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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 国内プロ編
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舞い込んで来た話

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「それで神明寺君自身の意思は勿論最優先ですよ。スタメンとして開幕戦に出られるよう、上にも推薦はしますし我々は良い待遇をお約束します」



 弥一は立見高校の校長室、その隣の部屋にてスカウトマンからの話を聞かされていた。



 相手の男は愛想が良く、饒舌に自分のクラブがいかに良いか弥一に事細かにアピールを続けている。弥一の答えは既に決まっている事に、全く気づかないまま。



「すみません、今回の話は無かった事でお願いしますー」



「え!?いや、特別ボーナスとかも勿論検討して……」



 急に断られて冷や汗を流し始めるスカウトマンに、構う事なく弥一はさっさと断って話を終わらせれば、部屋を一足先に後にした。




「(魂胆が見え見えだったし)」



 相手は何としても弥一をクラブに入れようとしていた。ただし選手としてではなく、彼の知名度などを利用しての客寄せぐらいにしか考えていない。



 弥一の意思を最優先も嘘で、好条件をちらつかせているだけに過ぎなかった。



 そんな彼の薄汚い心は最初から弥一に見えて、これ以上話しても時間の無駄だと判断。



「(あの様子だと、また断ったか……)」



 校長室を通って部屋を後にする弥一を見て、立見の校長はなんとなく分かった。此処最近は見慣れた光景だ。



 選手権で立見高校が優勝して、全国の知名度は高校とサッカー部の両方とも一気に爆上がり。SNSのトレンドを独占し、全国放送の番組にも出演する日々が続いたぐらいである。





「(あーあ、これで何クラブ目かなぁ?ホント皆よく来るし)」



 弥一に日々来るスカウトの話。だがどれも先程のスカウトマンと大差無く、彼の心を惹くような話は誰も出来ず、弥一は彼らの誘いを断り続ける日々を送っていた。



「神明寺君ー?まーた断ったみたいだねー」



「ん?あー、マリーさん元気そうでー♪」



 廊下を歩いていた所に声を掛けて来た同級生の女子。姉坂鞠奈、またの名をレベルアゲアゲチャンネルのマリー。去年の秋頃にあった大川雷子とのバレー対決を切っ掛けに、弥一と知り合っていた。



「今日とかJ1のクラブって聞いたんだけど、それも駄目だったんだ?」



「ちょっと条件悪くてねー……断っちゃったんだよ。多分その人まだ部屋で真っ白になってると思うから♪」



 何処から聞いたのか、鞠奈は今日のスカウトマンが国内トップリーグ所属のクラブだと知っていた。



 それを蹴るのは勿体ないのではと思っている様子だが、向こうの心を知っている弥一からすれば断って正解だ。



「で、ぶっちゃけ何処行くとかあるの?まさか古巣のミランから誘われて戻るとかも!?」



「話は来てないよー」



 マスコミより早く、ちゃっかり弥一から最新情報を聞き出そうとする鞠奈。それを弥一はマイペースに軽く流せば、購買部へ向かう。



「今日はどれにしよっかなぁ〜?卵サンド、ハムサンドも捨て難いし、デミグラスのオムライスとか美味しそう〜♪」



 並んで置いてあるパンやサンドイッチにおにぎり、弁当と色々目移りしてしまう弥一。その姿は選手権で、伝説となったサッカー選手とは思えない。



「(呑気だなぁ〜……この子プロになる気あんまり無いのかな?)」



 プロにスカウトされた事について、深刻に考えて無さそうな弥一を見て鞠奈はその道を行かずに、このまま高校サッカーを続けるのかなと思っていた。



 彼が何処に向かうのか興味がありながらも、鞠奈は野菜たっぷりのベジタブルサンドを手に取り購入。弥一は悩んだ末にオムライスの方を買って、デザートにフルーツサンドも追加で昼食は無事に決まる。





