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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
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全国の頂点

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『あ……き、決まった!決まった!ゴールです!立見なんと神明寺弥一、GK工藤のキックを蹴り返して直接ゴールに叩き込みましたぁー!!』



『何ですかこれ!?漫画ですよもう!何でこんな事出来るんでしょうか彼は!?』



「間に合ったぁーー!!良かったぁー♪」



 正式なゴールが主審によって、認められたのを確認した後、弥一は走り回って笑顔で飛び上がってのパフォーマンスを披露する。



 会場は割れんばかりの大歓声。皆が弥一によるゴール、スーパーゴールやゴラッソといった言葉では、片付けられないぐらいのあり得ないレベルなプレーが起こった。




「何だ今の!?撃ち返したよな!?」



「嘘だろ!まぐれ、にしても凄過ぎるわ!」



「何あの子!?あり得ないんだけどー!」



 観客からは次々と驚きの声が上がり、今日一番に会場は大きく揺れていく。



 そして試合はそのまま終了、弥一のゴールが決まったのは主審が笛をならそうとしていた寸前。スコアは土壇場で動き、1ー0で立見の優勝を証明。



『あっと試合終了ー!立見、劇的な決勝ゴール!創部から僅か数年の新鋭校が絶対王者を破って全国の頂点に立ちました!!』



『いや、これはもう伝説間違い無しですよ!歴史の証人となれて何か嬉しいですね!』




「え、か……勝った?」



「僕ら優勝……?」



「マジ……?」



 突然入った決勝点、そして選手権優勝。いきなりの事で状況を把握しきれず、武蔵、翔馬、川田の1年3人は呆然となっていた。



「勝ったんだよ!喜べ!俺は喜ぶぞ!うおおおーー!!」



「やったぞ!俺ら頂点立ったんだよ!全国の!」



「夢じゃないからね!頬を抓ってもちゃんと痛いからね!」



 2年の3人はそれぞれ喜び、田村はスタンドに向かって雄叫びを上げて、間宮は1年達と肩を組んで喜び、影山は先程夢なのか試したせいか、両頬が赤く腫れている。



「そうだよ!とんでもない偉業をやったからな!?」



 ベンチから安藤も飛び出して、皆と抱き合って喜び、涙を流していた。



「智春ー!やったぞお前!」



「蹴一……!俺ら、俺ら高校日本一なれたんだなぁ……!」



 怪我によって負傷交代し、医務室で応急処置を受けていた豪山。再びフィールドに松葉杖を突いて入ると、成海に支えられながら共に泣いて喜んでいた。



「私達が優勝……全国一!?凄い!凄すぎる!先生泣きそうよー!」



「もう泣いてますよ先生〜」



 既に号泣してる幸は彩夏に抱きつき、教え子の方がよしよしと落ち着かせていく。



 京子はフィールドを見つめたまま微笑んでいた。その瞳からは雫が零れ落ちる。



「お、お前……お前ら……マジでやったんだな!?」



「うん!うん!そうだよ、勝ったんだよ!」



 未だに摩央はパニック状態で落ち着かず、勝利の興奮がありながらも大門が現実を伝えていた。



「勝ったぞぉーー!!」



 珍しく優也は立見のスタンドに向かって、思いっきり大声を上げる。今の状況は常に冷静な彼をも変えていく。




「勝兄貴ー!」



「弥一……!」



 弥一の足は勝也へと向いて、そちらに駆け寄っていた。兄貴分の表情は、今にも泣きそうなのが見て分かる。



「立見の全国制覇、やったねー……」



 そう言いかけた時、弥一の小さな体を勝也は強く抱き締める。



「ありがとな……!立見に来てくれて、本当……ありがとな……!!」



「……うん」



 感謝しながらも勝也の目からは、涙が次々と零れ落ちていく。弥一の頭の中で小学生の時の光景が鮮明に蘇った。勝也と再びサッカーをして、共に公式戦へ挑む最後の年。



 今回の優勝を弥一はしっかりと噛み締めた。




 八重葉の方はフィールドに倒れ込む者や、座り込む者が続出。監督ですら呆然と目の前の光景を見つめたままだ。絶対王者として君臨し続け、久々の公式戦での敗北。



 月城は「何でだよぉ……!」とうつ伏せで倒れ、何度も拳を芝生に叩きつける。照皇の方は立ったまま、立見の歓喜を見て呆然となっていた。



「(騙された……)」



 ゴールポストに背を預けて座り込む龍尾。敗北の強いショックがある中、その目は弥一に向いている。



 弥一の疲労困憊な姿に彼が限界と思い、勝也を止めた事で勝利を確信した。その事で龍尾の目を曇らせてしまったか、弥一の動きを把握しきれず。最後の最後、天才GKに隙が生まれてしまう。


