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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
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王者への奇策

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

 豪山の右足首が突然の悪化。立見の攻撃がこれから勢いに乗る、という時の最悪なタイミングで途中交代となってしまう。



 代わって入った武蔵は積極的に守備を行い、豪山の穴を埋めようと奮闘するが、それで止まる程甘い相手ではない。武蔵のプレスを軽々とボール回しで躱して、八重葉は左サイドからチャンスを作ろうとしていた。



「(まだ月城出てねーのにやられてられっか!)」



 洗練された個人技からのパス、そこから抜け出した左サイド黒泉へのボールを、田村が読んで右足で蹴り返してクリア。



「ナイスクリアー!!」



 声を張り上げて大門が田村のプレーを称えれば、本人はドヤ顔で当たり前だとばかりに右親指を立てた。




「(あーあ、黒泉先輩じゃ立見の相手は荷が重いか)」



 出番が無くて頭の上に両腕を組んで、欠伸を堪えながらもベンチスタートの月城は暇そうに試合を見ている。



 黒泉は自分と同じポジションの先輩だが、立見を相手にあまり活躍はしておらず、後輩の彼は「だらしねぇなぁ」と思っていた。



「月城、アップだとよ。後半頭からだそうだぞ」



「はいはい、やっとお仕事ですかっとー」



 先輩の部員から監督の伝言が伝えられ、月城はベンチから立ち上がるとアップの為に体を動かし始めた。




「(0ー0か……ま、1番あり得るだろうとは思ってたけどな)」



 プレーの止まってるタイミングで、龍尾は電光掲示板の時計を確認。前半は既にアディショナルタイムへ突入し、八重葉がボールを持っている。



 ただ立見は完全に守備に集中して、無失点で乗り越えようと皆が懸命に動く。これを最後尾から見ていた龍尾はスコアレスでハーフタイムだな、と思った。



 彼の予想通り、一分も経たない内に主審の笛が鳴り響いて前半が終了。



『立見と八重葉の決勝戦、まずは前半両チーム無得点で終わりました!』



『悔やまれるのは立見の攻撃が勢いに乗る前に、豪山君の負傷で削がれてしまった事でしょうね。要の長身ストライカーを此処で失うのはかなりの痛手になるかと思われます』




 八重葉 ロッカールーム



「向こうのアクシデントはあったが、前半はスコアレスで終えられた。後半は仕掛ける為に黒泉に代えて月城を頭から投入する」



 監督から選手達に、後半のプランについて説明。今日のスタメンにはあえて選ばず、此処まで温存した月城を後半から出して立見の守備をかく乱させる。



 後半立ち上がりで、向こうの体は全国一のスピードにまだ慣れていない。その隙に1点を取ろうという狙いだ。



「たったの1点、しかしこの試合に関しては何よりも価値のある重い1点となるはずだ。立見の無失点記録に臆するなよ!」



「はい!」



 監督からの力強い励ましに、八重葉の面々は応える。




「(ま、無理に1点取る必要も無ぇけどな)」



 そんな中、龍尾はこのままずっとスコアレスが続いても、一向に構わないと思っていた。



 PK戦になれば絶対勝てる自信があり、総体でやられた弥一に借りを返す場としても最適。失点する以外なら、どっちに転ぼうが八重葉の勝利は動かない。



 弥一、そして勝也を倒す事で改めて自分がゴールを守れば、絶対負けない事を証明する。天才GKは後半に向けて、静かに集中力を高めていく。




 立見 ロッカールーム



「前半は0ー0、八重葉を相手に今の所は互角でやれてたけど……」



「向こうは後半、出して来るだろうな。全国1のスピードを持つ奴を」



 水を飲みながら、勝也は京子と後半に向けて話し合う。八重葉は後半に、温存していて月城を投入してくるだろうと。



「だとしたらだ。後半は……」



「……それで、行くしか道は無さそう」