「こんな食えん……!」



 立見高校、昼食で利用する大木の下でサッカー部の1年が集まると、優也は皆が購買部で昼食を買う中、1人だけ両手いっぱいに弁当箱を抱えて登場。



「相変わらずモテるねー」



「解せんわぁ〜、何で優也だけそんな貰えんだよ」



 からかう弥一も嫉妬する川田も、彼が何故そんな弁当箱を抱えているのか分かっている。立見の女子生徒による、手作り弁当責めに遭ったせいだ。



「そりゃまあ、格好良いとか思われてるからだろ?」



「ダントツだもんねぇ」



 特に驚くべき事ではないと、武蔵や翔馬はパンや弁当を食べ進める。



「食べるの手伝おうか?」



「是非頼む」



 立見随一の大食いである大門。優也1人では到底食べきれないであろう、数々の弁当を共に食べ始めていた。



 サッカーだけでなく、こういう時も頼れると優也は密かに感謝する。




「今日の午後からの練習は勝也先輩不在で、間宮先輩主導で行くっていうの……お前聞いてないよな?」



「あ、そうだったの?」



「やっぱ聞いてなかったのかよ」



 今日の朝練で軽く説明はあったが、弥一には話の内容が入っていなかったらしい。摩央はため息をつきながらも、改めて午後の練習について説明する。



「(次期キャプテンの間宮先輩に任せるなら、そこで残って見守るとかやりそうだけど……何かあったのかな?)」



 弥一は早々に昼食を食べ終えれば、その場を後にして職員室へ向かう。





「失礼しまーす」



「神明寺君どうしたの?職員室に来るなんて珍しい」



 弥一が職員室に来ると顧問の幸が席に座って、昼食の弁当を食べている姿が見えた。



「ちょっと神山先輩が今日の部活どうして残らないのかなぁって思いましてー」



「どうしてって、それはまあ神山君にも色々都合があるからねぇ……」



 勝也が何故今日の午後、部活に来ないのか。弥一が聞いてもいくら同じ部の者とはいえ、幸は事情について話そうとしない。



「(東京アウラのスカウトの人が放課後に神山君を訪ねるとか本当驚きなんだけど……!これ騒ぎになりそうだから言っちゃ駄目だね!)」



 だが心が読める弥一にとって、幸の考えは筒抜けだった。



「あ、分かりましたー。急な訪問ごめんなさい。ゆっくりお弁当食べてくださいねー♪」



「え?うん、また後でね」



 知りたい情報は聞けたので、職員室に留まる必要はもう無い。弥一は笑顔で幸と会話を交わせば、何だったんだろうと首を傾げる幸を残して去って行く。





 そして放課後。チャイムが校内で鳴り響くと、それぞれが帰り支度や部活の準備をする中、弥一はすぐに教室を飛び出して3年の教室へ向かう。



「じゃ、後頼むな京子」



「ええ」



 教室から勝也と京子が出て来て、会話を交わすと京子は部活動へ向かい、勝也はそれとは別の方向へ歩き出す。




「(気分は探偵の尾行みたいだなぁ〜)」



 勝也の後ろを弥一は行き来する生徒の中に紛れ込み、こっそりと尾行していく。すると校内にある校長室の前で、勝也の足は止まった。



「失礼します」



 勝也は校長室のドアを軽くノックしてから、開ける。



「……あれ?居ねぇな。出かけてんのか?」



 校長室の中には誰もおらず、勝也はそのまま応接室の方へ向かう。



「(チャーンス♪)」



 ドアの外で勝也の声が聞こえた弥一。校長がいないと勝也が呟いている。つまり忍び込んで、応接室の会話が聞けるという事だ。



 弥一は静かに音を極力立てる事なく、ドアを開けて校長室の応接室近くにあるソファーの下へ潜り込む。小柄な弥一でなければ潜れないような狭いスペースで、これなら校長が急に帰っても見つかり難いだろう。



 すると応接室から話し声が聞こえて来る。




「去年の夏以来、になるね神山勝也君」



「お久しぶりです」



 新崎裕二。東京アウラのスカウトマンで、去年の総体で立見が敗退した後に、勝也を訪ねてきた人物だ。



「今日は何故俺に……?」



 まさか、という考えが勝也の中で過ぎっていた。そんな訳がない、彼は弥一を推薦していただろうと。その中で新崎は口を開く。




「直接口説こうと思ってね。……我々、東京アウラの選手として入る気は無いかな?」



「!?」



 勝也に衝撃が走る。屈強な選手にチャージを受けた時よりも、大きな衝撃だった。



「……」



 それを弥一はソファーの下で息を潜めながら、話を聞いていく。

弥一「いやー、気分は探偵でした♪」


大門「探偵って弥一何をやってるんだよ……!?」


弥一「とりあえずトレーニングを少々、かなー?影山先輩みたいに抜き足、差し足、忍び足な感じで相手やゴールにこっそり忍び寄る練習だねー」


優也「(そうか……探偵のような尾行をやれば案外あいつに近づくかもしれない)」


弥一「(いや、優也は普通に練習積み重ねた方が良いし)」

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