 他のDFも上がって来た川田に気を取られ、弥一に気づく事はなくコーチングが間に合わなかったようだ。



 今度はPKではなく試合の流れでの失点、たった一度のゴールで記録は崩れて勝利も消える。今の彼にはとてつもなく大きな、喪失感が襲いかかっていた。



 彼は動く事が出来ず、目の前にいる敵の歓喜を見続ける。





「とんでもない試合を見たな……今年始まったばかりだけど、もう最大の衝撃を受けたよ」



 試合を見終えた太一から見て、弥一のプレーは群を抜いて印象に残る。あのようなプレーはプロの自分でも、そもそも国内のプロに出来るのか?と思わされた。



「……」



「マグネス?」



 マグネスはスマホの画像に映る、弥一の喜ぶ姿を真剣な眼差しで見ている。こんな彼の姿は早々見ない、太一はどうしたと聞く。



「ああ、いや。本当凄いなと思ってさ、こんなのセリエAであったら皆お祭り騒ぎになるなぁって」



「まぁそうだな。多分他のリーグでも大騒ぎなるだろうけど」



 何時も通り陽気に笑うマグネス。太一が彼から視線をスマホに向ければ、マグネスの方は再び表情が変わり、同じく画面の方を見る。




「(いずれプロになって、更に日本代表としても出て来る可能性は極めて高い……。ひょっとしたら今すぐそうなる可能性もあるな。彼の底知れない才能を思えば)」



 百戦錬磨の男は彼の先を見据えていた。弥一はこのまま高校に留まらず、今すぐプロになるかもしれない可能性。そして国際試合にも出て、世界の各国にとっても脅威となる可能性。それを感じさせるプレーを弥一はやっていたのだ。



 何処のチームに行くか、激しい争奪戦になりそうだとマグネスは皆が喉から手が出る程、欲しがるだろうと考えていた。





「ねーねー皆ー!勝兄貴胴上げしようよー!」



「え!?いや、俺はいいって……!」



「何言ってんすか!今やらないで何時やるんです!?」



 歓喜の輪の中、弥一は勝也の胴上げを提案して本人は遠慮するが、間宮は乗り気であり他の部員達もそうしようと勝也を取り囲む。



「うおお!?高ぇっておい!」



 間宮、大門、川田と大柄で力のある者を中心に、勝也を持ち上げて空に舞い上げた。



 初めての胴上げに戸惑っていた勝也だが、不思議と体が喜びに満ちて最後には笑って宙を舞う。





「神明寺弥一、今すぐ獲得に動いた方が良いかもしれません」



「はい、明日から早速……交渉は慎重に行きます」



 国立に来て試合を見ていたプロのスカウトマンが、弥一の獲得に向けて一斉に動き出す。国内のプロクラブだけでなく社会人のチーム等も注目して、激しい争奪戦が始まろうとしていた。



 そんな争奪戦が行われていく事を知らないまま、弥一は立見の仲間達と共に優勝を喜び合う。




 立見1-0八重葉



 神明寺1



 マン・オブ・ザ・マッチ



 神明寺弥一




 高校サッカー選手権 全国大会




 優勝 立見高等学校



 1回戦 VS海塚 10ー0



 2回戦 VS東豪 2ー0



 3回戦 VS海幸 9ー0



 準々決勝 VS鳥井 5ー0



 準決勝 VS牙裏 1ー0



 決勝 VS八重葉 1ー0



 得点28 失点0



 大会得点王 照皇誠(八重葉学園)



 大会最優秀選手 神明寺弥一(立見高校)

弥一「という訳で八重葉との決勝戦が終了!なんとかリベンジ出来ました〜♪」


勝也「本当滑り込みセーフだったよな。あのゴール……つか周囲が散々言ったりしたけど、何で出来んだ!?」


弥一「え?日々の努力をコツコツとやった結果で」


勝也「俺の知らない秘密特訓を積み重ねて、とかじゃねぇの?やってそうだわぁ……」


弥一「とりあえず取材でも山程聞かれそうだから、今みたいな感じで答えとこうかな〜?後は東京の山に籠もりましたとか♪」


勝也「それで本当に真似する奴が続出したらどうすんだ……!」

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