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サイコフットボール ~天才サッカー少年は心が読めるサイキッカーだった!~  作者: イーグル
もう一つのサイコフットボール 始まりの彼が存在する物語 選手権編
611/649

分かっていても

※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。

『八重葉、前半から攻め続ける!右サイドから錦も積極的に上がっていく!』



 立見のクリアしたボールを八重葉が再び拾えば、そこから右サイドの攻めへと繋げる。



『立見は此処は我慢の時間帯ですかね。これを耐え切れるか耐え切れないかで全然違ってきますから』



「中央!1人上がって来てるぞー!」



 立見が守備に追われながらも、後方から戦況を見ていた大門が八重葉選手の上がりに気づき、声を張り上げて伝えた。



「(よりによって大城かよ!)」



 勝也の目から見て、大型の重戦車が迫って来ているように感じる。190cmの大型DF大城まで、立見ゴールに迫って来たのだ。



 彼のロングシュートの破壊力は川田が身を持って知り、完璧にゴールへ飛んだら得点もあり得る。現に大城は今大会、頭だけでなく得意の右足でも得点を決めていた。



 品川から村山、そこからダイレクトで右足のパスが上がって来た大城に向かう。それは通せんと、勝也が目一杯右足を伸ばして村山のパスを弾く。



「(取れ!誰か!)」



 祈る思いで勝也はこのセカンドを、立見の誰かが取ってくれと願っていた。



「(勝兄貴ナイスー♪)」



 その祈りが通じたのか、兄貴分の弾いたボールを弟分がフォロー。混戦の中を弥一が抜け出してドリブルで突き進む。



『神山弾いて神明寺取った!一転して立見カウンターチャンス!』



 左サイドの成海が上がってるのが見えれば、弥一はそちらにパスを出そうとする。



「(パスか!)」



 それを見た錦が成海にピタリと付く。しかし弥一は成海の方を向いたまま、右の踵でバックパス。密かに上がっていた影山がこれを受け取った。



『八重葉のゴール前に立見迫る!豪山と川田が待っているぞ!』



 八重葉は大城が上がったままだが、仙道兄弟が残って守る。影山から八重葉ゴール前へ右足の速いパスが送られた。相手が寄せる間を与えず、川田が胸で球の勢いを消してトラップ。



