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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編

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魂の叫び

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

「今のわざとじゃない!向こうが俺の足に勝手に引っかかっただけでファールじゃないから!」



「そうですよ!向こう勝手に倒れたんでしょ!?」



 PKを取られて納得行かず、佐助だけでなく政宗も抗議して兄弟揃って主審に詰め寄っていた。しかし主審は首を横に振って、佐助の足が勝也の足を引っかけたと見ている。



『おっと?仙道兄弟は納得行かず、激しく抗議していますね』



『まあ、この判定で優勝の行方を大きく左右されかねませんから無理も無いですけどね』



 立見の応援団は輝咲を含めた皆が大喜びし、八重葉の応援団の方は静まり返ってしまう。一部ではわざとだ!演技だ!と騒ぐ者も居た。




「あー、これは八重葉にとっては痛いPKだね」



「確かにまぁ引っ掛けてるように見える……ううん、際どいかなこれ」



 太一は画面をよく見て、リプレイの映像を確認。勝也が自分から倒れに行ったようには見えず、佐助の方もわざと勝也の足を狙った訳でもなさそうで、たまたま足が引っかかってしまったという感じだ。



「1本のPKで大事なゲームが終わるというのもよくあるけど、それがこの決勝で来るか……まだ決まると決まった訳では無いけどね」



 マグネスの目はこの状況で慌てる事なく、PKに備える八重葉の龍尾に注目していた。




「ちょっと龍尾先輩!あれ酷くないスか!?誤審でしょあれ!」



 月城が怒った表情のまま、龍尾に向かって行けば主審の居る方へ右手親指を指していた。



「亨。お前、何そんな怒ってんだ?」



「え?だってあんなんでPK取られて、龍尾先輩が一番嫌でしょこれ!?」



「何でそう決めつけんだ?」



「いや、それは……それでゴール取られて優勝取られたら納得行かないっつーか」



 周囲の八重葉選手と違い、全く取り乱さず準備を進める龍尾に月城は戸惑いをみせる。




「取られねぇ、負けねぇ。俺が止めりゃ流れは一変、面白ぇ展開じゃねぇか?」



「……!」



 この状況でも龍尾は不敵に笑い、月城の頭を軽くポンポンと撫でた後、改めてゴールマウスの前に立つ。その姿に月城は何も言えず、守護神の勇姿を見守るのみとなった。



 この時、龍尾と照皇の目が合うと照皇は無言で右手親指を立てて、龍尾も同じように返す。



 互いに任せた、任せろと無言のやり取りを行う。




「誰が蹴る?あの龍尾を相手に、行けると思う奴は……」



 立見の選手達はPKを獲得した時、喜ぶ者が続出していた。ベンチの幸に至っては、飛び出しかねない勢いだ。



「……」



 成海の問いに、皆が黙り込む。



 皆が夏のPK戦を嫌でも思い出してしまう。弥一以外が蹴って、全て龍尾に止められて負けた苦い記憶を。



「僕決めてるから僕行きますよ〜優勝をプレゼントしてきますからー♪」



 そこに手を上げたのは弥一。確かに彼なら龍尾からゴールを奪う可能性を秘めており、キッカーには最も最適だろう。



 何時もの明るい笑顔で、弥一は決勝ゴールを決めて来るとキッカーの位置へ向かおうとしていた。




「待て」



 弥一が行こうとした時、勝也の声が弥一の歩く足を止める。



「お前にこれ以上の負担はかけられねぇから、俺が行く」



 ただでさえ今日は弥一に攻守で頼り切りだ。その上、PKで更に心身共に負担を与えれば、また夏の時のように倒れてしまうかもしれない。



「勝兄貴……じゃ、小学校の時の再現を頼めるかな?あの時も一緒のチームで最後の試合、PK決めて優勝だったしさ」



「ああ、バシッと決めてやるから弥一はゆっくり休んでろよ!」



 他の立見部員達も勝也が蹴る事に賛成。大事なPKとなれば、止める側と蹴る側に相当なプレッシャーがかかってくる。



 決勝独特の空気、超満員の聖地国立、この1本で勝負が決まるかもしれない局面。その重圧は計り知れないだろう。



「……っしゃ!」



 勝也は自らに喝を入れて、集中力を高めていく。




『立見は大事な1本で誰が蹴るのか、出て来たのはキャプテンの神山勝也だ!』



