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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編
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サイキッカーDFの決めた道

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「東京アウラに、俺がですか!?」



 突然の新崎の言葉に勝也の声が大きくなってしまう。



 プロからのスカウト、それも国内トップリーグにして名門クラブから声が掛かったとなれば当然驚く。



「でも前回そちらの練習に参加させてもらった時、俺は全然活躍出来ませんでしたけど……」



 思い出されるプロとのレベルの違いを知った去年。そこから何故スカウトに来たのかと、勝也には不思議に思えた。



「確かに去年、プロで活躍出来るとは言えなかった。ただ選手権で見せた強いメンタルとスタミナに加え、技術がグンと増している。更にデュエルの勝率が異常な程に高くなってたんだ」



 新崎から見れば秋や冬の勝也は夏よりも、相当なレベルアップを遂げている。他の立見にも言えた事だが、その中で勝也は特に力を付けたと感じたようだ。



「(だとしたらそれはもう、弥一のおかげだよな……)」



 弥一との延々と終わりの見えぬ、ほぼエンドレスな1on1を繰り広げた成果が結果や数字で分かりやすく出ていた。



「君の成長、未来を我々東京アウラは良いと思った。その力……うちで伸ばして活かしてみないか?」



「……」



 新崎からの誘い。それに勝也が顔を俯かせて無言で考え、やがて彼の顔が上がると真っ直ぐ新崎を見る。



「プロ、て事は金とか……ちゃんと入ります?」



「それは当然だろう。新人とはいえプロの一員として共に頑張るんだ。それでチームが勝利して活躍したりすれば、ボーナスだって出る事がある」



 勝也にとって優先すべき事。京子や勝気、家族を守る為に一家の大黒柱として稼いで養わなければならない。



 家族を守れるチャンスが来た。好きなサッカーで生活出来るチャンスが転がって来たなら、彼にもう迷いは無かった。



「東京アウラで、勝たせられるように全力を尽くします!」



 勝也はこの話を受けて新崎と握手を交わす。その一部始終を、弟分に見られているとは知らないまま。




「(勝兄貴、行くんだ……)」



 勝也がずっとプロになって家族を養いたいという気持ち。弥一は聞いていた上、心でもそれを見ていた。太一と同じチームで、兄弟揃ってのプロサッカー選手誕生となりそうだ。



 勝也としてはついに念願が叶った、という感じだろう。



 2人が席を立って応接室から出て来ると、弥一はソファーの下で息を潜め、彼らが外へ出て行くのを待つ。2人は弥一が校長室で隠れている事に、全く気づく事なくドアを開けて去って行く。



「(とりあえず、行動は速い方が良いよねー?)」



 誰もいなくなったのを確認すれば弥一も時間差で、校長室から出て来て誰にも知られる事なく、勝也のプロ行きの話を知る事が出来た。



 彼がこの後にやる事は決まっており、そこに迷いは一切無い。弥一はスマホを右手で操作しながら、校舎の外へ向かう。



 ちなみに彼は今日の部活で遅れる事を言っておらず、新キャプテンを務める間宮は「あのチビガキ何してんだぁ!?」と激怒していたらしい。





「あ、もしもし?お疲れ様です」



 新崎はスカウトマンとしての仕事を終えて、充実感ある顔を浮かべたまま電話をする。



『新崎君、神山勝也はどうだったかな?』



「乗り気でしたよ。あの分だと来てくれる事はほぼ間違い無いと思います」



 今日の手応えについて話せば、新崎の中では勝也が自分達のチームに来てくれる確率は極めて高い。数多くのスカウトの仕事を続け、自分の感覚はそう叫んでいた。



『彼の成長率は実に良い。あれは花開く前にこちらのチームに入れて育てるべきだ。それに同じチームには太一も居るから、色々と注目度は高くなるだろうからな』



 勝也に関して獲得を狙ったのは、サッカーの実力が関係しているだけではない。メディアに出て、そこで注目を浴びるような存在で話題となるかどうか。



 その点で言えば勝也は合格だった。サッカー部を0から作った創立者にして、僅か2年程で全国制覇に導いたキャプテン。更に兄は現役プロサッカー選手で、東京アウラの神山太一。



