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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編
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新たな出会いと災難

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 プロとして初めての練習、勝也は今走りながら足元のボールを操っている。



「もっと速く!正確にだ!」



「っ!」



 ランニングしながらのドリブル。これによって、ドリブルのスピードや正確なテクニックの向上を狙う。新人選手達が苦戦するのに対して、先輩選手達はしっかりとこなしていた。



「(速ぇ!)」



 驚く勝也の視線の先には、日本A代表としても活躍する、左サイドの超特急こと風岡亘。以前勝也が全く歯が立たなかった選手だ。



 彼はボールを操りながらも、まるで普通に走っているのと変わらない速さを保っている。



「!?」



 そこへ勝也の左からドリブルで追い抜く、小さな影が見えた。



「おっさきー!」



 弥一もスピードを保ったまま上手いドリブルを見せる。それは風岡にも迫る程だった。ただ弥一の方がボールと、より一体化しているようだ。




「ほう……」



 腕を組んで練習を見ていた康友から、思わず感心するような声が上がる。これは開幕戦のスタメンに繋がるアピールかもしれない。




「あっちすっげぇなぁ。亘に迫る新人選手なんか初めて見たぞ」



 彼らとは別でGK達は練習しており、その中でチーム不動の守護神である長身GKの本道正道(ほんどう まさみち)が、風岡と弥一のドリブルを眺めていた。他の後輩もそれを見て、同じように凄いなとなっている。



「……」



 練習の手を止めないまま、もう1人の金髪GKの彼は黙々と練習を続ける。180cmと他の守護神の中では少し小さめな方だ。



 東京アウラのユース育ちでトップチームに上がり、契約を交わしたアメリカ人のロッド・アンダーソン。



 彼がボールをキャッチした時、バシッと良い音が伝わっていた。




 その後、個人技を重視した練習にチーム戦術の全体練習が行われ、全部で2時間程の練習で今日は上がる。



「俺もうちょっと続けるんで、誰かマシン動かしてくれ」



 皆が戻る中でロッド1人だけ、居残りで練習を続けようとしていた。




「彼って何者ですかー?」



 弥一は居残り練習する彼の事が気になったか、チーム事情に詳しいであろう賢人に聞いてみる。



「神明寺君、彼とは会見で一緒になったはずでは?」



「あまり話してなくて会見後すぐ引き上げちゃったから、交流全然深めてなかったんですよ〜」



 そういえば彼も新人選手として、会見に出席してたんだったと賢人に言われ、弥一はその事を思い出す。



「ロッド・アンダーソン。アメリカ出身ですが東京アウラのユース育ちで、かなりの腕を持つGKです」



「へぇー、そんな凄いんですかー」



 プロで贔屓を特にしなさそうな賢人から、高い実力を持つと聞かされて弥一の興味は増していく。



「ええ……実力はあると思いますが、コミュニケーションに少し難ありというのがあるせいか出番はあまり恵まれていません。なのでそんな彼がトップチームとなった時、正直驚きましたね」



「はぁ〜、なるほどー」



 賢人から話を聞き終えれば、弥一はすぐ行動に出た。目指すは彼の元だ。





「っ!」



 チームスタッフの1人が、青い機械にボールをセットすると球はロッドの立つゴールマウスへ、弾丸となって飛び立つ。



 加速されたボールが彼から見て、右下に向かうのが分かる。GKにとっては、止めるのが難しいコースだ。それでもロッドは神経を研ぎ澄まし、左足で芝生を力強く蹴れば右へ低めのダイブ。



