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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
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押し寄せる中盤

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

立見は後半、人だけでなくシステムも変えてきていた。





 成海    上村    歳児



 水島          田村



    影山    神山



   神明寺 間宮 川田



       大門




『前線に誰も残ってない、ゼロトップですね!』



『此処で中盤を7人置いて3バックですか!今まで立見の試合を見てきましたが、そんなフォーメーション一度も取っていなかったはずですよ!?』



 急にガラリと変えた立見の陣形を見て、高校サッカーの聖地はざわついていた。数々の歴史が刻み込まれる地で、このような奇策が高校生から飛び出すと、予想していた者は皆無だろう。




「(あのフォーメーションは個々の優れた選手を揃えたビッグクラブがやって初めて成り立つはず。高校生がおいそれと真似出来る物ではない……!)」



 八重葉の監督は高校サッカーに携わり長くなるが、高校生がこのような奇策に、それも創立から僅か数年のサッカー部がやったというのは聞いた事も見た事も無かった。



 牙裏戦で見せた奇想天外のCKといい、立見のサッカーは何が飛び出すか分からないビックリ箱のようだ。




「(数で上回れば良いってもんじゃないだろ!)」



 中盤を増やした立見に対し、ボールを持つ高知がドリブルで軽やかに武蔵を躱す。



 だが直後に翔馬が息つく暇も与えず詰めて、高知からボールを奪取する。



「落ち着け!数に惑わされるな!よく見ろ!」



 ベンチから立ち上がって八重葉の監督は近づいて選手達に声を掛けた。



 そこに翔馬から右サイドへと、左足でグラウンダーのサイドチェンジを仕掛ける。



「(見えてんだよ!)」



 シュート並のボールが飛び、田村が上がって来ていたが月城はこれを読んでパスコースに飛び込む。



『ボール奪取から水島、サイドチェンジを狙ったが月城これを弾く!』



『八重葉ちょっとバタついていますかね?慣れない陣形を相手にするせいか、戸惑っているようにみえますよ』




「(落ち着きがないのも当たり前か。紅白戦でそんなシステム使って来ちゃいないし、対戦チームにもそんな奇抜なのは何処もやって来なかった。経験なんざ積みようがねぇんだ)」