 勝也は今では話題に関して言えば、弥一にも負けていない程だ。なので東京アウラとしては、勝也の獲得はプラスになると考えたのだろう。



「他が神明寺弥一に注目が集まって、神山勝也へ皆がそこまで行ってない事が大きかったですね」



『ああ、彼に関しては非常にガードが固い。何人ものスカウトが行って交渉したそうだが、現時点で首を縦に振っていなかった』



「うちも一応名刺は受け取ってもらえましたけど、返事が全然来てないですからね……多分かなり骨かもしれません」



 弥一に関しては既に新崎が彼と接触済み。その時に名刺は渡して、それから全く返事を貰っていない。選手権で立見を優勝に導き、衝撃のゴールによって生きる伝説となった小さな少年。



 注目度で言えば日本の高校サッカー選手で一番高く、八重葉の照皇や龍尾を追い越してしまうぐらいだ。更に海外でもあのゴールは話題となり、大きく注目されていた。



 彼の争奪戦は激しく、どうなるのかと話していた時。



『はい……え、え、そうなんですか!?うちに!?』



『おいどうした?』



『いや、あのそれが……』



『……ええ!?』



 何やら電話越しの方で騒がしくなっている。新崎は何事だろうと思い、相手からの言葉を待つ。




『新崎君!君やったじゃないか!?たった今、神明寺弥一君が東京アウラに入る決意をしてくれたそうだぞ!』



「え……!?」



 興奮している相手の言葉を聞いて、新崎は驚いていた。



 勝也と合意して話が決まった、このタイミングで弥一が入る決意をしたという。こんなケースはスカウトの仕事をしてきて、初めての事だ。



『彼は「新崎さんの熱意に負けました」と言って入る決意をしてくれたそうだ!君、大手柄じゃないか!』



「あ、ありがとうございます……」



 戸惑いが残る中で新崎は上司から褒められ、「今日は祝杯だな!東京アウラの未来は実に明るい!」と上機嫌のまま電話を切られた。




「あ、来てたんですねー。新崎さんこんにちは〜♪」



「!?し、神明寺君か。偶然だな」



 そこへ弥一が後ろから新崎に声を掛け、彼が振り返ると満面の笑みを浮かべる少年が目の前に立っている。



「えーと……つかぬ事を聞くようだけど、君は東京アウラに入る事を決意してくれたのか?」



 あまりに急な事で新崎はまだ状況が飲み込めていない。自分を驚かせるドッキリかと、そんな考えまで浮かんでしまうぐらいだ。なので弥一の口から聞きたいと思った。




「そうですよー。新崎さん熱心に僕を口説いてくれたじゃないですかー?他のスカウトの人と比べて心に来て、負けちゃいましたもん♪」



 弥一の言ってる事は半分本当で半分嘘だ。他のスカウトより熱心に来てくれはしたが、それで東京アウラ行きを決めた訳ではない。



 勝也が行くなら自分もそこに行く。先程の勝也との話を全て聞いていた事を、弥一は言わずに新崎の熱意だと誤魔化していた。



「それは……非常にありがたいな(まさかこっちが驚かされる側になるなんて……!)」



 今日の予定では勝也の獲得に向けて動き、それが上手く行けば完璧だった。しかしまさかの弥一が自分から入団すると、このタイミングで言い出したのは予想外だ。



「これからよろしくお願いしますねー♪」



 真実を知らない新崎に笑顔を向けたまま、弥一は彼と握手を交わす。



 サイキッカーDFが高校サッカーから、今度はプロの世界で色々暴れ回ろうとしていた。

弥一「という訳でプロの世界に行ってきまーす♪」


摩央「軽いなおい!?」


大門「プロになるって案外こんな感じ!?」


優也「違うだろ、こいつが特殊なだけで」


摩央「つかそうなると契約金、やっぱ……何千万行くとかいきなりあるんじゃね?」


大門「まあ弥一だと食事で全部使いそうな感じが」


弥一「そんな大金使い切るって事は僕、贅沢三昧してるよねー」


優也「とりあえずプロになるなら節制はちゃんとしとけ。高校生でも大事だけどな」

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