 両腕をしっかり伸ばしてボールの感触、衝撃が伝わる。球はゴールマウスから逸れ、外に弾き出されていった。



「ナイスセーブ、やるねー♪」



 声が聞こえると、ロッドは立ち上がって声のした方向へ目をやる。聞こえた言葉は彼が母国で慣れ親しんだ英語だ。



 そこには弥一の姿があり、声を掛けた後に青いマシンの方へ近づいていく。



「へぇー、立見と似たようなサッカーマシン此処にもあったんだなぁ〜。あ、僕が後やりますよー」



 弥一はチームスタッフに伝えると、彼に代わってマシンの近くに立つ。



「何か用か?」



「用っていうか練習手伝おうかと思って来たんだよー。1人練習居残りのストイックな人だなぁって、ちょっと興味あったりとね♪」



 明るい弥一に対して、ロッドの方は素っ気ない感じだった。彼はコミュニケーションに難ありらしく、今それが表れているのかもしれない。



「……練習に付き合うなら、マシンの方でどんどん撃って来い」



「それも良いけどー。生身の人間のシュートも受けといた方が良くない?」



「つまりお前が蹴るという事か?」



「うん♪」



 弥一はマシンじゃなく自分が蹴ると言えば、ボールを持ってロッドの前に立つ。マシン程のスピードは出ないだろうと思いつつ、ゴールマウスに立つ彼は身構えた。




「!?」



 すると弥一はセットした直後、合図も助走も無しで左足を振り抜き、ロッドの意表を突く。



 完全に想定外だが、彼はすぐに飛んで来た左隅に右腕を伸ばし、右掌でなんとか弾き出した。



「(こいつ、助走とかせずにいきなりこんな精度の高いキックが出来るのか……!?)」



 何時もは冷静沈着なロッドの目が見開く。こんな不意を突いて、助走をせず此処までのキックを放つプレーヤーを彼は知らない。



「あ〜!結構良い感じで行けたかと思ったけど、今の届くかぁ〜」



 弥一の方は上手く不意を突いたつもりだったが、ロッドのセーブに阻まれて頭を抱える。



 これが切っ掛けとなったか、サイキッカーDFのスイッチは入った。





「くっ!?」



 右上隅のギリギリ、弥一の放ったキックはゴールバーに当たりながらも、ロッドの伸ばした腕は及ばず、彼からゴールを奪う。



 弥一のキックは多彩だ。



 曲がったり浮いたりするのがあれば、直線の速いキックまである。それもタイミングが全てランダムと、ロッドにとって一瞬も気が抜けない。こんな事は高性能なサッカーマシンにも真似出来ず、生身の人間ならではだ。





「ハァ……ハァ……ハァ……」



 自ら希望しての居残り練習も、終わった頃にはロッドがゴール前で大の字となっていた。



「お疲れー、はい♪」



 そこへ弥一はスポーツドリンクを右手で飲みながら、倒れたロッドに近づくと左手で同じ飲み物を差し出す。それは自らがCMに出て飲んでいるアクアクーラだ。



 上体を起こせばロッドは弥一から受け取り、ゴクゴクと勢いよく飲む。疲れた体にすっきりとした甘さが染み渡り、疲れを癒やしてくれる。



「アメリカと言えば野球、バスケ、アメフトが人気って聞くけどサッカー選んだんだねー」



 ロッドの隣に腰掛けてアクアクーラを飲む弥一。アメリカ人の彼に、向こうで大人気のスポーツには走らず、その道を行くのは珍しいと思った。




「……お前にはスポーツをやるのは無理だと言われたんだ」



 アメリカ人として生まれ、ロッドは幼い頃から体格に恵まれていなかった。上には2人の兄が居て、それぞれが野球やバスケで活躍。父親も元々はアメフトプレーヤーとスポーツ一家だ。



 しかし体格に恵まれないロッドは、いずれのスポーツもやらせてもらえなかった。小さいからお前には無理だと、学校の方に行っても、ひ弱な奴にスポーツは無理だと見下され、馬鹿にされてきた。



「俺の国じゃ人気は無かったけどサッカーの方が面白いと感じた事もあって、そっちに行く事にして日本へ10歳の時に渡ったんだ。無理だと言った奴ら全員を見返してやる為に」



「へぇ〜、それで行動に移せる所とか凄いね」



 アメリカ人の親に兄弟、馬鹿にしてきた者達へ反発するように母国の人気スポーツはやらず、サッカーの道にロッドは進む。



 絶対見返してやる、という不屈の炎を心に灯しているのは弥一からハッキリ見えていた。




「……日本に来てから他人に、こんな事を話したのは初めてだ」



「僕が初めて?嬉しいねー♪」



 当時日本語を操れず、周囲と打ち解ける事も出来ず練習だけでなく言葉も一生懸命学んだ。サッカーで成功する為、その努力をロッドは一切惜しまない。



 その彼から見て、弥一は自分に積極的に関わろうとする珍しいタイプだ。



「マシンより良いトレーニングになったから、また付き合ってくれるか?」



「何時でもー、僕のキックの練習にもなるからねー♪」



 今日で弥一とロッドは交流を深める事が出来た。彼の慣れ親しんだ英語で接したのもあって、ロッドにとっては他の者より話しやすかったのかもしれない。



 これが切っ掛けとなって弥一は彼の練習に付き合い、よりキックの練習を重ねる事が出来た。





 ある日、何時ものように東京アウラの練習場に集まる選手達だが、今日は異なっている。



「監督まだ来ないのか?」



「遅刻?珍しいなぁ康友さんが……」



 チームスタッフの方で色々動いており、康友のスマホに連絡を入れるようにしたりと自宅の番号にもかけていた。




「監督も寝坊する事あるのかなぁ?」



「だとしたら相当珍しいよなそれ」



 弥一と勝也は暇潰しにパス交換を行い、ボールを蹴りながら会話を躱す。



「た、大変だ!!」



 そこにチームスタッフの1人が慌てて駆けつけて来る。彼の顔は真っ青だ。



 何事かと皆が注目すると、衝撃の言葉が告げられた。





「工藤監督が……交通事故に遭って病院に搬送された!」



 開幕戦を目指し、練習を重ねていた東京アウラに激震が走る。

弥一「180cmなら充分大きく感じるけどねー。それでも向こうじゃ小さい方なの?」


ロッド「それぐらいアスリートじゃなくても普通に居る。日本人も最近はそれぐらいの奴は多いだろ」


弥一「確かに町中でたまにデカっ!?な感じの人を見かけるからなぁ〜」


ロッド「むしろ何をどうすればそこまで小柄に育つのかが分からないぞ」


弥一「多分他に居ないよー。プロだけど小学生と間違われるっていうのは〜」

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