 龍尾から見て、八重葉の方に動揺が生まれている事が分かる。全く慣れない陣形を前に、戸惑う者が続出していた。




『今度は神山インターセプト!八重葉の攻撃をまたも阻止!』



 八重葉の得意とする速いワンツーを読み、勝也がカット。



「(立見の狙いはカウンター!両サイドの歳児、水島、田村辺りのスピードに優れた奴で狙う!)」



 大城は向こうの狙いを考える。サイドにそれぞれ足の速い選手を置いて、背後から飛び出すのが狙いなのだと。



 ならば左は心配ない。月城の足なら歳児や田村に負ける事はあり得ないからだ。警戒すべきは右、水島と成海のいるサイド側。



 しかし大城はこの時忘れていた。



 滅多に見ない陣形に気を取られ、更に中盤の大混戦によって彼の姿が見えなくなってしまったせいか。




 勝也が右足でパスを出した先、そこにいたのはどさくさに紛れて前線に上がった弥一の姿。



「(チャンス!こいつからボールを奪えば!)」



 弥一に迫り来るのは八重葉のもう1人の大型DF仙道佐助。守備の要の彼が此処まで上がって来たなら、むしろ得点チャンスだと佐助は考えた。



 大柄な佐助が接近して、プレッシャーを与えに行く。だが弥一は即座に右足のチップキックで、ボールを浮かせば佐助の頭上を越えていく。



『神明寺、上手い!突破した!』



 弥一のプレーに国立が沸く中、浮かせたボールに大城が詰めていた。両チームの守備の要となるDF同士の対決だ。



 浮き上がって、落ちて来る球へ大城の長い右足が伸びていく。190cmの足のリーチを活かして、蹴り出そうとしていた。



「!?」



 届いた、大城がそう思った直後にそれより速く、弥一が再び右足でふわりと上げる。



 八重葉のキャプテンをも手玉に取って抜けた時、スタンドからは更なる驚きの声が上がってきた。



『神明寺連続チップキック!なんというテクニックだ!』



 八重葉の全国トップクラスの技をも超える、弥一のスーパープレーに会場の熱は一気に高まっていく。



 このまま龍尾と一対一まで行けるかと、皆がそう思っていた時。




「(行かせるかぁ!!)」



 高速の足で迫る月城が、大城の右横を突破した直後の弥一に向かって目一杯左手を伸ばし、後ろから弥一のユニフォームを掴んでくる。



「うわぁ!?」



 これには弥一もバランスを崩し、フィールドに倒れた。しかし主審はこのプレーをしっかり見て、笛を鳴らす。



『月城、後ろからユニフォームを掴んで倒してしまった!八重葉のファールで、おっと月城にイエローカード!後半に早くも1枚だ!』



『今のは1点の危険が大きかったでしょうから、やむを得ないでしょうね』




「(くっそ!誤魔化す暇も無かった……!)」



 何時もならマリーシアで主審を欺いていたが、今回は弥一相手にそんな暇が無く余計なイエローを受けてしまう。



「なんだ、月城って速さだけじゃん?たいした事ないから良いカモになりそうだねー♪」



 その弥一は立ち上がりながら、月城に聞こえるようにわざと声を大きく独り言を言っていた。



 これが月城の耳に入り、ピキピキと青筋を立てて怒りの表情を浮かべる。



「カモだと!チビガキ……!!」



「駄目だって亨!」



「退場になる気かお前は!」



 弥一に詰め寄ろうとしている月城に、仙道兄弟の2人が必死に彼を抑えた。既に1枚イエローを貰い、此処で1枚また貰えば退場になってしまう。



「(冷静なストライカーと違って煽りが効きやすいのありがたいなぁ)」



 照皇へ揺さぶりが効かない分、月城の心を大きく揺さぶっていく弥一。効きやすい相手でラッキーと思いながら、立見の選手達の元へ向かった。




『立見、決定的なチャンスを迎えかけましたがファールで潰される。ただ立見のFK、神明寺の見せ場がまたやってきました!』



『カミソリのように曲げるのか、それとも弾丸のように真っ直ぐか、毎回彼がキッカーの時楽しみなんですよね。八重葉を相手に今回はどう来る?』



 距離としては30m付近、ゴール正面で良い位置からのセットプレーを獲得している。数少ないであろうチャンスを前に、勝也と成海は話し合う。



「あえて川田のパワーシュートに任せてみるのも良いか」



「壁を越えるかどうかは微妙な所だけどな」



 2人が話し合っている時、弥一は軽く右足でトントンと軽くリフティングをしていて、足の感じを確かめてからボールをセットする。



「!おい、弥一まだ話し合い……」



「いや、待て」



 構わず先に進もうとしている弥一に、成海が止めようとするが勝也はそれを片手で制した。



 今の弥一の顔を見て、勝也は集中力を高めている事が伝わる。弟分の集中を乱してはならないと。




「(……このまま神明寺だな。曲げようが、ストレートな弾丸だろうが、どっちでも来い。掴み取ってやるよ)」



 龍尾も身構え、八重葉の作り出した壁の先に居るであろう、弥一に向けて鋭い目を向ける。




「(なんて集中力だ……)」



 壁に立つ照皇は弥一が無言で、八重葉のゴールを見据える姿に恐ろしいまでの集中力が感じられた。



 獲物を狙い、狩りに行くような弥一の目。今の彼は自分の世界へ完全に入って、目の前のボールと八重葉の壁。そして龍尾の守るゴールマウスしか目に入っていない。



 弥一は静かに後ろへ下がり、助走をとる。



「(曲げて来る!?真っ直ぐか!?)」



 八重葉の壁な選手達にも緊張が走っていた。どっちで来るのか、いずれもが弥一の動きを見逃さず、集中してよく見る。



『神明寺走り出した!』



 ボールに向かって弥一が走り出す。迷いなく一直線に走れば、そのままの勢いで右足のインステップで蹴った。



 球は速いスピードで壁の上に向かい、品川と高知の頭の僅かな間を通過。針の穴を通すように正確だ。



「(ストレートか!)」



 龍尾から見て、ゴール右に飛んでくる球の姿を捉えた。持ち前の驚異的な反応速度で、龍尾は動き出す。



「!」



 しかし球は無回転で不規則に揺れ、キーパーを惑わすボールに変貌していく。右から左下へ急激に落ちた。



 それにも龍尾は反応。切り返して左に向かえば、左足で落ちていく球に当てる。蹴られたボールが真上に舞い、落ちて来た所へ跳躍してキャッチ。立見の選手も詰めていたが、GKの高さには勝てなかった。



『止めた工藤!神明寺のFKをなんと足で弾く!』



『今のは無回転でしたよね!?GKにとっては対応しづらかったはずですが、工藤君これを止めてしまいますか!』




「(ふ〜、こんなエグいヤツが飛んでくるって。今のはヒヤッとしたぁ!)」



 流石の龍尾も無回転キックには驚かされ、すぐにはボールを出せずキープしている。それでもしっかり止めて得点を許さない、驚異的なセーブを見せていた。




「(くっそぉ!真上に行くのは聞いてないし!弾いて零れたの詰めてくれれば!)」



 戻りながらも、弥一は内心で激しく悔しがる。イメージとしては決まらずとも、優也辺りが詰めて押し込むのを思い描いた。



 だが空中に上がってしまった事により、プランは崩れてしまう。奇策で翻弄出来てる間に八重葉の天才GKから得点してしまおうと、弥一は再び走る。

弥一「集中してる時の僕ってあんな顔してるんだねー」


勝也「自分じゃ見れねぇからな。俺も変な顔とかしてそうか」


間宮「いや!すっげぇ格好良いっす!」


春樹「凛々しく、気高い姿を見せているので変な顔はあり得ません!」



(間宮と春樹が固く握手を交わす)



勝也「あいつらとことん俺を盛るのが好きじゃね?」


弥一「とりあえずご満悦そうだからほっとこうか〜」

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