 2人が頷き合えば、結論は出たらしい。




「弥一!間宮!川田!」



「はい!なんスか!?」



 勝也が3人を呼ぶと、それぞれが歩み寄って来る。中でも間宮は一番にすぐ駆けつけていた。



「後半に向けてお前らにやってもらいたいんだけどよ。可能かどうか答えてくれ」



 勝也の真剣な表情に、弥一達は次の言葉を大人しく待つ。




「お前ら……」



「!?」



 それを聞いた時、2人の顔が驚きに染まる。弥一だけは先に勝也の心を読んで、言わんとしている事を理解した。




『ハーフタイムも終わり、両選手が再び登場!立見と八重葉、どうやら後半から選手交代があったようですね』



『ええ、立見は右の岡本君を下げて歳児君。八重葉は左の黒泉君から月城君と、互いにチーム随一のスピードスターを投入して来ましたか』




「多分狙いは俺達DFの裏だな。月城、マークは任せたぞ」



「任せてくださいって。歳児って確か立見で一番足の速い1年っスよね?俺の方が速いから敵じゃありませんよ」



 大城から優也のマークを任され、月城は絶対勝てると強気に笑っていた。日本の高校サッカープレーヤーでNo.1のスピードを誇り、陸上に行けば100m9秒台が将来期待出来る。それ程の快速DFだ。



 自分こそが高校最速。数字と実績が、月城に絶対の自信をもたせている。




「やっぱり出て来たか月城……。優也、あいつの足をなんとしても封じてやろうや」



「そのつもりです」



 月城の姿を確認した田村。優也に声を掛けながら、彼の肩に手を置くと冷静な後輩は八重葉の1年を、静かに見据えていた。




「……む?」



 キックオフの時を迎え、各自がポジションにつくと照皇は立見の最終ラインに目が止まる。



「(おいおい、この後半でそれするか?)」



 最後尾の龍尾からもそれは見えた。弥一、間宮、川田とDFラインが3人だけという光景が。



『おっと?立見はフォーメーション変えましたか?4バックでお馴染みでしたが、3バックのようです』



『後半にフォーメーションを変えますか。慣れた4ー5ー1から変えた事がどう出るのか』




「勝也先輩が俺らに期待してんだ。3バックだろうがなんだろうがやってくぞお前ら!」



「はい!(言われた時は何考えてんだ!?って凄い思ったけど!)」



 間宮がこのシステムで相手を封じてやろうと張り切り、川田は戸惑いがまだ残ったままだった。



「僕相手にデュエルとかやってきたから平気だって♪ちゃんと指示は出すからさ?いざって時は大門がなんとかしてくれるからー」



「プレッシャーだな……!勿論頑張るけど!」



 不安の残る川田へ弥一は声を掛け、大門に無茶振りをしながらも緊張を解しておく。




 ピィーーー




 後半が始まり、立見は武蔵がボールを持つと、そこへ照皇や品川が同時に迫る。いきなり取られるのを嫌った武蔵は、前へ思いっきり蹴り出す。



 球は風で八重葉ゴールまで流れ、龍尾が難なくキャッチして早くも自分達のボールとする。



 龍尾は前へパントキックで飛ばし、中盤での空中戦。セカンドを村山が取った瞬間、立見はいきなり数人がかりで迫る。



「っ!?」



 想定外の数の多さに詰め寄られ、村山はパスを出す。受け取った政宗が前を向くと、彼は驚きの光景を目にする。



「(何でこんなにうじゃうじゃと!?)」



 立見の中盤の人数が先程よりも多く感じられた。パスを出す所を探す前に翔馬が詰めて来る。その前に政宗はかろうじてパスを出して、難を逃れていく。




「(これはまさか……3ー7ー0か!?)」



 八重葉の監督は前線に姿が無くて、中盤に多くの立見選手がいるのを見て、そのフォーメーションだと気づく。

弥一「勝兄貴も大胆な事を考えるねー」


間宮「ああ、あんな状況でこんなん凡人の俺には浮かばねぇよ。やっぱあの人は天才にして至高だ……!」


弥一「間宮先輩、今度1回牙裏の春樹さんとご飯行くのどうですかー?」


間宮「何で他校のそいつと飯食いに行く必要あんだよ?」


弥一「どういう感じになるんだろうってただの興味です♪」

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