでもユンジェイの1点目といい、横浜さんは全体的に上手かったですよねー。去年は得点力不足に泣いたけど、今年は彼の加入でそれも変わるかもしれませんよー」
東京にもミスはいくつかあったが、全体的に横浜が良かったと弥一は語り、ユンジェイはもっと取りそうだろうと見ている。
「我らが東京アウラは工藤監督がまさかの不在と色々大変ですが、第2節のストレングス大阪はどうなるのか……」
「大阪の解説ならうちらにお任せやー!」
そこへ画面外から男達の威勢の良い声が聞こえてきた。
「おっとー!此処で来てくれたのは、本日のゲスト!お笑い芸人のシュートスナイパーのお二人です!」
「どうもー、小中高とバリバリサッカーやってました長岡ですー!」
「どうもー、サッカーやってたけど最後までただの補欠で終わりましたシュータですー」
「補欠は言わんでええやろ!サッカーやってましたで通じるのに自分から傷つきに行っとるやん!?」
ファンファーレと共にクラッカーのエフェクトを見せながら、芸人の2人が姿を見せる。ボケのシュータにツッコミの長岡と、どちらも20代の若手芸人だ。
「いや、嬉しいわぁ〜。僕ら選手権を生で見てたんで、神明寺君に会えるの感激ですわー」
「ホンマ、あのカウンターシュートなんやねん!?ってなりましたからね!」
「ありがとうございますー、僕って芸人さんの方でも有名人なんですねー♪」
芸人の世界でも知られる存在、と弥一の下にテロップが表示されて3人のトークが繰り広げられる。
「長岡さんはポジション何処やってましたかー?」
「僕はトップ下やったりボランチやったりと、中盤多かったっすねぇ。背番号も10とまぁ花形でしたし、今も芸人の草サッカーチームでそこ任されてますわ」
「おおー、エースじゃないですか♪」
ドヤ顔で腕を組んで言いきる長岡に、バリバリのサッカー経験者とテロップ表示されると、弥一は相方の方にも話を振る。
「えーと、じゃあ補欠さんはー」
「合ってるけどせめて名前呼んでー!?」
「あ、失礼しましたー♪ではシュートさんは〜」
「いやボール蹴っとるー!トやなくてタやから!あ、でもシュートも格好良えかも……改名しよか?」
「すんなや!つかキミめっちゃボケてくんな!?」
プロの芸人相手にボケてくる弥一へ、2人もツッコミをしたりとしっかり対応。予期せぬトークの応酬に、エリーは苦笑いを見せていた。
「えー、ストレングス大阪は昨年10と低迷しました。けど今年はちゃうんですよ!」
「期待の新人をアメリカから引き寄せて来たんですよねー!彼はもう守護神!いや、巨神です!」
力説するシュートスナイパーの2人がパネルを持って来ると、それを見せる。そこにはアメリカ人選手の顔が映っており、2人は紹介を続けた。
「18歳の超大型DFデイブ・アーネスト、彼は文字通りの大型です!」
「何せ身長149cmですからねー」
「大型ちゃうやろ!小さいわ!ほんで149cmって神明寺選手の公式身長やないか!」
「失礼しました、本当の身長は210cmですねー!」
ボケとツッコミを忘れないプロ根性と、2人の下にテロップが表示されながら紹介していく。
「210cmって神明寺君より60cm以上高いですよね……そもそもどの選手よりも大きいはずだから、この時点でもうリーグNo.1の巨漢になっちゃいますね」
「そうなんですよ!18歳でこいつ規格外でしょ?前節も彼のヘディングが決勝点になって守備だけでなく得点力もまぁ高いという訳です!」
「圧倒的に高くて足のリーチも凄く、更にパワーもありますんでこれは大阪の文字通りでっかい原動力になると思ってます!」
3人がデイブについて話していく中で、弥一は彼の写真をじぃっと見る。
「神明寺君はどう思う?何かデイブの事を真剣に見ているみたいだけど」
エリーから話を振られ、弥一は口を開く。
「これ僕の方が大きいですねー。彼全然小さいじゃないですかー?」
「いやそれパネルやパネル!」
「等身大でもないで!?つかボケの手数増えとらん!?処理大変なってきたわ!」
デイブのパネルを手に持って、自分の方が大きいとボケる弥一に、シュートスナイパーの2人は一斉にツッコむ。テロップにはボケのファンタジスタ現る、と表示されていた。
「クールスナイパーのお二人ありがとうございましたー♪」
「ちゃうちゃう!シュートスナイパーやから!シュート抜けて冷えたの入っちゃったよ!?」
「クールスナイパーはキミん所の立見の歳児タイムでお馴染みな彼の異名やろ!弥一君、芸人志望なん!?」
弥一が笑顔で2人に挨拶すれば、最後もボケてシュートスナイパーはツッコミでまたも大忙し。
そして動画が終了するとコメント欄では、「弥一君ボケまくりで面白可愛い♡」「サッカーと芸人の二刀流やる気なのか!?」「シュートスナイパーのチャンネルでコラボ動画を激しく希望」と、前回以上のコメントを貰って再生回数も伸びていった。
その効果があってか、シュートスナイパーのチャンネル登録数が伸びて、人気も伸びた2人は弥一に物凄い感謝したという。
アウェーの大阪スタジアムにて、東京アウラの選手達は今度こそ勝利を手にしようと皆が張り切る。
ただ今回は要のマグネス、風岡が代表招集の為に不在となってかなり不利なチーム事情を東京は抱えてしまう。勝也は今日、弥一もいない状態でただ1人スタンドから観戦となった。
「東京なんぞ一捻りやー!」
「思いっきりしばき倒したれー!」
「色々大変な東京に負けんな大阪ー!」
「(凄ぇ元気だな!?これが大阪か……)」
ホームの時も観客はかなり活気が凄かったが、大阪の観客はそれを凌駕している。勝也もこの空気に圧倒されそうになり、アウェーの空気を味わっていた。
両チームの選手が入場すると、その声援もより大きくなってくる。そこへ周囲の選手よりも一際大きな男の姿が見えれば、今日一番の歓声が上がっていく。
歩く度にズシンズシンと地面が響きそうなぐらい、大男はフィールドに向かって歩いていた。
「(デカ過ぎんだろ……あいつプロレスラーとかじゃねぇのか!?)」
210cm、108kgの巨体。サッカー界でこれ程の巨漢は同年代どころか、プロ全体で見ても滅多にいない。周囲が皆小人に見えてしまう光景に、勝也は信じられないと思った。
デイブ・アーネスト。規格外の巨神が東京アウラに文字通り、大きく立ち塞がろうとしている。
弥一「ねー、僕もうちょっとボケてたはずだけど短いよー?」
賢人「芸人のお二人相手にボケ過ぎて進行が遅れたせいか一部カットになったそうですよ。エリーさんも困ってそうでしたし」
弥一「ええー、スベってカットとかそういうのじゃなくてですかー?」
賢人「というかキミはサッカー選手なのですから、そういうのは気にしなくていいのでは?」
弥一「引退後にバラエティ何時でも呼ばれて良いようにと笑いのスキル磨いてみました♪」
賢人「何十年後の話ですか、早過ぎます」
弥一「うーん、賢人さんみたいなシュールツッコミも良いかも〜?」
賢人「僕ツッコミのつもり無いのですが」