『これは面白いですね。確か神山君と工藤君は小学校の時に全国の決勝で当たって、そこでもPKで相対して神山君が唯一工藤君から公式戦初ゴールを奪っていますからね』



『あの時は小学生、時を経てお互い高校生に成長。神山が再び決めて優勝に導くのか!?それとも工藤がストップしてまだ終わらせないのか!?』



 会場の熱気は高まるばかり、スタンドの観客達の視線は勝也と龍尾に注がれ、ゴールへの期待とセーブへの期待で真っ二つに分かれていた。



「(待ってたぜ神山ぁ……この時を6年間ずっと!)」



 身構えながら、龍尾は目の前に立つ勝也を鋭く睨みつける。



 公式戦初ゴールを許したと同時に初めての敗北。自分が守って、チームを勝利に導けなかったのは、サッカーをやってきてあの試合だけだ。



 その日の事を、勝也の事を龍尾は1日たりとも忘れた事など無い。どんなに勝利を重ねても、無失点記録を新たに築き上げても、あの時の苦い記憶を忘れさせてはくれなかった。



「(絶対止める!!)」



 宿敵を前に龍尾の気迫は最大限まで高まっている。




「(凄ぇ睨みつけてくんな……俺の当時のキック、やっぱ絶対覚えてるよな)」



 龍尾の睨みを受けて、勝也は彼から発せられる圧を感じ取っていた。



 自分がどんなキックを蹴ったのかは勝也も覚えている。助走無しのキックで、当時の龍尾からゴールを奪う事に成功。それを向こうが覚えてるのなら、今回それを蹴ってもおそらく通じないだろう。



 ならばと、勝也はゴールに背を向けて後ろへ歩いていく。



『おっと?神山これはかなり助走を取りましたね』



『勢いよく行くにしても、力み過ぎたら枠を捉えられない可能性ありますからね。ただ行って良いコースに飛べば決まる可能性かなりあるはずですよ』



 龍尾は眉一つ動かさず、気にする事なく勝也を見据えて構えたままだ。



 そして勝也の方は主審の笛が鳴ると共に、ボールへ向かってダッシュ。こちらも鬼気迫るような勢いで、それを保ったまま彼の右足がボールを捉える。



「(行ける!!)」



 勝也の中でベストなキックだと、蹴った瞬間に確信。豪球と化したボールがゴール左上隅に向かう。



 しかし龍尾の右腕が、その球へと伸びていた。右掌が触れると、コースは逸れてゴールバーに直撃。龍尾が弾いてバーに当たった結果、ボールは外へと出ていきPKは阻止となる。



『止めたぁぁーー!!立見PK失敗!工藤龍尾なんというGKだ!?』



 会場のボルテージは最高潮。試合が決まるかもしれないPKをストップさせた龍尾に、国立競技場は興奮の坩堝と化した。



「オラァァァ!!見たか神山勝也ぁぁーーー!!」



 止めた龍尾が自陣ゴール、後ろのスタンドに向かって魂の叫び。今まで止めた数多くのシュートの中で、一番嬉しく会心のセーブだ。



「うおお龍尾ぃぃ!!」



「龍尾先輩あんた神だぁーー!!」



 村山や月城達が龍尾へと向かい、八重葉の歓喜の輪が作られる。応援団の方も一気に活気づいて声を出したり応援曲を奏でていく。




「嘘だろ……!?」



「あれを止めるのかあいつは……」



 一方の立見は先程までの盛り上がりから一転、選手達は頭を抱えて応援団の方も静まり返ってしまう。



「絶対決まったと思ったのに、あれを止めんのかよ化け物め……!」



 勝也の中で間違いなく会心のキックだった。それが決まらなかった事に頭を抱え、止めた龍尾には化け物と言うしかない。



 立見にとって幸いなのは最悪の流れのまま、試合が続くことは無くCKで成海の蹴ったハイボールを龍尾が取った直後、後半終了の笛が鳴らされた事だ。




「(やっぱ楽には勝たせてくんないね……)」



 0ー0のスコアレスで延長戦を戦う事が確定した立見。弥一は重い足取りのチームメイト達と共に、ベンチへ引き上げていく。



 残るは延長戦の前後半、PK戦までのタイムリミットは確実に迫っていた……。

弥一「はぁ〜……」


勝也「弥一が珍しくため息?」


間宮「あいつが悩み事っすか?どうせ狙ってた美味い飯が食えないとかで落ち込んでるんでしょ」


摩央「確かに弥一といえば美味しいグルメに目がないから、そうなりますよね」


勝也「いや、あいつも高校生……年頃の男子。好きな女子とか関係しててもおかしくねぇぞ」


弥一「レーシングゲームのハイスコア抜かれた〜(泣)」


勝也「それは予想出来ねぇ!」



ディーン「やればやる程なかなか奥深い……(弥一のハイスコアを追い抜きトップ)」

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