「(向かせるか!)」



「っ!」



 そこに政宗が詰めて川田に前を向かせないようにする。川田は振り向けず、手間取っている間に村山も迫っていた。



「もっちゃん、こっち!」



 そこに川田を呼ぶ弥一の声。村山が守備にへ加わる前に、川田の左足が左へパスを出す。



 戻ってマークに付こうとした大城より速く、弥一は川田から転がって来たボールを右足で振り抜く。八重葉の守備を揺さぶってから、左のミドルレンジからのシュートだ。



『川田から撃った神明寺ー!』



 タイミング良く合わせて飛んだ球は八重葉のゴール左下を捉え、速いボールとなっている。



 通常なら決まっていても不思議ではないが、相手は天才GKの工藤龍尾。瞬時に動き出せば、横っ跳びでシュートを両手でキャッチ。弥一のミドルを完璧に止めてみせた。



「(作戦通り!)」



「!」



 弥一はすぐに龍尾から背を向けて、立見ゴールに向かい走る。彼が戻るまで待つはずもなく、龍尾は右腕で思いっきりスローイング。



『工藤なんとこれをキャッチ!っと、すぐに出した!八重葉のカウンター返しだ!』



『ホントに息つく暇ありませんね!?』



 龍尾から投げられた球は伸びていき、照皇に直接向かう。



「ディレイー!!」



 そこに勝也の怒号のような声が響き渡る。照皇をこのまま進ませない、絶対足止めするという気持ちが込められていた。



 間宮がすかさず照皇へ体を右からぶつけ、彼の前進を阻止しようとする。しかし鍛え上げられた照皇の厚い筋肉が、鎧となって間宮のチャージを弾く。



「うおお!?」



 再び強く当たろうとしていた間宮だが、後ろを向いてキープする照皇はボールと共に反転。これで立見ゴール方面へ向く格好となる。



『華麗なターン!照皇魅せる!ドリブルで突き進む!』



 ターンで華麗に躱す姿を見れば、スタンドからは歓声が上がってきた。



 翔馬は上がって来た錦を見てマークに付くが、照皇はそちらにパスを出す気配は無い。



「ヤバいヤバい!」



 相手エースがゴール前に迫り、思わず立見ベンチの摩央が立ち上がって叫ぶ。隣に座る幸も叫びながら頭を抱えていた。



「(進ませるかよ!!)」



 そこへ勝也が照皇に追いつき、体勢を低くして下から肩でぶつかりに行く。



「!」



 左からぶつかってきて、照皇の左半身にズシッとした衝撃が伝わる。これが彼のスピードを鈍らせた。



「ぐっ!」



 再び当たりに行く勝也だが、照皇に腕を伸ばされて近づけさせてもらえない。



 ただ勝也のプレーは無駄ではなかった。照皇がそちらの相手をして、意識が向いている間に戻って来た者がいるからだ。



「(足元お留守になってるよ天才さんー!)」



「っ!?」



 照皇が勝也と争っている間、弥一が戻ると照皇の持つ足元のボールに右足を出して弾く。



 球は零れてタッチラインを割った事で、プレーは一旦途切れる。八重葉のカウンターを阻止する事に成功していた。



『立見守った!神山と神明寺の2人がかりで照皇の突進を何とか食い止めた!』



『今の進まれたら八重葉チャンスでしたからね。神明寺君長い距離を走ってよく追いつきましたよ』



「ふう〜」



 ピンチをまた一つ凌ぎ、弥一は頬に伝う汗を軽く拭う。立見ゴール前から八重葉のゴールまで、長い距離を移動した結果だ。



「(そういえば……あの人しつこくマークして来なかったね)」



 夏との違いに弥一は気づく。あの時は照皇の徹底マークがあって、思うように前へ出れなかった。それが今遮られる事なく、攻撃する事が出来ていたのだ。



「(よしよし、良い感じだな)」



 今の所は思い通りの展開、龍尾は良い感じだと頷く。八重葉がこの作戦を決めたのはミーティングの時だ。




 遡る事、八重葉のミーティング。



「今回あの神明寺、好きに動いてもらいましょう」



「!?」



 突然信じられない事を言い出した龍尾に、八重葉の面々は皆が驚いて彼の方を見た。



「いや駄目だろ!?あいつに守備だけでなく、攻撃を好きに動き回られたら厄介なの見たよな!?」



 村山は何言ってんだと反論。弥一を封じず、放置するなどあり得ないと。



「あいつは接戦になればなる程、攻撃参加する傾向あるんスよね。それを利用するんです」



 動じる事なく、龍尾は自分の考えた策を村山に目を向けながら話す。立見はスコアレスの時が続けば、弥一が前に上がって来る可能性がそれだけ高まる。



「牙裏は狼騎に終始張り付かせて、奴の攻撃力を引き出し切れていなかったように見えてな。マコは今回深追いせず、攻撃に力を注ぐ。それであいつには守備に攻撃と、好きに動いてもらえばスタミナは自然と尽きる」



 龍尾の狙いは弥一にあえて攻撃参加を自由にさせ、それで弥一の体力を削り取り、攻守で機能停止にする。彼の視線は攻撃の鍵を握る照皇へと向けられた。



 自分が絶対ゴールを割らせない自信、実力が無ければ成り立たない作戦だ。





「(嫌な作戦考えるなぁ〜!)」



 その八重葉の作戦を、弥一は彼らの心を見て分かった。



 自分をわざと攻めさせて疲れさせる。相手の狙いは分かったが、だからと言って攻撃参加しないかと言えば、それも不味い気がする。



 消極的な攻めが続き、点の動かない時間が続けば延長戦。そしてPK戦まで行く事になる。



「(正直そこまで行きたくないから、その前にゴール決めないと)」



 タイムリミットは延長戦終了。それまでに八重葉の無失点記録を破らなければ、嫌でも夏の敗戦が頭を過ぎってしまう。



 弥一の視線の先には、八重葉のゴールマウスで余裕そうに腕を組み、戦況を見守る龍尾の姿が見えた。




「(絶対負かす!)」



 あの天才GKを勝ち誇らせたままにしたくない。八重葉の作戦を裏目に出させようと、サイキッカーDFの闘志に火が灯される。

弥一「月城が出てないから八重葉が静かに見えちゃうねー」


月城「俺試合中そんなベラベラやかましく喋るタイプじゃねーぞ!」


弥一「あ、居たんだー?」


月城「照皇先輩があんま喋れないから来いとか言ったの誰だ!?」


弥一「とりあえず居たら賑やかと分かったのでまた次回〜♪」


月城「もう終わりかよ!俺来た途端に終わるドッキリしてねぇか!?」

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